馬と爺ちゃん

あるちゃいる

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 ワシの名前は田中 喜次郎キジロウ(71)
 ワシの相棒で馬のゴロー(22)黒鹿毛♀

 ワシとゴローが出会ったのはゴローがまだ5歳位のときじゃった。ゴローはとある乗馬倶楽部で客の相手をしていたんだが、見栄えを気にした二代目の牧場主がサラブレッドに統一するからと、アングロアラブのゴローを殺処分にしようとしていたのをワシが貰ってきた。

 当時のワシは馬好きが高じて馬の世話をしたくなったんじゃが、人が沢山で雇えないと言われて、金は要らんと言ったんじゃが、そういう訳にはいかないと断られてな。
 安くするから乗馬をしたらどうかと言われたんじゃ。
 仕方なく乗馬倶楽部に入会して、乗らずに世話をしたり手入れを中心にやりたいと言ったのじゃが、流石にそれでは金は取れないと困惑されて、並足くらいは乗れる様にして貰った。
 そうなってくると、乗馬が楽しくなってきてしまい、結局普通に乗れるまで世話になった。
 小さい大会くらいなら出れるくらいにな。

 そして、ゴローを引き取る事になった時困ったのが、厩だった。
 自宅は一戸建て住宅だったが馬は流石に飼えない。通ってた倶楽部や牧場に預けると15万前後掛かると言われ、年金全部足しても足らん。
 これはイカンと一戸建て住宅を売り払って昔の伝を頼って何とか田舎に古いが家付き庭付き畑付きを安く譲ってもらって馬と一緒に住めるようにしてもらった。
 そうして出来上がったのが厩付き一戸建て住宅じゃ、昔の農家とかでは当たり前にあった家じゃな。

 周りの住民は老人ばかりで一軒一軒もそれなりに離れているから、匂いも届かないし馬が多少鳴いても近所迷惑だと言う奴も居ないし、畑は中々広く牧草の他に野菜なども育てられそうなところじゃったし、少しは餌の足しにもなるじゃろう。

 まぁ、若い働き手のいない限界集落ではあった
だが、それでもまだ人はそれなりに居たから数年は良かったんじゃ

 それが10年過ぎ更に五年が過ぎた辺りからチラホラお迎えが来る家が増えていった
 仏のお迎えなら仕方ないが、やれ「孫と住むから」「息子が一緒に住まないかというので」などと、口車に乗せられた老人達が我先にと村を捨てて出て行った。

 気付いたら隣近所にゃ雑草が生え、道を歩けば狸の親子とすれ違って朝の挨拶を交わし
 強面の猪の親子が我が物顔で道を闊歩していれば、気付かれないように物陰に隠れてやり過ごす毎日になっていた。

 人とすれ違う事が非日常になっていたんじゃ。

 とはいえ、ワシに身寄りはないしゴローは捨てられないので自ずと朽ち果てそうな村で最後の村人をやっていた。

 そんなある日。備蓄がソロソロ心細くなって来たので、隣町に買い物に行かなきゃならなくなったんじゃ。

 だが、車は随分前に売り払い、代わりに作ったのが左右に一個づつタイヤをくっつけて、サスペンションまで入れた荷馬車である。ちなみにアルミ製じゃ

 軽いし、結構積めるし頑丈だしで重宝している(主に畑仕事で)。

 よし、これで行こう。

 そう決めてゴローを厩から出して荷馬車とくっつけて、御者席に座る。
 遠出は初めてじゃが畑やその周辺はほぼ毎日ゴローの運動兼ねて乗っとるしな。なれたもんじゃ

 
 向かうは隣町の業務スーパー!

 確か法律上でも馬車はオーケーだっはず!と、意気揚々と出掛けていったんじゃ。

 ゴローはとても頭の良い馬だったので、道すから寝てしまっても大丈夫。ちゃんと目的地まで運んてくれる。むしろ、寝ていてうっかり御者席から落ちて怪我をする方が心配だったので、ドアを取り付けた。
 急な雨や風も嫌だったので、御者台から後ろの扉を開けると荷台に行ける様に改造した、屋根付きボックス御者台を作った。

 当然箱型なので、鞭は無い。だが鞭いらずなのじゃよ。
 急ぎたい時は声を出してお願いすれば急いでくれるし、買い忘れや行ったことのない場所でも事前に地図を見せていれば辿り着ける、ゴローは本当に優れたやつなのじゃ。

 待ちに行く途中でツーリングをしていた若者に出会った。じゃが運悪く3台とも燃料トラブルとかで立ち往生してたんで

 「バイクは無理じゃが街まで乗っていくかね?」
と訪ねたら歓喜して乗り込んできた。
 まぁ、座る所なんて荷台くらいしかないが、田舎町で馬車だからの。問題なかろうとそのまま三人を乗せて走ったんじゃ。
 朝は晴れてたのに、天候が急に悪くなってきてな?
そしたら、雲もないのに雷が落ちたんじゃよ。
 まぁ、その変な天気は直ぐに元に戻ったんじゃが、おかしな事はまだまだ続いてのー

