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第119章:欲しくなりマス

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 『…はっ!!?わ…私は一体…!?』

 『気を失っていたのか…!?』

 『頭がいたい…』

 数秒後に、雑魚どもは目を覚ました。何が起きたかすら把握できていないようだな。説明する気も無いが。

 『ガロロロロロ…良い良い。
 お客人を敵に回さんで良かった。
 恐らく某が負けるであろう。』

 「当然だ。我輩がドラゴンごときにやられてたまるか。
 これは慈悲だ。次は無い。」

 『貴様!!懲りずにまた王に不敬な…』

 『。』

 『『『…!!』』』

 ほう…やはり素晴らしい。

 響きや含む力は違うが、神言と瓜二つだ。

 雑魚どもは黙り込み、王ドラゴンを見つめる。

 『これ以上某に気苦労をかけんでくれ。このお客人も言っただろう。
 次は無いと。』

 雑魚ドラゴンどもが目を見開き、驚く中、雑魚の中でも一際大きな雑魚が口を開く。

 『お…恐れながら王よ。本気でございますか?
 その矮小な人間が、我らを殺せると言っているように聞こえます。
 王もそれを肯定していらっしゃる…』

 『そうだ。そのお客人は強い。
 某よりも。この場の誰よりも。』

 『そんな馬鹿な…!!
 しかしその人間は何もしていないではありませんか!!
 何故言い切れるのです!?』

 『…それが分からぬから勝てんのよ…
 "竜の伝心"』

 王が何やら頭に手を当てて力を発する。

 すると、雑魚どもは見開いた目を更に見開き、口を阿保の如く開け放つ。

 『ば…かな…?』

 『なんだこれは…』

 『いつの間に…!!』

 『先程お前たちの身に起きたことだ。全て現実だ。分かるな?お前たちの誰も、事が起きたことにすら気付けていない。死ぬところだったのだ。』

 『『『…!』』』

 雑魚どもの視線が我輩に注がれる。
 
 鬱陶しいな。

 「…ふん。じろじろ見るな。
 殺すぞ雑魚ども。」

 『馬鹿な…そんな訳が無い…
 我ら誇り高きドラゴンの一族が…
 こんな人間に…!!』

 『怒るな。流せ。お客人の言葉遣いは自然の摂理よ。某らの誰よりも強いのだから。』

 『そんな…そんな…!!』

 やれやれだな。くだらん。

 ドラゴンはどいつもこいつも気位が高すぎる。

 あのチビ雑魚や王にはまだ見込みがあるが、このデカ雑魚を始めとする雑魚どもは全くもってくだらないな。

 「おまたせしました…!!」

 む?…ああ、服か。
 
 早かったな。

 「…人間?」

 「い、いえ!!
 私、先程のドラゴンです!
 アースと申します!!」

 どこからどう見ても人間の男のようだが、声が同じだった。

 とすれば、最初に我輩を襲った人間も、ドラゴンだったのか…

 「なんなのだここは?
 人は居ないのか?
 我輩はどこまで飛ばされた?」

 『お客人…ここは竜の国。』

 「なんだと…?」

 竜の国?そんなものがあるのか?

 …ドラゴンが国を作るなど…一番共同生活に向かぬ種だと思うが…

 『今年で建国3000年を迎えるドラゴン国家。
 その名も"ラゴラム"…ドラゴンの言葉で、繁栄を意味する。ここでは人の姿を借りたドラゴンしかおらぬ。
 …さあ、次はお客人の番だ。』

 「…なんだと?」

 我輩は持ってこられた服に腕を通しつつ疑問符をぶつける。

 『一体人間のお客人が、この国に何の用向きで、どうやって紛れ込んだのか。
 なにより名前を聞かせてもらおうか?』

 王が我輩を見下してくる。

 安穏として見える瞳にはしかし、ギラギラと敵意のような光を宿している。

 本当に面白いドラゴンだな。あれだけ我が力を見ていながら、このような目を我輩に向けるとは。

 この世界に来て数年。初めてだな。何者かの魂が欲しくなったのは。

 



 

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