魔法が使えない魔女は、侯爵令嬢に拾われてメイドになりました ~結婚を嫌がるお嬢様を攫って旅に出ます!~

響城藍

文字の大きさ
5 / 25

【ep.05】魔法が使える魔女

しおりを挟む
 ソファの前で固まる私たちを不思議そうに見つめる女の子。ピンクの長い髪を2つに結んでいて、首を傾げた動きと一緒に髪が揺れた。

「……続けないの? まあ別にいいけど」
 
 そう言うと私たちに興味がなくなった様にリュックの中から本を取り出して読み始めた。
 そんな女の子を見て私は我に返る。

「あ、あの、きみは一体……?」
「あんたたち、ここに住むの?」
「えっ!?」
「住んでくれるなら丁度いいんだけど。家事をしてくれる子たちがいるなんて思ってなかったし」

 女の子が言っている事が理解できずに困惑する私を見上げて、何かを思い出した様に女の子は立ち上がった。

「あたしはリュシエンヌ。リュシーでいいわ。ここ、あたしの家なの。まあ他にいくつもあるから住んでもらって構わないんだけど、少しの間あたしもここで過ごすからよろしく。家の中まだ見てないなら案内するわ」

 家の奥へ行ってしまったリュシーの姿を見て呆然とした後、リュシーに呼ばれて私たちは家の中を歩き回った。

 *

 「まずは、そうね……服を変えましょう」

 案内が終わってすぐにリュシーはそう呟いた。
 私はいつものメイド服で生活に支障はないけど、マリアはドレスを着ている。余所行きの豪華な純白のドレス。
 もう令嬢ではないし、動きやすい服が良いのは確かなんだけど、服を買いに行くにもこの家の近くに街があるのかすらも判らない。

「あたしのおまかせでいいかしら?」
「あ……はい、それは構わないのですが……」
「ちょっと眩しいかも」

 リュシーの言葉に不思議そうな顔をしていたマリアの身体が光って服が変わっていた。一瞬の出来事に何をしたのかとマリアは自分の服装を驚きながら見ていた。
 騎士とお姫様を混ぜた様な服装。いつもドレスだったので、マリアがミニスカートを履くとこんなにも脚が長く見える事に私は驚いて視線を泳がせる。

「次はあんた」
「え……」

 私に視線を向けた次の瞬間には私の服装も変わっていた。
 マリアと色違いのミニスカートの後ろにマントの様に広がる燕尾服。フリルの付いたシャツは可愛らしさがあって思わず声を上げてしまう。

「うん、悪くないわね」
「あの……リュシーは今なにをしたの?」
「何って、魔法を使ったの。見て分かるでしょ?」
「魔法!?」

 リュシーの言葉に私は驚いてリュシーを見続ける。穴が開く位にじっくりと。
 目の前にいるのは私と同じ、魔女。私は魔法を使った事がないから今のが魔法だと分からなかった。詠唱もなしに一瞬で使える魔法に私は目を輝かせる。

「すごい……! ねえリュシーに教えてほしい事があるんだけど……」
「……あんた料理はできる?」
「え? うん、最低限はできるよ」
「あたしお腹すいたから、お昼にしましょ。キッチン好きなように使いなさい。食材少しは持ってるから適当に作って頂戴」
「うん! まかせて!」

 私はリュシーに言われた通り、食材を受け取ってキッチンへ向かった。
 ソファに座って待つマリアとリュシーのために腕を振るおう。早くお昼を作って、リュシーの話を聞きたいと気分を上げて食材を眺めながらメニューを考える。
 
 リュシーが魔女なら、魔法の使い方を教えてもらえるかもしれない。そうしたらマリアの事も守れる。

 ソファで2人が話し始めたのを音楽代わりに聴いていた。距離があって会話内容は聞こえなかったけど。
 誰かのために作る料理はとても楽しいな。

 *

 私が作った料理をソファの前にあるローテーブルに置くとマリアは驚いたような声を漏らしていた。
 マリアの隣に座って、緊張しながら2人の様子を伺う。
 リュシーが先に一口食べて、少しだけ驚いた様に表情が変わった。

「美味しいわね。今まで食べた中で2番目には入れるわ」
「え……そんなに自信はないんだけど……」

 リュシーの言葉を聞きながらマリアも一口含んだ瞬間に驚いていて、飲み込んだ後勢いよく私を見た。

「エマ! あなたどうして今まで黙っていたのですか!?」
「え……? だって、お城には料理人さんがいたから……」
「あなたの腕前なら料理人も任せられたはずですわ!」

 マリアの力強い言葉にリュシーは何かを考えながらあっという間に完食していた。
 マリアも冷めない内に食べ終えて、リュシーは腕組みをしながら私を見つめる。

「食材の調達は任せて頂戴。エマは料理担当に決定ね」
「私でいいの……?」
「エマが適任ですわ」

 2人から推奨されてしまえば断る理由がなくて、私は照れながら食器を洗いに行った。
 戻って来た頃には食休みが終わり、私はリュシーの隣に座る。リュシーは視線だけで私を捉えて、私は真剣に視線を合わせた。

「リュシー……私に魔法の使い方を教えてください!」
「面倒だからイヤ」

 即答すぎて私は項垂れる。世の中そんなに甘くないのだと突きつけられて、悲しみのまま俯き続ける。

「……それに、エマは魔法を使えないと思うのよね」
 
 リュシーは小さく呟いた。小さすぎて聞こえなかったので聞き返す様に私はリュシーを見続ける。
 そんな視線が嫌だったのか、リュシーは立ち上がって部屋の奥にある階段に向かって行った。

「あたしは2階の部屋にいるから、何かあったら呼んで」

 そう言いながら階段を上がって行って、私は悲しみを全開にしながらソファにうつぶせになった。

「……リュシーの気が変わるまで、私は諦めないから」

 その呟きが聞こえたのか、マリアの小さな笑い声を耳にしながら、私はまだソファに身を預けていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~

しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。 それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること! 8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。 どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ! 「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」  かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。 しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。 「今度こそ、私が世界を救って見せる!」 失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!   剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。 イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。 小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

処理中です...