【完結】私の愛しの魔王様

かのん

文字の大きさ
3 / 15

三話

しおりを挟む
 パレードが終わると、フィオーナは魔王が花嫁を呼ぶと言う魔方陣の描かれた祭壇へと上っていった。

 その場には国王陛下、王妃、王太子殿下、元聖女、宰相そしてフィオーナの父がいる。

 国王陛下はフィオーナの前に立つと口を開いた。

「フィオーナ嬢。本当に良いのか?」

「私は一度決めたことは守りますの。王太子殿下とは違いますわ。」

「何だと!?」

 顔を歪ませた王太子を、国王は睨み付けると言った。

「黙れ。かつてフィオーナ嬢を幸せにすると誓っておきながら、それを反故にするお前には口を開く権利はない。」

「ち、父上!」

「お前をこの場に呼んだのは、自分の仕出かしたことを見届けさせる為だ。」

「父上?」

 悲しげに目を伏せ、国王はハッキリとした口調で言った。

「フィオーナ嬢を悪役に仕立てあげ、その上聖女と契りを交わしたお前には王太子としての資格はない。よってそなたは廃嫡とし、弟である第二王子を王太子とする。聖女は賠償金の支払いを近日中に行うように。詳細は後に沙汰を申す。」

 もし、舞踏会という大きな場でなければ。

 もし、自分に事前の相談があれば。

 もし、フィオーナを勝手に魔王の生贄などに皆の前で指定しなければ。

 もしを考えても仕方はない。

 国王は大きく息を吐く。

 現に第一王子は聖女を汚し、婚約を破棄し、後ろ楯と各貴族と国民の信頼を失ったのだ。

 汚名返上するには、かなりの労力と時間を必要とする。それよりは、第二王子を王太子とするほうが容易く、国も安定するだろう。

 顔を青ざめさせる王子と聖女を一瞥すると視線をフィオーナへと戻す。

 美しく微笑むフィオーナは、楽しげに言った。

「では皆様ごきげんよう。私は魔王様と幸せになりますわ!」

 フィオーナの父であるゼダンは悲しみのあまり目を赤くして、ポロポロと涙を流している。

 そんな彼が各貴族に手を回し、王太子の廃嫡を国王へと進言した。そればかりではなく、国王には賠償金を求め、かなりの額をフィオーナの花嫁資金へと当てた。

 本物の魔王を目にしたことのない者達からすれば、ゼダンこそが魔王のようだと口を揃えて言うだろう。

「我が愛しい娘フィオーナよ。手紙を、手紙をくれ。お願いだからな。」

「はい。お父様。あ、殿下や聖女様にもお手紙書きますね。」

 青ざめていた王子と聖女にフィオーナは楽しげに手を振る。

 この場で王子と聖女がどうなるかをはっきり言ってから送り出してほしいというのがフィオーナの最後の願いであった。

 そして、その願いが果たされ、フィオーナは晴れやかな気持ちであった。

「では、フィオーナ嬢。くれぐれも魔王に粗相のないようにな。」

「もちろんでございます。」

 国王は魔方陣を発動させ、フィオーナを魔界へと送り出す。

「皆様おげんきで。ごきげんよう!」

 次の瞬間、フィオーナの姿はその場から消え、ゼダンはその場に泣き崩れたのであった。



しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

聖女アマリア ~喜んで、婚約破棄を承ります。

青の雀
恋愛
公爵令嬢アマリアは、15歳の誕生日の翌日、前世の記憶を思い出す。 婚約者である王太子エドモンドから、18歳の学園の卒業パーティで王太子妃の座を狙った男爵令嬢リリカからの告発を真に受け、冤罪で断罪、婚約破棄され公開処刑されてしまう記憶であった。 王太子エドモンドと学園から逃げるため、留学することに。隣国へ留学したアマリアは、聖女に認定され、覚醒する。そこで隣国の皇太子から求婚されるが、アマリアには、エドモンドという婚約者がいるため、返事に窮す。

【完結】悪役令嬢のトゥルーロマンスは断罪から☆

白雨 音
恋愛
『生まれ変る順番を待つか、断罪直前の悪役令嬢の人生を代わって生きるか』 女神に選択を迫られた時、迷わずに悪役令嬢の人生を選んだ。 それは、その世界が、前世のお気に入り乙女ゲームの世界観にあり、 愛すべき推し…ヒロインの義兄、イレールが居たからだ! 彼に会いたい一心で、途中転生させて貰った人生、あなたへの愛に生きます! 異世界に途中転生した悪役令嬢ヴィオレットがハッピーエンドを目指します☆  《完結しました》

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。 ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの? 昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに! どうしてこうなったのか、誰か教えて! ※アルファポリスのみの公開です。

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...