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第97章:動く憲兵団デス

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 「師匠!何事っすか!?」

 「…ジャッジかあ…紅から緊急招集が出たんだよ…内容は"罪人の捕縛"…」

 「罪人!?どんな罪を…!?」

 「…エルフ・エメルダの殺害容疑だぜえ…」

 「殺害!?それにエメルダって…!?それってミレスの学院の学院長じゃ…!!」

 「……殺害したのは、お前の弟だとさあ…」

 「ばかな!!」

 殺しを実行できる者など限られている。何故ならこの世界に死はない。

 記憶そのままに、必ず別の生き物に転生するようにできている。

 でも、殺すことができるとしたら…

 それは確かに、エウレスかも知れない。

 「でも!エウレスは理由が無く殺しをするような奴じゃねえ!!
 それにあいつが本当にやったかどうかも分からねえだろ!!」

 「…だが、少なくとも紅の団長は証拠を上げてきたようだぜえ…」

 「そんな…!そんなもんでっち上げ…」

 「口を慎め!!
 ノバーン・ジャッジ。」

 その時、紅の団長が俺と師匠の会話に割り込んできた。

 「よお、紅のお。なんか用かあ?」

 「なんかではない…あのエウレスという子供の兄を捕らえに来たのだ。」

 「なにい…?」

 「俺を…!?」

 「当たり前だろう!もし弟を逃がされでもしたら、この街の憲兵団の名折れだからなあ!!
 我ら紅の憲兵団が責任を持って貴様らを捕縛する!!」

 「貴様ら…?」

 「そうだ!!既に貴様の妹は捕らえてある…」

 紅団長が目配せすると、取り押さえられたミレスが連れてこられた。

 「ミレス!!」

 「兄さん!!どういうことなの!?
 エウレスは学院長先生を殺してない…!!」

 「ふん!!くだらん言い逃れを!!
 きちんと証拠があるのだぞ!!!」

 紅団長は、懐から何かを取り出した。

 あれは…抜き身のナイフ?

 「これには魔導学院長の血の他に2名の残留魔力が検知された!
 一つは持ち主である学院長・エメルダの物!もう一つは貴様らの弟・エウレスの物だ!!」

 「違う!!
 エウレスはやってない!!私も一緒にいたんだもの!!」

 「ふん!!弟を庇いたい気持ちは分からんでもないが、あまり庇い立てし過ぎると貴様らも罰せられるぞ!!
 既に憲兵団の招集は承認されたのだ!
それすなわち!街議員の方々は、貴様らの弟を罪人と断定したということであるぞ!!!」

 「んな馬鹿な!!」

 「さあ!大人しく捕まれ!さもなくば腕の一本や二本は覚悟して貰うぞ!!」

 「畜生…!」

 俺は師匠を見る。

 「…今は大人しく捕まっとけえ……
 お前の大事な弟が、やってねえと信じてんならなあ…」

 「そんな!師匠…」

 「あまり暴れるのも、弟の為にならねえって言ってんだ。
 弟の為に、今は捕まっとけえ…」

 「…分かりました…」

 俺は武装を解かれ、腕を後ろに回され、手錠を嵌められた。

 「…」

 どうすりゃ良い…どうすりゃエウレスを助けられる…!?

 そもそも、エウレスは今どこにいるんだ…!?
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