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遊園地 2
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「遊園地といえばジェットコースターだよね」
ジェットコースターか。以前遊園地に来たときは身長制限で乗れなかったっけ。
正直あのことが大きすぎてそれ以外ほとんど覚えていなかったりする。
「どこにあるか分かってるの?」
「真っ直ぐ行ったら見えてくるはずだよ」
その会話の少し後、本当に右手前方の方にジェットコースターが見えてきた。
「あ、あれあれ」
凛花は興奮気味だ。この反応はジェットコースは行ける口なのだろう。
休日ということもあり結構な列が出来ている。
さすが、この辺りで最大級といわれる遊園地である。
待ち時間は相当なものになるだろうという覚悟をしないと並べない。
それを全く気にせずすぐに最後尾に並ぶあたりジェットコースターがとにかく好きなのだろう。
待ち時間を無駄にせぬべくポケットから小説を取り出す。
今日のズボンは外出専用で、外出が少ない僚太がなぜそれ用のズボンを持っているのか。
それは、このズボンだけたまたまポケットが大きく小説を入れられるためである。
通常、入らなかったりギリギリで出し入れしにくかったりするのだがこのズボンは余裕で入る。
普段から服は黒っぽい服をお母さんにおまかせで買ってきて貰っていたが、このズボンもそうである。
つまり、たまたまだ。
「ほんとにどこでも本読むんだね」
「うん」
「前のデートの時は読んでなかった気がするけど?」
「だって、デートだったし」
「今日のは違うの?」
確かに男女二人きりで県外の遊園地はデート以外ないかもしれない。
しかし、それは一般的な話である。
「逆にデートをするために誘ったのか?」
「ううん、リフレッシュするため。デートになるかもって期待はしてたけど」
やけに素直に本心を出したな。声からリフレッシュするためというのも嘘ではないということがわかるため何も責めることは出来ない。
しかし、デートになる可能性を与えてしまったのは僕があの事を話していないからである。
そう考えた結果開いていた本を閉じた。
「今日だけな」
「え?」
凛花としては期待はほんの少しの1%にも満たないものだった。
それがあっさりそうなったのだ。
一瞬の硬直と共に嬉しさが沸き上がってくる。
その結果声は出さなかったものの顔にすごく出てしまう結果になる。
「さすがににやけすぎじゃない?」
僚太も若干引き気味である。
それに気づいた凛花は必死ににやけを抑える。
なんとかにやけ顔から脱出出来たと思い気を抜いた瞬間、すぐさまにやけ顔に戻ってしまった。
「プッ」
その様子が面白く僚太は珍しく声を出して笑った。
それは凛花からしてみればあの時以来始めてのものだった。
だからこそなのかもしれない。
先程まで頑張っても戻らなかったにやけ顔が一瞬にして消えた。
それを僚太が期待の眼差しで見つめるがにやけ顔には戻らない。
途中で何をしてるんだと考え直した僚太は視線を前に戻す。
そんな僚太に対して凛花は手をとり恋人繋ぎをする。
僚太もこれにはさすがにドキドキしてしまう。
自分の指よりも柔らかい女性の指が指の間に挟まっているなんとも言えない感触は今まで味わったことのない感覚だった。
このドキドキのままジェットコースターの待ち時間を過ごせるわけがないと指を開いてみるが凛花がちゃんと握っているためそのままにするしか方法がなかった。
デートということにしてしまった手前これを拒否出来なかったのである。
たとえ口約束であっても彼の中で約束は必ず守らないといけないものであるから。
それは5歳の誕生日に共に遊園地に来ていたおじいちゃんとの最後の約束だった。
◆
5歳の誕生日、僚太は朝から両親と祖父とで遊園地に来ていた。
祖母は生まれたときからいなかったため僚太は知らない。
去年までは両親だけであったが、何故突然祖父まで来たのか。
それは去年の誕生日。誕生日プレゼントにオモチャを貰ったときのこと。
「おじいちゃん、つぎはプレゼントいらないからいっしょにあそびにいこ」
「おお、そうか。来年はそうしような」
