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進みゆく秋
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1日中考えた。
どうしたら幻と言われる『キセキバナ』の種を手に入れることが出来るのか、より核心に近付くことが出来るのか。
最短の方法を考えたに考えた結果、私には1つの選択肢しか残らなかった。
「いらっしゃいませ」
カイさんの声で考えが中断される。はっ……そう、今はお仕事中で、それに集中しないと。
「いらっしゃいませ」
1人の、男性とも女性とも言い難い独特な雰囲気を持った人がカフェに訪れる。
黒く艶やかな長い髪は後ろで1つに纏められていて、服装は紺色の浴衣。手には扇子を持っていて、その人がカフェに入った瞬間空気が変わった。
「ううん、いい香り。流石、アヤメさんのお勧めの店なだけある」
その人は、目を瞑りすうっとお店の匂いを吸い込んだ。
低いその声を聞くと、目の前の人が男性であることが分かる。
「カイ、さんというそうだね?」
怪しくも美しい笑みを浮かべて、カイさんの顔を見ている。
「はい」
「菓子屋のアヤメさんから聞いて来てみたんだ」
「光栄です」
カイさんの恭しい態度、頭についている犬らしき耳。もしかしてこの人は……。
「オータムランチを1つくれるかな?」
「はい、かしこまりました」
カイさんの表情が硬い。
それより、さっきこの人は『菓子屋のアヤメさん』と言っていたけれど、もしかしてこの前の女の人のことを言っているのだろうか?
そうだとしたら、そのアヤメさんならなにか情報を知っているんじゃ……。
それより、私の想像と目の前の人は印象が大分違って見える。
もっと年を取っていて、体の線が太く、眉間に皺を寄せているような風貌を思い描いていたけれど、目の前の人はそれとは正反対で中世的で優雅な雰囲気を持っていた。
「カイさん」
「……何も話さないように」
「……はい」
やっぱり、この人が多分『地主』だ。
でも、誰かを恨むような人には見えないし、ましてや人間から虐められてきた動物の妖が付いているようにも見えない。どちらかと言うと、お金持ちの家で育てられた血統付きの犬の妖という雰囲気だけれど……。
「君は……どうしてここで働いているんだい?」
その人は私の顔を見て言っていった。
「あ、えっと……カイさんの料理やハーブティーが好きで、私も同じように人を幸せにするものを提供したいと思ったからです。だからここで勉強を兼ねて、と言いますか……」
「それは素晴らしい志だね」
「あ、ありがとうございます」
三白眼の妖艶な目が三日月の形になって、より艶やかさを増す。
だけどその艶やかさが逆に、全てを見透かしているような気がして、でもここで目を逸らしてしまったら何もかもが終わってしまいそうな気がして、彼の顔から目が離せなかった。
どうしたら幻と言われる『キセキバナ』の種を手に入れることが出来るのか、より核心に近付くことが出来るのか。
最短の方法を考えたに考えた結果、私には1つの選択肢しか残らなかった。
「いらっしゃいませ」
カイさんの声で考えが中断される。はっ……そう、今はお仕事中で、それに集中しないと。
「いらっしゃいませ」
1人の、男性とも女性とも言い難い独特な雰囲気を持った人がカフェに訪れる。
黒く艶やかな長い髪は後ろで1つに纏められていて、服装は紺色の浴衣。手には扇子を持っていて、その人がカフェに入った瞬間空気が変わった。
「ううん、いい香り。流石、アヤメさんのお勧めの店なだけある」
その人は、目を瞑りすうっとお店の匂いを吸い込んだ。
低いその声を聞くと、目の前の人が男性であることが分かる。
「カイ、さんというそうだね?」
怪しくも美しい笑みを浮かべて、カイさんの顔を見ている。
「はい」
「菓子屋のアヤメさんから聞いて来てみたんだ」
「光栄です」
カイさんの恭しい態度、頭についている犬らしき耳。もしかしてこの人は……。
「オータムランチを1つくれるかな?」
「はい、かしこまりました」
カイさんの表情が硬い。
それより、さっきこの人は『菓子屋のアヤメさん』と言っていたけれど、もしかしてこの前の女の人のことを言っているのだろうか?
そうだとしたら、そのアヤメさんならなにか情報を知っているんじゃ……。
それより、私の想像と目の前の人は印象が大分違って見える。
もっと年を取っていて、体の線が太く、眉間に皺を寄せているような風貌を思い描いていたけれど、目の前の人はそれとは正反対で中世的で優雅な雰囲気を持っていた。
「カイさん」
「……何も話さないように」
「……はい」
やっぱり、この人が多分『地主』だ。
でも、誰かを恨むような人には見えないし、ましてや人間から虐められてきた動物の妖が付いているようにも見えない。どちらかと言うと、お金持ちの家で育てられた血統付きの犬の妖という雰囲気だけれど……。
「君は……どうしてここで働いているんだい?」
その人は私の顔を見て言っていった。
「あ、えっと……カイさんの料理やハーブティーが好きで、私も同じように人を幸せにするものを提供したいと思ったからです。だからここで勉強を兼ねて、と言いますか……」
「それは素晴らしい志だね」
「あ、ありがとうございます」
三白眼の妖艶な目が三日月の形になって、より艶やかさを増す。
だけどその艶やかさが逆に、全てを見透かしているような気がして、でもここで目を逸らしてしまったら何もかもが終わってしまいそうな気がして、彼の顔から目が離せなかった。
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