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「勝利の女神の塔」編
2-2.そびえし魔境2
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俺は皆に、焚き火で焼き上げたキメラの足(羊の肉と酷似した味だ)と、飲み水を配る。なぜだか知らないが、水を運ぶのは案内人の仕事というのが伝統なのだ。
ちなみに、ただの水では味気ないので、俺特製のブレンドで果実の汁を加えてある。疲労回復にはもってこいだろう。
「くああ、生き返るぜ。毎度のことながらたまんねえな。この水のレシピを教えてくれよ、病みつきになっちまった」
ヴィエイラの頼みを首を振って断り、俺もぐびりとひと口飲む。確かにたまらん。我ながらいい出来だ。
「我々は今ちょうどこの塔の半分、三階層まで来た。残る三階層、各々気を引き締めるようにな。ここからは現れる魔物の格が違うだろうし、もしかすると血迷った冒険者に襲われるかもしれん」
アメリアが言うように、探索は折り返し地点まで来た。この野営地の目の前にある階段を上れば、明日から四階層となる。
この話になって、ホンダの目がやや鋭くなった気がする。
というのも、事前に集めた情報では、次の階から先にいよいよ、ホンダが狙う槍が置かれているからだ。
迷宮にある宝の所有権は基本、早い者勝ち。先行しているパーティがいるのか不明だが、もし先に見つけられてしまえば、ホンダは困ったことになる。
運がよければ交渉で手に入るかもしれないにせよ、自分の手で得られるならばそれが最上だ。
「心配すんなって、ホンダ。ここまで俺達より先に誰かが来た痕跡はなかったんだから、きっと大丈夫さ」
ヴィエイラの陽気なフォローに、ホンダも頷いて応える。
「ところで、ツバサのその剣はなんなのだ? あの時一度抜いたのを見た限り、このレベルの迷宮では到底役に立つとは思えん代物だが……」
やっぱりきたか……
まあ、アメリアの心配ももっともだ。実際、俺の剣はいつだかの依頼をこなした時にたまたま手に入れたから使っているだけの、そこらにいくらでもある安物にすぎない。
「その見立て通りだよ。だからあまり抜かせないでくれ、ってことで頼む」
適当にそう答えておく。もちろん、あえてこんなものを使う理由はある。というか、これでなくてもいいのだが、どちらかというとこんなもの以外を使わないほうがいいのだ。
納得がいかず不満そうな顔のアメリアに、俺は左手を開いてみせる。
「代わりに、俺にはこれがある。この五本の指に嵌めている指環全てが魔宝だ。これのおかげで五色の魔術全てを使えるから、それで納得してくれ」
こう言うと、今度はおそらく別の意味で、アメリアの顔は不快げになった。
「五色全ての魔術だと? ありえるか、そんな話! これまでに存在したどの伝説級冒険者でも、三つまでがいいところだ。仮に本当に使えたとして、我々のレベルの戦いにふさわしい威力のわけがない!」
そう言い放ったアメリアだけでなく、ヴィエイラとホンダも同意のようで、やや空気が白けてしまった。
「じゃ、見せてやる。ちょうどいい実験台が来たようだしな」
俺の言葉の意味を瞬時に理解した三人は、即座に戦闘態勢に入る。その辺はさすがだな。
だが俺はそれよりも早く、左手を通路の奥の暗闇に向け、指環に刻まれた魔法言語を介して五つの魔術を同時に放った。
「「「!」」」
息を呑む三人の横を、赤い稲妻、緑に苔むした岩石、白く輝く光線、青き水弾、それから黒で染められた影が駆け抜け、急襲してきたヒドラの頭の一つひとつを消滅させる。
本来、攻撃は赤の魔術の範疇であり、各色の魔術が得意とする分野は異なるのだが……それを披露する機会は、いずれまたやってくるだろう。
「……! 確かに五色、しかも無詠唱で今の威力とは」
お、珍しく、ホンダの驚きが表情で分かる。ヴィエイラはひゅーっ、と口笛を吹き、アメリアは言葉を失っているようだ。
俺の言葉への疑いが晴れたところで、続いてこの指環への質問がやまなくなってしまったのだが、それは冒険者として企業秘密だからとはぐらかしておく。こう言ってしまえば、おいそれとは深入りできない魔法の言葉だ。本当に便利で助かる。