そのときのお祖父ちゃんの体調はすごく良かった。
しかし、それから半年がたった頃徐々に体調が悪くなっていった。
僚太は覚えていないがその頃店を代替わりした位には本当に体調が悪くなっている。
そんな状況で迎えた僚太の5歳の誕生日。
僚太の両親は共におじいちゃんは来れないかもしれないと僚太に話していたのだが、ここ最近の体調の悪さは嘘のように元気なおじいちゃんと遊園地に行くことが出来た。
高齢者のため危険な乗り物には乗れなかったがそういうアトラクションは僚太も身長制限で乗れないことが多く大半のアトラクションを一緒に楽しむことが出来た。
その帰り道車を運転するのはお父さん、助手席にお母さん。
後部座席に僚太とおじいちゃんという並びで帰っていた。
この並びは僚太がおじいちゃんっ子であるためである。
そもそも何故彼がおじいちゃんっ子になったのか。それは一番誠実な人で声に出したもの全てに嘘がなかったからだ。
彼の能力は発覚したのこそ遅かったが、生まれつきのものだった。
小さい頃は本当に感覚でいい人に近づいたのだろう。
当然両親が悪い人というわけではないが、おじいちゃんの誠実さには負けていたのだ。
「僚太、約束したら必ず守るんじゃぞ」
「うん!」
おじいちゃんの突然の発言に元気に答える僚太。
これはおじいちゃんが何かある度に言ういわば口癖のようなものだった。
その翌日おじいちゃんは家で静かに亡くなっていた。
発見したのが僚太でなかったのが不幸中の幸いだっただろう。
しかし、辛いものは辛いもので僚太の頭の中では自分が誘ったから死んでしまったのではないかという考えばかりだった。
おじいちゃんは口だけではなくしっかり約束を守る人だった。
だからこそ遊園地に一緒に来てくれたのだ。
そこから僚太が立ち直るのには数ヶ月かかった。
やはり時間の流れの力はすごく徐々に気持ちの整理が出来ていった。
といっても中々遊園地に行く気にはなれずそれ以降の誕生日は遊園地以外の場所になり、それ以外の機会にも行かなかった。小学校、中学校の修学旅行中にも遊園地に立ちよったが事情を説明し中には入らなかったほどだ。
気持ちの整理が出来た頃には帰り道のあの約束は絶対に守ろうという決意が彼の中で確実に生まれたのだった。
ジェットコースターか。以前遊園地に来たときは身長制限で乗れなかったっけ。
正直あのことが大きすぎてそれ以外ほとんど覚えていなかったりする。
「どこにあるか分かってるの?」
「真っ直ぐ行ったら見えてくるはずだよ」
その会話の少し後、本当に右手前方の方にジェットコースターが見えてきた。
「あ、あれあれ」
凛花は興奮気味だ。この反応はジェットコースは行ける口なのだろう。
休日ということもあり結構な列が出来ている。
さすが、この辺りで最大級といわれる遊園地である。
待ち時間は相当なものになるだろうという覚悟をしないと並べない。
それを全く気にせずすぐに最後尾に並ぶあたりジェットコースターがとにかく好きなのだろう。
待ち時間を無駄にせぬべくポケットから小説を取り出す。
今日のズボンは外出専用で、外出が少ない僚太がなぜそれ用のズボンを持っているのか。
それは、このズボンだけたまたまポケットが大きく小説を入れられるためである。
通常、入らなかったりギリギリで出し入れしにくかったりするのだがこのズボンは余裕で入る。
普段から服は黒っぽい服をお母さんにおまかせで買ってきて貰っていたが、このズボンもそうである。
つまり、たまたまだ。
「ほんとにどこでも本読むんだね」
「うん」
「前のデートの時は読んでなかった気がするけど?」
「だって、デートだったし」
「今日のは違うの?」
確かに男女二人きりで県外の遊園地はデート以外ないかもしれない。
しかし、それは一般的な話である。
「逆にデートをするために誘ったのか?」
「ううん、リフレッシュするため。デートになるかもって期待はしてたけど」
やけに素直に本心を出したな。声からリフレッシュするためというのも嘘ではないということがわかるため何も責めることは出来ない。
しかし、デートになる可能性を与えてしまったのは僕があの事を話していないからである。
そう考えた結果開いていた本を閉じた。
「今日だけな」
