妖の木漏れ日カフェ

みー

文字の大きさ
67 / 74
終わらない冬

66

しおりを挟む
「だから、ハーブティーと和食、なんですね」

 自分を救ってくれたものだからこそ、人にもそれを提供している。

「ああ、あとはいつか両親が帰ってきた時に、被っていない方がいいかと思ってな。3人でカフェ経営っていうのもいいだろ?」

 結局、カイさんの両親はまだあの屋敷にいる。

 でもそれは多分、自分たちで決断したことだと私は思っている、ううん、そう思いたい。

「すごく素敵な夢だと思います」

「真由の夢は?」

 私の夢……。

「私は…………カイさんやハトリさんのように人の役に立つ何かを提供することです。自分が犠牲になっても、誰かが笑ってくれれば」

 だから、背中を刺されても、もし殴られたとしても、私はここの人たちを救いたい。

 人間によってもたさられた哀愁や憎悪を消し去りたい。

 楽になって欲しいの。

 そしたら多分、私の中に眠る憎しみも一緒にどこか遠くへと飛ばされる気がするから。

「真由は偉いな。背中の傷、ハトリの両親の薬のおかげで多分明日には無くなるはずだから、今日はゆっくり寝てろよ?」

「ハトリさんの両親って」

 そういえば、聞いたことがない。

「母親が薬屋だよ。ハトリの母親が作る薬は、その効果が強力なんだ。傷も深くなければ直ぐに治る」

「すごいですね」

「ああ、俺なんかよりもずっとずっとな」

 それを言うとカイさんは部屋を出ていった。






 次の日目覚めると、背中をさされたという事実が嘘かのように体が軽い。

 顔を洗っていると大きな音でお腹がぐうっとなる。

「たくさん食べてたくさん働くぞっ」

 自分に負けないように、気合を入れる。

 そういえば、ほんのりとこんがりと何かが焼ける匂いがしてくる。

 それはより空腹は加増する。

「おはようございますっ」

 笑顔でいればきっと、風向きが変わる。

「おはよう。体はどうだ?」

「もう大丈夫な気がします」

「まあ、無理はすんなよ」

「はいっ」

 カイさんの美味しい料理とハトリさんのお母さんの薬があればいつも通り、ううん、いつも以上にパワーが体の奥から溢れ出る。

 そういえば……ミコトさん、大丈夫かな?

 シドウさんに頬を叩かれて、哀しみの色を浮かべていた。

 ミコトさんの言っていた『痛い』という言葉から感じる苦痛。

 人間である私が思うのも違うかもしれないけど……。

 叩かれたり投げられたり……分かる。

 虐待されて死んでいった悲しい動物だって、現実に目を背けたいほどにたくさんいるはず。

 動物も人間と同じなのに、命に軽いも重いもない。

 ふと思い出す。そういえば、ミコトさん何かを言いかけていたような…………、なんだろう。

 聞いてみたいけれど、私と話をしてくれるのか、そもそも会ってくれるのかも分からない。

 玉を壊す時私は…………、最悪のシナリオを予想しておかないと、いざそれが自分に襲いかかってきたときに自分が自分でいられなくなる。

 だから、逃げたくても怖くても泣きそうになっても、覚悟はする。
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...