纏まった金が出来たので無人島を買いました。

あるちゃいる

文字の大きさ
8 / 12

8話

しおりを挟む


 「偽装彼女になってやろう!」

 美琴と合流し居酒屋で晩飯を食いに行った時にそう言われた。

 「偽装……彼女?」

 聞きなれない言葉で、首を傾げていると

 「偽装結婚てあるじゃないですか? あれの彼女版ですよ!」

 言ってる意味は分かる。
 言ってる意味は分かるが、それでストーカーから逃げられるのか?

 「それで回避できるのか? 『たかが彼女如きで私の気持ちの妨げになんかならない!』 とか言って地の果まで追われないか?」

 そう聞くと少し考えながら沈黙し、だったら私と結婚します?とか、言われたので即答で断った。

 「少しは悩んでもいーんですよ?」
 と、不服なのかプクリと頬を膨らませる美琴。
 
 「いや、だってガチで結婚なんてしたら……流石に悪いじゃん?こんな事でさぁ」

 ストーカーに逃げる為だけに結婚しました!って、誰に言えるんだよそれ。親戚にも親にも言えないだろうが?

 「私、親も居ないし結構お買い得ですよ?」
 「そう言う話じゃねーよ。 どうせ結婚するなら恋愛結婚したいんだよ!」

 そう言うと少し笑って
 「意外とロマンチックなんですね! 五十歳になるのに」と、言われた。

 「歳は関係なくないか? それよりもっと良さ気な案はないのか?」

 他の案を考えてくれ!と、目に力を込めて訴えると

 「じゃあ、偽装婚約しましょう! もうこれしかないっす!」

 そう言うと一気に酎ハイを煽る。
 その後もう一杯注文して焼き鳥盛り合わせも頼む。

 「意外と食うんだな? 昼に会社行った時は小さい弁当箱だったのに」

 既に刺身盛り合わせにレバテキやら唐揚げやら枝豆大盛りにフライドポテトなんかも空になっている。
 その殆どを美琴が食っている。

 「そりゃ、奢りなんだからたくさん食べないと!失礼じゃないですか!」

 ダンッ!と、机を叩きながら力説する。

 (そうなのか? 最近の子はそうなのか?
 まぁ、残されるよりは食ってくれた方が気持ちは良いが……)

 グビグビと運ばれて来たチュー杯を半分ほど呑み干すと、「偽装婚約なら書類とかも要らないし、相手にも『実は婚約者がいます!』とか言っとけば納得はしないだろうけど、取り敢えず逃げる口実にはなるじゃないですか?」

 「いや俺は追い払いたいんだけど?」

 「無理です! この手の女はそれこそ地の果まで追い込み掛けるタイプですよ!
そもそも何でストーカーされる様になったのか考えてください! ……あ、お兄さん チュー杯おかわり!」

 俺が何でストーカーされてるのか考えてる内に四杯目のチュー杯を空にした。

 「分かりませんか? なら、教えてしんぜよう! それは、金ですよ金! うん億円なんて聞いたら誰だって追っかけますって!」
 そういうと確信めいた顔でいう。

 「なんで分かんだよ、違うかも知れないだろ?」
 「いいえ! 違いません! だって私がその女なら地の果まで追いますもん! 絶対に逃しません!」

 ドヤ顔で美琴はそう断言した。

 「女なんてそんなもんですよ」
 というので
 「そんなこと無い筈だ!」
 と、いうが嘲笑われて

 「女に夢見るのはもう辞めた方が身の為ですよ?」

 そう言われて俺は机に突っ伏した。
 (良いじゃん、夢見たって。 夢だけでも見させてよ!私は独り身なのよ⁉)と、心の中で叫ぶ。が、虚しいのでやめる。

 「はぁ……。分かったよ。取り敢えず偽装婚約でいーよ」
 俺がそう言うと美琴の目がキランっと光った気がした。

 「それじゃあ明日はアクセサリー屋さんに行きましょ!」
 と、言ってスマホで店を探し始めた。

 「何で?」
 と、聞くと指輪を買うんです!っと返ってきた。

 「おいおい偽装婚約なのに指輪も要るのかよ⁉」

 慌てて俺がそう言うと

 「当然じゃないですか! しかもちゃんとしたやつですよ? 婚約指輪って奴です!」

 「マジか……」

 「マジです! あ、でも台座だけでいーっすよ?」

 「台座だけ? あ、偽装だから?」
 「いえ、台座は別の奴があるんで、それにしてもらいます!」

 そう言うと、頼んでいた串焼き盛り合わせがやってきてので、それも全部食べ(られ)。ようやく店を出た。

 「取り敢えず今日はホテル泊まりましょう」
 「二部屋も空いてるか?」
 「一部屋でも別に構いませんよ?」

 そう言うと腕を掴まれた。

 美琴はスレンダーなので、腕に胸が当たらない。それか、当たらない様にしているのか?
 ちょっと分からないが、断って二部屋空いてるホテルを探す。




 辛うじて見付かったホテルの部屋の前

 「本当に良いんですか? 二部屋で」
 と、しつこく言われたが、(精神的)に疲れているので早く寝たかった。

 「婚約前だし」
 そう言うと、口に手を当てて
 「まさか⁉ 童貞⁉」
 とか、失礼な事を言い始めたので頭にチョップして無言で自分の部屋に入ってドアを閉めた。

 「はぁ……沙月にしとけばよかったかな……」

 俺はメールを送った相手を間違えたかと思い始めたが、沙月の場合怒られそうだったのでやめたのを思い出し、そのまま服を着たままシャワーも浴びずにベッドにダイブする様に倒れると、そのまま寝てしまった。





 その次の朝、美琴とアクセサリー屋で指輪を二つ購入した。
 もちろん台座だけ。

 で、宝石屋でも行くのかと思っていたら何故か漁港にTAXiで乗り付けて、ズンズンと迷う事なく歩く美琴の後ろを歩いて付いていく。

 「どこまで行くんだよ?」
 「もうすぐですよ!あ、見えてきましたよ?アレです!」

 そう言って指差した方向には少し古いが立派な漁船が港に浮いていた。

 「……ああ、島に帰るのか?」
 「島には帰りますけど、違いますよ?」

 さっぱり美琴の行動が分からなかった俺は、漁船の近くに居たおっちゃんが美琴に気が付いて手を振っているのを見る。

 「知り合いか?」
 「指輪屋さんです」

 そう言って握手した後何やら話し込んでいる。

 俺にはやっぱり美琴が何を考えているのかサッパリ分からず、傍観していると
 「さっき買った指輪出してください」と、言われるがままに渡す。

 すると美琴と指輪屋さんとかいう男を連れて、目の前の漁船へと入っていく姿を見送る。

 少しすると美琴が呼ぶので、勝手に乗っていいのか恐る恐る階段を登ると、他にも人がいて、紹介された。

 「隆さん、この人が漁船を売ってくれた金城さんです!なんと!この20トン級を千五百万で譲ってくれました! 最初千八百万だったのを!婚約指輪にしたいって伝えたら面白そうだから負けてやるよ!っておっしゃってくれた優しい方です!」

 そう生き生きとした顔で言ってきた。

 さっきの指輪屋さんとかいうおっちゃんは、こっちの事などお構い無しに指輪の台座を下にして、舵の横に貼り付けている。

 そして俺は……。

 「……なんですって?」

 と、頭を抑えながら聞き返すのだった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...