纏まった金が出来たので無人島を買いました。

あるちゃいる

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2話

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 「おい隆!帰るぞ」

 滾々と湧き出る水をボーッと眺めていた俺に田中が声をかける。
 湧き出していた水穴からは既に砂は出ておらず、湧き出す水に砂が巻き上げられて、まるで踊っている様に見えた。
 掘った場所も半分程の地点に迄水が溜まっていた。
 俺はハッと気が付いて周りを見渡すと、他の皆は既にその場には居らず、仕事道具を纏めてブルーシートを掛けてる所だった。
 「あ、ああ。今行く」俺は急いで立ち上がると腰を抑えて蹲る。
 「いてててて……」何年かぶりに動かした筋肉と長年運転手として働いていた時に痛めた腰痛のお陰ですっかり鈍ってしまっていた。
 その割には休まず土を掘り返していたなと振り返る、まるで何かに取り憑かれていた様に。
 「おいおい……大丈夫かよ」
 そう言いながら俺に近付き肩を貸してくれる田中。
 「明日は筋肉痛だなぁ」という俺に、「おっさんなんだから3日後だろ」と言って笑う。
 ヨロヨロと歩いていくと、そんな俺を気遣ってか作業員の一人が軽トラの助手席に乗せてくれた。
 他の皆さんは歩いて山を降りる人と数人が荷台に乗っている。
 俺より歳上なはずの大塚氏は徒歩で既に山を降って随分と先に進んでいるのが見えた。
 普段からジムに通って身体を鍛えているんだそうな……。
 軽快な足取りで歩く後ろ姿を眺めながら何かしら運動でもするかなぁと助手席に座りながら思った。

 山を軽トラに乗って降っていると、泉の真下辺りの竹藪から

 『きゃーっ!』という声がした。 
 沙月と美琴の声だろう。
 何か楽しげな声だったから助手席の窓から下側が見えないか頭を出してみたが、藪が深いのか良く見えなかった。

 「多分水でも出たんだろ、ボロ小屋を解体してた時に竹藪へと入っていくアイツラを見たから」と田中は荷台で立ち上がって下を覗き、顔を出してた俺に教えてくれた。

 ものの数分で拠点にしてる港の側の空き地に着くと、既に解体は終わり新しく柱と屋根が出来つつある小屋を見る。
 その横にいつの間にか自動販売機が設置してあり、皆は思い思いの場所に座って缶コーヒーを手に休憩していた。

 「塩崎さん!」という声と共に大塚氏が缶コーヒーを2つ持って現れた。
 俺と田中にお疲れさんと言いながら渡すと、少し話があると言って椅子のある場所へと向かう。

 「売買の件なんですけど……」と話し始めた大塚氏によると、どうやらこの島を大塚氏は気に入ったらしく、終括の為に自分もここに住みたいと言い出した。
 まぁ、仕方ないかと思い買うのは諦めようとしていたら
 「如何でしょう、色々手も入れたいので四億でどうですか?」という。
 (売ってくれるの⁉)と、こちらが戸惑っていると、山の向こう側へと向かう道を舗装したり、電力関係と電波塔やなんかも建てたいから任せて欲しいと言い、建設費用も出すという。
 そこに乗っかるように田中も四億の半分は俺が出そうと言い出した。

 「終活とはいえ私もまだまだ現役ですし、数年は本土との行き来になります。 農作業などには余り興味がないので其方は任せたいんですよ」という。

 腕を組んでうーんと考えてる俺の後ろから「漁業なら任せて!」と、いつの間にか帰って来てた沙月達も話に加わり、俺と田中で金を払う事で合意して、手続き込みで一度帰ろうという話になった。

 作業員の皆さんと植木屋さんに大工さんは暫くこの島で作業を続けると言うことで残る様だ、沙月達も探検したいからと言うので任せる事にして、俺と田中と大塚氏だけ一度帰り1週間後くらいで戻る事になった。
 少し波が高いが明日か明後日には落ち着くだろうとの事だった。 なので船出は様子を見て行ける時にすぐ出れる様に準備だけして置く事にした。

 その日の夜は飯盒でコメを炊き、夕方頃に沙月達が釣った魚を焼いて晩飯にすると作業で疲れた皆はぐっすりと眠った。

 その日の3時くらいに目が覚めて用を足す為にテントから出て戻り、再び眠るとまた夢を見た。
 その夢は前日に出てきた知らない爺さんに感謝された後、宝物だと言ってキラキラと光る絹っぽい袋を渡される夢だった。

 何となく楽しい夢だった様で、目が覚めた時も何故かホワホワとした心地が暫く続いていた。
 だが手元に貰った筈の袋が無い事に気付き、ガッカリもした。
 テントから出ると既に日は高く、俺を起こしに来た沙月にいつまで寝てるのかと怒られた。

 「もぅ! 隆さんだけですよ寝てるのは! 朝ご飯はもう無いんでオヤツでも食べていて下さい!」

 そう言うと揚げたばかりのえびせんを渡された。
 こんな物まで持ってきていたのかと少し呆れたが、彼女達は社員旅行気分で来ていた事を思い出してまぁいいかと思いながらパリパリとえびせんを食べた。
 これが中々に美味くてあっという間に山盛りのえびせんを食べたが、流石に足りなかったので、空になった器を持って沙月を探した。 昼飯の準備で飯盒に火を付けている最中の沙月を見付けると、声を掛けた。

 「さっきのえびせんまだある?」

 そう言うと「もう無いよ」と言う。
 最初から量は少なかったようで、美琴と沙月に田中が数枚食べて、残りを俺が全て食べたようだった。
 大塚氏はアレルギーでもあるのかで食べはしなかったが、驚いた顔をしながら揚げる前のえびせんを1枚だけ貰っていったそうな。
 

 「朝起こしに行った時に隆さんの寝袋の横に置いてあった袋に入ってたので謝らなくてもいーんですよ」と笑い
 「勝手に持ち出して御免なさーい」と軽い調子で謝られたが、(そんな物持ってきてたかなぁ?)っと考えていたので人の物を勝手に持ち出したって所は聞き流していた。

 「おーい隆! 大塚さんが水上飛行機手配してくれたからそれ乗っていくぞ!」

 そんな物に乗るのは初めてだった為に考えるのは止めて、沙月達に挨拶すると田中と二人で瞳をキラキラさせながら走って向かった。

 昨日の疲れとか腰の痛みとか全く気にならないくらい軽やかに走れた。

 港に行くとTVでしか見た事もない様な飛行機が水面に浮いていた。
 田中と二人できゃいきゃいとはしゃぎながら港で待っていた大塚氏と一緒にゴムボートに乗って搭乗した。

 シートベルトを着けてワクワクしながら窓から田中と二人で離水する所を眺め、安定すると大塚氏に感謝の言葉を告げた。

 このまま九州か羽田にでも行くのかと思っていたが、沖縄のが近いから那覇空港まで飛んでそっから乗り継ぐらしい。

 50歳に近いおっさん二人が子供にでも戻った様に大騒ぎしている俺達とは逆に、大塚氏は1枚の揚げる前のえびせんを難しい顔をしながら眺めていた。

 「揚げる前のえびせんを見るのは初めてなんですか?」

 漸く落ち着いた俺は、えびせんを太陽にかざしたりしてる大塚氏に話しかけてみた。

 「いえね……昔爺さんに貰った奴と似てるので……えびせんてもっとピンク色じゃありませんでしたっけ?」

 そう言われたので大塚氏の手元にあるえびせんを俺も眺めて見ると、確かに青みがかっていて、陽の光に照らされた宝石の様に綺麗に見えた。

 「言われてみれば確かにそうですね……もしかしたら原料が海老じゃ無いかもですね」

 と、答えていると田中が大声で「見ろ見ろ沖縄だ!」と、騒ぎ出したので俺も田中に加わり窓から少し遠くに見える島を眺める方に集中し始めた。

 楽しい水上飛行機の度は直ぐに終わりを迎え、陸に上がるとタクシーを拾って那覇空港へと向かった。
 席順は田中だけ離れた所に座り、俺と大塚氏が並んで座った。
 このまま羽田へと向かうらしい。
 離陸して直ぐに大塚氏は再び青みがかったえびせんをポケットから出すと、指で遊びながら昔話を話してくれた。

 「……戦前の話なんですけどね? 実はこれと同じ色合いの物を子供の頃に爺さんから貰ったことがあるんですよ」っと、話し始めた。
 大塚氏の話によれば、爺さんがまだお父さんと呼ばれていた時にお土産と言って渡してきたのがえびせんだったらしい。
 当時は食べる物も少なかったが、食べれば蕁麻疹が出るからと爺さんから沢山貰ったんだそうだ。
 大塚氏は腹も減っていた事で数枚だけ七輪で焼いて食ったが、腹を壊して自分にも爺さんと同じアレルギーがあるのだと知り、捨てようと思ったが、何か悪い気がして残りを屋根裏に居た鼠にあげたのだそうな。

 「……それが令和の時代になって同じ物があってね、まだあるんだなぁって懐かしく思って……塩崎さんはこれを何方でお買い求めに?」
 「いやぁ、最近物忘れが酷いのか記憶に無いんですよね……」
 と、答えた。
 そこで俺は不思議に思った事を大塚氏に聞いてみた。

 「大塚さんって今いくつ何ですか?」

 だが、その俺の質問はアナウンスの音にかき消された。
 そして再び質問しようとしたら、遮られて
 「戦前じゃ無かったかなぁ? ははは、いやぁ私も物忘れが増えたみたいです」と言ってはぐらかされてしまった。

 羽田に着くと田中が「手続きやなんかはやっておくから隆は引っ越しの準備とか諸々の手続きして来いよ」と言って大塚氏と一緒に別行動になった。

 「それじゃ用事済ませたら連絡するし、しろよー」と一言言って別れた。
 
 
 
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