纏まった金が出来たので無人島を買いました。

あるちゃいる

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3話

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 少年時代に戻った様なおっさん達の背中を見送った私達は、作業員さん達の昼御飯を作った跡、3日分の食料と水を持って探検する準備を整えると、残りの備蓄を新しく建てた小屋の中へと運ぶ。

 作業員さん達は波が落ち着いたら一度全員帰宅する様なので、作業もそこそこに帰り支度をし始めていた。

 私達だけを残して帰るのが不安に思ったのか、船長さんがうちに泊まったらどうかと勧めてくれたがやんわりと断る。

 「私達の趣味はサバイバルなんです!」

 そう言うと納得したのか怪我には気をつけてと言って、すんなり送り出してくれた。

 いくら成人しているとはいえ、女性二人を引き留めもせずに送り出すのは可笑しいと普通なら思うかもしれない。

 だけども私達の装備を見て納得してくれた様だ。

 私達の格好は、重火器こそ持ってないが、フル装備の自衛隊員の様に見えたからだろう。



 私と美琴の共通の趣味は【サバイバル】だ。
 夢は【冒険家】で、いつか荒波を突き進んで未知なる世界を堪能しようと誓った仲である。

 美琴とは小学生時代からの付き合いだった。
 母を早くに亡くした父さんは、私が寂しくないように家で仕事をする為に隆さんの居たドライバーの会社を辞めて、不動産屋に勤め始めた。
 
 私が小学生になり手が離れると、その会社も辞めて独立した。だけども当時は店舗なんて持っておらず安いアパートで暮らしていた。
 訳あり物件を買って掃除や壁紙など全て自分で整えて、それを売るという事をしていたらしく、朝から晩まで働いていて殆ど家にいなかった。

 私は学校が終わっても校庭で砂遊びをしてなるべく家には帰らずに時間を潰す子に成っていた。まぁ、鍵っ子と言うやつだ。

 美琴とはそんな時代に知り合った。
 美琴は私が住んでいたアパートの近所にある孤児院の子だった。
 同じ年の子は居らず皆年上で話が合わず、孤立していたらしい。
 門限もギリギリで帰っていたらしく、そんな私達が出会い仲良くなるのに然程さほど時間はかからなかった。

 高学年になると困るのが人付き合いだったが、私達にはお金がなかった。
 美琴は孤児院でお小遣いは貰っていなかったらしく持っていなかったし、私もそんなに持っていなかった。朝晩と料理は作っていたが、食材は父が毎週纏めて買ってきてくれていたからだ。

 5年生の時にクラスの皆で、夏祭りに行こうという話になった。
 私は余分なお金がないから断ろうとしていたら、美琴が金になる話を持ってきた。
 援交でもするのかと一瞬怯んだが、話を聴くとそうでは無かった。

 「院の近くの山にカブトムシとかクワガタが居るんだよ、それを捕まえてペットショップに持っていくと買ってくれるんだって!」

 院にいる中学生からその話を聞き付け、ついでに捕り方を教わったというので、その次の日から私達は捕りにいった。

 それが私達二人の最初の冒険になった。

 思いの外大量に捕れて結構な金額に味を占めた私達がのめり込んで行くのに時間は必要としなかった。
 昆虫採集からどんどん発展して、中学1年になる頃には、自転車で近くの海へ行って伊勢海老やハマグリ等を居酒屋に売ったりしていたが、漁師に見付かりこっ酷く叱られた。
 違法だと言うことは知らなかった。
 お仕置きだといって、私達の身体をこねくり回してる時に警察に見付かり、その男は捕まり私達も補導された。
 父さんが呼び出され、美琴は院のシスターが呼び出されて結構大事になってしまった。
 父は家に居なかったことを反省して、現在の住まいをかなり無理してローンで買った。
 生活は苦しくなったが、それも直ぐに解消された。

 中二の夏休みが終わる頃には私は合気道と柔道を習い、美琴は院の子から空手を教わっていた。
 始めた当初こそ防衛手段の為だけだったが、小遣い稼ぎの採取作業が禁止された私達は、暇を潰す為に練習に励んだ結果メキメキと強くなって、将来を有望視されるまでに成っていた。
 高校の推薦まで貰っていたが二人ともそれを蹴り、整備士免許が欲しくて工業高校へと進んだ。

 中学を卒業すると、美琴は院を出て独り暮らしを始めた。アパートは私の父から格安で借り、私も度々そこで寝泊まりした。

 家出というわけではなく、隆さんがよく酔っ払って泊まりに来る事が増えたからだ。中一の時の事が忘れられなかった私は、親しかった隆さんをも避ける様になっていたからだ。軽い男性恐怖症になっていた様で、普通に会話は出来るけど泊まりで近くに寝られるのは怖かった。
 ちなみに今はすっかり改善して、雑魚寝で横に寝られても隆さんなら大丈夫にはなった。有段者になって強くなったからってのもあるかもしれないけど……。

