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【ep.04】私はマリアの騎士になる!

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 ルイ様がとどめの一撃を放ち、私はそれを寸前の所でかわす。
 そのまま私は勢いよく駆けて行く。お城の方へ一直線に。

 その一瞬の出来事は誰にも捉えられなかったでしょう。
 久しぶりに本気を出したのだから当然です。
 
「きゃあ!?」

 駆けた先にいたマリア様を腕に抱きかかえると、マリア様は驚いて声を上げる。
 その声に振り向いたルイ様は剣を構えたまま私を睨んでいます。

「ルイ様、あなたではマリア様を幸せにはできません」
「……ッ、貴様にマリアの何が分かる……!」
「……私には分かりません」

 ルイ様は唖然として私を見続けている。何を言っているのか、というその視線を私は受け止める。
 マリア様と共に過ごしてきた時間はルイ様の方が多い事実は変えられません。

「でも私は、あなたよりマリア様を幸せにできる自信があります!」

 力強く放った言葉と同時に、私の背中から光が放たれる。光の中心にあるのは白い翼。
 誰もが私の事を驚きながら見ていて、私が地面を蹴ろうとしたのを感じたルイ様は駆けだす。
 
 あなたの1歩では私には届きません。

 そんな視線をルイ様に向けた後、私は思い切り地面を蹴る。
 届かない程高く、空へ飛び出した。

「きゃああああああああああああああああ」

 マリア様の絶叫がお城に届かなくなる位に高く、遠くまで飛んでいく。
 私の胸元を強く握りしめながら目をつむっているマリア様を落とさない様に、しっかりと抱きかかえる。

「安心してください。絶対に離しませんから」
「……わぁ」

 私が安心させる様にそう呟けば、目を開けて映った光景に感動した様な声が聞こえた。
 空から見える景色に夢中な表情は私には見えない位にその景色に向いていて、気付かれない様に小さく笑う。

「ねえマリア、どこに行こうか?」

 私の言葉に振り向いて驚いた様な表情かおで見つめられた。少し嬉しそうに見えるその表情かおは私の大好きな太陽の様な笑顔に変わっていく。
 嬉しくなって私は翼を大きく広げて飛んで行った。

 マリアと一緒に、幸せに過ごせる場所を探しに。

 *

 遠くまで飛んで行って、草原の中にある家の前で私たちは降りた。
 ポツンと建っている家は人が住める位に綺麗な外観をしています。

「ごめんください、誰かいますか?」
 
 ドアをノックしてみても返事がなくて、私は困った様にマリアに視線を向けた。マリアも困った顔をしていて、もう一度ノックしてもやはり返事がない。
 なんとなくドアを押してみて、動いた事に慌てて手を離す。

「あわっ開いちゃった……!」
 
 ドアには鍵がかかっていなくて、開いてしまった事に驚きつつも、ゆっくりとドアを開けて家主を探す。
 広い部屋には人が住んでいた形跡はあるけど、もうずいぶん放置された様な形跡もあった。

「エマ……どうしましょう……?」
「誰も住んでなさそうだし、水道も通っているし、今日の所はここで過ごそう」

 私は家の中を探索してみて問題ないのを確認すると、中央にあるソファに座る。少しほこりは被っているけど、ふかふかしたソファの座り心地は悪くない。

 ドアの前で不安そうにするマリアを手招きすると、ゆっくりと私の隣に座って不安そうに私を見つめた。

「マリア……その、勝手にごめんなさい」
「……どうして謝るのですか?」
「私はいけない事をしてしまいました。私の気持ちだけで動いてしまった……」

 私は不安になってマリアと視線を合わせられなかった。
 今更怖くなってしまって、不安で瞳が揺れてしまう。見られたくなくて俯いて膝に置いた手をぼんやりと眺める。

「……わたくしはルイの気持ちには応えられませんでした。あの方の想いは大きすぎて……苦しい事ばかりでした。それでも婚約相手を決める権利はわたくしにはありません。だからこれからも苦しいのだと思っていました」

 ゆっくりと顔を上げてマリアを見つめる。嬉しそうな顔はどこか安心した様に感じられて、私の中から恐怖が消えて行く。

「わ、私……マリアを守る騎士ナイトになります!」

 立ち上がってマリアの手を握る。
 
「エマ……?」

 不思議そうに私を見上げる顔をしっかりと見つめて、私は想いを言葉にしていく。
 
「どんな事があっても、マリアを守れるように強くなるから……だから……」

 一直線にマリアを見つめたまま、緊張して上手く言葉にできない。手が震えてしまって、手の握り方が合っているのかも分からなくなってしまう。
 それでも、初めて会った時から、私にとってマリアは大切な人だから。

「はい、よろしくおねがいしますわ」

 マリアは私と視線を合わせる様に立ち上がって、私の手を握り返してくれた。
 身体が震えてしまいそうな位に嬉しくて、マリアの緩んだ笑顔を見つめていると頬が熱くなっていく。
 見つめ合った視線の先から幸福が感じられて、マリアの澄んだピンク色の瞳が綺麗だと見つめ続けて。

 ――バン

 勢いよく開いた家のドアに私は慌ててマリアの手を離してドアを見る。

「あ、ごめんね。邪魔しちゃった」

 ドアを開けた女の子は私たちを見て呟いた後、堂々と家に入って来て、私たちの向かいのソファに座った。

「どうぞ続けて」

 驚いたまま固まる私たちを気にせずに、女の子はソファでくつろぎ始めていた。
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