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第57話 出立準備05
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武装搬入まで後2日。
ヘルメン王からの遅延連絡は特に無く。
予定していたカジノに行ってみるかと、昼過ぎに2人を誘って出掛けた。
行きの馬車の中でフィーネが。
「賭博場って悪いイメージしかないんだけど。私は兎も角アローマさんまで連れて行っても大丈夫なの?」
「あそこはもう公営になってるから、特に問題ないよ。
管理運営自体を国が仕切ってるの」
「へぇ」
「そうなのですか」
ソプランが加える。
「中身のシステム自体は前と変わってないとか聞いたな。
管轄が移っただけで」
「多分だけど。以前のまま敷居を高くしておいて。
一般の人が気軽に遊べる場所としては適さないって判断したんでしょ。お上が。
普通の人が初期登録で金貨50何て払えないし」
「だな」
女性2人が声を上げる。
「「五十!?」」
アローマさんが申し訳なさそうに。
「私まで行っても…」
「大丈夫大丈夫。金ならある!使い切れない位…」
「気にしない。忘れちゃえ忘れちゃえ」
「アローマも。これも仕事だって割り切りゃいいさ。
スターレンからの仕事の指名依頼だってな。
こいつの持ち金で遊ぶんだから。精々擦らない程度に楽しめばいいだよ」
「確かにそうなのですが…。あ!またこいつって!そもそも呼捨ても」
「あーあー解った解った。何時かその内直すって。
息抜きさせてくれよ。折角ゼファーのおっさんから解放されたってのに…」
「俺はちょっといいとこの平民としてメメット隊のメンバーと出会いましたから。
言葉遣いなんて適当でいいんですよ。
今でも自分は平民だと思ってるんで。心安まる場所も欲しいってやつです。気にしないで」
「私もですよ。いい加減に友達になって下さい」
「そ、それだけは。もう少しだけお時間を…。
解りました。ソプラン様の言葉遣いには口出しせぬように致します」
「その、俺にも様を付けるのも。そろそろ止めてくれ」
「ど、努力します…」
それって、努力をするもんなんだ…。
到着しましたカジノ:カーライル前。
健全な公営になったと言う事もあり、昼間から正面玄関から堂々と出入りする人が結構居た。
商人の国。金持ちは一杯だ。
金は回り。国にも入り。下へと還元される。
舵を執る役所の裁量次第だが、悪い形ではないと思う。
その一部を頂いてしまった自分としては文句は言えぬ。
多くの客は登録済みで素通りして行く中。
新規の少ない列の後ろに並んだ。
「え!?あの方が、何故…」
「あ!?本物だ」
等々が周りから聞こえて来た。
…きっと自分ではない。それは自分たちではない!
「そろそろ現実を受け止めようか。スタンさん」
「いやぁ。これは、誰かと間違えてるんだよ」
「バッチリ目を向けてんだろ。お前に」
「恥ずかしいです…。悪い意味ではなく」
もう直ぐ順番が来ると言う段階で、数人の係員が近付いて来て別室へと連行された。
なんだ?帰れってか?
少々戸惑い、広めの部屋の真ん中でドキドキしていると。
支配人を名乗る人が現われた。
「スターレン様。奥様。お連れ様も。
ようこそお出で下さいました。カーライル総支配人の
オーランド・カッチェと申します。
そちらのソファー席で、当店のご案内を致します」
深い礼で部屋奥の席へ案内してくれた。
「あのー。帰れって事ですか?」
「いえ全く。周りの目でご気分を害され、お帰りになってしまうのではないかと。この場をご用意致しました。
もう既に身バレしてしまいましたが、中で着用して頂ける普通の蝶眼鏡もご用意しております。
手配が遅れてしまい申し訳ありません」
「それは全然構わないんですが。俺たちまだ登録終わってないんですけど…」
「おぉ、そうでしたね。先ずはそちらから」
オーランドさんが、胸元から4枚の真っ黒なカードを取り出し、俺たちの前に並べてくれた。
「こちらは当店のみで使える特別会員証となります。
スターレン様、フィーネ様、ソプラン様までは存じておりますが…。お連れの女性方のお名前は後にお伺いします。
勉強不足で申し訳ありません。
そちら全て登録済。直ぐにでも中へお入りになれます」
「どうして俺たちにこんな特別待遇を?」
「単刀直入に申し上げますと…。
クインザを撃ち滅ぼして頂いた感謝のお礼です」
「へぇ。ここって前は」
「その通りで御座います。
先日、殿方様に訪れて頂いたエドワンドもそうです。
あちらに来たなら、そろそろこちらにも来て頂けるかと思い事前に用意しました。
奴の圧力に苦しんでいたのは、王陛下やウィンザートだけではありません。王都の三区の殆どが奴の支配下に在ったと言っても過言では無く。
多くは脅されていた者たちばかり。それらを解放して頂いたお礼なら。こんな物では足りません」
「成程。俺たちに似ていたんですね。その人たちに感謝しないとな」
「スターレン様。それは少々無理が…」
逃げ場無し!
