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6章 ことのはじまり
4話 妙な三人パーティは討伐をしない
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「――本当に静かでのどかな所だな」
「ああ。ホントにこれ砦なのか?」
「はいー。こう見えて、実は堅牢な砦なんですよぉ」
ある晴れた日の昼下がり。
オレ達は借りることになった砦の下見に来た。そろそろ春だ。色んな鳥が鳴いている。うららかだ。のどかだ。
砦の見た目は石造りで無骨だが、景観はいい。
のどかとか景観とか別にいらねえ……。
ちなみに案内役はまたあの語尾が伸びる女だ。
ルカは珍しくグレンから離れて中庭にいた。
言っちゃなんだが、いない方が説明を聞く時もスムーズでいい。
「お兄ちゃま」「お兄ちゃまじゃない」このやりとりの無限ループは正直ダルいんだ。
諦めてお兄ちゃまって呼ばれてろよって思わなくないんだが、当事者だとそうもいかねーだろな。
昨日ちょっと顔を赤らめていた案内役の女も「お兄ちゃま」を聞いて一瞬顔が青ざめたのをオレは見た。
その後も相変わらず語尾が伸びる喋り方だけど、トーンは心なしかビジネスライクになっているような気がする。
砦の内部は、1階は厨房と食堂、風呂トイレなどの共同スペースに、傭兵や冒険者らしく訓練場や瞑想室、それに医務室に作戦室、隊長の部屋。
2階が各々の宿泊部屋、その上は屋上で飛行動物が待機するスペースになっていた。
そして地上の最奥の離れには地下に降りる階段もあった。――そこには牢屋があった。
「この通りぃ、ちゃんと地下牢もあるんですよー。すごいでしょー?」
(ちゃんとってなんだよ、ちゃんとって……)
ちゃんと完備されているというその地下牢は、一際丈夫そうな石と、なんかモヤーっと光る特殊な金属の鉄格子で作られていた。
「牢屋はどこも随時最新式なんですよぉ。詳しくは企業秘密なんですけど、風と影の魔石が埋まってましてー。これじゃないと魔法使いの魔法が封じられませんからー。うふふ」
何が『うふふ』なのか全然分からないが、なんかそういうことらしい。
「屈強な戦士もある程度弱体化させられますよー。ガチムチな戦士が自分の筋肉以上の実力出せなくてショボンとする様ってぇ、サイコーですよねぇ。うふふ」
知らねーよ。どういうフェチだよ。『うふふ』じゃねーんだよ何が面白えんだ。
冒険者も冒険者ギルドの関係者も変態変人揃いなのか? オレはそんなのの仲間入りしたくねー。
◇
そんなわけで砦をレンタルし、ルカだけがここに住むことになった。
週末、オレとグレンはここで待ち合わせをする。
アディントンという街、それから王都が近いからそっち方面の依頼をグレンが取ってくる。
依頼は配達と、その辺で採れる薬草採取とか。
道中、自生している薬草や木の枝やきのこなんかを採取する。
それで辿り着いた街の教会に行き、オレは回復魔法をかけてもらい聖水ももらう。
採集中や歩いてる時に魔物に襲われる時があるが、ルカが放つ魔法がヤバすぎた。
コイツの水魔法で採取アイテムが残らず流れていく。あと、氷魔法で草が凍って死に絶えた。
それからゴブリンだのスライムだの弱い魔物相手にめちゃくちゃな威力の水や氷の魔法で殺す。
威力を抑えろというんだが全く効かない。基本オーバーキルだった。
雑魚のゴブリンが「そんな威力でやらなくても」というくらいの大きい氷柱に風穴開けられたり、水の刃で真っ二つにされたり気の毒だった。
また、オレやグレンが戦っている最中にしゃしゃり出てきてオレたちが巻き込まれそうになること数十回。
パーティ? なにそれおいしいの? とばかりに1人で殺しまくる。
ギルドには小さい依頼だと週に7から10個、強い魔物退治なら週に1度でもして報告していればパーティとして十分活動していると見なされる。
ルカの魔法はすごい。グレンの剣の腕もすごい。グレンは、オレの剣の腕はなかなかいいと言ってくれていた。――ボロクソに負けたけど、そうらしい。
もっとランクの高い魔物が狩れるかもしれない。そうすればパーティとしての活動は月に2回くらいでいいとも聞いた。
だが……。
「――なあ、グレンさんよ、オレは……魔物退治はちっと遠慮したいんだが」
ある日魔物の巣に乗り込んで討伐任務を果たしたあと、オレはグレンにそう持ちかけていた。
「グレンでいいぞ。――そうだな、今のままだとチームワークもへったくれもないし、俺達の命も危ない」
「それもあるけど……オレ戦うのあんま好きになれねぇ……こんな剣持っててアレだけどよ」
「…………」
しかもオレは剣を2本ぶら下げていた。
拾っちまった呪いの魔剣と、もう一本は普通の剣だ――戦う時はこっちを使う。
さすがに呪いの剣を抜くのは怖い。けど家に置いてくることはできなかった。勝手についてくるからだ。
2本下げてるとか好戦的で手練の剣士感がヤバい。実戦経験少ないエアー剣士なのに。
「なんかこう……肉を断ち切る感覚がどうにも受け付けねぇっつーか。食べるために捌くのと何が違うのかって言われたら答えらんねえんだけど」
「…………」
「あと……わざわざソイツの生活圏内に行って殺すってのも、オレはちょっと。や、行けと言われたらそりゃ行くけど……」
「…………」
(う……さすがにちょっと甘すぎるか……)
グレンは何も言わない。
たまにルカの邪魔が入って思うように戦えないことが多々あったが、グレンはかなり経験のある剣士みたいだった。
雑魚相手とはいえ本当に一瞬でケリがつく。こりゃオレはボロクソに負けるハズだなと思った。
そういう人間の前でこういうことを言うのは正直気が引けたが……。
そもそもオレのせいでよく分からん冒険に出るハメになっちまってるわけだし。
(『なめたこと言ってんじゃねーよ』とか言われちまうかな……?)
