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第三十一話 砦攻略戦 合流
しおりを挟むユグドラシルは、温泉の横に作っていたロッジのベッドの中ですやすやと寝息を立てるエドを見つめていたが、立ち上がるとルシフェルに言った。
「私は砦へと向かって、反乱軍の様子を見てくるね。ルシフェルはエドの傍にいてくれる?」
言われるだろうなとは思っていたが、ルシフェルはその言葉に顔を歪めた。
「一人で危険ではないか?」
「大丈夫。危ないと思ったらすぐにこちらに戻って来るし。皆の事も心配だから。」
ユグドラシルは黒いマントに身を包むと、ルシフェルを見た。
「・・・気を付けるのだぞ。」
心配げなルシフェルの顔に、まるで親のようだなと思いながら微笑、ぎゅっとルシフェルに抱き着いた。
「もちろん。行ってきます。」
「あぁ。」
離れて行動することなど今までになかっただけに、ルシフェルは不安な様子であった。
ユグドラシルはそれに苦笑を浮かべる。
「エドの事お願いね。」
「あぁ。」
ユグドラシルの姿はその場から消えた。
ユグドラシルが願えばこの場にいつでも帰ってこれるようにしてある。だからこそ、危険が差し迫ってもここに逃げてくればいいだけのことだ。
そう、ルシフェルは自分に言い聞かせるのであった。
反乱軍は無事にロロワロールと合流したらしく、正しい谷の道を歩いていく。しばらくするとポツリポツリと雨が降り始め、雨音に反乱軍の足音はかき消された。
「ロロワロール殿!本当にこの道でいいのか!」
そう声を上げたのは、リディックであった。
ロロワロールは楽しげに笑い声を上げると言った。
「あぁもちろんだ。ほら、雨が次第に激しくなってきた。もうすぐ来るぞ。」
「?」
その時であった。轟音と共に雨水が一気に谷の下へと流れ込み、先ほどまでは一本道のようであった谷下の道が川へと変貌したのである。
もしあそこを歩いていれば、水に飲み込まれ、どうなっていたかは分からない。
ユグドラシルはその光景を岩場に身を隠しながら見つめていた。
「良かった・・・兵の半分以上を失うのは避けられた・・・。」
本来であればここで兵の半分の命は奪われ、一度ユグドラシルらは引くしかなかったのだ。だが、ロロワロールが仲間になった事で、かなりの命が救われた。
ここで半年から一年ほど足止めを食らう予定だったはずが、物語は進んで行く。
砦近くへと着いたのは夜も更けた時であった。
ガデオン・リディック・ロアン・アレッサンドラ・ロロワロールの五人はテントの中で攻略戦の打ち合わせを行っていた。
その様子は真剣そのものであり、テント外でユグドラシルは話を聞いていた。だが、リディックの言葉に思わず顔を歪めてしまう。
「隠密部隊を僕が先行し、内部から砦を開けるようにします。内部からが困難となった場合にはガデオンに知らせを送るので、ガデオンは誘導隊を率いて砦の眼を惹きつけて下さい。」
確かに物語内でもリディックが先行して内部へと侵入するのだが、それを敵に知られてしまい、ガデオンの部隊が奇襲に会い、ガデオンは深手を負ってしまう。
ユグドラシルはどうしようかと悩みながら、呼吸を整えると、演技がかった声でテントを開けた。
「・・・砦には、魔石が仕掛けられているので、隠密部隊を送るのであればそれを打ち消す魔法石を身に着けていなければならないけれど・・・大丈夫かしら。」
突然現れたユグドラシルの姿に、一行は目を見開いた。
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