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十一話
しおりを挟むオコジョの引く馬車は速かった
とにかく速かった
飯を食いながら走る為、燃量を補給しながら走ってる様なもんだった。
日が暮れる頃には跡一日走れば辿り着ける場所まで来てしまった。
シダルの身体強化(中)や馬車で走って一ヶ月かかる距離をオコジョ馬車だと2日だった村につく迄なら3日だろうか。
もしかして最初からオコジョ馬車だったらもう少し早かったのかもしれない。
まぁ何にしてもラッキーだったって事で。
最初の休憩のあと休まず走ってきたがオコジョに疲れは見えない。
今もヒトモドキを集めて食べ散らかしてるところだった。
サコラとは種族特価で話ができるらしく休まないで良いのか聞いてもらったら
『むしろ休むと肉が食えないから出来れば走りながらにしてほしいんだって、夜も走りたいけど君達が怖がるとイケないからやめておくそうよ?』
止めると疲れるって変な生き物だな……
これを量産出来たら新しい配達会社が出来るかもしれない。シダルはそんな事を想像しながら眠りについた。
オコジョを使ったこの馬車は、シダル商会の輸送馬車として長く愛用されることになる。
オコジョのマークも作り社旗として長く愛されるのだった。
そして、軽く食事を済ませると三人は馬車に乗り込み、出発した。
◇
私はこの村の門番である。
その日も特に問題なく過ぎて行き、あと少しで仕事も終わろうとしていた、だがしかし、ここで遥か彼方の街道を見ていた物見櫓に居た者達が騒ぎ出し、何かが此方に向かっていると報告を受けた。
門番の私は、それを確認しようと塀の上によじ登り遠くを見た。
するとたしかに何かがこの村に向かって走ってくるのを確認した。スタンピートではないかと一瞬騒ぎになりかけたが、スタンピートの割りには砂煙の範囲が狭いと重鎮の爺さんはいう。
では何なのだ?となった。
が、近付いてくればそのうち分かるだろ?という呑気な領主の小倅が待ってろっという、一応武装しろと言う事でフル装備で槍を持ちながら待つことになった。
ただ門の前に立っているだけでは敵の侵入を許す事になるので、三ヶ所に分けて待つことになった。
第一関門第二関門ときて門の前で第三関門で閉鎖して、迎え撃とうと言うことになった。
私のいる所が丁度第一関門で最前線として迎え撃つ。
遠くから迫り来る砂煙が近付いてくると、誰かが言った
「あれはオコジョではないか?」
◇
峠の下り坂を乗り越えて飛んでるんじゃないかと錯覚するかの様なスピードで走る一台の馬車。
馬車がカーブをドリフトしながら走る。
『おいオコジョ!馬車が壊れるのじゃ!戯け!』
壊れない様に魔力で維持してるらしいサコラ
そんなサコラに感謝して、今度馬車ごと新しくシダルが作り直す事になった。
「それまで頑張ってくれ」
『分かったのじゃ!』
クネクネと曲がっている峠道を下りながら走る馬車、砂煙が酷い事になっている。
もしも、他に人が歩いていたら前が見えなくなって動けなくなるだろう。
ようやく下らなくなった道をガラガラと走っていると、数百m付近に甲冑を着込んだ兵士達が居た。
村の門番達だ。サコラを通してオコジョに止まるよう促して減速して貰った。
数m先で槍を持った兵が手を上げて止まれの合図をする。その手前で止まるのを確認した馬車へ一人の兵士が歩いてきた。
シダルは見覚えが無いのか特に挨拶はしない。
「砂煙を出して走ってたのお前たちか?オコジョが馬車を引けるなんて聞いたことないぞ?何か身分証明書とかあるなら出してくれ」
「オコジョが力持ち何じゃなくて、馬車が軽いだけだぜ?教会の神父様なら軽減の式を書けるだろう?それと同じだよ」
そう言いながらギルドカードを見せるシダル
ギルドカードを確認してもやはりこの村の出身とは気が付かない門番に
「あんたは新しい門番だろ?古株達は居ないのか?」
「去年なったんだよ門番。先輩達はもっと村の近くにいるよ、知り合いなのか?」
ギルドカードを仕舞いながらふーんと言って引っ込んだ。その後はサリーとマダムタッソーの身分書を確認して畏まった言葉使いに変わった兵士達が、最敬礼して送り出された。
「肩書の力は凄いねぇ」
「私のは家の名前ですよ?御父様の名前が有名なだけですよ」
ギルドカードには偽名を使う物も居るが、身の安全を優先したい貴族のお嬢様達は当然の様に本名で記載する者が多かった。
アンサリーナ・モーカント公爵家の三女と書かれていたギルドカードなど貴族にすら慣れてないし見た事あるのは領主くらいな一般的な村人である。
モーカント公爵という名前だけでも震えて声が出なくなる程こんな片田舎でも有名な家名だった。
モーカント家は武門を重んじる家だった事もあり、門番になると聞かされるのが、モーカント家による武勇の物語だった。
なので、田舎であっても畏まる存在だった。
それと、冒険者ギルドのサブマスと書かれている身分証明書なんてひれ伏す以外の対応を隊長に聞いてしまうくらいだった。辛うじて立っていたが膝はガクガクだった。
そんな肩書の中、平然と馬車に居る少年の様な顔立ちのシダルを畏怖しながら見送った。
第二関門に辿り着いても似たようなやり取りが続き知り合いもまた居なかったのでとっとと村へ向かった。
ここでもまた最敬礼で送り出された。
「サリーの家って有名人なのか?」
「有名なのは御父様と兄達に長女くらいですね」
「ふへ……ほぼ全員じゃねーか……」
「モーカントって名前を聞いたことはないのか?シダル」
「田舎もんの農家の末っ子だよ?知るはずねーよ」
正確には末っ子は妹君なのだが、家族からの対応とか順位が一番下だった事もあり、自分を末っ子と思っていたシダルと妹君。全く違和感はなかったので今でもそう思っている。
「そんなもんかね」
「そんなもんだよ」
そんな事を話してる間にようやく最後の関門に辿り着いた。
「あれ?お前さんシダルじゃねーか?」
「なにぃ?あっ!本当だ!シダルだシダル!何だお前出世したなぁおい!」
一人がシダルの顔を覚えていた。
村を出てから5年たってもシダルの童顔は健在で全く変わって居なかった、相変わらず女の子みたいな顔だったので、門番達は直ぐに分かったのである。
なぜ門番にここまで知れ渡っているかといえば、顔が可愛すぎた事だろう。
同じ剣術道場に居た子を好きになり、だが告白できずに遂に村を出る事になってしまった。それでも好きだった事を告げられず、祭りの前の晩に呑み屋で同僚達と酔っ払った拍子にバラした時。
「その子の話を聴くに、シダルのことじゃねーか?」
そう言われた。名前だけしか知らなかった男は何か知ってるのかと詰め寄って
「アイツは男だぞ?」
その言葉で失恋した門番が居たんだそうで、男すら狂わせる魔性のシダルと変なあだ名が付いて、事あるごとにその男を揶揄っていたからだった。
その男というのが門番の出世頭で副隊長だってんで有名な話になっていた。
朝起きて畑作業をしたあとに家に戻るとシダルの朝飯は四男が食っていた
そのまま隠しといた干し肉を隠れながら食べて、水を飲むフリしながらスープを呑んだ。
午前中は屋根壁柱と修繕して時間が潰れて行き
午後からは教会で勉強して昼飯を食べ、その後に剣術等を習ってから山に晩飯を取りに行ってその場で調理&朝飯作りをしてると夜になる。
そんな一日を送るシダルに暇なんてなく、話しかけられる強者も居なかった。
まぁ掛け声何かも女の子みたいだったので、遠目で見てるだけでは男と思う人は居なかった。
一応ギルドカードを見せながら帰ってきた挨拶をする
「お久しぶりで御座います、シダル商会会長を勤めさせていただいております。この度は我が商会と取引をしてくださり有難うございます。早速で御座いますが村長のカリオ様は御在宅でしょうか?」
「お?おお、居るには居るが……何だお前その話し方……まるで商人みたいだな」
「手前どもは商人で御座いますけども……何か?」
「いやぁ、シダルなら大工の棟梁にでもなってるかと思ってたんだよ」
間違ってなかったし、正確にシダルの事を理解していた門番達だった。
門番に案内されるまでもなく、オコジョの馬車はトテトテと村に入って行き、村長の家である教会へと向かっていった。
教会の前に空地があって其処に馬車とオコジョを止める。
馬車を降りたシダルはスタスタと教会へと向かった。その後を付いていくようにサリー、マダムタッソー、サコラ、オコジョが続いた。
背後の気配がおかしいと気付いたシダルはオコジョまで付いてきてる事に驚いたが
「なんで付いてくるの!?」と皆に聞いた。
普通に待ってると思っていたからだ。
マダムタッソーは古い馴染みに挨拶したいから
サリーは秘書として付いていくのは当然だから
サコラは商談があるなら妾が必要だろう?と
オコジョは一人は寂しいからだった。
