生まれ変わっても無能は無能 ~ハードモード~

大味貞世氏

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第3章 大狼討伐戦

第57話 共鳴

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虚しい。不意に言い様のない虚しさが心を抉った。
僕らは何を目指し、この戦いに身を投じているのだろう。

-スキル【虚無】発動が確認されました。-

-最上位スキル【有知有能】に【虚無】が併合。
 以降、昇格条件に加えられます。-

虚しさを感じたのはほんの一瞬。

「どうした?一人で黄昏れて」
「いやぁ、多分気の所為?」

「聞かれてもな」

砦の前に建てた壁の頂上で、戦いの行方を眺めていた。
戦い?とも呼べないか。

宛らシューティングゲー。
バカップル2人が夥しい弾幕を避け続けている。

溶けた地面にリンジーが新たな面を張り直す。
周辺一帯が高温地帯と化し、今水を入れたら本当にサウナが出来てしまう。

なので結界障壁内側の僕らは、特にやる事が無い状態。

魔術を飛ばそうにもこの距離では届かず、中途半端に吸収されても困る。監視業務に徹していた。

徐々にじわじわと、弾幕が薄く威力が弱まっている。ようにも見えた。

気がするだけかも。前線の2人の体力も心配だ。
補助のペペスの体力も。
想像以上の消耗らしく額から汗粒が溢れていた。

交代要員も見つからず。討伐手段も然り。

「アーチェ。限界前に退いて」
話が通じそうにない桐生君は放置。

「くっ、一太刀も、浴びせずに、退けと」
ちょっと喋るのはキツそう。

「答えなくていいから。ぺぺス氏が限界っぽい。一旦退いて出方を待とう」

「無念だ」
光弾を擦り抜け、桐生の後頭部を殴打。荒っぽい。

動きが鈍った旦那を担いで後ろへ走り出した。
普通逆じゃね?とは言えないな。

中央のリーダーは何してるかって?
当然後方の国軍の大将と対応策を軍議中。

別の幾つかの見張り台では、兵士たちが入れ替わり立ち替わり忙しく駆け回っていた。
情報伝達よりも、みんな見たくて仕方ない感じ。
仕事しろ。

ヒオシが溜息交じりに唸った。
「しっかしどうすっかね、アレ。リンジーは魔力大丈夫?」

「まだまだ余裕よ。スキルが上がってから損失量も更に減少したらしい」
ふむふむ。大丈夫みたい。

前線の2人が砦内に戻った。肩で息してるけど死にそうまでじゃない。

今、仲間内で一番消耗が激しいのは反射障壁を張り続けているユウコ。次いでペペス。次は山査子。
その他カルバン、リンジーは魔道具併用だから損失は少ない。

敵は定位置を動かない。動けない?

「城島君。オートさんはまだ?」

城島のウンザリした声。
「ダメだわこいつら。文句ばっかで動きゃしねぇ。全然終わりそうにないよ」
オートの付き添いで城島も軍議に参加中。こいつらは軍部連中だな。目の前で文句言ってるのか。度胸ある。