軽く咳払いして。
「ま、まあ。1人でも救われたのなら、頑張った甲斐が在りました。それは素直に受け取ります」
「はい。是非。
また、辛辣な言葉ではありますが。
奴の首が飛ぶのを見て、三区の皆が泣いて歓喜したものです。この私含めて。
そこに悲哀を込める者など誰一人居りませんでした。
実の一人娘のジェシカ様でさえも同じく。あちらの店舗の方々と抱き合いお喜びになって居られた程に」
「え?あの人。クインザの娘さんだったんだ」
「私から聞いたとは内密に願います。
クインザの支配下に在った頃。エドワンドでは娼館に近い事までさせられていたと聞いております。
実の娘にまでそれを強いる。正しく悪魔の所業。
お二人はその悪魔を討伐した救世主様なのです」
「止めて下さい。あれは全て成り行きですから」
「そうですよ。邪魔な小石を蹴り飛ばしただけです」
「…少々、お待ちを…」
オーランドさんは目頭を抑えて、暫く顔を伏せた。
再び顔を上げ。
「…さて。そんな戯れ言で貴重なお時間を食い潰す訳にも行きませんので。当店のご説明に入ります」
基本ルールなどは事前に知っていた内容そのもの。
続いて景品リストを見せてくれた。
その頂点に君臨していた武具。
「これって。流浪の双剣じゃないですか?」
「間違い御座いません。闇のバザーで偽装したクインザ本人が競り落とした物です。
貴方様から奪えた、と。喜んでいましたね。
熟々馬鹿な男でした。
この私も隣に同席していましたので」
この人もあの場に居たんだ。
てっきり8番はアッテンハイムの関係者かと思ってた。
「…しかし。どうしてスターレン様がこれに興味を持たれていたのかが気になります。
参考までに教えて頂いても?」
「俺は耐熱グローブの方が欲しかっただけです。だから少し競りました」
「成程!そうでしたか。そちらかぁ。至極納得しました。
ソプラン様ならお解りだとは思いますが。この武具は大した物ではありません」
「確かに珍品だとは思ったけど。なんかあったの?」
ソプランが答えた。
「あの時は落とさなかったから言わなかったが。
あれは双剣殺しだ。
双剣使いに取って。戦闘中の武器の入替えは必須。
得意な重量なら何でも入替えられるのが最大の売り。
その売りを潰すのさ」
「どんな?」
「片方を手放した時点で機能しなくなるだけじゃない。
あれは、一度持つと持ち替え自体を許さない代物だ。
捨てる時には両方捨てなきゃいけないんだ。
戦闘中に率先して丸腰になる馬鹿が居るなら、この目で見て見てえな」
そんな絡繰りがあったんだ。知らんかった。
「その通りに御座います。
同時に落とした指貫の方は、使い勝手が悪く。再び闇に流れましたが、敢えて取り戻すまでではないでしょう。
あちらも大した価値は在りません。
双剣はクインザが気に入り、ここの目玉に据えました。
それをそのまま流用し、我らの戒めとして置いています。
あの時のグローブは、別で保管しておりますので。
後程スターレン様にお土産としてお渡しします」
「貰えるんですか?」
「ええ勿論です。当店の来店記念の粗品としましょう。
そして。新たに入荷した目玉がその下の二つです」
○清流のロングビスチェ
○細波の二枚貝
「そちらの二つを。是非ここで遊んで頂き、手にして欲しいと存じます。
両方共。クインザが好んだ如何わしい品ではない。正統な装備品と道具です。
中身に付いては。お手にした時の楽しみと、ここでは控えさせて頂きます。
ここが国営になってから入れた物ですが、未だに届いた者は居りません。お二人ならきっと、と願います」
双剣がコイン100万枚。誰もが諦める数字だ。
ビスチェが1万枚。貝殻が8千枚。
「面白そうですね。挑戦してみます」
「はい。
特別会員様専用の休憩室もご用意しております。
酒類はお出し出来ませんが。
軽食とお飲み物は全て無料です。
(メメット商会様のハムを使ったサンドイッチです)
何かあれば部屋の係までお申し付け下さい。
では、ご案内を」
案内された部屋の大判硝子から覗ける光景。
時代を飛び越したカジノそのもの。
現代日本でも、勿論そんな場所には行かなかったが。
行ける訳もなかったが。
映画等でよく見る光景。
ポーカーなどのトランプ台。
赤黒数字のルーレット台。
人や金貨やコインが常に動き回っていた。
空間にはタバコの煙ではないが、薄くスモッグが垂れ込めている。
「人々の欲望満載ですねぇ」
「だねぇ」
フィーネの感想に簡単に答えた。
アローマさんも光景に大層驚いていた。
「王都内にこの様な場所が在ったなんて。何と言いますか不思議な感覚です」
「お嬢が言ったまんまだな。人の欲望で満たされてる」
「オーランドさん。立ち籠めてる煙って」
「あれは、気休め程度に。心を落ち着ける効果の在るスモッグを微量に天井から降ろしています。
過度にヒートアップしたお客様には効果は薄いです。
通常のお客様なら摘まみ出せますが。
お二人が暴れ出されてしまっては、誰にも止められませんので従業員を気遣って頂けると大変に助かります」
「「気を付けます…」」
オーランドさんがアローマさんの名前を聞き、黒カードに登録後。
「コインの繰り越しは一週間以内。これだけは変更は出来ません。コインは従業員が持つ道具でカードに記録されますので都度お渡し下さい。
カードの返却、統合は下のカウンターで処理出来ます。
会場からの持ち出しは無効化されますので忘れずに。
特別会員様のカードは、一度だけ再発行も可能ですが中身は空の状態に戻りますので充分にご注意を」
ちゃんとしてますな。外で改竄されたら溜まったもんじゃないからなぁ。
了解の返事を返し、室内扉脇に立つ係の人に早速軽食とドリンクを発注。
ソファー席に座り。軽くサンドイッチを腹に入れ、
(これだよこれ!ハムとバターと辛子マヨだよ!)