「――分かった。これ以降は魔物退治は受けないでおく」
「! いいのか?!」
「けど、そうすると必然的にしょうもない依頼を多めに受けることになるけどいいのか?」
「そっか、そうなるか……。いや、オレは別にそれでも。戦うよりは、断然」
「分かった。……ジャミル君は剣の腕はいいが、戦闘向きじゃないみたいだな」
「う……まあ、そりゃアンタよりは断然弱いけども」
「そうじゃなくて……そっちの剣に比べて、闘志に色がないから」
「色……?」
「剣はすごい色々殺したいみたいだけどな」
「こ、怖ぇえ……」
――それ以降、グレンは本当に魔物退治の依頼は取ってこなかった。
以前剣はコイツのことを「火の紋章の男」だの何だの言っていた。
紋章――女神の祝福、自然の声を聞き、かざせば無限に自然の力を行使できる とか言われているアレだと思う。
じゃあコイツは紋章を持っているのか。
『闘志に色がない』
『剣は色々殺したいみたいだ』
よく分からないが、オレには見えない何かが見えているようだった――。
「ああ。ホントにこれ砦なのか?」
「はいー。こう見えて、実は堅牢な砦なんですよぉ」
ある晴れた日の昼下がり。
オレ達は借りることになった砦の下見に来た。そろそろ春だ。色んな鳥が鳴いている。うららかだ。のどかだ。
砦の見た目は石造りで無骨だが、景観はいい。
のどかとか景観とか別にいらねえ……。
ちなみに案内役はまたあの語尾が伸びる女だ。
ルカは珍しくグレンから離れて中庭にいた。
言っちゃなんだが、いない方が説明を聞く時もスムーズでいい。
「お兄ちゃま」「お兄ちゃまじゃない」このやりとりの無限ループは正直ダルいんだ。
諦めてお兄ちゃまって呼ばれてろよって思わなくないんだが、当事者だとそうもいかねーだろな。
昨日ちょっと顔を赤らめていた案内役の女も「お兄ちゃま」を聞いて一瞬顔が青ざめたのをオレは見た。
その後も相変わらず語尾が伸びる喋り方だけど、トーンは心なしかビジネスライクになっているような気がする。
砦の内部は、1階は厨房と食堂、風呂トイレなどの共同スペースに、傭兵や冒険者らしく訓練場や瞑想室、それに医務室に作戦室、隊長の部屋。
2階が各々の宿泊部屋、その上は屋上で飛行動物が待機するスペースになっていた。
そして地上の最奥の離れには地下に降りる階段もあった。――そこには牢屋があった。
「この通りぃ、ちゃんと地下牢もあるんですよー。すごいでしょー?」
(ちゃんとってなんだよ、ちゃんとって……)
ちゃんと完備されているというその地下牢は、一際丈夫そうな石と、なんかモヤーっと光る特殊な金属の鉄格子で作られていた。
「牢屋はどこも随時最新式なんですよぉ。詳しくは企業秘密なんですけど、風と影の魔石が埋まってましてー。これじゃないと魔法使いの魔法が封じられませんからー。うふふ」
何が『うふふ』なのか全然分からないが、なんかそういうことらしい。
「屈強な戦士もある程度弱体化させられますよー。ガチムチな戦士が自分の筋肉以上の実力出せなくてショボンとする様ってぇ、サイコーですよねぇ。うふふ」
知らねーよ。どういうフェチだよ。『うふふ』じゃねーんだよ何が面白えんだ。
冒険者も冒険者ギルドの関係者も変態変人揃いなのか? オレはそんなのの仲間入りしたくねー。
◇
そんなわけで砦をレンタルし、ルカだけがここに住むことになった。
週末、オレとグレンはここで待ち合わせをする。
アディントンという街、それから王都が近いからそっち方面の依頼をグレンが取ってくる。
依頼は配達と、その辺で採れる薬草採取とか。
道中、自生している薬草や木の枝やきのこなんかを採取する。
それで辿り着いた街の教会に行き、オレは回復魔法をかけてもらい聖水ももらう。
採集中や歩いてる時に魔物に襲われる時があるが、ルカが放つ魔法がヤバすぎた。
コイツの水魔法で採取アイテムが残らず流れていく。あと、氷魔法で草が凍って死に絶えた。
