【完結】私の愛しの魔王様

かのん

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五話

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 自室へと戻った魔王は、人の姿に体を変えると首を大きく捻った。

「どうなさったのです?奥方様に悲鳴をあげられましたか?」

「いや。」

「失神されましたか?」

「いや。」

「泣きわめかれたとか?」

「いや。」

 魔王へとお茶を入れていた側近のカラシュは、銀色の髪をかきあげると、少し考え、メガネをくいっとあげてから言った。

「罵倒された、ですか?!」

「違う。」

 これまで現れたという、魔王の花嫁達の基本な反応のどれにも当てはまらない。

 カラシュは眉間にシワを寄せた。

「ちゃんと仕来たり通り、本来の姿で迎えたのですよね?」

「あぁ。」

「では、一体どんな反応だったので?」

「自己紹介をされた。」

「え?」

「泣き叫びもせず、にこりと微笑みを浮かべて、だ。しかも、何の文句も言わずに後ろから楽しげについてきた。その上、だ。あの趣味の悪い、人間には大人気の部屋を、自分の趣味ではないと言った。」

「な、なんと・・・」

 人間とは総じて趣味が悪い生き物なのだと思っていたがどうやら違うらしいと、二人はお互いにはじめて知ることに驚いていた。

 だが、こうも普通の人間とは違う反応を示されると、逆に疑いたくなるものだ。

「・・まさか、欠陥のある人間なのでは?」

「・・わからん。だが、少しおかしいのは確かだ。」

「どうしたのです?」

 魔王の耳が少しばかり赤くなったことに気付き、カラシュが首をかしげると、魔王は何でもないと首を横に振った。

(愛しの魔王様と呼ばれた気がしたが・・空耳だったのだろうか。)

「あ、魔王様。」

「なんだ?」

「ほら、以前から魔王様に尻尾を振っていた四大魔族の劫火のアナスタシア様が何かしてこないとも限りませんから、頭に入れておいてください。」

「あー。あの令嬢か。いや、話したのも数回程度だがな。」

「それでも、アナスタシア様は魔王様に執着しているようでしたから、念のため気を付けておいた方がいいかと。」

「わかった。」

 魔王はうなずくと、メイドや執事達がフィオーナに挨拶を終えるまでに仕事を終わらせなければと、書類に手を伸ばしたのであった。

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