61 / 303
第58話 出立準備06
しおりを挟む
武装の調達は間に合った。
間に合わせてくれたと言ってもいい。
王城の武器庫への案内はノイツェが担当してくれた。
「一番大事な時に…。足を引っ張って済まない」
「大丈夫です。俺も、セルダさんに指摘されるまで抜けてましたし。本当に英雄が味方で良かったです」
「ノイツェさん。ラフドッグで気絶してましたからねぇ」
「グッ…。英雄との接見を逃してしまうとは、胃が返る程に悔しい。あぁ悔しい」
「何時ぐらいから操られてたの?」
「そうだな…。二人がアッテンハイムへ向かう前の、見送りを済ませた後からだと思う。その後の記憶もしっかり残っているのに、自分が自分でないような。
そんな曖昧な感覚だ。
…さぁ着いたぞ」
開かれた大扉の中は、とても立派な保管庫。
「機動性を重視して、中剣が二千五百。
小盾が二千五百。軽量鎧と兜も二千五百。
射程は短いが精度が高い小弓が五百だ。
矢筒までの用意は無い。
形状はマッハリア仕様に似せている。あちらでロストしても足は付かない程度にな」
「有り難う御座います!陛下にもそうお伝え下さい」
「勿論だ。これ位しか出来なくて済まない気持ちだ。
陛下も心を入れ直し、本気になられた。
タイラントはもう心配ない。君たちは前だけ向いて戦え。
そして勝ってくれ」
「はい!」
「段々と。緊張してきたね…。これが、戦争の準備」
「戦わない私が言える言葉ではないが。気負いは失敗の元だ。ま、二人なら問題ないだろう。
それで。私はここで立っているだけでいいのか?」
「そこの空いてる所で立ってて下さい。
最初は時間掛かると思います」
それから父上の屋敷に飛び、3つの倉庫に向い計6往復した。
本当はもう少し少なく出来たが、盛大に物音を立てる訳にもいかんので。
最後に帰って来た時。
「ポーチの扱いにも慣れて、転移の道具まで使い熟す。
君たちなら東大陸でも充分にやって行けるのではないかな。…私は行った事はないが」
「明日にエドガントさん辺りに聞いてみます。
ノイちゃんは明日来る?」
「勿論。何を差し置いても行くとも。君たちの披露宴は逃してしまったし。男だけと言うのが残念だが」
「偶にはいいでしょ」
「待ってまーす。とは言っても私は行けませんが」
明日の夕方に何を開くか。
それは身内を集めての、細やかな出陣式である。
細やかな?…まぁいいか。
---------------
女子会の場所は、ロロシュ邸内の自宅。
男子会はカメノス邸の宴会場。
女子メンは、新王女メルシャン様にミラン様。
俺たちの手料理なんか食わせて大丈夫なのかと何度も聞いたが、何故かOKが出た。マジかよ…。
他はシュルツ、メルフィン、ペルシェ、ライラ、ニーダ
友人兼給仕役としてアローマと
助っ人のお隣さんからキャライさん
と、豪華な顔触れに萎縮中のレーラさん
(同じ状況のペルシェとニーダとで慰め合っていた)
子供たちはカメノス邸預かり。
仕込みは昼過ぎから始まった。
「えー。本日の料理人担当を務めますスターレンです」
「助手の妻フィーネです」
「お隣のカメノス邸で男子会が始まる前に完成させる所存です。この国の未来を担う方も多数含まれていますので。
全品しっかりと火を通したいと思います」
「思います」
「まだ開始前で仕込みの段階なのに!」
「なのに?」
「既に女子の予定者全員が集まり、建物の外は近衛兵がひしめき合って凄い事になっていますが。
そんな雰囲気に負けずに頑張ります」
「頑張ります!」
「念の為。カメノス商団様から提供頂いた胃薬もご用意しております。万が一お腹が痛くなったら飲んで下さい。
そして、打ち首だけはマジで勘弁して下さい」
「お願いします!」
「「何の問題もありませんわ!」」
「安心しました。
さて。調理に入る前に。ニーダちゃん」
「はい!」
「俺たちからこれまでの功績と慰安を兼ねて、何かプレゼントをと考えていましたが。
俺たちから貰ったとバレれば、女子寮でイジメられちゃう事受合いなので。本日の食事でその代わりとします」
「それだけでも有り難き幸せです!」
「はい。本日のメインは。
