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10章 "悲嘆"
12話 光と闇
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「グレン! おい、グレン!!」
「隊長! 隊長!」
「…………っ、うう……っ」
魔物討伐のあとベルナデッタと共に医務室で寝ているグレンの様子を見に来たら、頭を抱えてひどくうなされていた。
こんな状態では寝ている方が楽だとも思えず身体を揺さぶって声をかけるも、なかなか目覚めない。
「おい、グレン! グレン!! 起きろ!!」
「う……っ」
何度も身体を揺さぶるとようやく目を開けた――その眼は、灰色だった。
(…………!)
グレンはのそりと身体を起こして片手で顔を覆う。
「カイル……? ここ、は……」
「砦の医務室だ。……大丈夫か、めちゃくちゃうなされてたぞ」
「…………」
「……どうした?」
「…………」
「おい、グレン……」
「……グレン……?」
意識が定まらないのか眼を虚空に泳がせるグレンに声をかけると、呼びかけられた自分の名前をぼそりと反芻した。
「その名前、聞いたことが……、誰……だったか……」
「えっ……!?」
思わず息を呑み、後ろのベルナデッタと顔を見合わせた。
ベルナデッタは眼を見開き、両手で口を覆って泣きそうな顔になっている。
「……何言ってるんだ! お前だ! お前の名前だろ!」
「俺……」
「そうだ! お前はグレン、グレン・マクロードだろ!? しっかりしろ!!」
「分かった……、……頼む……大声を……出さないでくれ……」
「…………」
両手で頭を抱えて、グレンはうなだれる。
「……すまない。具合は……相変わらずっぽいな」
「ああ、頭が痛いし吐きそうだ……ジャミルが言っていたように悪夢ばかり見る」
「……さっきもそうなのか」
「……悲鳴と怒声と泣き声だけの夢だ……ほとんど昔の出来事ばかりの中、あれだけは全く記憶にない。頭が割れそうだ」
「…………」
「隊長……お話があります」
ベルナデッタがベッドの傍らの椅子に腰掛け、いつになく真剣な表情でグレンを見つめ祈るように両手を組み合わせた。
「まず……レイチェルは今出かけています。ですから眼の色を元に戻してください」
「……」
グレンは素直に指示に従い眼の色を赤に戻す。
――レイチェルは兄とともに街に買い物に行った。
いつもニコニコ明るく仕事をしているレイチェルだが、今回買い物を頼んだ時は不服そうな顔をしていた。
恋人のグレンが寝込んでいて、看病のために本来の金曜土曜以降も泊まっている。テスト休み中だそうだ。
少しでもそばにいたくてそうしているのだから、買い物なら俺かベルナデッタに行ってほしいと思っているだろう。
だが2人とも用事があるからと言うと渋々従った。
こんな不自然なやり方でレイチェルを街に出したのには理由があった。
「隊長、どうかお願いですから、これ以上魔法で眼の色を偽るのをやめてください。このまま魔力を使いつづけていたら寿命が縮んでしまいます……下手すれば死んでしまうかもしれませんわ。いつも以上に悪い夢を見るのも、魔法で体力を消耗しているからだと思います」
「…………」
グレンは何も言わない。
相変わらず風邪も高熱も治まらない。魔力欠乏症が治っていないからだ。
それなのに眼の色をごまかすのに魔力を放出している――正確には魔力じゃない、枯渇しているはずの魔力を生命力から捻出している。
魔法に詳しくなくても、そんなことをすれば危険だというのは誰でも分かる。