オレンジジュースで流し込みながら作戦会議。
ルールブックを見ながら。
「作戦って言っても。最初は俺たちでルーレット台で稼いで余力が出て来たら、一部を移して2人にポーカー台に行って貰うって言う案しかないんだけど」
「定番だな。どうせお前の金だ。後ろで執事らしく眺めてやるよ」
「「異議無し!」」
かなり雰囲気に飲まれてる感はあるが、女性陣の呼吸もピッタリだ。
アローマさんの防壁は崩落間近。
………
初日の結果。夕方まで。
自分ペア:コイン約3000枚。
当然の如く、フィーネさんのリズムで爆勝ち。
未来予知なんて出来ないけれど。台の従業員さんの呼吸や手首の動きを掴んでからは、良い流れに乗れた。
ソプランペア:コイン約1000⇒700枚。
「擦ったわ。悪いなぁ。アローマがなぁ…」
「やってしまいました…」
「何か失敗したんですか?」
「いやぁ…。何回注意しても。手札とガイドブック見比べて鼻息荒くしてよぉ。あんなん相手にバラしてるようなもんだぞ」
「「それは…」」
「申し訳ありません。自分でもあれ程感情が出てしまうとは…。賭け事って怖いです…」
「こっちは大体流れを掴めば行けそうなんで。そちらは気楽にやって下さい。明日は昼前から入ろうと思ってるのでそっちが全損しても大丈夫です…多分…」
「それじゃ俺のプライドが許さねえ。明日は最悪アローマ単独で別台に行かせる」
「明日は無表情で頑張ります!」
---------------
昨日。頑張ると豪語した、アローマです。
午前から店に入り…お昼休憩前まで結果。
お二人:約四千五百枚
ソプラン様:約千二百枚
私:……最初に分けて頂いた千枚⇒二百枚
三人様の足を引っ張っているのは、この私です。
当初心配していたソプラン様ののめり込み。
お仕事モードのソプラン様には杞憂でした…。
格好良いです!惚れ直しました!!
違う違う。
やはりスターレン様の人選に間違いはありませんでした。
それも違います!
お二人の貴重なお時間を稼ぐ、と言う大事なお仕事に来たのにも関わらず。
私だけが己の欲望を御せません。
予定では三日を計画されているご様子ですが、そんな事は許されません。
一日でも一時間でも早く出発されたい筈です。
何とか本日中に、お二人が気にされていた景品を持ち帰らねば。その為の手助けをと。
決意も新たに望んだ筈が、この有様…。
これでは何時まで経っても、フィーネ様のご友人との栄冠は頂けません。
フィーネ様に何度もお誘い頂いてる、ご一緒にお風呂が頭から離れません。
侍女長や仲間たちの許可は得ていると言うのに。
この惨敗の結果を報告しようものなら、担当主任の降格は必至。最悪はクビでしょう。
…離したくありません!!
恥を忍んで、お二人から五百枚。
舌打ちされるソプラン様から三百枚を拝借致しました。
そして決戦の午後。
………
一時間足らずで、五百枚を切ってしまいました。
自分のセンスの無さが悲しいです。
ガイドブックは全て頭に入れたのにも関わらず、
手札を見ただけで表情に出てしまう様です。
流れも何も掴めず。
余計な札交換を重ね。
必要以上にベットしてしまう。
…いいえ、アローマ。冷静になるのよ。
場に破棄した札の内容、山の残り枚数。
自手札の揃いを見て、相手の狙いも予測する。
難しい!でも負けません。
………
自。絵札と数字が揃いました。
これならフラッシュが狙えます…。
ん?絵札が揃っている…?
まだ…一番札と二番札は捨てられていない!?
