黒い天使と白い悪魔

木芙蓉

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招待状

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 優はシュウの説明を到底呑み込めない様子だった。そんな優の状況を知ってか知らずかシュウは構わず話を続けた。
「我々は望むものに対し、死を与える能力を持っています。そういった意味で私達を死神と呼ぶことは出来るでしょう。ただそれは決して決められた運命と言ったようなものを理由にしたり、神のご判断だなどと言って強制して私達の意志でドナタかの命を奪うことはありません。あくまでその方自ら望んだ方に対してのみです。」
「そしてその頂いた命によって・・・」

 話に入り込もうとしたショウをシュウが手の仕草で止めた。
「自ら死を望んだ方に対して私達は死を与えます。と、同時に残りの寿命分の命を頂いたという形になります。ただ、これは頂いた側、私達が命を吸収して生き永らえると言うものではありません。私達は人間ですし、私達に与えられた天寿を全うするつもりでいます。ただし・・・」

 話を続けようとしたシュウを今度はショウが遮って話し始めた。
「優の命を頂いても良かったんだけどね。生きる事に終わりを望んでいるみたいだったし。でもなんかまだ悩んでるみたいだったし手伝ってもらえないかな?って思ったんだ。俺達2人しか今いないから人手不足なんだ。」
 優はその説明を聞いても、何故自分だったのだろうか?他にも同じように悩んでいる人は沢山いるだろうにと疑問が解消されることは無かったが、その時は疑問を2人にぶつける事はしなかった。
 ショウが喋り終わるとシュウはそれに頷き、再びその穏やかな口調で優に語り掛けた。
「私達は現実世界を生きている人間ですが、そこでいきなり優さんに会って話しかけても信じてもらえないと思い、こうやって夢の世界にお邪魔しました。夢枕に立つというものでしょうか。この世界というか眠りに落ちた後の私達は自分含めて誰かの夢に入り込むことも出来ますし、現実世界をふわふわ飛んでいくことも出来ます。思念体というか幽霊のようなものでしょうか。生霊みたいなものですね。私達以外の他の人と言葉を交わすためには夢を通す必要があります。これが普段主に死を望んでいる人とコンタクトを取る際に用います。普段私達、というか少なくともショウは普段社会で生きた人として生活をしています。話がまた逸れてしまいましたね。私達の仲間になるかどうか決める前に目覚めた後の世界、現実の世界で一度お話しませんか?」



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