 無事にバイク屋に寄って何かの修理道具を買ってまた戻るとき送ってくれと頼まれての、ワシの買い物も運ぶのを手伝ってくれての、すんなり買い物も終わったんで、昼飯だけ食ってまたアスファルトをカッポカッポいわせて歩いてたんじゃが、また天候が悪くなってきたんじゃ。

 今回は空も変な色の雲が出てての、その内また雷が落ちてきて、目の前が一瞬光った後……

 「ここに居ったんじゃよ神父さん」


 熱心に爺さんの話に耳を傾け木簡に何やら書いていた召喚を行った司祭はウンウン頷きながら話半分も理解できなかった。が、わかった顔だけしていた。


 ここは何処かの神殿の大広間、薄暗い部屋に篝火を焚いて灯りをとっていた。司祭の他にフードを被った人々が立ち並び、その周りを中世の鎧みたいな甲冑に身を包んだ方々が囲み、何やら見たことの無い程豪華なアクセサリーと服でゴテゴテのおじさんとお姉さんがワシらを囲っておった。

 で、とても面白い顔をしておったんじゃが、主にそれはワシとゴローと荷馬車を見ていた事に気付いたんじゃ。


◇◇神殿side◇◇


 魔国との戦争が終わって早60年が経った
世の中は平和とは行かないものの落着きを取り戻し、ある程度安定した社会になっていった。

 そして今年も召喚の儀式が行われる。
既に祭りとしてのみの召喚でしか無いし、形だけの式だったので、会場の神殿には王家と立会人と召喚魔法を使える司祭と、それを守る護衛だけしか居なかった。

 80年前に魔国との間で起こった戦争で窮地に陥った人類が伝説を元に神頼み的な魔法【藁をも掴む】を発動させた。
 その時顕現されたのが【勇者】とその仲間たちの三人だった。それから20年掛かって戦争を終わらせた勇者は英雄視され、勇者没後も定期的に7年毎に召喚の真似事をするようになった。

 今年もやって来た七年祭りでまさか本当に召喚するとは誰も思っていなかった。変な色の空だったが、決行したのが不味かったのかどうかは分からないが……

 そして召喚されて来たのは三人だけでは無く、馬と馬車と御者がセットになって召喚された。こんな事は伝説の書物にも無かった。もしかしたら偶然通り掛かった馬車が召喚魔法で引き付けられ、三人と一緒に現れたのかとも思ったので、ステータスチェックをしている間に御者から話を聞いて見る事になった。

 だが、爺さんの話してる内容の半分も分からないし、理解出来ない言葉を話すし、見せられた板の材質も分からなかった。
 これは、巻き込まれた人かと思い、司祭は鑑定を掛けたところ老人の名前と職業は分かった。が、特に勇者とは関係無い人達だったので、迷惑料込みで金貨10枚を渡してお引き取り願った


◇◇sideEnd◇◇


 その内神父さんが一人ワシの所に来て、此処までどうやって来たか尋ねられので話して聞かせた。
 荷台に乗ってた三人は別室に連れて行かれてな、ワシとゴローは別扱いにされた。ワシの話で役人みたいなお兄さんが荷台を確かめたが買ったはずの荷物は無くなっていてな?最初は疑われたが、何とかスマホを見せて現地人では無いと納得してもらった。

 馬車ごと召喚されるのは前代未聞の史上初とかで困惑していたようじゃ。よく意味は分からなかったが鑑定とやらもしてな、ワシのなんじゃ……すていたす?って奴を調べたら老人と出たそうな。

 職業老人なのだそうじゃ。はははは笑ったわ
そうしたら、巻き込まれとか言われてな、綺麗な金貨なんて貨幣を使ってる国だったらしくそれを数枚貰って神殿の外に追い出されたんじゃよ。

 三人の若者は何処に行ったか聞いたが、やんごとなきお方とお話するそうで、ワシは関係ないからと言われてな。まぁ、家に帰ろうと馬車を走らせたんじゃが、行けども行けども村へ向かう道が出て来なくてな。こりゃあ随分困った事のようじゃった。

 暫く宛度もなく走ってな、その内日も傾きはじめて仕方なく何処かで休もうと空き地を探して、馬車を入れたんじゃ。すると、勝手にゴローが留具を器用に外して話しかけて来たんじゃよ。そして言うんじゃ



 「爺さんや、わたしゃ勇者になったみたいじゃ」

 
 

 


 
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