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11話
しおりを挟むプレちゃん(FX24-C美琴命名)を買ったその日から俺達が島へと出港したのは20日後だった。
買った漁船の整備検査と許可書やら船の停泊場所の確保やら増設したとかいう燃料とエンジン強化とか何とか改造を施すのに掛かった時間がアホなくらい長かった。
それから漁業権の修得も時間がかかった。
美琴が全て取りに行ったのだが、金は全て俺が持った。
「おまっ!まだ使うのかーーっ⁉」
と、怒ると先行投資はするものです!とか言うのだ。
巡り巡って漁船も島の資金になるのだから良いとしても、素人が漁業を営もうとするとここ迄で金が掛かるのかと嘆きたくなる。
美琴は財布を預かる身ではないからと、嬉々として取り組んでいるが……。
漁船買ったからと直ぐに魚を獲りに行けるはずもなく、漁業権は元より漁業の許可を取るのにはそれなりに大変だった。
この船は二十tと言っていたから底網漁業やらは出来るようだが、何を釣るかによって変わるらしい。兎に角覚える事が山積みで、大変そうだったという印象しかない。
美琴はまだいい。
やる事が沢山あり過ぎなのに苦しくも無いのか嬉しそうに決まり事の沢山書かれた書物を読んでたりするからな。それこそ止めなければ飯すら食わずに読み耽ってやがるし……。
そして一番苦痛を強いられてるのは、俺だ。
港に延々と足留めを食らってはボーッと揺れる波を見てるだけの日々。
流石に飽きる。
釣りをしてろと渡されたが、魚が釣れる気配すら無い。
餌を付けても付けなくても多分成果は変わらないだろう。
釣りっていうのは釣れるから楽しいんのであって、釣れなきゃ詰まらないもんなんだ。
太公望にでも成れれば違うんだろうけどな。
生憎俺は欲に塗れた人間様だ。
いくらおっさんとは言え枯れた訳でも無いので、貯まる物は貯まるのである。
そして、共に居るのが食指の動かないうら若きスレンダー美女……の皮を着てる鬼だ。
守銭奴とも言う。
どちらかと言うと俺はおっぱい派だ。
だから幾ら美人でもスレンダーでは興奮はしない。薄着な姿を見たらドキドキはするけどな。
興奮とは違うものだと思っている。
寧ろ沙月の様な胸でも持ってたら、美琴を押し倒していただろう。
その後盛大に後悔するだろうがな。
つまり一日中そんな事を考えてしまうくらい飢えてるって事だよ。
「なので、俺はそろそろ呑みに行きたいんだが……」
「駄目に決まっているでしょ? 貴方の財布は私の財布でもあるのよ?」
「いやいや何言ってんだお前は⁉ 俺の財布は生まれた時から死ぬ時まで俺だけの財布よ⁉」
湯水の如く人の金を使うと思ってたらそんな事思ってやがったのかっ⁉心底美琴が怖くなった俺は、電話を取り出して田中に連絡を取る。
何でもっと早く電話しなかったのかと思ったが、驚き過ぎて(主に美琴のせい)すっかり忘れていたのだから仕方ない。
「おう! 田中⁉ 俺俺! ちょっと大塚氏に言って飛行機こっちに寄越してくれないか聞いてみてくれ!」
そうだよ! 俺には強い味方の田中が居るのだよ! だから水上飛行機に乗ってとっととこの悪魔の前から消えれば済むんだよ! 何で気が付かなかったんだ! と自分を責める。
「あ~隆か? お前らの事は美琴ちゃんから聴いてるよ。 大変だったなぁ……。まぁ身から出た錆って事でよ早く忘れろよ? それから飛行機なら無いぞ? 大塚氏がついさっき、仕事があるからって乗ってったからな」
なんてこった……。
俺はこのまま悪魔の餌食にされるのだろうか?と、自分の身を案じて悲壮感に包まれる。
だが、流石は田中!
俺の最後の砦!
援軍を寄こしてくれるそうだ!
「沙月が暇だからそっちに行くって言うんで行かせるから、悪いが面倒を頼むわ まだ時間かかるんだろう?」
「た、助かるよ! 田中!」
「助かる?……あ~、まぁ、話したい事もあるけど、詳しくは沙月に訊いてくれ」
そう言って電話を終える。
良かった!本当に良かった!美琴と俺との間に緩和剤が入ると思っただけで希望が見えて来た俺は、沙月がどうやって沖縄まで来るのかを考えてなかった。
そして、その事で俺達は奇妙な人生を歩む事になる事も、この時の俺は微塵も考えていなかった。
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