20XX年姥捨山法案可決

あるちゃいる

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六話

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 「フフフようやく捕まえましたよ!異世界に逃げても絶対逃しませんからねぇ!」


 各個人のGPSから流れ出る電波を拾って特殊な携帯に送られてくるデータを見ていた私は遂に先日車内から消えた宮咲老人の電波をキャッチした。直ぐ様捕獲チームを発動させて緊急車両が飛び出した、私もそれに乗って共に捕獲しに向かう


 宮咲老人は河原でBBQを楽しんでる事が高感度カメラに映っていた、此方が徹夜で探しまくってる間に呑気に酒なんぞ飲み腐りやがって……


 これはひもじい地獄の刑だな!フハハッ逃げた事を後悔させてくれるわクソ爺がっ!犬の鎖を外させて匂いを嗅がせて解き放つと、犬の後を走って追いかける。【ひもじい地獄とは、食事を与えずに香辛料やケチャップ何かだけ冷蔵庫に入れて、他は与えずに過ごしてもらう私刑である】


 あと数分で到着って所で電話をかける。相手の携帯が電源をOFFにしていても強制的にONにする特殊携帯を使用すると、老害爺の携帯が鳴り出した。


 「も、もしも「見付けましたよ!宮咲さん!逃しませんからねぇっ!」ガチャガチャーン」


 フハハッ!慌ててる慌ててる双眼鏡から眺めると慌てて川へと入っていく姿が見えた。川にでも流れていきたいのか?クハハ!逃げられるわけ無いんですよ?宮咲のボケ爺が!


 「回り込め!絶対逃がすなよ!」
そう言って支持を出すとジジイの周りを固めていく。酔いが回っているのか上手く歩けないようだった。なので、優しく介抱するふりをしながら腕を捻り上げる


 「連行しろ!」


 車に押し込んで抵抗するジジイを周りに見えない様に怒突。(大人しくしろやクソジジィが!)


 鳩尾を殴って気絶させるとそのまま決められた地区の部屋へと向かう。これでようやく安心して眠れるぜ……


◇◇



 (おかしい……餌は与えてないのに全く腹を減らした様子が伺えない)


 先日なんか部下に様子を見に行かせたら玄関前でスクワットしてやがったらしく、そのやり方がもう既に老人では無くアスリートの様だったと報告書にあった。


 (一体どうなってんだ?普段だったら3日もすれば虫の息で、そこを助けに入った我々に対して感謝の嵐で従順になるのに……まったく車の中から消えるとかいうオカルト系の爺はこれだから嫌なんだ……)


 要監視対象としてこれまで以上に厳しく当たれと支持を出し、老人達に支給する筈の資金の一部を裏に回し、その金で買った贅沢品を昼飯にしながらワインで流し込む。


 老人保護法案が可決されて6年目、ようやく甘い汁が啜れるところまで来たんだから、問題など起こさないで欲しいものだ。


 その為には恩を無理矢理にでも売って、何をしても命を救ったという恩を忘れずにいて欲しいねぇ。


 危険因子は早めに他界して貰いたいが、アスリートみたいなスクワットて何だろうか……まぁ、それだけ動けるのは厄介な存在だな。


 まったく私の担当地区でこんな不祥事はボーナスに響くから困るんたよ、査定でも入った日には鉄格子の部屋に連行されちまうしなぁ


 生かさず殺さずダラリとした生活を実行してくれると助かるんだがねぇ……


 監視対象の宮咲老人が居るであろう部屋を監視しながら呟く。と、突然宮咲老人の電波が途絶えた。


 「また逃げたのか⁉クソ爺が次は歩けない様に両足折ってやるからなっ!」


 そう叫ぶと部下を数人連れて老人が居たであろう部屋の玄関の鍵を外から開けて、部屋へと流れ混んだ


 案の定もぬけの殻になっており、部屋には書き置きが置いてあった。


 『探さないでください』


 「糞が!」と叫びながら玄関を開けたまま外へと飛び出した。用意された車に乗り込むと行きそうな場所を隈無く探したが見付からず、GPSでも辿れなかった。


 「くっそ!どこに消えやがった!?村中を探させろ!他の老人には熊が出たから大人しく部屋に篭もるように通達を出せ!」


 見付からない焦りから指示が段々キツくなっているのが分かる。


 血眼になりながらGPSの発信する電波を見詰めて、宮咲老人の電波を探す。だが、まったく見付からず時間だけが過ぎていった。


◇◇


 時は少し前に戻る


 玄関へと踏み込んで来た奴等は悪態を吐きながら外へと出ていった。玄関の戸も閉めずに出掛けるとはラッキーだな


 俺がどこに居たかというと、床下収納を開けた底の部分に触れて、アイテムボックスに仕舞ったのだ。そうしたら、床下へと入れる事になった。


 GPSもあるから、IDカードは何処にしまうかと考えたところ、手っ取り早くアイテムボックスへと放り込んだ。もちろん電源は入ってない。


 何処かに捨てればとも思うが、中に入ってる財産が諦めきれずにいる原因になっていた。


 あの金で何かを砂糖や塩などを買い占めてから異世界には行きたい。胡椒なんかも買い占めていきたい。


 まぁ、異世界が中世タイプの世界だったらの話だが、違ってもまぁ、毎日使うものだから邪魔にもならんだろう。


 自称道先案内人が車に乗って山へと走っていく後ろ姿を眺めながら、俺はカードで買えるだろう卸問屋へと向かった。そこで、買えるだけの塩砂糖胡椒と山程買い、残金が数十円くらいになる迄、買い漁った。


 当然買った記録は残るので、そのうちここにも奴等がやってくるだろう。なので人目を気にせずに買ってきたものを全てアイテムボックスへと放り込む。


 手品か?とか言われ、拍手を貰いながら全ての荷物を入れたあと、一礼してから店を後にした。


 勿論使ったあとのカードはアイテムボックスへと一時的に入れておき、県外へと向かう車輌に放り込んで置いた。うまく行けば俺が県外へ逃げたと思ってくれる事だろう。


 捕物用の車輌が何台か隠れていた場所の前を通って先程買った店へと流れ込み、その後直ぐに慌てた様にサイレンを鳴らして県境へと走っていった。


 どうやら、上手い具合にいったようだ。俺はほくそ笑みながら河原へと向かった。途中で借りた原チャリに乗って急いで向かった。


 あの河原へとやって来て原チャリは脇に置いておき、メットをしまう部分にお礼の現金を数枚置いた。
10000っと数字が大きく書かれたまるで玩具の様な新札を詰めて置けば乗り捨てていたとしても、文句は言うまい。


 歪んだ空間を睨みながらエイヤッ!と、飛び込むと空間に波紋が浮かび俺を受け入れてくれた。


 バシャバシャと水飛沫をあげて川を渡ると、兎の革の上に背負子があって中には縄とか入っていた。


 どうやらちゃんと戻って来れたらしい。そのうち他の老人達も助け出すからなーとか言いながら、その場を去ることにした俺は、元居た家へと戻って行った。


 あっちの世界へ置いて行ってしまった竈が多分新しく生えてくれてるはずだと期待して。


 




 
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