持ちコインは後百枚。
ここで狙うなら…百倍レートの…頂点。
---------------
心底疲れた顔のアローマさんが会員証を見せて来た。
「な、何とか…。お役目を果たせたようです…」
「お!1万枚!?凄い」
「凄いね」
「凄えな。勝てるようになったのか」
「いいえ。たったの一勝だけです。
最後の百枚になった時。偶然ロイヤルが来ました。
よかったぁ…」
そう言ってソファーに雪崩れ込んだ。
「まんまビギナーズラックだな。
チマチマやってる俺が馬鹿みてえだぜ。
あ、別に怒ってる訳じゃないからな。人の金だし」
「ソプランも。コツコツ2000近く稼いでくれたから…
合計でもう1万8千枚超えてる!?
これなら1日オフに出来るぞ」
「「やったぁー!」」
女性2人が元気にハイタッチ…。
「あ!ごめん。手、大丈夫?」
「な、なんのこれしき…。光栄の痛み…」
「後で直ぐ治すから。今は堪えて」
嫁さん半泣き。
ソプランがアローマの手首を固定しながら。
「お手柄だ。アローマ」
まだ夕方前。
オーランドさんを呼び、コイン到達を報告。
大層ビックリしていた。
「素晴らしいです。たった二日で…。感服しました。
まだまだ遊んで行って欲しいですが、お二人の時間を奪うのは大罪と心得ます。
何時の日か。真に落ち着ける時に。
またのご来店、お待ちしております」
「ええ、その時に。また遊びに来ます」
アローマの手当が在るので、景品交換をして急いで自宅へ戻った。
到着後フィーネがアローマさんを問答無用で風呂場へ連れ去り荒療治。
風呂場方面から、色々な種類の悲鳴が僅かに聞こえる中リビングでお茶をして待つ。
「ゴンザの時もそうだったが…。お嬢の治癒ってのはそんなに痛いもんなのか?」
「外傷だけなら大して痛くないよ。一緒に骨まで治そうとすると…燃えるように痛い、らしい…。
それは俺も未経験だから、解んない」
「ふーん…。俺は普通にカメノスさんのとこ行くわ」
「それが懸命」
ソプランに何か夕食を本棟に頼みに行って貰い、待つ事1時間。
風呂から上がった2人を交え、景品を開いた。
名前:清流のロングビスチェ(水竜神の加護:中)
性能:防御力200。形状身体に合わせ補正
特徴:知能以外の全能力値+600
制作者不明
伸縮素材だが、材料不明
防水、防汚、耐圧、熱冷遮断機能搭載
加護…水竜様は、確かに女神様ではないのでやり放題は留まる事を知らない。
それは抜いて説明。
名前:細波の二枚貝
性能:耳に装着する事で、相互通話可能
通話可能直線距離:1万km以内
特徴:離れていても心は一緒だよ、と唱えてしまう
お馬鹿な2人にこそ相応しい
「「「「おぉ…」」」」
二枚貝の特徴は全スルーして。
ビスチェをフィーネが普段着の上から試着した。
彼女が好きな水色生地。
離れて見るとデニム調。間近で見ると滑らかで光沢のあるシルク調。肩紐の部分がフィットした。
裾は腰骨までスッポリヒラヒラ。
キャミソとも呼べる。
「こう言うの探してたんだぁ。これならライダースーツの上からでも着れるね。
…って人前で胸を撫回すのはお止めなさい」
手痛いチョップを頂きました。
「ご、ごめん。つい」
「ごめん、じゃねーよ」
「こちらが恥ずかしいです。スターレン様…」
「クワァ…」
4人に平謝り。
ソプランが感想を述べた。
「服は勿論。二枚貝もいいな。
それなら離れた場所でも連絡し放題だ。
これ、バザーよりも掘り出しもんだな」
「本当に。有り難い」
「お前らの居ない間に、ちょいちょい見に行くわ」
「遊ばないで下さいね。ソプラン様」
「俺を信じろ。初期投資に金貨十枚以上飛ぶなんざ。
やりたくてもやれるかよ。月の給料が吹っ飛ぶ遊びする位なら、普通にデニスの店に飲みに行くぜ」
最近行ってないな。出立前に一度行ってみるか。
アローマが包帯巻きの手を挙げた。
「カジノの支配人様も言っていましたが。
闇のバザーとは、何なのでしょうか」
「あー。アローマは知らん方がいい。外で言い触らすのも止めろ。ここの仲間内でもな。
出来れば忘れろ。油断すると自分の身だけじゃなく、周りの人間も闇側に飲み込まれる。それ位危険な場所だ」
「は、はい!直ぐに忘れます!」
言いたい事はソプランが代弁してくれたので。
「そろそろ本棟行きますか」
「そうしましょ。お腹ペコペコ~。
アローマさんは手首痛めさせちゃったから、アーンしてあげるね」
「あ、アーンだなんて!そんな…」
これは完全に落ちたな。
ヘルメン王からの遅延連絡は特に無く。
予定していたカジノに行ってみるかと、昼過ぎに2人を誘って出掛けた。
行きの馬車の中でフィーネが。