それからゴブリンだのスライムだの弱い魔物相手にめちゃくちゃな威力の水や氷の魔法で殺す。
威力を抑えろというんだが全く効かない。基本オーバーキルだった。
雑魚のゴブリンが「そんな威力でやらなくても」というくらいの大きい氷柱に風穴開けられたり、水の刃で真っ二つにされたり気の毒だった。
また、オレやグレンが戦っている最中にしゃしゃり出てきてオレたちが巻き込まれそうになること数十回。
パーティ? なにそれおいしいの? とばかりに1人で殺しまくる。
ギルドには小さい依頼だと週に7から10個、強い魔物退治なら週に1度でもして報告していればパーティとして十分活動していると見なされる。
ルカの魔法はすごい。グレンの剣の腕もすごい。グレンは、オレの剣の腕はなかなかいいと言ってくれていた。――ボロクソに負けたけど、そうらしい。
もっとランクの高い魔物が狩れるかもしれない。そうすればパーティとしての活動は月に2回くらいでいいとも聞いた。
だが……。
「――なあ、グレンさんよ、オレは……魔物退治はちっと遠慮したいんだが」
ある日魔物の巣に乗り込んで討伐任務を果たしたあと、オレはグレンにそう持ちかけていた。
「グレンでいいぞ。――そうだな、今のままだとチームワークもへったくれもないし、俺達の命も危ない」
「それもあるけど……オレ戦うのあんま好きになれねぇ……こんな剣持っててアレだけどよ」
「…………」
しかもオレは剣を2本ぶら下げていた。
拾っちまった呪いの魔剣と、もう一本は普通の剣だ――戦う時はこっちを使う。
さすがに呪いの剣を抜くのは怖い。けど家に置いてくることはできなかった。勝手についてくるからだ。
2本下げてるとか好戦的で手練の剣士感がヤバい。実戦経験少ないエアー剣士なのに。
「なんかこう……肉を断ち切る感覚がどうにも受け付けねぇっつーか。食べるために捌くのと何が違うのかって言われたら答えらんねえんだけど」
「…………」
「あと……わざわざソイツの生活圏内に行って殺すってのも、オレはちょっと。や、行けと言われたらそりゃ行くけど……」
「…………」
(う……さすがにちょっと甘すぎるか……)
グレンは何も言わない。
たまにルカの邪魔が入って思うように戦えないことが多々あったが、グレンはかなり経験のある剣士みたいだった。
雑魚相手とはいえ本当に一瞬でケリがつく。こりゃオレはボロクソに負けるハズだなと思った。
そういう人間の前でこういうことを言うのは正直気が引けたが……。
そもそもオレのせいでよく分からん冒険に出るハメになっちまってるわけだし。
(『なめたこと言ってんじゃねーよ』とか言われちまうかな……?)
「――分かった。これ以降は魔物退治は受けないでおく」
「! いいのか?!」
「けど、そうすると必然的にしょうもない依頼を多めに受けることになるけどいいのか?」
「そっか、そうなるか……。いや、オレは別にそれでも。戦うよりは、断然」
「分かった。……ジャミル君は剣の腕はいいが、戦闘向きじゃないみたいだな」
「う……まあ、そりゃアンタよりは断然弱いけども」
「そうじゃなくて……そっちの剣に比べて、闘志に色がないから」
「色……?」
「剣はすごい色々殺したいみたいだけどな」
「こ、怖ぇえ……」
――それ以降、グレンは本当に魔物退治の依頼は取ってこなかった。
以前剣はコイツのことを「火の紋章の男」だの何だの言っていた。
紋章――女神の祝福、自然の声を聞き、かざせば無限に自然の力を行使できる とか言われているアレだと思う。
じゃあコイツは紋章を持っているのか。
『闘志に色がない』
『剣は色々殺したいみたいだ』
よく分からないが、オレには見えない何かが見えているようだった――。
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