馬と爺ちゃん

あるちゃいる

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 三人のバイカーが初めての宴会に興じてる頃、爺さんと馬と馬車達は神殿近くの村を目の前にしていた。

 村への入り口には一応村民兵が居るらしく、銀色に光る馬車を見ながら村長を呼びに行ったりしていた。
 何処かの貴族と思ったようだ。だごしかし、近づくにつれて見えて来るのは荷馬車である。幌付きとはいえ、荷馬車である。どっからどーみても荷馬車であったので、村長は門兵の頭を軽くひっぱたき貴族が来てから呼びに来いといった。

 頭を叩かれた青年は勘違いさせた荷馬車に文句を言おうと待ち構えていたが、麦を買いに来た商人だった。しかも、金貨で大量に買いに来たと言うではないか、こりゃやっぱり村長の案件だと踵を返して呼びにに向かった。

 幌を畳んで荷台を露わにしてから、麦を詰める場所まで馬車を移動させたゴロー。と、飛んできた村長と話し合う喜次郎。どんだけ積めるか聴く村長に、金貨を10枚出して入るだけくれと喜次郎はいう。

 村長は金貨を握って荷台を見た跡、作業員に「この荷台に積めるだけ積んで差し上げろ!」と、ニコニコ顔で指示を出し、金貨を10枚貰ってほくそ笑んだ。
(この爺、耄碌もうろくしてやがる!金貨10枚でこの荷台に載せられるだけとか!あははは!ボロ儲けじゃわい!)
 後から文句を言われたくなかった村長は作業をすべて作業員達に任せて、家へと帰った。
 本当だったら立ち会ってどこまで積むか等見ていなきゃイケなかったのに、相手が耄碌もうろくしてると勘違いしてしまったばかりに、大損をする事になる。

 この村に備蓄されてる麦の全部で金貨20枚分くらいになる。無限インベントリを持つ荷台に永遠と備蓄が無くなるまで入れまくった作業員。いくら入れても全く満タンにならない荷台を睨みながらも村長の言い付けは絶対だったのでガンガン荷台に入れまくった。

 そのうち備蓄が空になり、それでもまだ一杯にならない荷台に驚きながら、喜次郎に話し掛ける作業員。

 「悪いが麦が無くなっちまった、荷台が中々一杯にならねーけど、代わりに野菜とか入れていいかい?」
 「何、気にしなさんな、でも野菜をくれるってんなら少しでいいぞい」
 「少しでいいのか?そうか、わりぃな」


 そう言って大根かぼちゃに人参里芋玉ねぎと山程くれた。今年は豊作だったからと遠慮は不要とたくさん積んでくれて、その野菜はインベントリには仕舞わずにいたら荷台を一杯にしてくれた。

 「なんだ、少しで良かったのに。でも有難うな」
と、喜次郎はお礼を言って荷馬車に乗り込む

 「また来ておくれな」と、手を振って荷馬車を送り出した。作業員達

 耄碌爺が帰るってんで見送りに来た村長は麦はひと粒も見えないが荷台と、豊作だった日持ちしない野菜類を山と積んで出て行く爺さんを見て歓喜した。

 そのまま良くやった!と作業員を褒め称え金貨一枚を作業員達に渡して、これで呑んでくれと呑み屋へと送り出した。

 金貨9枚で荷台いっぱいの野菜しか買わなかったと思い込んだ村長は有頂天だった、だがそれも備蓄小屋の中身が空っぽになってる事に気が付くまでだった。

 作業員達が飲めや歌えやしてる呑み屋に駆け込んで

 「備蓄麦がひと粒も無いがどーした⁉」
 「どーしたって、夕刻前に帰った爺さんの馬車に積んだろう?何言ってんだ?」
 「ひと粒も無いじゃないか⁉荷台にも野菜しか無かっただろう?」
 「その馬車多分アイテムボックス付きなんじゃないか?じゃないと全部は入らんべ?まぁ、村長が立ち会わずに全て任せたのが悪いやな」

 と、酒屋の親父が笑う

 その言葉を聞いてワナワナと震えた村長は

 「大赤字じゃねーかよ!ど畜生!」

 と、叫んで地面を蹴りながら帰った。ここで、褒められるのは積み込みを頑張った作業員を責めなかった事だろう。仕事をサボった報いは受けたが、彼がこれからも村長をやれるのはそ~言うところだった。


◇◇


 日が暮れる前に馬車を止められる場所まで移動したゴロー達は、晩御飯の準備とハウススキルを使って寝床の作成をしていた。

 「アル美よぅ?ちょっと酷いことした気がするんじゃが……」
 『麦のことですか?』
 「うん……少し返しに行けないだろうか」
 『爺様は人か良いなぁ……今更な気もするから、次行った時に今回貰った余計な分の代金を払うって事にしませんか?』
 「そうしてくれるか?スマンな、アル美。わしのためと思ったんじゃろ?」
 『まぁ、そうですけど……』
 「荷馬車だし年齢も3歳だから分からんかも知れんが、人の嫌がる事や、狡はなるべくやめてほしい」
 『ん。わかった気を付けるよ爺様』
 
 この時アル美は、(麦を麦のまま売っても対して儲からん、儲けを出すためには麦を粉にして元値の5倍くらいで売ろう)と、決めたのだった。

 爺さんより儲けに拘る荷馬車だった。商人としては正しい商人のあり方なのかもしれない。

 人間より人間臭い荷馬車にホロやゴローは無言で頷くのだった。


◇夜が明けて……


 朝食を食べたあと、ゴローは荷馬車を自分に取り付けながら喜次郎に声を掛けた

 「爺さんや今日はもう少し都会に行きたいから少しスピード出すでな、シートベルトは締めてくれな?」
 「なんじゃ急ぎかい?舌も噛まんように気をつけるわい」
 「冒険者登録と商人登録したいんじゃ」
 「馬が冒険者登録で荷馬車が商人登録じゃな?うんうん、それなら急ごうかね」
 「違うぞ?両方爺さんが登録するんじゃよ?」
 「馬や荷馬車が登録なんて出来るわけ無いじゃろーが!」
 「えええっワシが!?無理じゃ無理じゃ何言い出すんじゃ!」

 ゴローは御者ボックスに駄々をこねる爺様を押し込むと、シートベルトを付けさせて走り出した。有無を言わせず登録させるためだった。走ってる間はホロとアル美に説得する様に念話で頼む。

 まるで洗脳するかの様に延々と御者ボックスの爺さんに登録する事がどんなに大切かを諭し、荷馬車や馬は登録できない事を解いていった。

 街につく頃にはすっかり洗脳されて

 「よし!全てワシに任せておけば上手く行く!」
と、御者ボックスから出ながら叫ぶまでになっていた。

 
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