白い瞳の猫

木芙蓉

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1章:出会い

⑥折り返し

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街へ帰らなくては。
だがそれは果てしなく遠く感じた。

道という道は無く、
斜面に生えた木と木の間をすり抜けるように
尻もちをつきながら引きずるように移動した。
足にはまだ痛みが時折走った。

行けども行けども景色は変わらない。
何日か前、昨日だったかな?
通ってきた街以上に此処は同じ景色がずっと続いている。

この日は異様に気温は上がり、僕の体力を奪っていった

水を飲まなきゃ。
その日まで来る途中買ってきたペットボトルの水を少しずつ飲んでいたが、
とうとうすべて飲み切ってしまった。
「あいつ」の分も確保しなくては。

帰ることよりも、水を探すことを優先した。


やがてさ迷いながらも引き続き斜面を下っていると、川を見つけた。
これで何とか水を確保できる。とてもなだらかな流れの川だ。
今思えばどこか大河の源流だったのかもしれない。
僕は手で水をすくい口へと運んだ。
冷たいっ!ずっとぬるくなった水を飲んでいたので、その冷たさがとても美味しく感じた。
気付けばがぶ飲みしてしまっていた。
もちろん「あいつ」と一緒に。
美味しそうに飲んでいる。
汚れた毛並みを洗ってみようかと水をかけたが「あいつ」はどうやら苦手らしい。飛び跳ねて避けてしまった。

-水だけじゃなく、ご飯もあげなきゃ。何を上げればいいんだろう。

それも探すことにした。

一段落したら持っていた空のペットボトルに水を入れ再び出発した。
それでもこれだけの水でいつまでもつんだろうか。
水を何時でも確保できるよう僕は川沿いを下っていくことにした。

後にこれはとても危険な事なのだと教えられるんだけど、この時は知る由もなかった。

水だけでも限界がある食べるものを確保しなきゃと思うのだが
サバイバル未経験の僕には周りは未知の世界で難しかった。
時々生えているグロテスクなキノコは明らかに毒を持っているのだが
空腹が限界に達したとき、ついにそれを口につけてしまった。

どうかしていたと思う。

陽もかなり傾いてきた。
僕は激しい腹痛で動けないでいた。
汗がとめどなく流れ大切な水分を奪っていく。
川が近くでよかったその都度、水をそこで飲んだ。

あいつは僕の周りをウロウロ動き回り、
「ニャー」と鳴いたり、背中をこすりつけてくれている。

-心配してくれているのか?ありがとう。
 連れて行ってやれなくてごめんな。
 お前も淋しかったのかい?また淋しい思いをさせてしまうけどごめんな

色々な思いが走馬灯のように駆け巡った。
これが死ぬって言うことなのかな?と「死」を感じた。

意識が薄れていく、気が遠くなるのをなぜか冷静に見ている自分がいた。
それは今でも覚えている。もしかしたら後に勝手に補完されたものだろうか。


ただそこに光を感じたことは覚えている。
光をこちらに向けて走ってくる人たち。

助かった・・・。なんて感じる時間はその時にはなかった。
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