だがこいつはそれをやめない。レイチェルがそばにいるからだ。
「知られたくないのは分かりますわ。でも、何も知らないで看病をしているレイチェルの気持ちも考えてください……隊長のためにそばにいるのに、そのせいで逆に弱っているなんて知ったら、あの子……」
「…………」
「ベルナデッタの言う通りだ。レイチェルも、お前が赤眼だと知ったって――」
「……黙れ……」
「え?」
「髪色に眼の色……何もしなくても、誰もが受け入れてくれる環境に生きている人間に、何が分かる……」
「グレン……?」
両手で耳元を押さえながらグレンは俺達を睨み上げる。
――ちがう。その赤く光った眼は、俺だけを捉えていた。
この眼を知っている。十数年前、こいつと知り合ったばかりの時にこんな目つきで俺を睨んできた。
その瞳の奥に宿るのは、明確な敵意だ。
「……お前はいつも、正しいことばかりを言う。光の当たる道しか歩いていないからそんなことを言えるんだ、そんな奴の吐く綺麗事と正論になんの価値と意味がある……!」
「え……」
「た、隊長……どうなさっ――」
「気に入らないんだよ……いつもいつも俺をかばって……俺を、憐れみの目で見やがって」
「俺はそんな……つもりは」
「お前……いつか、『過去に戻るか今を生きるかどうしよう』とか言ってきたことがあったな」
「……え?」
――それは、俺が自分の事情――未来から過去の世界に飛ばされた人間だということをこいつに打ち明けて数年後のことだ。
"あの日"、自分が消えた日に追いつこうとしていること、そうなれば自分は消えるのか、忘れ去られるのか、どっちの自分を選び取るべきだろう――漠然とした悩みを独り言のようにつらつらと話した。
言ってから、「こいつとは重い話する仲でもないのにしまったな」なんて思っていた。
その時グレンは黙っていた。だが、しばらくしてぼそりと言ってくれた言葉が、あって――。
「きゅ、急に、何の話――」
何の脈絡もなくこんな話になるのが全く分からないのでそう返すと、グレンは憎しみのこもった目で俺を見て歯噛みをする。
身体からは部屋を覆い尽くすほどの黒い瘴気が立ち上っていた。
「……『どっちの自分を選び取る』だと? どちらを選んでもお前の人生は悪くはならないだろう。悪くない人生が、選択肢が二つも用意されている、俺には何も、ないのに」
「……な、何を……」
「仮に、選べたとしても……何を選んでも、どこに進んでも、ゴミみたいな結末しかない。今もそうだ、こんな赤眼にまでなって……でも何があってもお前は闇に堕ちない、お前はいつも、絶対的な光だ」
「た、隊長、やめて、やめてください……!」
泣きながら訴えるベルナデッタに構わず、グレンはただ俺を睨みつけながらさらに口を開く。
「……お前といると、俺はいつもたまらなく惨めだ……!」
「…………!」
「消えろ、俺の前から。……今すぐに、消えろ!」
◇
『俺の前から今すぐ消えろ』――10数年前、あいつに絡んでいるチンピラを追い払った時に全く同じ事を言われた。
初めて会った日から、あいつは俺に憎悪を抱えてそれをひた隠しにして生きてきたんだろうか。
「……参った、なあ……」
医務室をあとにして、砦の屋上で飛竜の足元に寝転がってでかい独り言。
ああ、参った。参ったとしか言いようがない。
今日は晴れていて風もあまり吹いていないが、冬だからやっぱり寒い。石が敷き詰められた地面は固いし冷たい。
……が、正直今はふかふかのベッドで寝る気分でもない。
――なんで今になってあいつは6年前のことを言ったんだろう?