 高校へと進学してすぐに私達は父さんの不動産屋でアルバイトをしながらバイクの免許を取った。
 土日になると美琴と共にバイクに乗ってキャンプに行くのが習慣になった。
 キャンプ場ではなく、樹海とか人里離れた山とかだ。
 その頃には既に夢は冒険者になっていた。
 解体の仕方を習いに夏休みにはジビエの卸先に行って学んだりもしていた。
 そのおかげで毎週の様に海や川や山へ出掛けていたので肌は焼けて二人揃ってガングロになっていた。 美琴は私よりも海へ潜る事が多かったからなのか髪の色まで変わってしまっていたので、ヤンキー(笑)と間違われる様になった。

 高校も卒業間際になると皆が普通免許を取りに自動車学校へと向かう中、私達は船舶免許を取りに行ったり、狩猟免許を取りに行った。
 その他ドローンを操縦する為の免許やダイバー何かも取った。
 進学か就職か決める段階になった時、私達は父親の仕事先へ就職すると言って父の言質も取り提出していたので、他の生徒より時間が出来ていたお陰もあるかもしれない。授業が無くなっていった頃になると、それを利用してサバイバル体験会にも度々出席した。
 高校を卒業する頃には猪までなら解体も出来る様にもなった。
 これで下準備は完了したと思った私達は、働きながら運転免許を取ったり資金を貯めて共同で小さな船を買ったりして、小さな冒険(海釣り)へと繰り出した。

 そんな生活が2年を過ぎて成人式を終わらせた春先に隆さんが会社を辞めたと言う話を電話口で聞いた父さんの声が聞こえた。

 「はぁっ⁉ 会社を辞めた⁉ なんで⁉ え? 10億当てた⁉」

 そんな声がした跡小声になってしまいその後の事は分からなくなったが、こうして無人島まで来た事でこの島を買うのだろう事が分かった。
 美琴とも話し合い一枚噛みたくなった私達は素早く行動にうつした。
 仕事(遊び)に行く体を装い、趣味のサバイバル装備を整えて付いて行った。

 船の中で「隆さんて未婚だよね……」とおもむろに話しかけて来た美琴に頷き「少し悪化した持病(糖尿病)もある」と言うと悪い顔になって美琴は言う。

 「これから色々する為にも金がいるじゃん? ……チャンスがあったら隆さんを夫にするってのはどうよ?」

 それには少し抵抗があったが、既にあっちの方は糖尿病のお陰もあってか使えないと本人が言っていたのを思い出し

 「まぁ、チャンスがあったら……考えよう?」と言うことにして、取り敢えず嫌われない程度に意識させる事で話が付いた。

 船が島に着くと私達の心はもう冒険という言葉で埋め尽くされ、隆さんの事など頭の片隅にも無くなった。

 船酔いでグロッキーになる男達を置いて颯爽と仕事に行くふりをして釣りに行った。

 島の全体図の写真を1枚だけ撮ると、二人して投げ釣りをし始めたら入れ食いで大漁だった。

 他の場所でも釣りに行きたい衝動に駆られながら我慢をするのは結構苦労した。
 潮でベタベタしてたので手や身体を流したいと言ったら大塚さんがボロ小屋の裏から水が流れて来ると言っていたので見に行くと止まっていた。

 小屋の裏手に廻ると竹藪になっていて、その間を縫うように水道管替わりの竹筒が列なっているのが見えた。
 処々で壊れている様だったが、その先からも水は出ていなかった。

 私達は薄暗い竹藪の先を見に行きたかったが、その日は止めてペットボトルの水をタオルに染み込ませ、それで手や顔を拭き明日の明け方から向かう事にした。



 父さん達が作業をしているのを確認しながら私達は竹藪の奥の水が出ていた場所まで来ていた。 其処は大きな岩の壁で、まるで山全体が巨大な岩の塊に見えた。
 そして、水穴もあった。
 奥の方は見えなかったが斜め上に丸く穴が開いていた。

 確かに水が出ていた様な痕跡はあったが、今は出ておらず岩肌も随分昔から乾いているようだった。

 「ねぇ……沙月可笑しくない?」

 美琴は怪訝そうに水穴を観察しながら言う。

 「色んな場所の湧き水とか見てきたけど、こんなに丸く開いていた場所なんて無かった。 人が掘った様な風でも無いし……」

 言われてみて初めて気が付いた。
 確かにおかしかった。
 岩に穴を開けるには機械を使ったはずだから周りに傷が残っていてもおかしく無いのだ。それに、昔の石ノミだけを使ったとしても傷は残る筈だ。
 だけどこの穴にはそれが無かったのだ。
 ゴツゴツとした岩肌は滑らかな曲線を描きながら、まるで水道管の様に形成されていた。

 「この島……何か有りそうだね!」

 ウキウキした声で美琴が語る。
 私もワクワクが止まらなかった。
 取り敢えず水が出たら出たでこのままにはして置けないので、一緒に付いてきた植木屋さんにお願いして昼御飯を食べた跡、竹で小屋までの水道管を作ってもらった。

 

 
 
 
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