女性に嬉しい、脂肪分控え目のシーフードカレーです」
「婚礼式で出たスープカレーとは違うのですね?」
「今回はクワンちゃんに涙を吞ませ、了解を得て作った鶏ガラスープを煮詰め、小麦粉と牛乳で各種スパイスを練り込んだ。ドロッとしたタイプのカレーです」
「それは私も初めてです。楽しみですね」
「…クワァ…」
「本来であれば。麦飯などに掛けて食べるのが俺の理想でしたが、流石にそれでは出せませんので。
本日はこの邸内の本棟の料理人が作った柔らか食パンを添えたいと思います」
「流石に丼飯は私も躊躇してしまいました」
「先ず最初は。微塵切りにした玉葱を、オリーブオイルで狐色に成るまで炒めます。お願いします、フィーネさん」
「何事も最初が肝心ですからね。慎重に焦さないよう頑張ります」
「フィーネさんが炒めている間に、隣で一口大に裁いた馬鈴薯、人参を。同じくオリーブオイルで炒めます。
ここで外面をしっかり目に焼かないと、後の煮込みで煮崩れしてしまうので。こちらも気が抜けません」
「そうですねぇ」
「全ての炒めにバターを使用しても良いのですが。重ねる程に諄くなり、胸焼けの原因にもなるので。今回は使用を控えます」
「女性目線で嬉しい気遣いです」
「次にメインとなる魚介。冷蔵庫の中身を消化する上でも今日で使い切る所存です。
ラフドッグで購入した海老、烏賊、帆立を湯戻ししてから薄い塩胡椒で炒めます」
「内陸では手に入り辛い品々ですから。内容は豪華だと自負しております」
「海老の殻と尻尾の部分。烏賊の下足と内臓。
帆立外周の紐や肝等の部位は、カレーの苦みを大幅に変えてしまうので。全て自分たちで明日消化します」
「それはそれで楽しみです」
「明日も食べに来ます!」
「育ち盛りのシュルツらしい元気なお答え有り難う御座います」
「太っちゃうぞぉ~」
「…運動します!」
「続いて。
炒め終わった野菜と魚介類を大鍋に移し、
水を具材が充分に浸るまで入れ一煮立ち。
煮立ったら、ノイちゃん秘蔵。年代物の赤ワインを…。
並々と注ぎたい所ですが。
未成年者も居ますので、控え目に注ぎます」
「酒精は飛ばせても、余り子供には宜しくないですから。
仕方がありません」
「酒精が飛ばせた段階で。
いよいよカレーの素となるペーストをふんだんに投入」
「スパイシーな香りが漂って来ましたぁ」
「ここから。味が馴染むまで鍋底が焦げないようコトコト煮込むだけなのですが!」
「が?」
「最後の隠し味に。何と、竹炭入りのチョコレートをカレーに加えます」
「何かと女性に嬉しい竹炭と、チョコレートの香ばしさが相まって。より香りが引き立ちますね。
汚い話ですが。正直口の唾液が止まりません」
「それはグッと堪えて頂いて。
フィーネさんに鍋を管理して頂いている間に。
お摘まみ兼、付け出しの本鮪の切り身を!」
「切り身を!」
「お刺身は無理なので。
岩塩と炒り黒胡麻を丁寧に擦り合わせた胡麻塩でソテーしたいと思います」
「生食は食中りの原因にもなりますからね。幾らメルシャン様の強い希望でも、叶える事は出来ませんでした。
ご了承下さい」
「いつかラフドッグまで冷蔵庫が回ったら。王宮で取り寄せさせます。ええ絶対に。その時までの楽しみにしておきます。料理人の反対を押し破ってでも必ず食します!」
「意気や良し。全て自己責任でお願いします。
焼き上がりましたので、配膳をお願いします。
アローマさん、キャライさん」
「「ハッ!」」
「鮪のソテーは。テーブルに据えた、粗潰しの黒胡椒を振り掛けると味が変わりますのでお好みで」
ミラン様の唱和と食べ始めを待ち。
女子会スタート。
鍋を回していたフィーネと交代。
「フィーネも行ってきな。
後、ポテトフライどうする?」
「ありがと。
ポテトは様子を見てマヨは無しで作る積もり。その時はアローマさんにも手伝って貰うから大丈夫。
鍋ごめんね」
「いいっていいって。カレーが残る事を祈ります」
「それは…解んないなぁ」
少しだけ食べて行こうかなぁ。
無くなりそうな予感がするし。
テーブルはフィーネも加わり、和気藹々。
華々しい女子会だ。
完成間近のカレーを小皿に取り味見。
美味い!
