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七話
しおりを挟む宮咲の爺さんを取り逃がしてから数ヶ月が過ぎた辺りから、同じ地区の老人達の失踪事件が頻繁に起こり、同地区だけの問題にするには、話が大きくなり過ぎてしまい、遂に監査が入る事になった。
最初の失踪者である宮咲の爺さんの部屋を確認するという事で、同地区担当の道先案内人である私こと成宮歩も、現場に喚ばれ立ち会う事になってしまった。
(ヤバイ……配給品を渡していない事がバレてしまう……)
各家には配給品の一日の食材を渡す義務があり、その配給品を入れておく箱がどの家にもあるのだが、一度も餌を与えていなかった宮咲の爺さん宅にはその箱さえも無かったのである。
その箱は持ち去りを危惧した上が鎖を付けたのでそこに住んでいれば必ずあるはずの箱であった。
(まずいっまずいっ!このままでは牢獄に送られて甘い汁が二度と啜れなくなってしまう!)
喚ばれた言葉を無視する事は前提として、最近失踪する老人達が居なくなる前日に必ず砂糖、塩、胡椒にチョコレート等が大量に取引されている事に気が付いた私は、持っていた現金でそれを買い漁り、背中に背負って宮咲の爺が消えたであろう河原の場所で予想していたが実行しなかった非現実の現象を待った。
(私の予想では宮咲の爺が陽動して他の爺様連中を異世界に連れて行っている筈だ。その爺を捕まえて一緒に異世界に逃げれば……)
こんな話を会議でしたところで誰も信じないばかりか、精神を疑われて監獄どころか施設に入れられてしまうので、今迄予想だけして実行には至らなかったのだが、背に腹は替えられぬとこうして、準備してるところだ。
生憎塩胡椒や砂糖は既に売り切れになって買えなかった事から、ソロソロまた誰か失踪すると踏んで、チョコレートだけを山の様に背負い河原の片隅で宮咲の爺が出てくるのをひたすら待つ。
暫く待っていると少年少女達が数人バラバラと歪んだ空間から出てきた。異世界人か?と、思ったのでコンタクトを取ろうと近寄っていくと……
「道先案内人じゃないか?何してるんですか?こんな河原で?」
バレていた。っというか、この声……聞いたことがある……
「宮咲の爺さんか?」
「お、よく分かりましたね?姿形は変わっているというのに」
「知らないのか?声変わりしたあとは老人になってもたいして変わらないんだぞ?」
やはり、宮咲の爺さんだった。
この一連の失踪事件の本丸が目の前にいる。だからといって今更捕まえようとは思っていない。
「あなたに対して行った事は謝る、どうか私を助けてほしい」
そう言って頭を下げた。すると、宮咲の爺さんは
「ははは、さては首が回らなくなったんだろう?計画通りだ」
(計画通り……だと?)
「それはどういうことかな?」
「そのままさ、この異次元への扉の話は既に国家を巻き込んだ一大事業になってるのさ。あんたの悪行も既に政府に伝えてあるのさ、逃げられないよ?」
(何を言ってるんだ?コイツは……)
そう思った矢先私を取り囲む若者達が居た。
「歩くん残念だよ……あんなに目を掛けてやったのに、クソ役人に身を落とすとはな」
そう言って私を睨む少年……いや、青年か?どこかで聞いたことのある声だと思ったら、定年退職した私の直属の上司の田村さんだった
「まさか貴方もそちら側だったんですか!?」
「貴方も……では無いよ?君以外全員知っていることだよ」
「宮咲さんは定年退職者を中心に異世界へと誘った事は君でも分かったことだろう、その話はドンドン広がっていってね、遂には政府をも動かしたのだよ。70超えたら異世界に行って若返ってまた戻ってくる。見返りは砂糖や塩や胡椒だ」
「異世界では若返りなんて簡単な事らしくてね、こうして我々も若返って少子化で困ってる日本を救うべくこうして宮咲さんの話に乗ったのだよ」
そう言う声が後ろから聴こえてきた、振り返ると随分昔の首相の声だった。少し面影も残している。
「だからね、君のした事は本当に残念だよ……まったく私刑などと……常識を疑う」
また、田村さんが私を見ながら首を振る。暫くにらみ合いが続いたと思っていたら黒服を着た政府の犬達が集まってきていた。
言い訳もできないまま私は拘束され、その場で待機させられた。これから起こる事を見ていろと言わんばかりに。
大型の4wDのバスに乗った大量の老人達が次々と空間へと入っていく、その後から若者や少年少女達が入れ替わるように出て来ては大型バスに乗っていく。
私の親も中にいた。私を見て憐れむような顔をしたあと、顔を伏せて歩き去った。
どうやら、既に話はしてあったようで何も言わずに去られた。こうして、老人保護法案は異世界で若返って新たに社会人として再度働く形で幕を開けた。
私は罪人となり、刑務所にいるが特に変わらない生活を送っている。
ただ、若返る事は無い。
寿命通りに死ぬだけだ。
再生可能なら老人さえもリサイクルする世界になった。ただし、日本人だけだった。
他の国では人類が溢れやがて滅びることになるだろう。溢れた人民を異世界に行かせろと言葉汚く罵る国もあるが、今の所受け入れはしていない。
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