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9:冒険者への転身
しおりを挟む「冒険者?私達がですか?]
「ロウブレイド」の飾り気のない指揮官室で、赤髪、眼帯の女指揮官のソレーヌから「転身」を言い渡される修道女剣士ミラリアと仮面の騎士シルヴァン。
ソレーヌは相変わらず鋭い声と強い口調で言う。
「そうだ。戦ではなく、探索者として主にその腕を振るって欲しい。これはルガート議長も承認済みだ」
「探索ということは、要は遺跡荒らしですか」
シルヴァンが問う。隠しているとはいえ、元の身分が王子なせいか、あまり気が進まないのだろう。
シルヴァンの言に、ソレーヌは眉をひそめて言う。
「遺跡の開拓とおもってくれ。前時代の遺跡が、この国にはごろごろある。国が出入りを管理しているから、ほぼ手付かずだ。悪い話ではないだろう」
ミラリアはでも、と多少の疑問を口にする。
「でも私、鍵や罠なんて外せないですよ?多分シルヴァンも。そこはどうするのでしょう」
「それも承知済みだ。おい、ロイザードを呼べ!」
そうして、ソレーヌの出した伝令に、呼ばれて来たのは、青いシルクハットに、同色の外套、スーツをまとった「手品師」じみた青年だった。シルヴァンよりやや年下くらいか。
『「トリックスター」ロイザード、参上しました。ソレーヌさん。ようやく僕の力が必要になりましたか』
「団長とよべといっているだろうロイザード。お前の盗賊としての腕前を、この二人のために振るってくれ」
「分かりました。ソレーヌ団長」
ミラリアとシルヴァンは、ロイザードの派手な衣装に呆れて、ミラリアが問う。
「え~と、この目立つ人と一緒に遺跡、ダンジョンの探索をすることになるのでしょうか?」
「そういう事だ。格好は目立つが、盗賊としての腕は確かだ。それに二人とも、人の姿をどうこう言える風体でもないだろう」
ソレーヌは面白そうに口元をほころばせて、締めくくるように言う。
「太刀のシスターに、仮面の騎士、そして青い衣の手品師か。面白い一行になりそうだな」
☆
指揮官室から出た三人はこの後、砦付きの酒場で「PTリーダーについて」話し合う事にした。それなりに広い、茶色を基調とする酒場の一角に陣取る一行。
「先に確認するが、リーダーはミラリアで異存はないな?」
シルヴァンがロイザードに問う。「構わないよ」とあっさり承諾するロイザード。
「シルヴァンがミラリアさんを好きなのは知ってるし、僕も必要以上にでしゃばる気はないよ。リーダーとPTの主導権は「ブレードシスター」ミラリアさんでいいと思う」
そう言ってまとめると、ロイザードは、トランプを使っての手品を二人に披露する。ジョーカーを多用するその手品は、娯楽のすくないこの施設に住む二人には、新鮮に思えた。
「手慣れてるわね。どういう仕組みなの?」
興味深々で問いかけるミラリアに、ロイザードはさっとトランプをしまった。
そして「手品は種を明かさないのが常道だよ」と答えるロイザード。
「で、ロイザードは戦闘のほうはどうなんだい?」今度はシルヴァンが問う。
「荒事は苦手さ。だから君たちと組むんだ。戦闘はよろしくたのむよ二人とも」
そうして、ロイザードは同じ軽い酒を3杯頼むと、もってこられたグラスを掲げる。
「じゃあ、前祝いといこうか。僕たちの、PTの結成を祝って。ミラリアさん、音頭よろしく」
ミラリアもシルヴァンも、その意を汲んで、グラスを掲げる。
「じゃあ、このPTの結成を祝って、乾杯よ」
カシャンとグラスが当てられて、それぞれがそれを飲み干す。
…こうして、冒険者として遺跡を探索することになったミラリア一行は自称「トリックスター」の青年ロイザードを新たに加えて、この後その一歩を踏み出すことなる。
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