全てにちゃんとした理由があった為に反論出来ず認める形になり、みんなでゾロゾロと向かう事になった。
最初オコジョは置いていこうとしたら、女性陣に睨まれた。通行人の知らないオバチャンにも睨まれたので連れて行くことになった。
教会の中に入ると直ぐに椅子だけが並ぶ礼拝堂がある、其処を横に見ながら通り過ぎて次の扉を開けて行くと廊下があって、その先が階段になっている。その階段を登って最初の部屋が勉強を教わった部屋になる。今は誰も居ない様だ。
その先をググーッと向かって一番奥の部屋が教会神父様のプライベート部屋だ。
その部屋の横にある階段をあがるとまた部屋があって、そこが村長の部屋だった。
マダムタッソーは先に神父様に会いたがったが、礼儀として先に村長にしろよ!と、突っ込まれて渋々従った。大賢者ゼリスは英雄達の中でマダムの推しだったのだ。
「知るかよ!そんな情報要らんわ!」
っと一括されたマダムタッソーは年甲斐もなく泣いた。
後で会えるからっとサリーに慰められながら、階段をあがるマダムタッソー。
そこにサブマスとしての威厳は無かった。
◇
コンコンコンと三回鳴るノックに何かしら懐かしさを感じた村長カリオ。
「シダルか?」
「ああ、よく分かったな」
そう言いながら扉を開けた
久しぶりーって感じで勝手にソファーに座るシダルと、恐る恐る扉から眺めるマダムタッソー、シダルの後ろを歩いて、主人が座る椅子の後ろに立っているサリーに、窓から近い場所の木に巣がある爺さんで生き字引の綿毛兎を訪ねようとしてるサコラを見た村長。
「ははは、久しぶりだと客も増えるんだな、扉の所に居るのはタッソーか?久しぶりだな元気か?っていうか、入ってこい。寒いから扉は閉めてくれ」
そして、サリーに向き直ると
「お嬢さんはシダルの秘書か何かなのか?出世したなぁお前今何やってんだ?ていうか、落ち着かないから座ってくれお嬢さん」
後ろを振り返ってサコラを見た村長は
「今ユキは出掛けているよ?夜には帰ってくるけど訪ねたいなら朝にしなさい」
「なんだよシダル。お前も綿毛兎を従魔にしたのか?何だかなぁそんな所まで俺に似なくても良かったのに」
そう言って笑う村長に、俺は割符を投げて渡した。
「商会の紹介状じゃなかったんだな。最近知ったわ」
「あれ?それを読んだ上で帰ってこないのかと思ってたが違ったのか?」
「その事なんだが……カリオ様スマン!」
そう言って謝りだしたタッソーにとりあえず頭を上げなさいと優しく語りかけ、事の顛末を知った。
「結局悪いのはシダルだったって事だな」
「あーうんそーだね……もうドーデモいーよ」
取り敢えずお咎めは無し。
ちょくちょく王都の様子でも伺わなかった村長も悪いって事でこの話は終わった。
そして、商談は当然の様にサコラが担当。
これには呆れた村長は
「シダル……よくこんなんで商人だと言えるね?その根性叩き直すためにも少し修行し直すかい?」
背中から何か変なものでも出ているかの様な雰囲気で話し始めたが
「申しわけありません、シダル様はこの跡学園に入って貰い色々学ぶ予定で御座います!」
っという、サリーの言葉に頷いて。
「常識までは教える事が出来ず申し訳ない」
っと、頭を下げた。
何でも常識等は家庭で自然に覚える筈が、シダルの家は特殊だった為に教える人間が居なかった事を知ったのは、家を出た後だったんだそーだ。
シダルが家を出た翌年の祭りの日に、妹君が出席した。その子の言動が少しおかしかったのでシダルの話を振ってみたら、出るわ出るわのネグレクト話。思わず正気を失い掛けたくらい酷い惨状だったらしい。
確かに飯が食えないと聞いていたが、それは家が貧乏で家族みんな食えないと思っていた。
だが実際には四男が食っていた。
シダルの農家は比較的裕福だった。
兄弟は五人も男が産まれ即戦力の様に幼い時分から手伝っていたので、効率もあがっていた。効率が上がるという事は収入も増えるという事で飯だってちゃんと全員がデザートまで食えるくらいには裕福だった。
それが食えなかったのは父親のせいだった。
農作業を覚えないで勉強ばかりしているシダルが気に食わなくった父親が四男を使って嫌がらせをしていた。
シダルは物覚えの良い子だったのでとっくに農作業は憶えていたのだが、認めてはくれなかった。
すべて父親の策略だった
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