少しだけ塩を足して整え、完成。
様子を見に来たキャライさんが。
「素晴らしい。と言う言葉では言い尽くせない光景です。
国の頂点と平民が。こんなにも近い距離に居る。
どんなに栄えた国の歴史を紐解いても、こんな事は有り得ません。
これを為したのは。間違い無く貴方様とフィーネ様です」
「俺の理想を押し付けただけです。
フィーネが心許せる友達が欲しかった。結果が偶々こうなっただけ。
理想で言えば。マッハリアこそこうであって欲しかった。
あの国は、城と城下の距離が離れ過ぎているんで。
それより済みません。こっちに引っ張ってしまって」
「何を仰いますやら。この様な場に居合わせられるだけでも光栄の極みです。
一邸宅の従事者。侍女である私が。
新たな王女様と王妃様に、お二人が作った料理をお運び出来る。この誉れ、感謝の念に堪えません。
今は泣けませんが。夜にはきっと号泣しています」
「それは俺も肩を抱いてあげ…」
フィーネの殺気を感じた。
「セルダさんに慰めて貰って下さい。
カレーも出来上がりましたので。配膳お願いします」
「スターレン様にならセルダも許しますのに。
…至極残念です。
アローマさん。カレーとパンの配膳を」
「はい!只今」
次々と深めのお皿に取られて行くカレー…。
それが台車に乗せられて運ばれる…。
こりゃ残らんな。また何時か挑戦してみよう。
「それではミラン様。皆様。
狭い家ですが、心行くまでお寛ぎ下さい。
じゃあフィーネ。隣行って来るよー」
「行ってらっしゃーい。飲み過ぎ?
飲ませすぎ注意ねー」
皆が手を振ってくれた。
幸せだ。俺、今夜通り魔に刺されて死ぬのかな…。
「またまたご冗談を。それ、好きなのですね。智哉は」
好きな訳あるかーい。
女性だけの楽しげな我が家を出ると。
玄関前でソプランとカーネギが待っていてくれた。
「料理なんて誰かに任せりゃいいもんを。
好きだねぇ、お前も」
「これが、カレー?良い匂いだ。食えないのが、残念」
「料理が趣味なんだよ。大きなお世話だ。
カーネギさんも。みんなの奥さん候補にレシピ回しときますんで。それ程難しくもないし。
候補者さんにお強請りしてみて下さい」
「そうする」
ソプランが伸びをしながら。
「さぁて。明日は俺も休暇貰ったし。
久々に飲み倒すかなぁ」
近衛と警備兵が並び立つ間を、3人でのんびりと歩き。
ロロシュ邸を後にした。
---------------
カメノス邸に着く頃には丁度いい時間。
会場に入るなり、久々に見るモヘッドと元上級3人が固まっていたので。早めに文句を言いに行った。
「モヘッドさんと皆さん。お久し振りです。
何か、俺の噂が東大陸に飛んでるって耳にしましたけど。
どうなってるんですか」
「いやぁ…。お久し振りです。
アッテンハイムの件を知らぬ存ぜぬで押し返していたら。東大陸西部のギルドから鳩が飛んで来ちゃいましてね。
何だか強い奴が居るらしいじゃねぇか!誰だ!
