妖の木漏れ日カフェ

みー

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終わらない冬

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「いらっしゃいませ」

 私は私が出来ることをやる。

「あら、笑顔が可愛いわねえ、カモミールティーくれるかしら?」

「はいっ、かしこまりました」

 カイさんを見ると「やってみるか?」と聞かれて、私は迷うことなく頭を縦に振った。

 注文をしてくれたのは、和かな顔の50代くらいの女の方。

 彼女の方を見て目が合うと微笑みを返してくれる。

 こうやって、積み木を重ねていくように少しずつ少しずつ前に歩いていく。

 自分が今淹れることのできる最高のハーブティーを提供する。

 お湯を注ぐと香ってくるカモミールの香り。

「いい香りね」

「はいっ。匂いも味も、落ち着くお茶です」

「そうね。ハーブティーに合うお菓子ってあるかしら? 少しでいいんだけど」   

「えっと……」

 どうしよう……ハーブティーのことばかりでプラスアルファのことは何も知識がない。

 勉強不足を痛感する。

「それでしたら、米粉のクッキーなんてどうでしょう? きなこ風味のものなんですが」

 カイさんが瞬時にフォローしてくれる。

 きなこ風味の米粉クッキー、まだ食べたことがなくて、というかあるのすら知らなかった。

「じゃあ、それを二枚くれるかしら?」

「かしこまりました」

 カイさんの横顔を見るといつも通り落ち着いていて、やっぱりすごいなあと思う。

 





 夕食の時、早速今日のことについて尋ねる。

「カイさん、今日のクッキーって」

「ああ、最近考えててまだメニューには載せてないものだ。今度からハーブティーの茶菓子として付けようかと思ってな」

 常に前向きでカフェのことを考えるカイさんの姿勢に、学ぶことはたくさんある。

 これでいいと現状に満足しない。だからこそ、大きく成長できる。

 自分自身に、これでいいと線を引いた瞬間にそこから上に行くことはなくなる。

 前に、お爺ちゃんが言っていた。

「それ、すごくいいですね。人間界でも、コーヒーを頼むとクッキーやチョコが付いたりするところがあります」

 お茶の合間に小さいお菓子があると、そこでまたお茶とお菓子の味が絡み合って違った風味を楽しめる。

「一口程度っていうところがいいよな」

「ですねっ」

 私も何か、カフェの役に立つようなことを提案できたらいいなと思うのに、何も知識がなくて1つも浮かんでこない。

 カフェに来た皆が喜んでくれること…………。

 なんだろう?

「カイさん、私も何かもっとカフェのために出来ること、ありますか?」

「今も十分頑張ってる」

「でも、それじゃあ……」

「…………またなんかあったか?」

 これ以上カイさんに迷惑をかけたら…………カイさんの心労を考えると、言えない。

 こうやって衣食住を与えてくれているだけでも十分なのに……。

「何もありませんよ」

「……そうか」

 カイさんはきっと何かを察しているのだろうけど、私が話さないから敢えてそれを聞こうとはしない。それが多分、カイさんの優しさ。

 絶対に、向こうの世界に帰る前にカイさんに恩返しをしたい。

 カイさんだけじゃなくて、ハトリさにゃスミレさん、ヤクモさん……そして、キキョウさんにも。

 …………そっか……帰るということは、皆と別れることになるんだ……。

 簡単に、こうして会話をすることができなくなる。

 いくらこっちに来られる鍵があるとしても、私の本当の居場所はここじゃない。
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