「賭博場って悪いイメージしかないんだけど。私は兎も角アローマさんまで連れて行っても大丈夫なの?」
「あそこはもう公営になってるから、特に問題ないよ。
管理運営自体を国が仕切ってるの」
「へぇ」
「そうなのですか」
ソプランが加える。
「中身のシステム自体は前と変わってないとか聞いたな。
管轄が移っただけで」
「多分だけど。以前のまま敷居を高くしておいて。
一般の人が気軽に遊べる場所としては適さないって判断したんでしょ。お上が。
普通の人が初期登録で金貨50何て払えないし」
「だな」
女性2人が声を上げる。
「「五十!?」」
アローマさんが申し訳なさそうに。
「私まで行っても…」
「大丈夫大丈夫。金ならある!使い切れない位…」
「気にしない。忘れちゃえ忘れちゃえ」
「アローマも。これも仕事だって割り切りゃいいさ。
スターレンからの仕事の指名依頼だってな。
こいつの持ち金で遊ぶんだから。精々擦らない程度に楽しめばいいだよ」
「確かにそうなのですが…。あ!またこいつって!そもそも呼捨ても」
「あーあー解った解った。何時かその内直すって。
息抜きさせてくれよ。折角ゼファーのおっさんから解放されたってのに…」
「俺はちょっといいとこの平民としてメメット隊のメンバーと出会いましたから。
言葉遣いなんて適当でいいんですよ。
今でも自分は平民だと思ってるんで。心安まる場所も欲しいってやつです。気にしないで」
「私もですよ。いい加減に友達になって下さい」
「そ、それだけは。もう少しだけお時間を…。
解りました。ソプラン様の言葉遣いには口出しせぬように致します」
「その、俺にも様を付けるのも。そろそろ止めてくれ」
「ど、努力します…」
それって、努力をするもんなんだ…。
到着しましたカジノ:カーライル前。
健全な公営になったと言う事もあり、昼間から正面玄関から堂々と出入りする人が結構居た。
商人の国。金持ちは一杯だ。
金は回り。国にも入り。下へと還元される。
舵を執る役所の裁量次第だが、悪い形ではないと思う。
その一部を頂いてしまった自分としては文句は言えぬ。
多くの客は登録済みで素通りして行く中。
新規の少ない列の後ろに並んだ。
「え!?あの方が、何故…」
「あ!?本物だ」
等々が周りから聞こえて来た。
…きっと自分ではない。それは自分たちではない!
「そろそろ現実を受け止めようか。スタンさん」
「いやぁ。これは、誰かと間違えてるんだよ」
「バッチリ目を向けてんだろ。お前に」
「恥ずかしいです…。悪い意味ではなく」
もう直ぐ順番が来ると言う段階で、数人の係員が近付いて来て別室へと連行された。
なんだ?帰れってか?
少々戸惑い、広めの部屋の真ん中でドキドキしていると。
支配人を名乗る人が現われた。
「スターレン様。奥様。お連れ様も。
ようこそお出で下さいました。カーライル総支配人の
オーランド・カッチェと申します。
そちらのソファー席で、当店のご案内を致します」
深い礼で部屋奥の席へ案内してくれた。
「あのー。帰れって事ですか?」
「いえ全く。周りの目でご気分を害され、お帰りになってしまうのではないかと。この場をご用意致しました。
もう既に身バレしてしまいましたが、中で着用して頂ける普通の蝶眼鏡もご用意しております。
手配が遅れてしまい申し訳ありません」
「それは全然構わないんですが。俺たちまだ登録終わってないんですけど…」
「おぉ、そうでしたね。先ずはそちらから」
オーランドさんが、胸元から4枚の真っ黒なカードを取り出し、俺たちの前に並べてくれた。
「こちらは当店のみで使える特別会員証となります。
スターレン様、フィーネ様、ソプラン様までは存じておりますが…。お連れの女性方のお名前は後にお伺いします。
勉強不足で申し訳ありません。
そちら全て登録済。直ぐにでも中へお入りになれます」
「どうして俺たちにこんな特別待遇を?」
「単刀直入に申し上げますと…。
クインザを撃ち滅ぼして頂いた感謝のお礼です」
「へぇ。ここって前は」
「その通りで御座います。
先日、殿方様に訪れて頂いたエドワンドもそうです。
あちらに来たなら、そろそろこちらにも来て頂けるかと思い事前に用意しました。
奴の圧力に苦しんでいたのは、王陛下やウィンザートだけではありません。王都の三区の殆どが奴の支配下に在ったと言っても過言では無く。
多くは脅されていた者たちばかり。それらを解放して頂いたお礼なら。こんな物では足りません」
「成程。俺たちに似ていたんですね。その人たちに感謝しないとな」
「スターレン様。それは少々無理が…」
逃げ場無し!
