【完結】私の愛しの魔王様

かのん

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三話

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 パレードが終わると、フィオーナは魔王が花嫁を呼ぶと言う魔方陣の描かれた祭壇へと上っていった。

 その場には国王陛下、王妃、王太子殿下、元聖女、宰相そしてフィオーナの父がいる。

 国王陛下はフィオーナの前に立つと口を開いた。

「フィオーナ嬢。本当に良いのか?」

「私は一度決めたことは守りますの。王太子殿下とは違いますわ。」

「何だと!?」

 顔を歪ませた王太子を、国王は睨み付けると言った。

「黙れ。かつてフィオーナ嬢を幸せにすると誓っておきながら、それを反故にするお前には口を開く権利はない。」

「ち、父上!」

「お前をこの場に呼んだのは、自分の仕出かしたことを見届けさせる為だ。」

「父上?」

 悲しげに目を伏せ、国王はハッキリとした口調で言った。

「フィオーナ嬢を悪役に仕立てあげ、その上聖女と契りを交わしたお前には王太子としての資格はない。よってそなたは廃嫡とし、弟である第二王子を王太子とする。聖女は賠償金の支払いを近日中に行うように。詳細は後に沙汰を申す。」

 もし、舞踏会という大きな場でなければ。

 もし、自分に事前の相談があれば。

 もし、フィオーナを勝手に魔王の生贄などに皆の前で指定しなければ。

 もしを考えても仕方はない。

 国王は大きく息を吐く。

 現に第一王子は聖女を汚し、婚約を破棄し、後ろ楯と各貴族と国民の信頼を失ったのだ。

 汚名返上するには、かなりの労力と時間を必要とする。それよりは、第二王子を王太子とするほうが容易く、国も安定するだろう。

 顔を青ざめさせる王子と聖女を一瞥すると視線をフィオーナへと戻す。

 美しく微笑むフィオーナは、楽しげに言った。

「では皆様ごきげんよう。私は魔王様と幸せになりますわ!」

 フィオーナの父であるゼダンは悲しみのあまり目を赤くして、ポロポロと涙を流している。

 そんな彼が各貴族に手を回し、王太子の廃嫡を国王へと進言した。そればかりではなく、国王には賠償金を求め、かなりの額をフィオーナの花嫁資金へと当てた。

 本物の魔王を目にしたことのない者達からすれば、ゼダンこそが魔王のようだと口を揃えて言うだろう。

「我が愛しい娘フィオーナよ。手紙を、手紙をくれ。お願いだからな。」

「はい。お父様。あ、殿下や聖女様にもお手紙書きますね。」

 青ざめていた王子と聖女にフィオーナは楽しげに手を振る。

 この場で王子と聖女がどうなるかをはっきり言ってから送り出してほしいというのがフィオーナの最後の願いであった。

 そして、その願いが果たされ、フィオーナは晴れやかな気持ちであった。

「では、フィオーナ嬢。くれぐれも魔王に粗相のないようにな。」

「もちろんでございます。」

 国王は魔方陣を発動させ、フィオーナを魔界へと送り出す。

「皆様おげんきで。ごきげんよう!」

 次の瞬間、フィオーナの姿はその場から消え、ゼダンはその場に泣き崩れたのであった。



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