そんな風にして、三回目の野営の時間はすぎていくのだった。
ちなみに、ただの水では味気ないので、俺特製のブレンドで果実の汁を加えてある。疲労回復にはもってこいだろう。
「くああ、生き返るぜ。毎度のことながらたまんねえな。この水のレシピを教えてくれよ、病みつきになっちまった」
ヴィエイラの頼みを首を振って断り、俺もぐびりとひと口飲む。確かにたまらん。我ながらいい出来だ。
「我々は今ちょうどこの塔の半分、三階層まで来た。残る三階層、各々気を引き締めるようにな。ここからは現れる魔物の格が違うだろうし、もしかすると血迷った冒険者に襲われるかもしれん」
アメリアが言うように、探索は折り返し地点まで来た。この野営地の目の前にある階段を上れば、明日から四階層となる。
この話になって、ホンダの目がやや鋭くなった気がする。
というのも、事前に集めた情報では、次の階から先にいよいよ、ホンダが狙う槍が置かれているからだ。
迷宮にある宝の所有権は基本、早い者勝ち。先行しているパーティがいるのか不明だが、もし先に見つけられてしまえば、ホンダは困ったことになる。
運がよければ交渉で手に入るかもしれないにせよ、自分の手で得られるならばそれが最上だ。
「心配すんなって、ホンダ。ここまで俺達より先に誰かが来た痕跡はなかったんだから、きっと大丈夫さ」
ヴィエイラの陽気なフォローに、ホンダも頷いて応える。
「ところで、ツバサのその剣はなんなのだ? あの時一度抜いたのを見た限り、このレベルの迷宮では到底役に立つとは思えん代物だが……」
やっぱりきたか……
まあ、アメリアの心配ももっともだ。実際、俺の剣はいつだかの依頼をこなした時にたまたま手に入れたから使っているだけの、そこらにいくらでもある安物にすぎない。
「その見立て通りだよ。だからあまり抜かせないでくれ、ってことで頼む」
適当にそう答えておく。もちろん、あえてこんなものを使う理由はある。というか、これでなくてもいいのだが、どちらかというとこんなもの以外を使わないほうがいいのだ。
納得がいかず不満そうな顔のアメリアに、俺は左手を開いてみせる。
「代わりに、俺にはこれがある。この五本の指に嵌めている指環全てが魔宝だ。これのおかげで五色の魔術全てを使えるから、それで納得してくれ」
こう言うと、今度はおそらく別の意味で、アメリアの顔は不快げになった。
「五色全ての魔術だと? ありえるか、そんな話! これまでに存在したどの伝説級冒険者でも、三つまでがいいところだ。仮に本当に使えたとして、我々のレベルの戦いにふさわしい威力のわけがない!」
そう言い放ったアメリアだけでなく、ヴィエイラとホンダも同意のようで、やや空気が白けてしまった。
「じゃ、見せてやる。ちょうどいい実験台が来たようだしな」
俺の言葉の意味を瞬時に理解した三人は、即座に戦闘態勢に入る。その辺はさすがだな。
だが俺はそれよりも早く、左手を通路の奥の暗闇に向け、指環に刻まれた魔法言語を介して五つの魔術を同時に放った。
「「「!」」」
息を呑む三人の横を、赤い稲妻、緑に苔むした岩石、白く輝く光線、青き水弾、それから黒で染められた影が駆け抜け、急襲してきたヒドラの頭の一つひとつを消滅させる。
本来、攻撃は赤の魔術の範疇であり、各色の魔術が得意とする分野は異なるのだが……それを披露する機会は、いずれまたやってくるだろう。
「……! 確かに五色、しかも無詠唱で今の威力とは」
お、珍しく、ホンダの驚きが表情で分かる。ヴィエイラはひゅーっ、と口笛を吹き、アメリアは言葉を失っているようだ。
俺の言葉への疑いが晴れたところで、続いてこの指環への質問がやまなくなってしまったのだが、それは冒険者として企業秘密だからとはぐらかしておく。こう言ってしまえば、おいそれとは深入りできない魔法の言葉だ。本当に便利で助かる。
そんな風にして、三回目の野営の時間はすぎていくのだった。
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