軽く咳払いして。
「ま、まあ。1人でも救われたのなら、頑張った甲斐が在りました。それは素直に受け取ります」
「はい。是非。
また、辛辣な言葉ではありますが。
奴の首が飛ぶのを見て、三区の皆が泣いて歓喜したものです。この私含めて。
そこに悲哀を込める者など誰一人居りませんでした。
実の一人娘のジェシカ様でさえも同じく。あちらの店舗の方々と抱き合いお喜びになって居られた程に」
「え?あの人。クインザの娘さんだったんだ」
「私から聞いたとは内密に願います。
クインザの支配下に在った頃。エドワンドでは娼館に近い事までさせられていたと聞いております。
実の娘にまでそれを強いる。正しく悪魔の所業。
お二人はその悪魔を討伐した救世主様なのです」
「止めて下さい。あれは全て成り行きですから」
「そうですよ。邪魔な小石を蹴り飛ばしただけです」
「…少々、お待ちを…」
オーランドさんは目頭を抑えて、暫く顔を伏せた。
再び顔を上げ。
「…さて。そんな戯れ言で貴重なお時間を食い潰す訳にも行きませんので。当店のご説明に入ります」
基本ルールなどは事前に知っていた内容そのもの。
続いて景品リストを見せてくれた。
その頂点に君臨していた武具。
「これって。流浪の双剣じゃないですか?」
「間違い御座いません。闇のバザーで偽装したクインザ本人が競り落とした物です。
貴方様から奪えた、と。喜んでいましたね。
熟々馬鹿な男でした。
この私も隣に同席していましたので」
この人もあの場に居たんだ。
てっきり8番はアッテンハイムの関係者かと思ってた。
「…しかし。どうしてスターレン様がこれに興味を持たれていたのかが気になります。
参考までに教えて頂いても?」
「俺は耐熱グローブの方が欲しかっただけです。だから少し競りました」
「成程!そうでしたか。そちらかぁ。至極納得しました。
ソプラン様ならお解りだとは思いますが。この武具は大した物ではありません」
「確かに珍品だとは思ったけど。なんかあったの?」
ソプランが答えた。
「あの時は落とさなかったから言わなかったが。
あれは双剣殺しだ。
双剣使いに取って。戦闘中の武器の入替えは必須。
得意な重量なら何でも入替えられるのが最大の売り。
その売りを潰すのさ」
「どんな?」
「片方を手放した時点で機能しなくなるだけじゃない。
あれは、一度持つと持ち替え自体を許さない代物だ。
捨てる時には両方捨てなきゃいけないんだ。
戦闘中に率先して丸腰になる馬鹿が居るなら、この目で見て見てえな」
そんな絡繰りがあったんだ。知らんかった。
「その通りに御座います。
同時に落とした指貫の方は、使い勝手が悪く。再び闇に流れましたが、敢えて取り戻すまでではないでしょう。
あちらも大した価値は在りません。
双剣はクインザが気に入り、ここの目玉に据えました。
それをそのまま流用し、我らの戒めとして置いています。
あの時のグローブは、別で保管しておりますので。
後程スターレン様にお土産としてお渡しします」
「貰えるんですか?」
「ええ勿論です。当店の来店記念の粗品としましょう。
そして。新たに入荷した目玉がその下の二つです」
○清流のロングビスチェ
○細波の二枚貝
「そちらの二つを。是非ここで遊んで頂き、手にして欲しいと存じます。
両方共。クインザが好んだ如何わしい品ではない。正統な装備品と道具です。
中身に付いては。お手にした時の楽しみと、ここでは控えさせて頂きます。
ここが国営になってから入れた物ですが、未だに届いた者は居りません。お二人ならきっと、と願います」
双剣がコイン100万枚。誰もが諦める数字だ。
ビスチェが1万枚。貝殻が8千枚。
「面白そうですね。挑戦してみます」
「はい。
特別会員様専用の休憩室もご用意しております。
酒類はお出し出来ませんが。
軽食とお飲み物は全て無料です。
(メメット商会様のハムを使ったサンドイッチです)
何かあれば部屋の係までお申し付け下さい。
では、ご案内を」
案内された部屋の大判硝子から覗ける光景。
時代を飛び越したカジノそのもの。
現代日本でも、勿論そんな場所には行かなかったが。
行ける訳もなかったが。
映画等でよく見る光景。
ポーカーなどのトランプ台。
赤黒数字のルーレット台。
人や金貨やコインが常に動き回っていた。
空間にはタバコの煙ではないが、薄くスモッグが垂れ込めている。
「人々の欲望満載ですねぇ」
「だねぇ」
フィーネの感想に簡単に答えた。
アローマさんも光景に大層驚いていた。
「王都内にこの様な場所が在ったなんて。何と言いますか不思議な感覚です」
「お嬢が言ったまんまだな。人の欲望で満たされてる」
「オーランドさん。立ち籠めてる煙って」
「あれは、気休め程度に。心を落ち着ける効果の在るスモッグを微量に天井から降ろしています。
過度にヒートアップしたお客様には効果は薄いです。
通常のお客様なら摘まみ出せますが。
お二人が暴れ出されてしまっては、誰にも止められませんので従業員を気遣って頂けると大変に助かります」
「「気を付けます…」」
オーランドさんがアローマさんの名前を聞き、黒カードに登録後。
「コインの繰り越しは一週間以内。これだけは変更は出来ません。コインは従業員が持つ道具でカードに記録されますので都度お渡し下さい。
カードの返却、統合は下のカウンターで処理出来ます。
会場からの持ち出しは無効化されますので忘れずに。
特別会員様のカードは、一度だけ再発行も可能ですが中身は空の状態に戻りますので充分にご注意を」
ちゃんとしてますな。外で改竄されたら溜まったもんじゃないからなぁ。
了解の返事を返し、室内扉脇に立つ係の人に早速軽食とドリンクを発注。
ソファー席に座り。軽くサンドイッチを腹に入れ、
(これだよこれ!ハムとバターと辛子マヨだよ!)