どんなだ!って言うんですよ」
エドガントさんが加えた。
「そっちは無視すると。問い合わせが北にも行ってしまうってんで。仕方なく情報流して食い止めたんだよ。
マッハリアだけには飛ばすな馬鹿野郎ってな」
そうだったんだ。
「あー成程。それは助かりました。
いやぁ良かった。ヒヤヒヤしましたよぉ。
一安心です。気を遣って貰って済みませんでした」
再びモヘッドが溜息混じりに。
「こっちの本部への問い合わせには一切答えてくれないのにねぇ。ホントギルド職員として嫌になります。
あっちは脳筋ばっかで困ったもんです」
通りで連絡が無かった訳だ。
最果ての町。…面倒な人が多そうだなぁ。
「後。南西の大陸で新種のダンジョンが見付かったとか聞いたんですが」
「それは最近になって家のギルドにも回って来ましたね。
なんでも…死霊系の迷宮らしくって…。
本物のレイスが出るって噂です。
当然そんなの攻略なんてされてませんが」
死霊系の魔物の中でも。
倒す手段が限られる厄介な霊体の魔物だ。
詰りは幽霊。
「うわぁ。それは嫌だな。
あっちに行ったら覗いてみようと思ってたのに」
ギークが答えてくれた。
「直ぐには行かない方がいいだろうな。
東でも、得意で狩ってるのは極一部の隊だけだ。
暫くすればそいつらが出張るだろうから。
それまで待った方がいい」
「そうします」
デュルガも。
「本当に行く時が来たら連絡をくれ。
まだ生きているなら、その隊に俺の昔馴染みが居る。
お前の連絡を受けてから調べてみる」
「有り難う御座います。その時は頼らせて貰います。
でも。
先ずは中央を片付けないと何処にも行けませんがね」
「ギルドとして。戦争には加担出来ません。
内状の一部を知る者としては、協力出来なくて申し訳ない気持ちで一杯です」
「それは仕方ないですよ。ルールですから。
逆に手出しされた方が迷惑って言うか。計画グチャグチャになるんで。静観で正解ですよ」
「そう言って貰えると。少しは気が楽になります」
エドガントが割って入る。
「そんな先の話はお前が戻ってきてから幾らでも聞いてやるよ。まあ飲もうや、今日位は。高級酒タダで飲めるって聞いてんだ。
早くしろよ。主役のお前待ちになってんぞ」
振り返ると、予定者が全員集まってこちらを見ていた。
やばいやばい。
慌てて段上に上がりご挨拶。
「これまで皆さんには色々な方面で助けて頂きました。
ご迷惑も沢山掛けました。改めて感謝と謝罪を。
詳しくは割愛しますが、俺と妻で数日中には故郷へと帰ります。
生きて帰って来られたら。また皆で飲みましょう!」
「乾杯!!」
酒宴は夜更けまで続いた。
恐怖はある。不安だらけだ。
もう後戻りは出来ない。失敗は許されない。
この夜の酒は、とても苦い味がした。
間に合わせてくれたと言ってもいい。
王城の武器庫への案内はノイツェが担当してくれた。
「一番大事な時に…。足を引っ張って済まない」
「大丈夫です。俺も、セルダさんに指摘されるまで抜けてましたし。本当に英雄が味方で良かったです」
「ノイツェさん。ラフドッグで気絶してましたからねぇ」
「グッ…。英雄との接見を逃してしまうとは、胃が返る程に悔しい。あぁ悔しい」
「何時ぐらいから操られてたの?」
「そうだな…。二人がアッテンハイムへ向かう前の、見送りを済ませた後からだと思う。その後の記憶もしっかり残っているのに、自分が自分でないような。
そんな曖昧な感覚だ。
…さぁ着いたぞ」
開かれた大扉の中は、とても立派な保管庫。
「機動性を重視して、中剣が二千五百。
小盾が二千五百。軽量鎧と兜も二千五百。
射程は短いが精度が高い小弓が五百だ。
矢筒までの用意は無い。
形状はマッハリア仕様に似せている。あちらでロストしても足は付かない程度にな」
「有り難う御座います!陛下にもそうお伝え下さい」
「勿論だ。これ位しか出来なくて済まない気持ちだ。
陛下も心を入れ直し、本気になられた。
タイラントはもう心配ない。君たちは前だけ向いて戦え。
そして勝ってくれ」
「はい!」
「段々と。緊張してきたね…。これが、戦争の準備」
「戦わない私が言える言葉ではないが。気負いは失敗の元だ。ま、二人なら問題ないだろう。
それで。私はここで立っているだけでいいのか?」
「そこの空いてる所で立ってて下さい。
最初は時間掛かると思います」
それから父上の屋敷に飛び、3つの倉庫に向い計6往復した。
本当はもう少し少なく出来たが、盛大に物音を立てる訳にもいかんので。
最後に帰って来た時。
「ポーチの扱いにも慣れて、転移の道具まで使い熟す。
君たちなら東大陸でも充分にやって行けるのではないかな。…私は行った事はないが」
「明日にエドガントさん辺りに聞いてみます。
ノイちゃんは明日来る?」
「勿論。何を差し置いても行くとも。君たちの披露宴は逃してしまったし。男だけと言うのが残念だが」
「偶にはいいでしょ」
「待ってまーす。とは言っても私は行けませんが」
明日の夕方に何を開くか。
それは身内を集めての、細やかな出陣式である。
細やかな?…まぁいいか。
---------------
女子会の場所は、ロロシュ邸内の自宅。
男子会はカメノス邸の宴会場。
女子メンは、新王女メルシャン様にミラン様。
俺たちの手料理なんか食わせて大丈夫なのかと何度も聞いたが、何故かOKが出た。マジかよ…。
他はシュルツ、メルフィン、ペルシェ、ライラ、ニーダ
友人兼給仕役としてアローマと
助っ人のお隣さんからキャライさん
と、豪華な顔触れに萎縮中のレーラさん
(同じ状況のペルシェとニーダとで慰め合っていた)
子供たちはカメノス邸預かり。
仕込みは昼過ぎから始まった。
「えー。本日の料理人担当を務めますスターレンです」
「助手の妻フィーネです」
「お隣のカメノス邸で男子会が始まる前に完成させる所存です。この国の未来を担う方も多数含まれていますので。
全品しっかりと火を通したいと思います」
「思います」
「まだ開始前で仕込みの段階なのに!」
「なのに?」
「既に女子の予定者全員が集まり、建物の外は近衛兵がひしめき合って凄い事になっていますが。
そんな雰囲気に負けずに頑張ります」
「頑張ります!」
「念の為。カメノス商団様から提供頂いた胃薬もご用意しております。万が一お腹が痛くなったら飲んで下さい。
そして、打ち首だけはマジで勘弁して下さい」
「お願いします!」
「「何の問題もありませんわ!」」
「安心しました。
さて。調理に入る前に。ニーダちゃん」
「はい!」
「俺たちからこれまでの功績と慰安を兼ねて、何かプレゼントをと考えていましたが。
俺たちから貰ったとバレれば、女子寮でイジメられちゃう事受合いなので。本日の食事でその代わりとします」
「それだけでも有り難き幸せです!」
「はい。本日のメインは。
女性に嬉しい、脂肪分控え目のシーフードカレーです」
「婚礼式で出たスープカレーとは違うのですね?」
「今回はクワンちゃんに涙を吞ませ、了解を得て作った鶏ガラスープを煮詰め、小麦粉と牛乳で各種スパイスを練り込んだ。ドロッとしたタイプのカレーです」
「それは私も初めてです。楽しみですね」
「…クワァ…」
「本来であれば。麦飯などに掛けて食べるのが俺の理想でしたが、流石にそれでは出せませんので。
本日はこの邸内の本棟の料理人が作った柔らか食パンを添えたいと思います」
「流石に丼飯は私も躊躇してしまいました」
「先ず最初は。微塵切りにした玉葱を、オリーブオイルで狐色に成るまで炒めます。お願いします、フィーネさん」
「何事も最初が肝心ですからね。慎重に焦さないよう頑張ります」
「フィーネさんが炒めている間に、隣で一口大に裁いた馬鈴薯、人参を。同じくオリーブオイルで炒めます。
ここで外面をしっかり目に焼かないと、後の煮込みで煮崩れしてしまうので。こちらも気が抜けません」
「そうですねぇ」
「全ての炒めにバターを使用しても良いのですが。重ねる程に諄くなり、胸焼けの原因にもなるので。今回は使用を控えます」
「女性目線で嬉しい気遣いです」
「次にメインとなる魚介。冷蔵庫の中身を消化する上でも今日で使い切る所存です。
ラフドッグで購入した海老、烏賊、帆立を湯戻ししてから薄い塩胡椒で炒めます」
「内陸では手に入り辛い品々ですから。内容は豪華だと自負しております」
「海老の殻と尻尾の部分。烏賊の下足と内臓。