どっちの生き方を選んだらいいんだろうと言った俺に、あいつは「お前がいなくなるのはつまらない」ってそう言ってくれたんだ。
勝手に会いに来てくっちゃべってるだけだったけど、こいつにとって俺はいらない人間じゃなかったんだ なんて安心したんだけど……内心はあんなことを思っていたのか。
「『絶対的な光』か……」
光が強ければ、映し出される影は闇のように色濃くなる。
俺が光なんてそんな馬鹿なと思うが……あいつの闇は、俺が無自覚に作りあげていたのかもしれない。
けど全部が全部そうだなんて、思いたくないな……。
「……お~い、そこのハンサム~」
「えっ」
「なんでこんなとこで寝てんだよ。風邪引くぞ」
「あ……」
買い物から帰ったらしい兄が俺の顔をのぞき込んでいた。
「……お帰り」
「おう。オレ夜から酒場の仕事あるから、帰るぜ」
「分かった、ありがとう」
「…………」
「…………」
「……ベルから今日のこと聞いた」
「え、ああ……」
しばらくの沈黙のあと、兄がそう切り出して俺の隣に腰掛けた。
兄の肩の使い魔がパタパタと飛んで、シーザーの鼻先に止まった。何かピチュピチュ鳴いている。ごあいさつか何かしてるんだろうか。
「なんというか……さすがにショックだね」
「まあアイツも内心色々渦巻いてんだよな。けど『お前の存在は救いだった』とかって言ってたじゃんか。アレだって本音だろ」
「だといいけど……」
「てかオマエだって夏頃ケンカした時オレにめちゃくちゃぶつけてきたじゃねーか。オレあんな黒い感情ぶつけられたの初めてだったんだけど」
「う……それを言われると」
「ショックなことがあってあの時のオレ達以上に追い詰められちまってるしな。案外グレンも『とんでもねーこと言っちまった』とかって思ってるかもだぜ」
「…………」
「しっかりしろよオマエ、だせえな!」
「あ痛っ!」
兄のセリフと同時に、ウィルが俺の額をコツコツつついてきた。小鳥のくせにまあまあ痛い。
起き上がって涙目で額をなでると兄は少しいたずらっぽく笑いながら立ち上がって、扉を出現させた。
「まあアレだ、今は一番ヤベえ事態に向き合ってくれよ。仕上がっちまってるから」
「え?? 何のこと――」
「レイチェルの機嫌がわりい」
「……う……」
「そういうわけだから。頼んだぜ。明日来るし、どうなったか聞かせろよな」
「ま、待っ……」
「じゃ、ごきげんよう。ヘンな剣落ちてても拾うなよ~」
カーテシーみたいなポーズを取ってから兄は扉の中に消えていった。
相変わらずルカは見つからないし、グレンはあの通り。そのうえレイチェルの機嫌が悪いだって?
駄目だ……胃が痛くなってきた……。
「隊長! 隊長!」
「…………っ、うう……っ」
魔物討伐のあとベルナデッタと共に医務室で寝ているグレンの様子を見に来たら、頭を抱えてひどくうなされていた。
こんな状態では寝ている方が楽だとも思えず身体を揺さぶって声をかけるも、なかなか目覚めない。
「おい、グレン! グレン!! 起きろ!!」
「う……っ」
何度も身体を揺さぶるとようやく目を開けた――その眼は、灰色だった。
(…………!)
グレンはのそりと身体を起こして片手で顔を覆う。
「カイル……? ここ、は……」
「砦の医務室だ。……大丈夫か、めちゃくちゃうなされてたぞ」
「…………」
「……どうした?」
「…………」
「おい、グレン……」
「……グレン……?」
意識が定まらないのか眼を虚空に泳がせるグレンに声をかけると、呼びかけられた自分の名前をぼそりと反芻した。
「その名前、聞いたことが……、誰……だったか……」
「えっ……!?」
思わず息を呑み、後ろのベルナデッタと顔を見合わせた。
ベルナデッタは眼を見開き、両手で口を覆って泣きそうな顔になっている。
「……何言ってるんだ! お前だ! お前の名前だろ!」
「俺……」
「そうだ! お前はグレン、グレン・マクロードだろ!? しっかりしろ!!」
「分かった……、……頼む……大声を……出さないでくれ……」
「…………」
両手で頭を抱えて、グレンはうなだれる。
「……すまない。具合は……相変わらずっぽいな」
「ああ、頭が痛いし吐きそうだ……ジャミルが言っていたように悪夢ばかり見る」
「……さっきもそうなのか」
「……悲鳴と怒声と泣き声だけの夢だ……ほとんど昔の出来事ばかりの中、あれだけは全く記憶にない。頭が割れそうだ」
「…………」
「隊長……お話があります」
ベルナデッタがベッドの傍らの椅子に腰掛け、いつになく真剣な表情でグレンを見つめ祈るように両手を組み合わせた。
「まず……レイチェルは今出かけています。ですから眼の色を元に戻してください」
「……」
グレンは素直に指示に従い眼の色を赤に戻す。
