【完結】私の愛しの魔王様

かのん

文字の大きさ
4 / 15

四話

しおりを挟む
 フィオーナは光の中から体が浮遊するのを感じ、そして目を開くとそこは真っ暗な石垣の建物の中であった。

 そして、目の前には黒い獣がこちらをじっと見つめ佇んでいる。

 その黒い獣の瞳はどこにあるのか。

 黒い毛皮に埋もれて、フィオーナには見えないが、にこりと優雅に微笑むと美しく頭を下げた。

「魔王様。私の名はフィオーナでございます。どうぞ、末長くよろしくお願い致します。」

「ついてこい。」

 低いその声にフィオーナは好みの声だなと思いながら愛しの魔王様をじっと見つめ、後ろをついていく。

 狼のような体ではあるが、獣のような匂いはせず、どちらかと言えば石鹸のよい香りがする。

 それもまた好ましい。

 石造りの建物から外に出てみれば、そこはまさに魔界であった。

 不可思議な生き物達の鳴き声に、黒い空。

 草木一本と見えないその光景に、フィオーナは文献に載っていた通りなのだなと思っていた。

 そして、しばらく進んだその先には、巨大な黒い城が聳え立っていた。

 おそらく人間の城の数倍はあるであろう。

 門がまずでかい。

「魔王様。ずいぶん大きな門ですわね。」

「人間ほど、皆小さくないからな。」

「なるほど。」

 詳しい説明はないものの、ちゃんと質問すれば答えてくれる魔王に、フィオーナは好感をさらに抱く。

 城の中を通り、そして階段を上った先に一つの可愛らしい白い扉が現れた。

「ここが君の部屋だ。」

 扉が開き中に入ると、そこには白を基調とした可愛らしいフリルのあしらわれた部屋が現れる。

 魔王の瞳がじっとフィオーナを見つめていると、どうにも予想外の反応を感じる。

「魔王様。僭越ながらよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「私と魔王様は今日より夫婦でございますよね?」

「あぁ。」

「では、言わせていただきます。この部屋は私の趣味ではございません。」

 静かな沈黙が流れ、魔王の視線を感じてフィオーナは言った。

「私は、魔王の妻。なのに、この部屋はまるで天使の部屋です。私は魔王の妻なのですから、もっとこう、黒い感じが良かったです。」

「なるほど。こうか?」

 次の瞬間部屋の装飾が一瞬で変わり、黒薔薇のレースのあしらわれた、妖艶な部屋へと変わる。

 フィオーナはそれについはしゃいだ声をあげた。

「素敵です!さすがは私の愛しの魔王様!やることがスマートですわ!」

 魔王は黒い瞳を少し見開いたのちに、元に戻すと言った。

「今宵より正式に夫婦ではあるが、準備が整い次第魔界の結婚式をあげる。それまでは夫婦は別室となる。」

「あら・・そうなのですね。」

 少し残念そうな視線を受けて、魔王はまた目を見張る。

「部屋でゆっくりと休め。後に専属のメイドと執事が部屋にくる。」

「かしこまりました。あ、魔王様?」

「なんだ?」

「この後はお忙しいのですか?もし、よければ、お城を案内してはいただけませんか?」

「・・分かった。」

「嬉しいです!では、また後で!」

 部屋の中へと入るとフィオーナを、魔王はじっと見つめて見送った。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

聖女アマリア ~喜んで、婚約破棄を承ります。

青の雀
恋愛
公爵令嬢アマリアは、15歳の誕生日の翌日、前世の記憶を思い出す。 婚約者である王太子エドモンドから、18歳の学園の卒業パーティで王太子妃の座を狙った男爵令嬢リリカからの告発を真に受け、冤罪で断罪、婚約破棄され公開処刑されてしまう記憶であった。 王太子エドモンドと学園から逃げるため、留学することに。隣国へ留学したアマリアは、聖女に認定され、覚醒する。そこで隣国の皇太子から求婚されるが、アマリアには、エドモンドという婚約者がいるため、返事に窮す。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。 ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの? 昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに! どうしてこうなったのか、誰か教えて! ※アルファポリスのみの公開です。

【完結】悪役令嬢のトゥルーロマンスは断罪から☆

白雨 音
恋愛
『生まれ変る順番を待つか、断罪直前の悪役令嬢の人生を代わって生きるか』 女神に選択を迫られた時、迷わずに悪役令嬢の人生を選んだ。 それは、その世界が、前世のお気に入り乙女ゲームの世界観にあり、 愛すべき推し…ヒロインの義兄、イレールが居たからだ! 彼に会いたい一心で、途中転生させて貰った人生、あなたへの愛に生きます! 異世界に途中転生した悪役令嬢ヴィオレットがハッピーエンドを目指します☆  《完結しました》

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...