帆立外周の紐や肝等の部位は、カレーの苦みを大幅に変えてしまうので。全て自分たちで明日消化します」
「それはそれで楽しみです」
「明日も食べに来ます!」
「育ち盛りのシュルツらしい元気なお答え有り難う御座います」
「太っちゃうぞぉ~」
「…運動します!」
「続いて。
炒め終わった野菜と魚介類を大鍋に移し、
水を具材が充分に浸るまで入れ一煮立ち。
煮立ったら、ノイちゃん秘蔵。年代物の赤ワインを…。
並々と注ぎたい所ですが。
未成年者も居ますので、控え目に注ぎます」
「酒精は飛ばせても、余り子供には宜しくないですから。
仕方がありません」
「酒精が飛ばせた段階で。
いよいよカレーの素となるペーストをふんだんに投入」
「スパイシーな香りが漂って来ましたぁ」
「ここから。味が馴染むまで鍋底が焦げないようコトコト煮込むだけなのですが!」
「が?」
「最後の隠し味に。何と、竹炭入りのチョコレートをカレーに加えます」
「何かと女性に嬉しい竹炭と、チョコレートの香ばしさが相まって。より香りが引き立ちますね。
汚い話ですが。正直口の唾液が止まりません」
「それはグッと堪えて頂いて。
フィーネさんに鍋を管理して頂いている間に。
お摘まみ兼、付け出しの本鮪の切り身を!」
「切り身を!」
「お刺身は無理なので。
岩塩と炒り黒胡麻を丁寧に擦り合わせた胡麻塩でソテーしたいと思います」
「生食は食中りの原因にもなりますからね。幾らメルシャン様の強い希望でも、叶える事は出来ませんでした。
ご了承下さい」
「いつかラフドッグまで冷蔵庫が回ったら。王宮で取り寄せさせます。ええ絶対に。その時までの楽しみにしておきます。料理人の反対を押し破ってでも必ず食します!」
「意気や良し。全て自己責任でお願いします。
焼き上がりましたので、配膳をお願いします。
アローマさん、キャライさん」
「「ハッ!」」
「鮪のソテーは。テーブルに据えた、粗潰しの黒胡椒を振り掛けると味が変わりますのでお好みで」
ミラン様の唱和と食べ始めを待ち。
女子会スタート。
鍋を回していたフィーネと交代。
「フィーネも行ってきな。
後、ポテトフライどうする?」
「ありがと。
ポテトは様子を見てマヨは無しで作る積もり。その時はアローマさんにも手伝って貰うから大丈夫。
鍋ごめんね」
「いいっていいって。カレーが残る事を祈ります」
「それは…解んないなぁ」
少しだけ食べて行こうかなぁ。
無くなりそうな予感がするし。
テーブルはフィーネも加わり、和気藹々。
華々しい女子会だ。
完成間近のカレーを小皿に取り味見。
美味い!
少しだけ塩を足して整え、完成。
様子を見に来たキャライさんが。
「素晴らしい。と言う言葉では言い尽くせない光景です。
国の頂点と平民が。こんなにも近い距離に居る。
どんなに栄えた国の歴史を紐解いても、こんな事は有り得ません。
これを為したのは。間違い無く貴方様とフィーネ様です」
「俺の理想を押し付けただけです。
フィーネが心許せる友達が欲しかった。結果が偶々こうなっただけ。
理想で言えば。マッハリアこそこうであって欲しかった。
あの国は、城と城下の距離が離れ過ぎているんで。
それより済みません。こっちに引っ張ってしまって」
「何を仰いますやら。この様な場に居合わせられるだけでも光栄の極みです。
一邸宅の従事者。侍女である私が。
新たな王女様と王妃様に、お二人が作った料理をお運び出来る。この誉れ、感謝の念に堪えません。
今は泣けませんが。夜にはきっと号泣しています」
「それは俺も肩を抱いてあげ…」
フィーネの殺気を感じた。
「セルダさんに慰めて貰って下さい。
カレーも出来上がりましたので。配膳お願いします」
「スターレン様にならセルダも許しますのに。
…至極残念です。
アローマさん。カレーとパンの配膳を」
「はい!只今」
次々と深めのお皿に取られて行くカレー…。
それが台車に乗せられて運ばれる…。
こりゃ残らんな。また何時か挑戦してみよう。
「それではミラン様。皆様。
狭い家ですが、心行くまでお寛ぎ下さい。
じゃあフィーネ。隣行って来るよー」
「行ってらっしゃーい。飲み過ぎ?
