68 / 74
終わらない冬
67
しおりを挟む
あれから数十日が過ぎた。
けれどまだまだ寒さは続き、今日も街は雪景色。
短刀はまだ色は変わらずそのままの色を保っていた。ただ、少しだけ明るくなっているような気もする。
今日もいつもの通りカフェでハーブティーを淹れていた。
「あ……」
「あなたの、ハーブティーを飲みに来たのよ」
最後に会った時よりも少しだけ、温柔な雰囲気がミコトさんを包んでいる。
当たり前だけど、シドウさんに叩かれた頬にももう赤みはない。
「なにがいいですか?」
「なにがおすすめなの? 私、ハーブティーってよく分からないんだけど」
「それでしたら、ローズヒップなんてどうですか? 割と飲みやすいですし、女性に人気なんですよ」
「じゃあ、それお願い」
「はい」
ミコトさんが、私の淹れたハーブティーを飲んでくれる日があるなんてと、感涙してしまいそう。
目が合うと逸らされてしまうけれど、そこから冷たさは感じない。
「あなた……玉を壊すときのこと誰かに聞いたの?」
「壊す時のこと、ですか? いえ」
ミコトさんは、唇を噛んで私の顔を見た。
「噂だから本当のことは分からないの。参考までに聞いて」
ミコトさんの口調は真剣だった。そこから分かるのは、決して明るくはない内容だということ。
「その玉を割った時、その中にある霧に身がくるまれて、全身にその毒が巡るらしいわ。とても……苦しいって。死ぬかもしれないって」
「そうなんですか」
なんとなく、想像はついていた。だって、あの黒々しさ。ただであの玉を割れるなんて、見た瞬間から思ってなかった。
「怖くないの?」
「……怖いですよ。とても、怖いです。逃げたいです。もしどの選択肢を選んでも死んでしまうなら、苦しまないで死にたいです。でも……私は皆さんの苦しみを昇華したい。せめて、自分たち人間がしてしまった過ちを消したいんです」
ミコトさんは、涙を流していた。
その涙はとても奇麗で純粋で、ミコトさんの知られざる内面を見られたような気がした。
「馬鹿じゃないの」
「だって、いつまでも人間のことを恨んでいて欲しくないから。動物のことを大切に思う人間もたくさんいることを知ってほしいんです。あ、出来ました。奇麗な赤色ですよ」
淹れたてのローズヒップに蜂蜜を入れてをミコトさんに提供する。
ミコトさんは、涙を啜りながらそれを飲む。
「甘酸っぱい……」
「美容にもいいんですよ。女性の味方のハーブティーですね」
ミコトさんは元から美しい人だけれど、より輝きを増すはず。
また、飲みに来てくれたら嬉しい。次は何をミコトさんの為に淹れようか、今から楽しくなる。
あとは、カイさんの料理も食べて欲しいなんて、欲深いかな。
「あなた、もし人間界に帰られることになったら、行ってしまうんでしょう?」
「……そうですね」
「キキョウはきっと、寂しい思いをするわね」
それはキキョウさんだけじゃなくて、私も同じだ。ずっとずっとキキョウさんといる未来を描けるならばそうしたい。
それに、キキョウさんだけじゃない、カイさんやハトリさんたちとももっともっと一緒に居たい。
「ミコトさんがいるじゃないですか」
本当の気持ちは言うべきじゃない。心の中にしまっておくのが良い。
「私は……まあ、そうね。今度、遊びに来てよ。私が何かお菓子でも作ってあげるわ」
「わあ、嬉しいです。ありがとうございます」
けれどまだまだ寒さは続き、今日も街は雪景色。
短刀はまだ色は変わらずそのままの色を保っていた。ただ、少しだけ明るくなっているような気もする。
今日もいつもの通りカフェでハーブティーを淹れていた。
「あ……」
「あなたの、ハーブティーを飲みに来たのよ」
最後に会った時よりも少しだけ、温柔な雰囲気がミコトさんを包んでいる。
当たり前だけど、シドウさんに叩かれた頬にももう赤みはない。
「なにがいいですか?」
「なにがおすすめなの? 私、ハーブティーってよく分からないんだけど」
「それでしたら、ローズヒップなんてどうですか? 割と飲みやすいですし、女性に人気なんですよ」
「じゃあ、それお願い」
「はい」
ミコトさんが、私の淹れたハーブティーを飲んでくれる日があるなんてと、感涙してしまいそう。
目が合うと逸らされてしまうけれど、そこから冷たさは感じない。
「あなた……玉を壊すときのこと誰かに聞いたの?」
「壊す時のこと、ですか? いえ」
ミコトさんは、唇を噛んで私の顔を見た。
「噂だから本当のことは分からないの。参考までに聞いて」
ミコトさんの口調は真剣だった。そこから分かるのは、決して明るくはない内容だということ。
「その玉を割った時、その中にある霧に身がくるまれて、全身にその毒が巡るらしいわ。とても……苦しいって。死ぬかもしれないって」
「そうなんですか」
なんとなく、想像はついていた。だって、あの黒々しさ。ただであの玉を割れるなんて、見た瞬間から思ってなかった。
「怖くないの?」
「……怖いですよ。とても、怖いです。逃げたいです。もしどの選択肢を選んでも死んでしまうなら、苦しまないで死にたいです。でも……私は皆さんの苦しみを昇華したい。せめて、自分たち人間がしてしまった過ちを消したいんです」
ミコトさんは、涙を流していた。
その涙はとても奇麗で純粋で、ミコトさんの知られざる内面を見られたような気がした。
「馬鹿じゃないの」
「だって、いつまでも人間のことを恨んでいて欲しくないから。動物のことを大切に思う人間もたくさんいることを知ってほしいんです。あ、出来ました。奇麗な赤色ですよ」
淹れたてのローズヒップに蜂蜜を入れてをミコトさんに提供する。
ミコトさんは、涙を啜りながらそれを飲む。
「甘酸っぱい……」
「美容にもいいんですよ。女性の味方のハーブティーですね」
ミコトさんは元から美しい人だけれど、より輝きを増すはず。
また、飲みに来てくれたら嬉しい。次は何をミコトさんの為に淹れようか、今から楽しくなる。
あとは、カイさんの料理も食べて欲しいなんて、欲深いかな。
「あなた、もし人間界に帰られることになったら、行ってしまうんでしょう?」
「……そうですね」
「キキョウはきっと、寂しい思いをするわね」
それはキキョウさんだけじゃなくて、私も同じだ。ずっとずっとキキョウさんといる未来を描けるならばそうしたい。
それに、キキョウさんだけじゃない、カイさんやハトリさんたちとももっともっと一緒に居たい。
「ミコトさんがいるじゃないですか」
本当の気持ちは言うべきじゃない。心の中にしまっておくのが良い。
「私は……まあ、そうね。今度、遊びに来てよ。私が何かお菓子でも作ってあげるわ」
「わあ、嬉しいです。ありがとうございます」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる