黒い天使と白い悪魔

木芙蓉

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招待状

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 その日優は過ぎていく時間を淡々と過ごしていた。昨夜の2人の事が気にならなかったかと言えば嘘になるが、シュウの登場で恐怖心が薄らいだ分、何処か現実からは隔離された世界、遠い世界の出来事のように優には思えた。
「あれは夢だったのだろう。」
 そう考えることにしていたし、考えられるようになっていた。
 この日優の職場に新人が入ってきた。新人は中途採用だったが年齢は優よ随分と若かった。仕事内容も優とほぼ変わらない様子だった。これでより自分が此処にいる必要性は下がったなと優は感じた。誰にでもできる仕事、代わりはいくらでもいると言われても此処は人手不足だった。だから多少は此処の役に立てている、自分がいる価値があるんだと優は感じでいた。だがそれは違った、代わりはもうすぐ其処にいる。小さく弱弱しい優のプライドはズタズタにされてしまった。
「代わりが来たということはもうすぐ自分が追い出されるのかな?」
 優は一瞬、とてつもなく大きな不安に襲われたような気がしたが、それは直ぐに遠い世界の出来事のように感じるように変わった。それは今の生活のルーティーンが何処か崩れてしまえば何とか平穏に回っている今の生活が音を立てて壊れてしまう。それが壊れてしまうという大きな不安を抱えてしまうことも毎日のルーティンを壊すかもしれないと感じたからか、優は無意識にそれを遠い世界の出来事と認識し、他人事のように俯瞰してそれを見ていた。


 すぐにでも終わらせたいのに継ぎ接ぎだらけの平穏を守ろうとする。その世界が終ることを望んでいる筈なのにその世界が壊れていく事に酷く不安を感じる。優の生活、優の世界は矛盾と矛盾がいくつも複雑に絡み合っていて何処から解けばいいのか優自身わからなくなっていたし、誰に聞くことも出来なかった。だから優は其れから目を背けた。だから其処で起きる現実も夢も区別がつけられなくなってしまったのかもしれない。
  
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