オレンジジュースで流し込みながら作戦会議。
ルールブックを見ながら。
「作戦って言っても。最初は俺たちでルーレット台で稼いで余力が出て来たら、一部を移して2人にポーカー台に行って貰うって言う案しかないんだけど」
「定番だな。どうせお前の金だ。後ろで執事らしく眺めてやるよ」
「「異議無し!」」
かなり雰囲気に飲まれてる感はあるが、女性陣の呼吸もピッタリだ。
アローマさんの防壁は崩落間近。
………
初日の結果。夕方まで。
自分ペア:コイン約3000枚。
当然の如く、フィーネさんのリズムで爆勝ち。
未来予知なんて出来ないけれど。台の従業員さんの呼吸や手首の動きを掴んでからは、良い流れに乗れた。
ソプランペア:コイン約1000⇒700枚。
「擦ったわ。悪いなぁ。アローマがなぁ…」
「やってしまいました…」
「何か失敗したんですか?」
「いやぁ…。何回注意しても。手札とガイドブック見比べて鼻息荒くしてよぉ。あんなん相手にバラしてるようなもんだぞ」
「「それは…」」
「申し訳ありません。自分でもあれ程感情が出てしまうとは…。賭け事って怖いです…」
「こっちは大体流れを掴めば行けそうなんで。そちらは気楽にやって下さい。明日は昼前から入ろうと思ってるのでそっちが全損しても大丈夫です…多分…」
「それじゃ俺のプライドが許さねえ。明日は最悪アローマ単独で別台に行かせる」
「明日は無表情で頑張ります!」
---------------
昨日。頑張ると豪語した、アローマです。
午前から店に入り…お昼休憩前まで結果。
お二人:約四千五百枚
ソプラン様:約千二百枚
私:……最初に分けて頂いた千枚⇒二百枚
三人様の足を引っ張っているのは、この私です。
当初心配していたソプラン様ののめり込み。
お仕事モードのソプラン様には杞憂でした…。
格好良いです!惚れ直しました!!
違う違う。
やはりスターレン様の人選に間違いはありませんでした。
それも違います!
お二人の貴重なお時間を稼ぐ、と言う大事なお仕事に来たのにも関わらず。
私だけが己の欲望を御せません。
予定では三日を計画されているご様子ですが、そんな事は許されません。
一日でも一時間でも早く出発されたい筈です。
何とか本日中に、お二人が気にされていた景品を持ち帰らねば。その為の手助けをと。
決意も新たに望んだ筈が、この有様…。
これでは何時まで経っても、フィーネ様のご友人との栄冠は頂けません。
フィーネ様に何度もお誘い頂いてる、ご一緒にお風呂が頭から離れません。
侍女長や仲間たちの許可は得ていると言うのに。
この惨敗の結果を報告しようものなら、担当主任の降格は必至。最悪はクビでしょう。
…離したくありません!!
恥を忍んで、お二人から五百枚。
舌打ちされるソプラン様から三百枚を拝借致しました。
そして決戦の午後。
………
一時間足らずで、五百枚を切ってしまいました。
自分のセンスの無さが悲しいです。
ガイドブックは全て頭に入れたのにも関わらず、
手札を見ただけで表情に出てしまう様です。
流れも何も掴めず。
余計な札交換を重ね。
必要以上にベットしてしまう。
…いいえ、アローマ。冷静になるのよ。
場に破棄した札の内容、山の残り枚数。
自手札の揃いを見て、相手の狙いも予測する。
難しい!でも負けません。
………
自。絵札と数字が揃いました。
これならフラッシュが狙えます…。
ん?絵札が揃っている…?
まだ…一番札と二番札は捨てられていない!?
