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肆話
しおりを挟む「……では、これが商人ギルドのカードになります。落とさない様にしてくださいね?」
そう受付に孫がお祖父ちゃんに話しかける様に言われながら渡された身分証明書を大事そうに抱える様に持ちながら喜次郎は商人ギルドを跡にした。
次は冒険者ギルドなので、とっとと向かうのだが老人の歩くスピードなどまぁまぁ元気で無いと早くは歩けない。
日が暮れないか心配しながら爺ちゃんの歩く姿を見守る馬のゴロー。
『見つめてもどうにもならないわよ?』と機械的な発音でゴローに話し掛けるアル美。
「分かってるよ」と、いうかのように「ブル……」と嘶いたゴロー。街中で言葉を発するのは目立つから止めていた。
ようやく冒険者ギルドに辿り着いた爺ちゃんは重い扉を何とか押し開けて中へと進む。
入ってすぐに有るのは受付。
扉をあけて入って来た奴を奥の酒場から睨むやさぐれ冒険者だったが、入って来たのが爺さんだと分かると、誰も彼も、興味を失くしたかの様に手に持つジョッキに視線を戻し、呑みに戻る者、話に興じる者と各々別れはじめた。
入り口にプルプル立つ爺さんを見付けた受付のルシーは扉をあけて受付室から出て爺さんの元へと駆け寄る
「大丈夫ですか?さぁ此方でお話を聴きますよ」
と、応接室へと連れて行く。
ランクの上の人間や依頼人から詳しい話を冒険者にする場合に使う部屋へと通したルシー
爺さんをソファーに座らせて、お茶を準備して目の前に座ると
「いつもお世話になっております、冒険者ギルド受付担当ルシーが受け賜ります、今日はご依頼ですか?」
丁寧に言葉を選びながらハッキリとした口調で耳の遠そうな人でもちゃんと聞こえるくらいの発音で話し始めた。
「あ、あの……」
「はい!何でしょうか」
「冒険者登録に来たんじゃ……」
「……え? 申し訳御座いません、もう一度仰って貰っても宜しいですか?」
「ぼ、冒険者登録に来たんじゃよ……年齢制限は無かったと聞いたんじゃが……」
プルプルする肩を震わせながら真剣な目で見つめ合う二人。
笑わない様に目に力を込めて爺さんに対峙する受付嬢ルシー
「しょ、少々お待ちくだたい!」
少し噛み気味に答えたルシーは、応接室から飛び出すと受付室へと駆け込んだ。そして、盛大に吹き出し大いに笑ったのだった。その姿を異様に思ったのか同僚や受付に並ぶ冒険者達は片眉をあげて不思議そうに眺めたり、肩に手を置いて必死に「どーしたの?」と聴きまくったりした。
数分後、目から涙を流しながら息を整えた受付嬢ルシーは、周りからジロジロ見られながら咳払いをして、冒険者登録用紙とペンを持って受付室から出ていった。
理由を告げずに部屋を出て行こうとしたルシーを呼び止めて、何がそんなに可笑しかったのか聞き出そうとした同僚達は「後で教える」と一言告げられて応接室へと足早に向かったルシーを眺めるのだった。
応接室へと戻ってきた受付嬢に
「あ、わし……文字は……」と冷や汗を流しながら語尾は聞こえなかったお爺さんを見て、察した受付嬢は、ニッコリ微笑んで
「大丈夫ですよー?代筆しますからねー」
と、老人ホームの介護士並の声音で話しかけるのであった。
名前と階級の最低ランク【G】と一文字入った紙に自分の名前が書いてある事の違和感にドギマギしながら、無事に登録を終えた爺様は、受付嬢ルシーに深々と礼をして、冒険者ギルドを跡にした。
空はすっかり傾き、茜色の空から橙色に顔を染めながら爺さんはプルプルしながら馬車が待つ宿屋の裏へと向かう。
宿屋の裏へと辿り着いた頃には日もすっかり暮れて、空を彩る星星が顔を出してキラキラと輝いていた
「ただいま帰りましたよ」
ほっこり微笑みながら荷馬車にギルドカードを渡すと、ホォーっとため息を吐き出して、ようやく安堵した。
〈上手く登録出来たんだね?(^o^)〉という文字が文字盤に流れると、幌がバタバタ言わせながら喜んだ。
「爺さんお疲れさんだったね、今日はもう街から出れないから此処で泊まれる様にしたからね?」
そうゴローが爺さんに伝えると、コクコク頷きながら、荷台への扉を御者ボックスの裏から開ける。
御者ボックスの扉は鍵を閉めて置く。
そこから入ると、靴を脱いで奥の座敷へと向かう。
そこまで行くと、卓袱台に今夜の夕御飯をお皿に盛りながらアル美が割烹着を着せた飯炊きアンドロイドに成って待っていた。
『今日は頑張ったから焼肉よ』と棒読みの如く機械音で伝える。
爺さんは箸とお茶碗を受け取り、ニコニコしながらお礼を言って
「頂きます!」と言いながら手を合わせた
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