妖の木漏れ日カフェ

みー

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終わらない冬

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 あれから数十日が過ぎた。

 けれどまだまだ寒さは続き、今日も街は雪景色。

 短刀はまだ色は変わらずそのままの色を保っていた。ただ、少しだけ明るくなっているような気もする。

 今日もいつもの通りカフェでハーブティーを淹れていた。

「あ……」

「あなたの、ハーブティーを飲みに来たのよ」

 最後に会った時よりも少しだけ、温柔な雰囲気がミコトさんを包んでいる。

 当たり前だけど、シドウさんに叩かれた頬にももう赤みはない。

「なにがいいですか?」

「なにがおすすめなの? 私、ハーブティーってよく分からないんだけど」

「それでしたら、ローズヒップなんてどうですか? 割と飲みやすいですし、女性に人気なんですよ」

「じゃあ、それお願い」

「はい」

 ミコトさんが、私の淹れたハーブティーを飲んでくれる日があるなんてと、感涙してしまいそう。

 目が合うと逸らされてしまうけれど、そこから冷たさは感じない。

「あなた……玉を壊すときのこと誰かに聞いたの?」

「壊す時のこと、ですか? いえ」

 ミコトさんは、唇を噛んで私の顔を見た。

「噂だから本当のことは分からないの。参考までに聞いて」

 ミコトさんの口調は真剣だった。そこから分かるのは、決して明るくはない内容だということ。

「その玉を割った時、その中にある霧に身がくるまれて、全身にその毒が巡るらしいわ。とても……苦しいって。死ぬかもしれないって」

「そうなんですか」

 なんとなく、想像はついていた。だって、あの黒々しさ。ただであの玉を割れるなんて、見た瞬間から思ってなかった。

「怖くないの?」

「……怖いですよ。とても、怖いです。逃げたいです。もしどの選択肢を選んでも死んでしまうなら、苦しまないで死にたいです。でも……私は皆さんの苦しみを昇華したい。せめて、自分たち人間がしてしまった過ちを消したいんです」

 ミコトさんは、涙を流していた。

 その涙はとても奇麗で純粋で、ミコトさんの知られざる内面を見られたような気がした。

「馬鹿じゃないの」

「だって、いつまでも人間のことを恨んでいて欲しくないから。動物のことを大切に思う人間もたくさんいることを知ってほしいんです。あ、出来ました。奇麗な赤色ですよ」

 淹れたてのローズヒップに蜂蜜を入れてをミコトさんに提供する。

 ミコトさんは、涙を啜りながらそれを飲む。

「甘酸っぱい……」

「美容にもいいんですよ。女性の味方のハーブティーですね」

 ミコトさんは元から美しい人だけれど、より輝きを増すはず。

 また、飲みに来てくれたら嬉しい。次は何をミコトさんの為に淹れようか、今から楽しくなる。

 あとは、カイさんの料理も食べて欲しいなんて、欲深いかな。

「あなた、もし人間界に帰られることになったら、行ってしまうんでしょう?」

「……そうですね」

「キキョウはきっと、寂しい思いをするわね」

 それはキキョウさんだけじゃなくて、私も同じだ。ずっとずっとキキョウさんといる未来を描けるならばそうしたい。
 
 それに、キキョウさんだけじゃない、カイさんやハトリさんたちとももっともっと一緒に居たい。

「ミコトさんがいるじゃないですか」
 
 本当の気持ちは言うべきじゃない。心の中にしまっておくのが良い。

「私は……まあ、そうね。今度、遊びに来てよ。私が何かお菓子でも作ってあげるわ」

「わあ、嬉しいです。ありがとうございます」

 
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