当たった瞬間消し炭だからね。誰も行きたくないわな。

後衛部隊の2人に声を掛けた。
「鴉州さん、岸川さん。近くにヒュージさん居ない?」

「あー、お、居た」
「こっちからも見えた。どうするのぉ?」

「特大の無属性あげるから、ユウコさんの代打引き受けてって頼んでみてくれない?」

「了解。こっちのが近そうだから言ってみる」
最後の返答は鴉州からだった。直ぐに返信。
「すっ飛んで行くわ!だってさ」

「あざーす。ユウコさん、もう少しだけ堪えて」

「う、うん。出来るだけ、早く」
「何から何まで済まんな。無能」だからタッチーで良いと。

「いいって。流石にアレは無視出来ないよ。フウさん、魔道具量産頼みたいんだけど」

「らじゃ。そっちに側行くわ。動かないで」
すんごいタフ。頼れるぅ。疲れてるだろうに。

石を渡すと即時作成。もう手慣れた物。
出来上がると下まで来たヒュージに渡しに行った。

ヒュージの後ろにも数名。
魔道具の補助があっても、ユウコと同等は難しいと判断したのだろう。

別の塔に立つユウコの後ろで、発動の準備に取り掛かっていた。6人で六芒星の隊列を組む。


他力本願もいいとこ。次の手は。
「鷲尾さん。ちょっと相談あるんだけど」
「歌えって?癒やしの詩なんて考えてないよ」
まだなんも言ってませんて。

「じゃなくてさ。~~~」
癒やしとは逆方向のお願いをしてみた。

「…試してみないと解らないわね。カルちゃん、サリスも手伝って」
「物凄い事をいつもサラッと言いますよねー。その思考能力が羨ましいです」
「出番っすか?正直今回は無いかと思ってました。遠くても標的は見えてるんで、外し様がないっすね」
気を抜くな若者。師匠さんにチクるぞ。


西寄りの塔に3人だけで立った。
「みんな!インカム暫く切ってて。脳みそ砕け散っても知らないからね」
装着者全員OFF。何が起きるかはお楽しみ。

鷲尾の左手に、カルバンの右手が重なる。
指を絡めて高く掲げた。

-スキル【聖像】
 並列スキル【聖歌】発動が確認されました。-
-スキル【大魔術師】
 並列スキル【昇華】発動が確認されました。-

-二種同時発動に因り、シークレットスキル
 【デュアルブースト】発動されました。-

横で控えていたサリスが溜めの姿勢から、剣柄を握り締めた。右足を半歩後ろへ身構える。

-スキル【真勇者】
 並列スキル【空刃斬】発動が確認されました。-

宛らそれは、居合抜き。
放たれた特大の空刃は弧を描き、エンパイアへ向い飛び立った。

光速よりは遅く、音速よりもやや遅い。

-スキル【聖像】
 並列スキル【戯曲】発動が確認されました。-
-スキル【大魔術師】
 並列スキル【奏請】発動が確認されました。-

繋いだ手を更に強く握り合う。

-二種同時発動に因り、シークレットスキル
 【共振破壊】発動されました。-

2人の極高声が共鳴。
重ねた手の人差し指を立て、彼方の標的へと向けた。

声は音へ。音は波へ。
凝縮された波動が指先から撃ち出され、先行していた空刃の背を後押しした。

-秘奥義【ラグナロック】発動されました。-

エンパイヤからの迎撃の光を、白き対極が突き通す。
更なる加速を得た白き刃が、敵の躯を二つに割った。

「やっと出番だ。久々にやっちゃう?教授」
インカムON。
「おう先生。前線に居る物理メンバー。突撃!」
外壁を飛び降りる2人の後ろには、ジェシカ、キュリオ、メイリダ、リンジー、ルドラ。
「参加はせぬが、この様な面白い余興。見逃す手は無いのじゃ」

幾分遅れて峰岸。
「汚名は返上する。熨斗着けてな」

何が起きるかは解らない。桐生とアーチェの2人には城島からSTOPが掛かった。砦内に留まった。


「そろそろ私も働かないとね。リン姉」
「頼んだわ」

-スキル【巌窟王】
 並列スキル【開眼・改】発動が確認されました。-

向上する能力値。兄の様に広範囲ではなく限定範囲。
ペペスの特色との違いは純粋に倍化出来る事。

ヒオシの友愛と相まって、7人の全能力値は同等に変化。

エンパイア再構築までの数分。それが与えられた猶予。

一度は割れた躯が見る見る内に繋がって行く。

後ろの状況が見えない為、イオラたちに飛んで貰うのは避けた。新たな敵やフェンリルが居た場合を想定して。
全力疾走で距離を詰めた。





-----

「撃って撃って撃ちまくりな!出し惜しむんじゃないよ」
砦内にロンジーの激号が響いた。

「ロンジー殿。通常の弓矢では到底届きませんが」

「国の兵士ってのは頭ん中空っぽかい?バリスタ全砲門に魔術付与して咬ましてやりな!」

標的は優雅に上空を通り過ぎ様としていた。

黙認出来る機影は八。上空の利が在ると先程火の魔術を放って来たので味方ではないのは確か。

「届く届かないじゃないよ。砦を守る守護者としての意地を見せてやるんだよ!奴らの土手っ腹に太い杭ぶち込んでやりな」
無茶は承知の上。それでも只で素通りさせてやるのは性分ではなかった。