――レイチェルは兄とともに街に買い物に行った。
いつもニコニコ明るく仕事をしているレイチェルだが、今回買い物を頼んだ時は不服そうな顔をしていた。
恋人のグレンが寝込んでいて、看病のために本来の金曜土曜以降も泊まっている。テスト休み中だそうだ。
少しでもそばにいたくてそうしているのだから、買い物なら俺かベルナデッタに行ってほしいと思っているだろう。
だが2人とも用事があるからと言うと渋々従った。
こんな不自然なやり方でレイチェルを街に出したのには理由があった。
「隊長、どうかお願いですから、これ以上魔法で眼の色を偽るのをやめてください。このまま魔力を使いつづけていたら寿命が縮んでしまいます……下手すれば死んでしまうかもしれませんわ。いつも以上に悪い夢を見るのも、魔法で体力を消耗しているからだと思います」
「…………」
グレンは何も言わない。
相変わらず風邪も高熱も治まらない。魔力欠乏症が治っていないからだ。
それなのに眼の色をごまかすのに魔力を放出している――正確には魔力じゃない、枯渇しているはずの魔力を生命力から捻出している。
魔法に詳しくなくても、そんなことをすれば危険だというのは誰でも分かる。
だがこいつはそれをやめない。レイチェルがそばにいるからだ。
「知られたくないのは分かりますわ。でも、何も知らないで看病をしているレイチェルの気持ちも考えてください……隊長のためにそばにいるのに、そのせいで逆に弱っているなんて知ったら、あの子……」
「…………」
「ベルナデッタの言う通りだ。レイチェルも、お前が赤眼だと知ったって――」
「……黙れ……」
「え?」
「髪色に眼の色……何もしなくても、誰もが受け入れてくれる環境に生きている人間に、何が分かる……」
「グレン……?」
両手で耳元を押さえながらグレンは俺達を睨み上げる。
――ちがう。その赤く光った眼は、俺だけを捉えていた。
この眼を知っている。十数年前、こいつと知り合ったばかりの時にこんな目つきで俺を睨んできた。
その瞳の奥に宿るのは、明確な敵意だ。
「……お前はいつも、正しいことばかりを言う。光の当たる道しか歩いていないからそんなことを言えるんだ、そんな奴の吐く綺麗事と正論になんの価値と意味がある……!」
「え……」
「た、隊長……どうなさっ――」
「気に入らないんだよ……いつもいつも俺をかばって……俺を、憐れみの目で見やがって」
「俺はそんな……つもりは」
「お前……いつか、『過去に戻るか今を生きるかどうしよう』とか言ってきたことがあったな」
「……え?」
――それは、俺が自分の事情――未来から過去の世界に飛ばされた人間だということをこいつに打ち明けて数年後のことだ。
"あの日"、自分が消えた日に追いつこうとしていること、そうなれば自分は消えるのか、忘れ去られるのか、どっちの自分を選び取るべきだろう――漠然とした悩みを独り言のようにつらつらと話した。
言ってから、「こいつとは重い話する仲でもないのにしまったな」なんて思っていた。
その時グレンは黙っていた。だが、しばらくしてぼそりと言ってくれた言葉が、あって――。
「きゅ、急に、何の話――」
何の脈絡もなくこんな話になるのが全く分からないのでそう返すと、グレンは憎しみのこもった目で俺を見て歯噛みをする。
身体からは部屋を覆い尽くすほどの黒い瘴気が立ち上っていた。
「……『どっちの自分を選び取る』だと? どちらを選んでもお前の人生は悪くはならないだろう。悪くない人生が、選択肢が二つも用意されている、俺には何も、ないのに」
「……な、何を……」
「仮に、選べたとしても……何を選んでも、どこに進んでも、ゴミみたいな結末しかない。今もそうだ、こんな赤眼にまでなって……でも何があってもお前は闇に堕ちない、お前はいつも、絶対的な光だ」
「た、隊長、やめて、やめてください……!」
泣きながら訴えるベルナデッタに構わず、グレンはただ俺を睨みつけながらさらに口を開く。
「……お前といると、俺はいつもたまらなく惨めだ……!」
「…………!」
「消えろ、俺の前から。……今すぐに、消えろ!」
◇
『俺の前から今すぐ消えろ』――10数年前、あいつに絡んでいるチンピラを追い払った時に全く同じ事を言われた。
初めて会った日から、あいつは俺に憎悪を抱えてそれをひた隠しにして生きてきたんだろうか。
「……参った、なあ……」
医務室をあとにして、砦の屋上で飛竜の足元に寝転がってでかい独り言。
ああ、参った。参ったとしか言いようがない。
今日は晴れていて風もあまり吹いていないが、冬だからやっぱり寒い。石が敷き詰められた地面は固いし冷たい。
……が、正直今はふかふかのベッドで寝る気分でもない。
――なんで今になってあいつは6年前のことを言ったんだろう?
どっちの生き方を選んだらいいんだろうと言った俺に、あいつは「お前がいなくなるのはつまらない」ってそう言ってくれたんだ。
勝手に会いに来てくっちゃべってるだけだったけど、こいつにとって俺はいらない人間じゃなかったんだ なんて安心したんだけど……内心はあんなことを思っていたのか。
「『絶対的な光』か……」
光が強ければ、映し出される影は闇のように色濃くなる。
俺が光なんてそんな馬鹿なと思うが……あいつの闇は、俺が無自覚に作りあげていたのかもしれない。
けど全部が全部そうだなんて、思いたくないな……。
「……お~い、そこのハンサム~」
「えっ」
「なんでこんなとこで寝てんだよ。風邪引くぞ」
「あ……」
買い物から帰ったらしい兄が俺の顔をのぞき込んでいた。
「……お帰り」
「おう。オレ夜から酒場の仕事あるから、帰るぜ」
「分かった、ありがとう」
「…………」
「…………」
「……ベルから今日のこと聞いた」
「え、ああ……」
しばらくの沈黙のあと、兄がそう切り出して俺の隣に腰掛けた。
兄の肩の使い魔がパタパタと飛んで、シーザーの鼻先に止まった。何かピチュピチュ鳴いている。ごあいさつか何かしてるんだろうか。
「なんというか……さすがにショックだね」
「まあアイツも内心色々渦巻いてんだよな。けど『お前の存在は救いだった』とかって言ってたじゃんか。アレだって本音だろ」
「だといいけど……」
「てかオマエだって夏頃ケンカした時オレにめちゃくちゃぶつけてきたじゃねーか。オレあんな黒い感情ぶつけられたの初めてだったんだけど」
「う……それを言われると」
「ショックなことがあってあの時のオレ達以上に追い詰められちまってるしな。案外グレンも『とんでもねーこと言っちまった』とかって思ってるかもだぜ」
「…………」
「しっかりしろよオマエ、だせえな!」
「あ痛っ!」
兄のセリフと同時に、ウィルが俺の額をコツコツつついてきた。小鳥のくせにまあまあ痛い。
起き上がって涙目で額をなでると兄は少しいたずらっぽく笑いながら立ち上がって、扉を出現させた。
「まあアレだ、今は一番ヤベえ事態に向き合ってくれよ。仕上がっちまってるから」
「え?? 何のこと――」
「レイチェルの機嫌がわりい」
「……う……」
「そういうわけだから。頼んだぜ。明日来るし、どうなったか聞かせろよな」
「ま、待っ……」
「じゃ、ごきげんよう。ヘンな剣落ちてても拾うなよ~」
カーテシーみたいなポーズを取ってから兄は扉の中に消えていった。
相変わらずルカは見つからないし、グレンはあの通り。そのうえレイチェルの機嫌が悪いだって?
駄目だ……胃が痛くなってきた……。
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