「え?」
凛花としては期待はほんの少しの1%にも満たないものだった。
それがあっさりそうなったのだ。
一瞬の硬直と共に嬉しさが沸き上がってくる。
その結果声は出さなかったものの顔にすごく出てしまう結果になる。
「さすがににやけすぎじゃない?」
僚太も若干引き気味である。
それに気づいた凛花は必死ににやけを抑える。
なんとかにやけ顔から脱出出来たと思い気を抜いた瞬間、すぐさまにやけ顔に戻ってしまった。
「プッ」
その様子が面白く僚太は珍しく声を出して笑った。
それは凛花からしてみればあの時以来始めてのものだった。
だからこそなのかもしれない。
先程まで頑張っても戻らなかったにやけ顔が一瞬にして消えた。
それを僚太が期待の眼差しで見つめるがにやけ顔には戻らない。
途中で何をしてるんだと考え直した僚太は視線を前に戻す。
そんな僚太に対して凛花は手をとり恋人繋ぎをする。
僚太もこれにはさすがにドキドキしてしまう。
自分の指よりも柔らかい女性の指が指の間に挟まっているなんとも言えない感触は今まで味わったことのない感覚だった。
このドキドキのままジェットコースターの待ち時間を過ごせるわけがないと指を開いてみるが凛花がちゃんと握っているためそのままにするしか方法がなかった。
デートということにしてしまった手前これを拒否出来なかったのである。
たとえ口約束であっても彼の中で約束は必ず守らないといけないものであるから。
それは5歳の誕生日に共に遊園地に来ていたおじいちゃんとの最後の約束だった。
◆
5歳の誕生日、僚太は朝から両親と祖父とで遊園地に来ていた。
祖母は生まれたときからいなかったため僚太は知らない。
去年までは両親だけであったが、何故突然祖父まで来たのか。
それは去年の誕生日。誕生日プレゼントにオモチャを貰ったときのこと。
「おじいちゃん、つぎはプレゼントいらないからいっしょにあそびにいこ」
「おお、そうか。来年はそうしような」
そのときのお祖父ちゃんの体調はすごく良かった。
しかし、それから半年がたった頃徐々に体調が悪くなっていった。
僚太は覚えていないがその頃店を代替わりした位には本当に体調が悪くなっている。
そんな状況で迎えた僚太の5歳の誕生日。
僚太の両親は共におじいちゃんは来れないかもしれないと僚太に話していたのだが、ここ最近の体調の悪さは嘘のように元気なおじいちゃんと遊園地に行くことが出来た。
高齢者のため危険な乗り物には乗れなかったがそういうアトラクションは僚太も身長制限で乗れないことが多く大半のアトラクションを一緒に楽しむことが出来た。
その帰り道車を運転するのはお父さん、助手席にお母さん。
後部座席に僚太とおじいちゃんという並びで帰っていた。
この並びは僚太がおじいちゃんっ子であるためである。
そもそも何故彼がおじいちゃんっ子になったのか。それは一番誠実な人で声に出したもの全てに嘘がなかったからだ。
彼の能力は発覚したのこそ遅かったが、生まれつきのものだった。
小さい頃は本当に感覚でいい人に近づいたのだろう。
当然両親が悪い人というわけではないが、おじいちゃんの誠実さには負けていたのだ。
「僚太、約束したら必ず守るんじゃぞ」
「うん!」
おじいちゃんの突然の発言に元気に答える僚太。
これはおじいちゃんが何かある度に言ういわば口癖のようなものだった。
その翌日おじいちゃんは家で静かに亡くなっていた。
発見したのが僚太でなかったのが不幸中の幸いだっただろう。
しかし、辛いものは辛いもので僚太の頭の中では自分が誘ったから死んでしまったのではないかという考えばかりだった。
おじいちゃんは口だけではなくしっかり約束を守る人だった。
だからこそ遊園地に一緒に来てくれたのだ。
そこから僚太が立ち直るのには数ヶ月かかった。
やはり時間の流れの力はすごく徐々に気持ちの整理が出来ていった。
といっても中々遊園地に行く気にはなれずそれ以降の誕生日は遊園地以外の場所になり、それ以外の機会にも行かなかった。小学校、中学校の修学旅行中にも遊園地に立ちよったが事情を説明し中には入らなかったほどだ。
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