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【第3部】13章 切り裂く刃
2話 破滅のエチュード(前)※暴力描写あり
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「ロゴス! ロゴス!!」
王都の、とある邸宅。
"カラス"の心の闇からはじき出されたアーテは、雪の中、体力の戻らない体を引きずりながらもなんとか魔力を練り上げることに成功し、転移魔法でそこへ帰還した。
怒りに燃えながら屋敷の一室の扉を開けると、そこにはあの男――ロゴスがいた。
殺気の滲んだ彼女の剣幕にも動じず、いつものように薄ら笑いを浮かべながら、ぶどうをつまんでいる。
――怒りが収まらない。自分はあれほどの目に遭ったというのに、この男は何を呑気にデザートなど食べているのだ!
「おやアーテ、お帰り。……無事帰ってこられたのか。驚いたよ」
「何が『驚いた』よ!! お前、よくもこの私を!!」
「ごめんね」
「ふん……まあ、今回は私も悪かったわ。……それで? 戻ってから考えると言っていたけれど、一体これからどうするつもり?」
「ふふふ……」
「……何よ」
ロゴスが目を細めながら口角を上げて肩をすくめ、ちぎったぶどうを一粒口に運ぶ。
口元に近づけると同時に口をすぼめ、大きな粒がチュルリと吸い込まれていく。
「……!」
――気持ちが悪い。
"カラス"は元々嫌いだが、アーテはこのロゴスという男そのものに生理的嫌悪感を抱いていた。
いつも面を付けているかのように同じ表情で笑い、人を食ったことを言う。
こちらの話を全く聞かず、いつもいつも、誰に向けているのか分からない一人芝居を繰り返して――。
「ちょっと! 聞いているの!? 早く考え――」
「アーテ」
「何よ!」
「君は、"エチュード"というものを知っているかな」
「……は? 何よそれ」
「演劇のね……台本のない即興のお芝居のこと。場面設定だけがあって、台詞や立ち居振る舞いは役者が考えるんだ。あれはとても難しい……演技が上手くても、台本の通りにしかできない役者もいる――エチュードが出来てこそ一流の役者と言えるかもしれないね」
「っ……また、聞いていないことをベラベラと! 何が言いたいの、気持ち悪い――」
いつものように平手で打つために手を振り上げるが、その手をロゴスが掴み、強い力でギリギリと握る。
「うっ……」
「今、僕が台詞を喋っている途中だろう」
長身であるのがノルデン人の特徴であるが、ロゴスはその中では低い部類に入る。
体つきは華奢で線が細く、いかにも魔術師といった風貌で……それでもやはり男であるので、力の差は歴然。
振りほどくことはかなわず、彼女は手首の痛みに耐えるしかなかった。
「いっ、た……ぐっ、放し……!」
「こんなものなんてことはないだろう、あのグレンという男のそれに比べれば。……ああ、続きだ、アーテ。……君はね、そのエチュードがとても上手だった。どんな状況であっても変わらず愚かという役をやってのけた。君は本当に面白く、素晴らしい女優だったよ」
「だが」と言いながら、ロゴスはアーテの手を捻る。痛さに呻く暇もなく、ロゴスは表情の消えた顔でまた口を開いた。
「"エリス"は君の逆で、台本の通りにしか出来なかった。予想外のことが起きれば何も反応が出来ない、アドリブの利かない駄目な女優だった。……しかしちゃんと筋書き通りにはやるから、そこだけは良かったけれど。消してやろうにも、不死の呪いがかかっているからそれは叶わない。"生"こそが苦しみだろうから、放っておいて構わないだろう。……だが、お前は別だ」
「ひ……っ」
バシンという音が部屋に響く。
頬を打たれたアーテは、その勢いで床に倒れ込む。
「台本を読めない、読みもしない女優は要らない……」
「ぎゃっ!」
すぐに、こめかみが圧迫されるような痛みが彼女を襲った――側頭部を、ロゴスが踏みつけにしている。
「い、痛……やめ」
「僕は1日1回、必ずと言っていいほど張り手を食らっていた。痛かったなあ……本当に。僕はね、アーテ。……殴られるのは、死ぬほど嫌いだよ!」
「がっ……!」
言いながらロゴスはアーテの顔を蹴り上げ、何度も踏みつける。
「全く……全く、お前が余計なことを言わなければ、虚無の魂――紋章持ち、それも赤眼という極上の魂が手に入ったというのに! ……グレン・マクロードは赤眼を克服、魂はより強固なものに。もう二度と引き抜くことはできないだろう。……なのに! お前は! 『これからどうするつもり』などと、よくも、ぬけぬけと……!!」
