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第六話
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魔物の王国では、エマが無事にガレリア王国へと到着したとの知らせを聞き、国王と王妃は大きく安堵の息をついた。
「私達の可愛いエマ・・・はぁ。貴方、本当にエマを人間の国へとやらねばならなかったのですか?」
王妃の嘆くような声に、国王は大きくうなずいた。
「最近リフレ帝国の動きが怪しい。・・・隣接している我が魔物の国ではエマを隠しきれないだろう。」
「貴方。」
「あぁ。エマがもしガレリア王国で虐げられた場合はすぐに取り戻しに行く。だが、現状では我が国にいるよりもガレリア王国にいた方が安全なのだ。」
その言葉に王妃は悲しげに目を伏せると、エマの事を思い出して瞳を潤ませた。
長らく子の出来なかった王妃と国王にとってエマは本当の子同然であった。魔物の国は世襲制ではないし、落とし子を養う事も別段おかしくはない。だからエマをすんなり受け入れたし、そしてエマの素直で曇りない瞳で自分達を慕ってくれる姿は可愛くならない方がおかしい。
出会った当初のエマは、それはそれは酷い有様だった。
やせ細り、どれほど食べ物を食べさせてもらっていなかったのか。
そればかりではなく、エマの首元にはある呪いが掛けられていた。
解くことも出来たが、解いてしまえばあの子の平穏はなくなるであろうとそのままにしてある。
エマが笑うまでに半年も必要とした。その時の事を思い出すと、王妃は今でも泣いてしまう。
「あんなにも可愛く幼い子を傷つける国になど、私は絶対にエマをやりませんよ。」
王妃の瞳が燃え、禍々しい殺気を放つと、国王からも恐ろしい殺気が巻き上がる。
「もちろんだ。リフレ帝国になどエマをやるつもりはない。」
エマが来てから平穏な日々の続いていた魔物の王国の城に、久方ぶりに恐ろしいまでの禍々しい殺気が渦巻き、近隣の魔物達も殺気に充てられて吠える。
月は赤く色づいていった。
だが、その殺気が一瞬で霧散する。
「まぁ!見て!貴方!ほら、可愛いエマから伝書魔鳩が飛んできましたよ。」
窓の外には一羽の魔物の鳩が姿を現し、グルッポーグルッポーッと低音の鳴き声が響いた。
エマの手紙を読んだ王妃も国王も頬を緩めるが、しばしの間、国王はやきもちを焼くように毛を逆立てた。
「まぁまぁ。ジャックフォッドといえば、魔物の国でも有名な美男子ではないですか。人間なのにそれはそれは見目麗しいと、戦いながらも見惚れた者もいると聞いたことがありますよ。」
「あぁ。その姿は死神の如く恐ろしく、人間なのに赤い瞳を持つ色男だ。ほう。エマは素晴らしき男を引き当てたな。だが・・・何だろうな。いい男だとは思うが、やはり娘を取られる気がして・・・なんとも言えんな。」
「まぁ。貴方ったら。」
ジャックフォッド自身は知らないことだが、彼は魔物の国では人間なのに死神のように恐ろしく、それでいて勇ましい姿、毛におおわれた顔を評価され、美男子と噂される男なのであった。
「私達の可愛いエマ・・・はぁ。貴方、本当にエマを人間の国へとやらねばならなかったのですか?」
王妃の嘆くような声に、国王は大きくうなずいた。
「最近リフレ帝国の動きが怪しい。・・・隣接している我が魔物の国ではエマを隠しきれないだろう。」
「貴方。」
「あぁ。エマがもしガレリア王国で虐げられた場合はすぐに取り戻しに行く。だが、現状では我が国にいるよりもガレリア王国にいた方が安全なのだ。」
その言葉に王妃は悲しげに目を伏せると、エマの事を思い出して瞳を潤ませた。
長らく子の出来なかった王妃と国王にとってエマは本当の子同然であった。魔物の国は世襲制ではないし、落とし子を養う事も別段おかしくはない。だからエマをすんなり受け入れたし、そしてエマの素直で曇りない瞳で自分達を慕ってくれる姿は可愛くならない方がおかしい。
出会った当初のエマは、それはそれは酷い有様だった。
やせ細り、どれほど食べ物を食べさせてもらっていなかったのか。
そればかりではなく、エマの首元にはある呪いが掛けられていた。
解くことも出来たが、解いてしまえばあの子の平穏はなくなるであろうとそのままにしてある。
エマが笑うまでに半年も必要とした。その時の事を思い出すと、王妃は今でも泣いてしまう。
「あんなにも可愛く幼い子を傷つける国になど、私は絶対にエマをやりませんよ。」
王妃の瞳が燃え、禍々しい殺気を放つと、国王からも恐ろしい殺気が巻き上がる。
「もちろんだ。リフレ帝国になどエマをやるつもりはない。」
エマが来てから平穏な日々の続いていた魔物の王国の城に、久方ぶりに恐ろしいまでの禍々しい殺気が渦巻き、近隣の魔物達も殺気に充てられて吠える。
月は赤く色づいていった。
だが、その殺気が一瞬で霧散する。
「まぁ!見て!貴方!ほら、可愛いエマから伝書魔鳩が飛んできましたよ。」
窓の外には一羽の魔物の鳩が姿を現し、グルッポーグルッポーッと低音の鳴き声が響いた。
エマの手紙を読んだ王妃も国王も頬を緩めるが、しばしの間、国王はやきもちを焼くように毛を逆立てた。
「まぁまぁ。ジャックフォッドといえば、魔物の国でも有名な美男子ではないですか。人間なのにそれはそれは見目麗しいと、戦いながらも見惚れた者もいると聞いたことがありますよ。」
「あぁ。その姿は死神の如く恐ろしく、人間なのに赤い瞳を持つ色男だ。ほう。エマは素晴らしき男を引き当てたな。だが・・・何だろうな。いい男だとは思うが、やはり娘を取られる気がして・・・なんとも言えんな。」
「まぁ。貴方ったら。」
ジャックフォッド自身は知らないことだが、彼は魔物の国では人間なのに死神のように恐ろしく、それでいて勇ましい姿、毛におおわれた顔を評価され、美男子と噂される男なのであった。
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