-スキル【調停者】
 並列スキル【追従】発動が確認されました。-

打上げられた杭状鏃の内、数本の進路が調整され舟の的を追って行った。

「鱈腹食べな。遠慮は要らないよ」

痛む腰を軽く正す。
老体に鞭とは真にこの事。

「総員、反撃に備えよ」号令を飛ばした。

大狼討伐戦の火蓋は切られた。
時代は動く、何時でもどんな時でも。何か一つの切っ掛けさえ在れば。

杭は三隻の腹を貫き、案の定残りの機影から火の魔術が返って来た。

次いでの杭と炎が交差する。

「…リンジー」何もかも今更。

思えば。振り返っても、母親らしい事は何一つしてやれなかった。父親の健在も伝えてやれなかったのも心残りと言えば心残りだ。

欲を言えば、未だ見ぬ孫を抱いてみたかった。


飛空挺から放たれた業火は、クロスガング砦全体を包み込み燃え盛った。




-----

西部ルート序盤。未だ我々は一山越えたに過ぎない。

冒険者たちは良く働いてくれている。しかし最も頼りにしていた異世界組はすでに東へと移った。

こちらからでは中央や東部の状況を計り兼ねる。
伝令から伝わる情報も、一瞬で目まぐるしく変化してしまう現況では殆ど役に立たない。


マーモ・ラモン。人狼討伐時に峰岸組の後方監視を務めた隊長。ベンジャム所属の正規兵。

軍人で在りながら、柔軟で奇抜な発想をする事で国内では有名。国内屈指の実力者でもある。

そのマーモは風狼の手応えの無さに違和感を感じ、行軍を悩んでいた。

調子に乗るのは危険だと、経験と勘が脳裏で警鐘を鳴らしていたのだ。

タッチーから塩害で被毒状態であるのは聞いた。

目の奥の赤を落とした虚ろな眼差し。覚束ない足取り。
風狼であるのに纏えない風。微風に等しい。

駆ける速度も、攻撃も遅い。
これでは並の狼と何も変わらない。正しく隊列を組み、細波を弾き返せば簡単に駆除出来た。

難易度としてこの西部は一番低いと目されていた。それにしてもだ。

「行軍停止!陣を整え、野営地を設置しろ」
「…はい」
部下から返る返事は不満げだ。自分も下の立場なら無視をして突っ込んでしまいたい所。

「着実、堅実、二度手間を惜しむな。油断こそ大敵。我らは冒険者ではない!確実な勝利こそが命題」

反意を示す者など勿論居ない。それが公人、軍人を選んだ者の定め。

「ただ規律ばかりでは息苦しい。粒の大きい魔石は回収しても構わん。分別は弁えろ」

クイーズ所属の兵士も混在する為、多少の餌は撒いて置かないとな。



夜も更け、良好な状態の狼を丸焼きに小さな宴を開いた。
各自の腹が満たされた頃。
「マーモ大隊長。報告であります」
前方偵察隊の伝令が急報を持ってきた。

「本命か?」

「可能性は大いに。最前部の冒険者の目撃多数。この先の谷向こうに現われた模様」

マーモは不適に笑った。
どうやら我らが一番乗りの様だ。

「投擲機で風狼の死肉を届けてやれ。塩で冒された臓物を詰め込んでな」
「ハハッ!!」

人道?下らぬ戯れ言。相手は高位魔獣。正攻法など通じぬ相手。臆病、邪道、誹りは甘んじて受けよう。

投擲機は元々設置予定。それが少し前倒しになった。
ここは敢えて告げる。
「こちらに牙を剥いた事を後悔させてやれ。異議有る者が居るなら、即刻その首を差し出せ!」
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