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第66章:まだまだダンジョンに入れマセン

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 「かぁー!
 やっぱ凄え人が並んでんなー!」

 「エウレス!ギルドの時みたいにお姉ちゃんと手を繫ごう!
 はぐれちゃうから!」

 「まどろっこしい。抱えよ。」

 「えっ!?う、うん!」

 我輩はケルベロスを影にしまい、姉にしがみつく。

 手を繋いで逸れぬようにすれば、うっかり姉の手を砕きかねんからな。

 胴体ならば砕けまい。

「いつもはこんなに混んでねぇんだけどなー!?」

 「すごい人…これじゃあ誰がどこにいるかなんて分かんないわ!!」

 「大丈夫だ。ケルベロスが嗅ぎ分ける。金の匂いに敏感だからな。」

 「ほんと!?それ凄いね!!」

 嘘だ。

 本当のところ嗅ぎ分ける…もとい感じ取れるのは、我輩だ。

 あの剣は我輩の力を吸収している。近付けば嫌でも分かるのだ。

 具体的に言うと吐き気がする。

 今のところそんな感じもしないので、ここら近辺にはいないようだ。

 「とにかくダンジョンに入るぞ。
 全てはそこからだ。」

 「そうだな!」
 「うん!!」

 我輩はもうじき昼寝の時間だ。

 眠るとしよう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「…ス、エウレス!」

 「む…ふわああああ…どうした?」

 「ごめんね?でも大事なことなの…
 今日はダンジョンに入れないらしいのよ…」

 「…なんだと…?」

 「ほら、さっきお前の犬を欲しがった奴らがいるだろ?
 あいつら結構な偉いさんだったらしくてな…ダンジョンの入り口を封鎖して、俺らを探してるらしいんだ。」

 なんと愚かな…

 あの若僧、きちんと主人に伝えなかったのか?仕事一つもまともにできんとは、やはり未熟極まりない。

 「では行ってくる。」

 「えっ!?ちょっとエウレス…」

 「ケルベロス。」

 「「「ガルバウギャア!!」」」

 我輩はケルベロスを巨体で呼び出す。

 本格的に痛めつけねば分からんようだからな。

 「行ってくる。案ずるな。
 待っていろ。」

 「…う、うん…気をつけて…」

 「エウレス!!
 無茶だけはし過ぎるなよ!!!
 相手は偉いさんなんだからな!!」

 フハハハ…無茶をする前提ではないか。ようやく兄も我輩に適応し出したようだ。

 だが無茶をする気など無い。少し仕置きをするだけだ。

 我輩は宙に立つケルベロスの上に立ち、ダンジョン入り口目掛け、侵攻するのだった。




 
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