持ちコインは後百枚。
ここで狙うなら…百倍レートの…頂点。
---------------
心底疲れた顔のアローマさんが会員証を見せて来た。
「な、何とか…。お役目を果たせたようです…」
「お!1万枚!?凄い」
「凄いね」
「凄えな。勝てるようになったのか」
「いいえ。たったの一勝だけです。
最後の百枚になった時。偶然ロイヤルが来ました。
よかったぁ…」
そう言ってソファーに雪崩れ込んだ。
「まんまビギナーズラックだな。
チマチマやってる俺が馬鹿みてえだぜ。
あ、別に怒ってる訳じゃないからな。人の金だし」
「ソプランも。コツコツ2000近く稼いでくれたから…
合計でもう1万8千枚超えてる!?
これなら1日オフに出来るぞ」
「「やったぁー!」」
女性2人が元気にハイタッチ…。
「あ!ごめん。手、大丈夫?」
「な、なんのこれしき…。光栄の痛み…」
「後で直ぐ治すから。今は堪えて」
嫁さん半泣き。
ソプランがアローマの手首を固定しながら。
「お手柄だ。アローマ」
まだ夕方前。
オーランドさんを呼び、コイン到達を報告。
大層ビックリしていた。
「素晴らしいです。たった二日で…。感服しました。
まだまだ遊んで行って欲しいですが、お二人の時間を奪うのは大罪と心得ます。
何時の日か。真に落ち着ける時に。
またのご来店、お待ちしております」
「ええ、その時に。また遊びに来ます」
アローマの手当が在るので、景品交換をして急いで自宅へ戻った。
到着後フィーネがアローマさんを問答無用で風呂場へ連れ去り荒療治。
風呂場方面から、色々な種類の悲鳴が僅かに聞こえる中リビングでお茶をして待つ。
「ゴンザの時もそうだったが…。お嬢の治癒ってのはそんなに痛いもんなのか?」
「外傷だけなら大して痛くないよ。一緒に骨まで治そうとすると…燃えるように痛い、らしい…。
それは俺も未経験だから、解んない」
「ふーん…。俺は普通にカメノスさんのとこ行くわ」
「それが懸命」
ソプランに何か夕食を本棟に頼みに行って貰い、待つ事1時間。
風呂から上がった2人を交え、景品を開いた。
名前:清流のロングビスチェ(水竜神の加護:中)
性能:防御力200。形状身体に合わせ補正
特徴:知能以外の全能力値+600
制作者不明
伸縮素材だが、材料不明
防水、防汚、耐圧、熱冷遮断機能搭載
加護…水竜様は、確かに女神様ではないのでやり放題は留まる事を知らない。
それは抜いて説明。
名前:細波の二枚貝
性能:耳に装着する事で、相互通話可能
通話可能直線距離:1万km以内
特徴:離れていても心は一緒だよ、と唱えてしまう
お馬鹿な2人にこそ相応しい
「「「「おぉ…」」」」
二枚貝の特徴は全スルーして。
ビスチェをフィーネが普段着の上から試着した。
彼女が好きな水色生地。
離れて見るとデニム調。間近で見ると滑らかで光沢のあるシルク調。肩紐の部分がフィットした。
裾は腰骨までスッポリヒラヒラ。
キャミソとも呼べる。
「こう言うの探してたんだぁ。これならライダースーツの上からでも着れるね。
…って人前で胸を撫回すのはお止めなさい」
手痛いチョップを頂きました。
「ご、ごめん。つい」
「ごめん、じゃねーよ」
「こちらが恥ずかしいです。スターレン様…」
「クワァ…」
4人に平謝り。
ソプランが感想を述べた。
「服は勿論。二枚貝もいいな。
それなら離れた場所でも連絡し放題だ。
これ、バザーよりも掘り出しもんだな」
「本当に。有り難い」
「お前らの居ない間に、ちょいちょい見に行くわ」
「遊ばないで下さいね。ソプラン様」
「俺を信じろ。初期投資に金貨十枚以上飛ぶなんざ。
やりたくてもやれるかよ。月の給料が吹っ飛ぶ遊びする位なら、普通にデニスの店に飲みに行くぜ」
最近行ってないな。出立前に一度行ってみるか。
アローマが包帯巻きの手を挙げた。
「カジノの支配人様も言っていましたが。
闇のバザーとは、何なのでしょうか」
「あー。アローマは知らん方がいい。外で言い触らすのも止めろ。ここの仲間内でもな。
出来れば忘れろ。油断すると自分の身だけじゃなく、周りの人間も闇側に飲み込まれる。それ位危険な場所だ」
「は、はい!直ぐに忘れます!」
言いたい事はソプランが代弁してくれたので。
「そろそろ本棟行きますか」
「そうしましょ。お腹ペコペコ~。
アローマさんは手首痛めさせちゃったから、アーンしてあげるね」
「あ、アーンだなんて!そんな…」
これは完全に落ちたな。
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