「い、ぎゃっ……ろ、ロゴ、ス……っ!!」
何度かそうしたあと、ロゴスは肩で息をしながらその場を離れ、血の宝玉を持ってまた戻ってきた。
そして髪を掴んでアーテの頭を持ち、口の中にそれを押し込む。
「がっ……ごっ……!」
生温い玉が喉を通る。
息が出来ない。吐き出すことは叶わず、見た目よりも柔らかいそれは喉を通り越し、どういうわけか彼女の鎖骨の少し下の胸元に浮かび上がった。
それと同時に玉は赤黒い光を放ち、彼女の身を包む。今踏みつけにされてついた傷が修復し、痛みが引いていく――。
「いやああああっ! 何! 何をしたのよ!」
「その中の命が続く限りの永久機関を作ってあげたのさ。回復魔法をかけるのは面倒だからね」
「な、何を……」
「フフ、アーテ。僕はあの時確かに『この場をうまく切り抜けられたらその時はまた考えよう』と言ったよ。君は『これからの作戦を考えよう』という意味合いにとらえていたようだが……それはちがう。『戻った時、どういう"刑罰"を与えるかということを考えよう』という意味で言ったのだ!」
「!!」
ロゴスの紋章が閃くと、石床を突き破って何かの植物のツタが一斉に生え、瞬く間に扉、壁、天井など部屋中を覆いつくす。
「くっ……!」
部屋の出口が塞がれた。
この男は気味が悪いが、長く行動を共にしているからその実力は分かっている。
ロゴスの魔力は底が知れない。加えて額に紋章まで宿している。
こちらが杖を出すよりも、そして術を発動するよりも早く、術を3つくらいは打てるだろう。
力の差は、歴然。しかし強者の余裕なのか、ツタを出して以降何かをする気配はない。
――黙ってやられてやるほど、こちらも下等な魔法使いではない!
「ゴーレム! 出なさい!!」
氷の杖を出し念じると、泥の巨人が数体姿を現す。
いつものように容姿端麗な男の姿ではないが、そんなことに構っていられない。
見た目などを整えていたら、こちらがやられる。
あのグレンというカラスの勢力下では出すことが叶わなかったゴーレムをやっと出せたことに安堵したが、しかし今度はゴーレムがピクリとも動かない。
「どうしたのお前達! 動きなさい!! 何の為に出したと思っているの出来損ない!! 早く私を……ギャアッ!!」
衝撃と共に身体が吹き飛び、彼女は「ゴッ」という音と共に石床に頭を打ち付けた。
自分が出したはずのゴーレム達がこちらに顔を向け、赤黒いオーラを体から立ち上らせている。
――何が起こったのか、分からない。
打ち付けた石床に、血がじわりじわりと拡がっていく――。
王都の、とある邸宅。
"カラス"の心の闇からはじき出されたアーテは、雪の中、体力の戻らない体を引きずりながらもなんとか魔力を練り上げることに成功し、転移魔法でそこへ帰還した。
怒りに燃えながら屋敷の一室の扉を開けると、そこにはあの男――ロゴスがいた。
殺気の滲んだ彼女の剣幕にも動じず、いつものように薄ら笑いを浮かべながら、ぶどうをつまんでいる。
――怒りが収まらない。自分はあれほどの目に遭ったというのに、この男は何を呑気にデザートなど食べているのだ!
「おやアーテ、お帰り。……無事帰ってこられたのか。驚いたよ」
「何が『驚いた』よ!! お前、よくもこの私を!!」
「ごめんね」
「ふん……まあ、今回は私も悪かったわ。……それで? 戻ってから考えると言っていたけれど、一体これからどうするつもり?」
「ふふふ……」
「……何よ」
ロゴスが目を細めながら口角を上げて肩をすくめ、ちぎったぶどうを一粒口に運ぶ。
口元に近づけると同時に口をすぼめ、大きな粒がチュルリと吸い込まれていく。
「……!」
――気持ちが悪い。
"カラス"は元々嫌いだが、アーテはこのロゴスという男そのものに生理的嫌悪感を抱いていた。
いつも面を付けているかのように同じ表情で笑い、人を食ったことを言う。
こちらの話を全く聞かず、いつもいつも、誰に向けているのか分からない一人芝居を繰り返して――。
「ちょっと! 聞いているの!? 早く考え――」
「アーテ」
「何よ!」
「君は、"エチュード"というものを知っているかな」
「……は? 何よそれ」
「演劇のね……台本のない即興のお芝居のこと。場面設定だけがあって、台詞や立ち居振る舞いは役者が考えるんだ。あれはとても難しい……演技が上手くても、台本の通りにしかできない役者もいる――エチュードが出来てこそ一流の役者と言えるかもしれないね」
「っ……また、聞いていないことをベラベラと! 何が言いたいの、気持ち悪い――」
いつものように平手で打つために手を振り上げるが、その手をロゴスが掴み、強い力でギリギリと握る。
「うっ……」
「今、僕が台詞を喋っている途中だろう」
長身であるのがノルデン人の特徴であるが、ロゴスはその中では低い部類に入る。
体つきは華奢で線が細く、いかにも魔術師といった風貌で……それでもやはり男であるので、力の差は歴然。
振りほどくことはかなわず、彼女は手首の痛みに耐えるしかなかった。
「いっ、た……ぐっ、放し……!」
「こんなものなんてことはないだろう、あのグレンという男のそれに比べれば。……ああ、続きだ、アーテ。……君はね、そのエチュードがとても上手だった。どんな状況であっても変わらず愚かという役をやってのけた。君は本当に面白く、素晴らしい女優だったよ」
「だが」と言いながら、ロゴスはアーテの手を捻る。痛さに呻く暇もなく、ロゴスは表情の消えた顔でまた口を開いた。
「"エリス"は君の逆で、台本の通りにしか出来なかった。予想外のことが起きれば何も反応が出来ない、アドリブの利かない駄目な女優だった。……しかしちゃんと筋書き通りにはやるから、そこだけは良かったけれど。消してやろうにも、不死の呪いがかかっているからそれは叶わない。"生"こそが苦しみだろうから、放っておいて構わないだろう。……だが、お前は別だ」
「ひ……っ」
バシンという音が部屋に響く。
頬を打たれたアーテは、その勢いで床に倒れ込む。
「台本を読めない、読みもしない女優は要らない……」
「ぎゃっ!」
すぐに、こめかみが圧迫されるような痛みが彼女を襲った――側頭部を、ロゴスが踏みつけにしている。
「い、痛……やめ」
「僕は1日1回、必ずと言っていいほど張り手を食らっていた。痛かったなあ……本当に。僕はね、アーテ。……殴られるのは、死ぬほど嫌いだよ!」
「がっ……!」
言いながらロゴスはアーテの顔を蹴り上げ、何度も踏みつける。
「全く……全く、お前が余計なことを言わなければ、虚無の魂――紋章持ち、それも赤眼という極上の魂が手に入ったというのに! ……グレン・マクロードは赤眼を克服、魂はより強固なものに。もう二度と引き抜くことはできないだろう。……なのに! お前は! 『これからどうするつもり』などと、よくも、ぬけぬけと……!!」
「い、ぎゃっ……ろ、ロゴ、ス……っ!!」
何度かそうしたあと、ロゴスは肩で息をしながらその場を離れ、血の宝玉を持ってまた戻ってきた。
そして髪を掴んでアーテの頭を持ち、口の中にそれを押し込む。
「がっ……ごっ……!」
生温い玉が喉を通る。
息が出来ない。吐き出すことは叶わず、見た目よりも柔らかいそれは喉を通り越し、どういうわけか彼女の鎖骨の少し下の胸元に浮かび上がった。
それと同時に玉は赤黒い光を放ち、彼女の身を包む。今踏みつけにされてついた傷が修復し、痛みが引いていく――。
「いやああああっ! 何! 何をしたのよ!」
「その中の命が続く限りの永久機関を作ってあげたのさ。回復魔法をかけるのは面倒だからね」
「な、何を……」
「フフ、アーテ。僕はあの時確かに『この場をうまく切り抜けられたらその時はまた考えよう』と言ったよ。君は『これからの作戦を考えよう』という意味合いにとらえていたようだが……それはちがう。『戻った時、どういう"刑罰"を与えるかということを考えよう』という意味で言ったのだ!」
「!!」
ロゴスの紋章が閃くと、石床を突き破って何かの植物のツタが一斉に生え、瞬く間に扉、壁、天井など部屋中を覆いつくす。
「くっ……!」
部屋の出口が塞がれた。
この男は気味が悪いが、長く行動を共にしているからその実力は分かっている。
ロゴスの魔力は底が知れない。加えて額に紋章まで宿している。
こちらが杖を出すよりも、そして術を発動するよりも早く、術を3つくらいは打てるだろう。
力の差は、歴然。しかし強者の余裕なのか、ツタを出して以降何かをする気配はない。
――黙ってやられてやるほど、こちらも下等な魔法使いではない!
「ゴーレム! 出なさい!!」
氷の杖を出し念じると、泥の巨人が数体姿を現す。
いつものように容姿端麗な男の姿ではないが、そんなことに構っていられない。
見た目などを整えていたら、こちらがやられる。
あのグレンというカラスの勢力下では出すことが叶わなかったゴーレムをやっと出せたことに安堵したが、しかし今度はゴーレムがピクリとも動かない。
「どうしたのお前達! 動きなさい!! 何の為に出したと思っているの出来損ない!! 早く私を……ギャアッ!!」
衝撃と共に身体が吹き飛び、彼女は「ゴッ」という音と共に石床に頭を打ち付けた。
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