【完結】カラスとすずらん ~意識低い系冒険者パーティの台所を預かっています~平凡なわたしと、闇を抱えた彼の恋の話~

天草こなつ

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【第1部】1章 花と少女

4話 意識低い系パーティ

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「お。早速作ってるのか」
「は、はい……」

 巨大なボールでおびただしい量のパンケーキの粉を混ぜていると、グレンさんがやってきた。
 ジャミルはひたすらパンケーキを焼いている。
 ――今、何枚目だろう……。

「何か手伝おうか」
「やめろ」
「えっ」

 わたしが何か言うより前にジャミルが冷たく言い放つ。
 
「アンタがキッチンのことやるとロクなことがねぇ。一切手出しすんな」
「ひどいなぁ……」
「何しにきたんだよ。メシはまだだぞ」
「ああ、明日とあさっての依頼内容言ってなかったと思って」

 言いながらグレンさんはふところから手帳を取り出し、読み上げ始めた。

(……わたしこれ聞いちゃってもいいのかな?)

 目線だけで見回してみたけれど、グレンさんもジャミルもルカも、わたしを気にしている様子はない。
 聞いててもいいみたい……?

「最初はアディントンまで手紙の配達。その次は、ヒースコートまで荷物の配達。で、次がリーネまで手紙の配達。ついでにヘインズの森で薬草採取」

(なんだか軽い内容ばっかり……?)

 その次の日の依頼内容も配達配達配達、薬草採取、配達、配達。それも近場の街ばかり。
 冒険者ギルドで依頼が貼ってある掲示板を見ることがあるけど、その距離でその仕事だとたぶん報酬も低いはず。
 わたしは月に20万。ジャミルやルカも同じくらい給料をもらっているとしたら、採算が取れているとはとても思えない。
 他の冒険者や傭兵団がどんな風に仕事しているのか知らないけど、これが普通とはとても……?
 
「レイチェル。次早く」
「えっ! あっ、うん」

 ボーッと聞いていたら手が止まっていたようで、ジャミルに声をかけられた。
 グレンさんは依頼を読み上げている。
 ジャミルはひたすらパンケーキを焼き、お皿に山積みにしていく。
 そのパンケーキをルカがじーっと眺め、ただただお腹を鳴らしている。

(誰も聞いてなくない……?)

 ――このパーティー、ひょっとしてすごく変なのでは……?
 
 
 ◇ 
 
 
「レイチェルー! お昼食べよー! ねーねー、どうだったの、初仕事は!」

 月曜日、メイちゃんがわくわくしながら声をかけてきた……けど。

「パンケーキとハンバーグだった」
「あ? 何それ??」
「んっとねー、パンケーキとハンバーグをず――っと作ってた」

 ジャミルに『冷凍できる食べ物を』って言われたから、1日めはパンケーキの粉混ぜてひたすら焼いて、次の日はハンバーグをひたすらこねて焼いて、それだけで終わった。

「あ、そう……なんかよく分かんないけど」
「なんかね、あそこのパーティー、配達の仕事だけをやってるみたいなんだけど変わってるよね?」
「ほーん。まぁ、そういうの専門でやってるとこもあるわね」
「……そうなの?」
「ん。郵便局っていうんだけど」
「……あはは」

 荷物と手紙の配達。宅配、または郵便配達。それも近場で。それって冒険っていう?
 
「冒険者のことってよくわかんないけど、配達オンリーって楽しいのかな~」
「まあ、駆け出しだとそういうのやったりするって聞くけどねー。そのうち摩訶不思議かつ奇妙な冒険に出る系じゃなーい?」
「摩訶不思議で奇妙……そうかなぁ……」
「ま、いいんじゃん? レイチェルが冒険に出るわけじゃなし。20万もらえるんでしょー? 適当にやっとけやっとけ」
「そうだね……」
 
 
 ◇
 
 
「あ……こんにちは」
「ああ」

 月曜日。今日も図書館の司書席にはグレンさんが座っている。

「あのー」
「……ん?」

 仕事中だけど、また話しかけてしまった。
 ――1回話しかけたら、次はけっこうアクション起こしやすいものなんだなあ。

「えと、グレンさん達は配達が専門なんですか?」
「ああ……そんな感じだな」
「ギルドには魔物退治とか、洞窟の探索とかもありますけど、そういうのは……」
「うん。そういうのはやらないな」
「やらないんですか」
「魔物討伐とか面倒だから。楽な依頼で気楽に過ごしたいんだ」
(えええ……)

 さわやかに駄目な発言をされてしまった。

「えっと、えっと、わたし、本当に20万とかもらっちゃっていいんでしょうか?」
「……それは大丈夫。俺、金持ってるから」
「ええええ……」

 ドン引きしてしまって、思わず声に出してしまう。
 「金持ってるから」って。それはそうかもしれないけど、そんな身も蓋もない……。

「君は料理を作ってくれればいいから、俺たちの冒険は気にしないでいい。……ああ、昨日作ってくれたハンバーグ、あれ美味しかったよ」
「あ……ありがとうございます」

 お礼を言うとグレンさんは伏し目がちにフッと笑った。

(ううう……)

 ――褒められて嬉しいし、笑顔かっこいいけど。
 どうしよう、かっこいいけどかっこ悪いよこの人……! 
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