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二話
しおりを挟む本来であれば、聖女が纏うのは質素なドレスの予定であった。
しかし、今回公爵家令嬢であるフィオーナの嫁入りという事もあり、恐らく王族よりも華やかな花嫁衣装を彼女は纏っていた。
白いウエディングドレスには宝石がちりばめられ、日の光を反射しては美しく輝きを放つ。
聖女はもちろん国中の者達から尊ばれるものである。
それ故に、城下町をパレードのような形で回るのだが、国民は二つの噂話によってざわめいていた。
一つ目の物語では、悪役令嬢と呼ばれるフィオーナが聖女の清らかな心に嫉妬し酷いいじめや陰湿な嫌がらせをしたことで糾弾され、聖女の代わりに魔王の生贄へと選ばれたというもの。こちらの話では王太子と聖女の恋が美しく描写されており、悪役令嬢を魔王の生贄にするのであるから、本来は大衆は好むのかもしれない。
そしてもう一つの物語は、生々しいものであった。聖女と王太子はすでに肉体的関係を結び、婚約者であるフィオーナに無実の罪をかぶせて糾弾し、生贄になれと命令したというもの。フィオーナは絶望の淵に立たされながらも令嬢としての矜持を失う事無く、その命令に従う意思を示したというもの。
二つの物語を前にした時、ほとんどの者達は恐らくは二つ目が真実なのだろうと思った。
何故ならば、真実とは生々しい物であるからだ。
それに何より、国民は知っていた。
フィオーナは確かに勝気な令嬢であるが、決して意地の悪い令嬢ではないと。
「お可愛そうになぁ・・フィオーナ様。」
「本当に。あれほど慈善活動に力を入れ、未来の王妃として頑張られていたのに。」
彼女は下町に降りては視察を行い、国に足りないものを模索し、それを改善しようと日々行動してきたことを国民は知っていた。
その人気はすさまじく、姿を現さない王族よりも人気は遥かに高い。
気位は高く、面白い事には素直に笑い、楽しくないときには不満げな顔をする。貴族の中ではちゃんと猫をかぶっていると言うのが彼女の口癖。
しかし、国民のフィオーナへの同情心はパレードで美しい衣装を身に纏い、儚げながらも美しい笑みを浮かべて皆に手を振るフィオーナを見て変わった。
「何か、猫をかぶっていらしたけれど、あれはさ、楽しんでいらっしゃるな。」
「あぁ。あの顔は、しめしめといった顔だったな。」
そう言って、国民は笑い声を上げる。
どんな逆境に立たされようとも、フィオーナ様であれば大丈夫だと皆が笑い声を上げる。
「これから王太子殿下は大変だろうなぁ。」
「そりゃそうさ。フィオーナ様の国民の人気はすごいし、あの噂だって一つ目の方はほとんどの者が信じていない。他の国のことならまだしも、フィオーナ様を知らない」
「しかも、フィオーナ様のお父上であるゼダン公爵を敵に回したのだから後ろ盾もないだろうなぁ。」
「王太子・・・変わるかもなぁ。」
国民はそんなことを平気で口にする。
情勢を把握している国民が多いのは、ゼダンの仕事をフィオーナが引き継ぎ、国の基礎学力の強化を図ってきたからである。
そんなことすら、現在の王太子殿下は知らないであろうが。
「とりあえず、祝っておくか。」
「そうだな。」
『フィオーナ様ご結婚おめでとうございまーす!』
国民から祝福を受け、フィオーナはご満悦である。
「ふふふ。私の猫を被る姿に皆騙されているわね。っふ。あんな王族びいきの噂なんて、私のこの儚げな笑みで吹き飛ばしてやるわ!」
自分が演技上手だと信じているフィオーナなのであった。
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