飲ませすぎ注意ねー」
皆が手を振ってくれた。
幸せだ。俺、今夜通り魔に刺されて死ぬのかな…。
「またまたご冗談を。それ、好きなのですね。智哉は」
好きな訳あるかーい。
女性だけの楽しげな我が家を出ると。
玄関前でソプランとカーネギが待っていてくれた。
「料理なんて誰かに任せりゃいいもんを。
好きだねぇ、お前も」
「これが、カレー?良い匂いだ。食えないのが、残念」
「料理が趣味なんだよ。大きなお世話だ。
カーネギさんも。みんなの奥さん候補にレシピ回しときますんで。それ程難しくもないし。
候補者さんにお強請りしてみて下さい」
「そうする」
ソプランが伸びをしながら。
「さぁて。明日は俺も休暇貰ったし。
久々に飲み倒すかなぁ」
近衛と警備兵が並び立つ間を、3人でのんびりと歩き。
ロロシュ邸を後にした。
---------------
カメノス邸に着く頃には丁度いい時間。
会場に入るなり、久々に見るモヘッドと元上級3人が固まっていたので。早めに文句を言いに行った。
「モヘッドさんと皆さん。お久し振りです。
何か、俺の噂が東大陸に飛んでるって耳にしましたけど。
どうなってるんですか」
「いやぁ…。お久し振りです。
アッテンハイムの件を知らぬ存ぜぬで押し返していたら。東大陸西部のギルドから鳩が飛んで来ちゃいましてね。
何だか強い奴が居るらしいじゃねぇか!誰だ!
どんなだ!って言うんですよ」
エドガントさんが加えた。
「そっちは無視すると。問い合わせが北にも行ってしまうってんで。仕方なく情報流して食い止めたんだよ。
マッハリアだけには飛ばすな馬鹿野郎ってな」
そうだったんだ。
「あー成程。それは助かりました。
いやぁ良かった。ヒヤヒヤしましたよぉ。
一安心です。気を遣って貰って済みませんでした」
再びモヘッドが溜息混じりに。
「こっちの本部への問い合わせには一切答えてくれないのにねぇ。ホントギルド職員として嫌になります。
あっちは脳筋ばっかで困ったもんです」
通りで連絡が無かった訳だ。
最果ての町。…面倒な人が多そうだなぁ。
「後。南西の大陸で新種のダンジョンが見付かったとか聞いたんですが」
「それは最近になって家のギルドにも回って来ましたね。
なんでも…死霊系の迷宮らしくって…。
本物のレイスが出るって噂です。
当然そんなの攻略なんてされてませんが」
死霊系の魔物の中でも。
倒す手段が限られる厄介な霊体の魔物だ。
詰りは幽霊。
「うわぁ。それは嫌だな。
あっちに行ったら覗いてみようと思ってたのに」
ギークが答えてくれた。
「直ぐには行かない方がいいだろうな。
東でも、得意で狩ってるのは極一部の隊だけだ。
暫くすればそいつらが出張るだろうから。
それまで待った方がいい」
「そうします」
デュルガも。
「本当に行く時が来たら連絡をくれ。
まだ生きているなら、その隊に俺の昔馴染みが居る。
お前の連絡を受けてから調べてみる」
「有り難う御座います。その時は頼らせて貰います。
でも。
先ずは中央を片付けないと何処にも行けませんがね」
「ギルドとして。戦争には加担出来ません。
内状の一部を知る者としては、協力出来なくて申し訳ない気持ちで一杯です」
「それは仕方ないですよ。ルールですから。
逆に手出しされた方が迷惑って言うか。計画グチャグチャになるんで。静観で正解ですよ」
「そう言って貰えると。少しは気が楽になります」
エドガントが割って入る。
「そんな先の話はお前が戻ってきてから幾らでも聞いてやるよ。まあ飲もうや、今日位は。高級酒タダで飲めるって聞いてんだ。
早くしろよ。主役のお前待ちになってんぞ」
振り返ると、予定者が全員集まってこちらを見ていた。
やばいやばい。
慌てて段上に上がりご挨拶。
「これまで皆さんには色々な方面で助けて頂きました。
ご迷惑も沢山掛けました。改めて感謝と謝罪を。
詳しくは割愛しますが、俺と妻で数日中には故郷へと帰ります。
生きて帰って来られたら。また皆で飲みましょう!」
「乾杯!!」
酒宴は夜更けまで続いた。
恐怖はある。不安だらけだ。
もう後戻りは出来ない。失敗は許されない。
この夜の酒は、とても苦い味がした。
12
あなたにおすすめの小説
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる