258 / 385
【第3部】13章 切り裂く刃
1話 欠けたピース ※残酷描写あり
しおりを挟む
転移魔法を繰り返してロレーヌに戻り、王都からポルト市街、そして荷物やお金など諸々の片付けをしたあと砦へ飛んだ。
砦の食堂で、カイルが眉間にしわを寄せながら新聞を読んでいた。
厨房にはジャミルもいる。ここ1ヶ月わたしが休んでいるから、彼が空き時間に来てくれているらしい――ほとんど、ベルに会うのが目的みたいだけど。
今は何かの後片付けの最中のようだ。
「やあ、お帰り」
「ただいま~。ルカとベルは?」
「うん。ちょっと街に買い物」
「そっか。……どしたの? 珍しく不機嫌」
「ああ、いや。この新聞記事が……ちょっとこれ見てくれよ」
そう言いながらカイルがグレンさんに新聞を渡した。
「『身元不明の女性の変死体』……?」
それは、王都の邸宅にて女性の変死体が発見されたという事件の記事。
銀髪に青眼の女性――おそらく、ノルデン貴族。
昨今話題になっている、魂を抜かれた遺体ではなかった。
彼女の周囲には泥の塊と共に血の宝玉がいくつも転がっていて、彼女の体内にもそれが埋め込まれていた。
宝玉には命の残滓がわずかに感じられたが色を失っており、彼女の体内の物も同様。
ミランダ教の司祭の見解では、女性がこの宝玉を使って生み出した泥の生命体が暴走をして、主人であるはずの女性を殴り殺したのではないだろうか ということだった。
「生命体ってあの"ゴーレム"ってやつのことか?」
厨房の後片付けを終えたジャミルも話に加わってきた。
それに対し、カイルがあごに手をやりながらうなずく。
「多分そうだろうな。暴走か……不死者と同じ原理か……?」
「…………」
ゴーレム……血の宝玉で生み出された泥の生命体。
暴走したゴーレムは女性を殴る。
そして女性の体内に埋め込まれている血の宝玉が傷を治し、ゴーレムはまた彼女を……。
「……う……っ」
「! グレン……」
グレンさんが、青ざめた顔で口元を抑える。
死ぬ寸前まで痛めつけて傷を治し、それを繰り返す。
これは、彼が光の塾の大人にされたのと同じ行為――。
「大丈夫? 顔色が……。ね、座りましょう」
「すまない……」
「……続きの話して大丈夫か? 結構グロいんだよな」
「大丈夫だ……頼む」
込み入った話になりそうなので、全員席についてから話の続きをすることにした。
◇
カイルの話の通り、事件の概要は残酷極まりない無惨なものだった。
血の宝玉の効果が切れるまで殴られたと思われる女性の遺体は、顔が判別できないくらいにめちゃくちゃ。
全身の骨は粉々と言えるほどに折れ、破裂した内臓に突き刺さっているものもあったという。
繰り返し殴られた為なのか出血量が半端ではなく、部屋中――床はもちろん壁や天井まで血みどろ。
そして池のようになった彼女の血だまりには、おびただしい数の白い花が咲いていた――と、記されている。
「……花……」
グレンさんを見ると、ちょうど視線がかち合った。
遺体の周り……血だまりの中に咲く花。
あの時と、同じだ……。
「……イリアスが関わっていると見て間違いないだろうな」
「ああ。それで……不可解な点がいくつもあるんだ」
「不可解?」
「ああ。『女性の屋敷の地下室からは血の宝玉と、そのための儀式の道具と思われる物が見つかった。手記や押収品の数々から、この女性こそが光の塾の司教"ロゴス"であるとして、捜査を続けている』っていうんだよ」
「え、嘘……だって、"ロゴス"は……」
「そう。そんなはずないのに、もうこの女性が"ロゴス"っていう風になぜか確定してしまっている」
「おかしいよな。あのヤローを見たことないとしてもさ、前に見つかった光の塾の人間の日記には"彼"って書いてあるんだぜ。なんで女がロゴスってことになるんだ?」
そう言いながら、ジャミルが家から持ってきたスクラップブックを広げてみせた。
光の塾についての記事をまとめているようだ――そこには、2ヶ月程前に話題になった新聞記事が貼ってあった。
光の塾の"神使"だった人の日記だ。その人は"ロゴス"の幼なじみで、ロゴスのことは"彼"と記述している。
そして最後の日記の日付は1543年――20年前の6月。
「イリアスが『ロゴスを引き継いだのは15年程前』と言っていたな。その日記に出てくるロゴスは、イリアスの言う"先代"という奴だろう」
「代替わりしてるってことか? 先代は男だけど、次は女……それだとつじつま合うけどよ、捜査してる側は"代替わり"のこと知らねえんじゃねえのか? よく分かんねーな……」
「捜査には聖銀騎士様が協力してるよね? 銀髪青眼なんてここではめったに見かけないし、顔が分からなくてもこの人が"あの人"だってことは、把握……?」
「……どうした?」
「あ、いえ……」
何かを言おうとして、思考が停止してしまう。
なんだろう、何か、気持ち悪い……。
「あ、"あの人"って……、一体誰のこと言おうとしたのか……あれ?」
「! も、もしかして……レイチェルも!?」
「えっ」
「あのさ、俺達……この殺された女のこと、知ってるよね!? この砦にさ、来たよね? この……女が!」
カイルが身を乗り出して新聞記事を人差し指でパシパシと叩いて指さす。
「えっえっ……えーと、えっと……」
銀髪で青眼の、ノルデン貴族。
記事によれば、おそらく年齢は20代前半。
確かにカイルの言うように、この砦にそんな"誰か"が来た――ような気がする。
でもグレンさんの心の闇の中に入った時のように、顔も名前も全然出てこない。
……誰だっけ?
◇
「ただいま戻りました……あらレイチェル、隊長さん。お帰りなさい」
「あ、お帰りベル~。ごきげんよう」
「うふふ、ごきげんよう」
街に買い物に行っていたベルとルカが戻ってきた。
「ちょうどよかった。ねえ、ねえ、2人とも。ここに、ノルデン貴族の女性が来たよねって話してて……心当たり、ない?」
「え……」
「ベルの、先輩。呪いの名前の女」
「!!」
「わたしのお花を枯らした」
「あ……そう、そうだ……!」
ルカの言葉でモヤがかかっていた記憶がわずかに蘇る。
それに対し、カイルが「ちょっと待って」とダッシュで自室へ戻った。
しばらくしてハードカバーの本のような物を手にして戻ってきて、それをペラペラとめくる。
表紙には「1563年 1月ー」と記してある。
「それって、日記?」
「うん。まあ、日記というか備忘録みたいな簡単なものだけど」
「へー、オマエそんなん書いてんのか。……日付の後ろに文字が1個書いてあるのって何だ?」
「あんまり見るなよ……これは、俺の名前の"クライブ"と"カイル"の頭文字。どっちの自分で経験して応対したかっていうのの目印だよ。……あっ、あった」
カイルが、日記に記していた「呪いの名前の女」に関することを順に読み上げる。
その人は11月――グレンさんがヒースコートへ単独任務に出ている間に砦に来た。
ベルの魔術学院時代の先輩で、1つ年上の23歳。魔法の資質のない者、黒髪ノルデン人、それから薬師など、あらゆるものを見下す差別主義者。
『名前は呪いの呪文なので呼んではいけない』とグレンさんから通達があった。
ルカの花を黒魔術を使い枯らした。
カイルを黒魔術と禁呪で意のままに操ろうとしたが失敗。
聖銀騎士に捕らえられるも脱獄、その後エリス――テレーゼの命令でベルを拉致し、血の宝玉を集める一団に加えようとした。
ノルデン貴族の証である銀髪青眼の持ち主だけど、ジャミルの予想ではおそらく平民だろうとのこと。
グレンさんの魂が抜かれたあと、わたし達を殺すためにゴーレムを数体呼び出そうとするも不死者となったグレンさんに無効化され、逆襲に遭う。
ロゴスはそれを見捨てて逃走。
その後、わたし達と共にグレンさんの心の闇の中に招かれた。ただし彼女だけは、生身で。
モノを作ろうとしたために彼の心が作りだした神父により"罰"を下され、最後はジャミルの使い魔ウィルの魔法により闇から追放――。
「…………」
全部読み上げた後、全員沈黙してしまう。
みんなそれぞれ思うところはあるのだろうけど……。
「ヤベーな……オレそいつと煽り合いしたらしいのにほとんど覚えてねえわ……」
「わたしも……ベルは?」
「え、うん……言った内容と、その時の自分の感情は覚えているのだけど」
「しかもオレが最後追い出したって? 記憶にねえ……でも、確かにいた……ような。うーん」
ルカは花を枯らされたけどやりかえせなかった、悔しい感情のみ頭にあるらしい。
わたしは確か、馬鹿にされて叩かれて、叩き返して……それと、グレンさんがその人に関して電報で警告をくれたことはどうにか思い出した。
グレンさんは「名前を呼ぶな」と通達したことは覚えているけど、カイルの日記によれば直接の関わりはほとんどないから、そもそも知らない。
そして――。
「実は俺も……これだけ書いておきながら記憶が曖昧で。日記にも最初に女の名前を書いたみたいなんだけど、そこが綺麗に消えちゃってるんだよね」
言いながらカイルは、その日の日記を見せてくれる。
――――――――――――――
11月19日 (火) くもり :C
仲間入り希望の女が来た、名前は「 」。
グレン曰く呪いの名前。誰にも唱えさせないよう通達せよとのこと。
名前を書くのもダメかもしれないから、「A」と書く。
――――――――――――――
以降、彼女のことは"A"で記述されており、その部分は消えていないという。
名前も記憶も消えて、"ロゴス"として始末されようとしている"A"という女性。
確かにいたはずなのに、闇の世界でもないのに、どうして彼女の記憶が抜け落ちているのだろう。
本来"ロゴス"と名乗っていたはずのイリアスの行方は、杳として知れない。
この1ヶ月ほど何の事件もなかったけれど、この"A"の惨殺事件をきっかけに、また何かが起こる気がしてならない……。
砦の食堂で、カイルが眉間にしわを寄せながら新聞を読んでいた。
厨房にはジャミルもいる。ここ1ヶ月わたしが休んでいるから、彼が空き時間に来てくれているらしい――ほとんど、ベルに会うのが目的みたいだけど。
今は何かの後片付けの最中のようだ。
「やあ、お帰り」
「ただいま~。ルカとベルは?」
「うん。ちょっと街に買い物」
「そっか。……どしたの? 珍しく不機嫌」
「ああ、いや。この新聞記事が……ちょっとこれ見てくれよ」
そう言いながらカイルがグレンさんに新聞を渡した。
「『身元不明の女性の変死体』……?」
それは、王都の邸宅にて女性の変死体が発見されたという事件の記事。
銀髪に青眼の女性――おそらく、ノルデン貴族。
昨今話題になっている、魂を抜かれた遺体ではなかった。
彼女の周囲には泥の塊と共に血の宝玉がいくつも転がっていて、彼女の体内にもそれが埋め込まれていた。
宝玉には命の残滓がわずかに感じられたが色を失っており、彼女の体内の物も同様。
ミランダ教の司祭の見解では、女性がこの宝玉を使って生み出した泥の生命体が暴走をして、主人であるはずの女性を殴り殺したのではないだろうか ということだった。
「生命体ってあの"ゴーレム"ってやつのことか?」
厨房の後片付けを終えたジャミルも話に加わってきた。
それに対し、カイルがあごに手をやりながらうなずく。
「多分そうだろうな。暴走か……不死者と同じ原理か……?」
「…………」
ゴーレム……血の宝玉で生み出された泥の生命体。
暴走したゴーレムは女性を殴る。
そして女性の体内に埋め込まれている血の宝玉が傷を治し、ゴーレムはまた彼女を……。
「……う……っ」
「! グレン……」
グレンさんが、青ざめた顔で口元を抑える。
死ぬ寸前まで痛めつけて傷を治し、それを繰り返す。
これは、彼が光の塾の大人にされたのと同じ行為――。
「大丈夫? 顔色が……。ね、座りましょう」
「すまない……」
「……続きの話して大丈夫か? 結構グロいんだよな」
「大丈夫だ……頼む」
込み入った話になりそうなので、全員席についてから話の続きをすることにした。
◇
カイルの話の通り、事件の概要は残酷極まりない無惨なものだった。
血の宝玉の効果が切れるまで殴られたと思われる女性の遺体は、顔が判別できないくらいにめちゃくちゃ。
全身の骨は粉々と言えるほどに折れ、破裂した内臓に突き刺さっているものもあったという。
繰り返し殴られた為なのか出血量が半端ではなく、部屋中――床はもちろん壁や天井まで血みどろ。
そして池のようになった彼女の血だまりには、おびただしい数の白い花が咲いていた――と、記されている。
「……花……」
グレンさんを見ると、ちょうど視線がかち合った。
遺体の周り……血だまりの中に咲く花。
あの時と、同じだ……。
「……イリアスが関わっていると見て間違いないだろうな」
「ああ。それで……不可解な点がいくつもあるんだ」
「不可解?」
「ああ。『女性の屋敷の地下室からは血の宝玉と、そのための儀式の道具と思われる物が見つかった。手記や押収品の数々から、この女性こそが光の塾の司教"ロゴス"であるとして、捜査を続けている』っていうんだよ」
「え、嘘……だって、"ロゴス"は……」
「そう。そんなはずないのに、もうこの女性が"ロゴス"っていう風になぜか確定してしまっている」
「おかしいよな。あのヤローを見たことないとしてもさ、前に見つかった光の塾の人間の日記には"彼"って書いてあるんだぜ。なんで女がロゴスってことになるんだ?」
そう言いながら、ジャミルが家から持ってきたスクラップブックを広げてみせた。
光の塾についての記事をまとめているようだ――そこには、2ヶ月程前に話題になった新聞記事が貼ってあった。
光の塾の"神使"だった人の日記だ。その人は"ロゴス"の幼なじみで、ロゴスのことは"彼"と記述している。
そして最後の日記の日付は1543年――20年前の6月。
「イリアスが『ロゴスを引き継いだのは15年程前』と言っていたな。その日記に出てくるロゴスは、イリアスの言う"先代"という奴だろう」
「代替わりしてるってことか? 先代は男だけど、次は女……それだとつじつま合うけどよ、捜査してる側は"代替わり"のこと知らねえんじゃねえのか? よく分かんねーな……」
「捜査には聖銀騎士様が協力してるよね? 銀髪青眼なんてここではめったに見かけないし、顔が分からなくてもこの人が"あの人"だってことは、把握……?」
「……どうした?」
「あ、いえ……」
何かを言おうとして、思考が停止してしまう。
なんだろう、何か、気持ち悪い……。
「あ、"あの人"って……、一体誰のこと言おうとしたのか……あれ?」
「! も、もしかして……レイチェルも!?」
「えっ」
「あのさ、俺達……この殺された女のこと、知ってるよね!? この砦にさ、来たよね? この……女が!」
カイルが身を乗り出して新聞記事を人差し指でパシパシと叩いて指さす。
「えっえっ……えーと、えっと……」
銀髪で青眼の、ノルデン貴族。
記事によれば、おそらく年齢は20代前半。
確かにカイルの言うように、この砦にそんな"誰か"が来た――ような気がする。
でもグレンさんの心の闇の中に入った時のように、顔も名前も全然出てこない。
……誰だっけ?
◇
「ただいま戻りました……あらレイチェル、隊長さん。お帰りなさい」
「あ、お帰りベル~。ごきげんよう」
「うふふ、ごきげんよう」
街に買い物に行っていたベルとルカが戻ってきた。
「ちょうどよかった。ねえ、ねえ、2人とも。ここに、ノルデン貴族の女性が来たよねって話してて……心当たり、ない?」
「え……」
「ベルの、先輩。呪いの名前の女」
「!!」
「わたしのお花を枯らした」
「あ……そう、そうだ……!」
ルカの言葉でモヤがかかっていた記憶がわずかに蘇る。
それに対し、カイルが「ちょっと待って」とダッシュで自室へ戻った。
しばらくしてハードカバーの本のような物を手にして戻ってきて、それをペラペラとめくる。
表紙には「1563年 1月ー」と記してある。
「それって、日記?」
「うん。まあ、日記というか備忘録みたいな簡単なものだけど」
「へー、オマエそんなん書いてんのか。……日付の後ろに文字が1個書いてあるのって何だ?」
「あんまり見るなよ……これは、俺の名前の"クライブ"と"カイル"の頭文字。どっちの自分で経験して応対したかっていうのの目印だよ。……あっ、あった」
カイルが、日記に記していた「呪いの名前の女」に関することを順に読み上げる。
その人は11月――グレンさんがヒースコートへ単独任務に出ている間に砦に来た。
ベルの魔術学院時代の先輩で、1つ年上の23歳。魔法の資質のない者、黒髪ノルデン人、それから薬師など、あらゆるものを見下す差別主義者。
『名前は呪いの呪文なので呼んではいけない』とグレンさんから通達があった。
ルカの花を黒魔術を使い枯らした。
カイルを黒魔術と禁呪で意のままに操ろうとしたが失敗。
聖銀騎士に捕らえられるも脱獄、その後エリス――テレーゼの命令でベルを拉致し、血の宝玉を集める一団に加えようとした。
ノルデン貴族の証である銀髪青眼の持ち主だけど、ジャミルの予想ではおそらく平民だろうとのこと。
グレンさんの魂が抜かれたあと、わたし達を殺すためにゴーレムを数体呼び出そうとするも不死者となったグレンさんに無効化され、逆襲に遭う。
ロゴスはそれを見捨てて逃走。
その後、わたし達と共にグレンさんの心の闇の中に招かれた。ただし彼女だけは、生身で。
モノを作ろうとしたために彼の心が作りだした神父により"罰"を下され、最後はジャミルの使い魔ウィルの魔法により闇から追放――。
「…………」
全部読み上げた後、全員沈黙してしまう。
みんなそれぞれ思うところはあるのだろうけど……。
「ヤベーな……オレそいつと煽り合いしたらしいのにほとんど覚えてねえわ……」
「わたしも……ベルは?」
「え、うん……言った内容と、その時の自分の感情は覚えているのだけど」
「しかもオレが最後追い出したって? 記憶にねえ……でも、確かにいた……ような。うーん」
ルカは花を枯らされたけどやりかえせなかった、悔しい感情のみ頭にあるらしい。
わたしは確か、馬鹿にされて叩かれて、叩き返して……それと、グレンさんがその人に関して電報で警告をくれたことはどうにか思い出した。
グレンさんは「名前を呼ぶな」と通達したことは覚えているけど、カイルの日記によれば直接の関わりはほとんどないから、そもそも知らない。
そして――。
「実は俺も……これだけ書いておきながら記憶が曖昧で。日記にも最初に女の名前を書いたみたいなんだけど、そこが綺麗に消えちゃってるんだよね」
言いながらカイルは、その日の日記を見せてくれる。
――――――――――――――
11月19日 (火) くもり :C
仲間入り希望の女が来た、名前は「 」。
グレン曰く呪いの名前。誰にも唱えさせないよう通達せよとのこと。
名前を書くのもダメかもしれないから、「A」と書く。
――――――――――――――
以降、彼女のことは"A"で記述されており、その部分は消えていないという。
名前も記憶も消えて、"ロゴス"として始末されようとしている"A"という女性。
確かにいたはずなのに、闇の世界でもないのに、どうして彼女の記憶が抜け落ちているのだろう。
本来"ロゴス"と名乗っていたはずのイリアスの行方は、杳として知れない。
この1ヶ月ほど何の事件もなかったけれど、この"A"の惨殺事件をきっかけに、また何かが起こる気がしてならない……。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!
ぽんちゃん
恋愛
――仕事で疲れて会えない。
十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。
記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。
そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる