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第一章
精霊王との約束 62
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天高く、それは世界の最果て精霊の領域。
轟音と共に、雷鳴が轟き、雲が渦を巻くようにしてうねりを上げる。
禍々しい闇の中で、暗黒龍は黒い炎を放つ。
雲は炎にかき消され、一瞬晴れ間がさすが、すぐに雨雲が空を覆い、冷たい雨を容赦なく降らせる。
いったい、どのくらいの間、この不毛な戦いを続けているのだろうか。
『恐ろしいねぇ。だが、そなたにフィリアは渡さないよ。』
『フィリアは世界に愛されし子。そなたは穢れている。』
「黙れ。フィリアは我のモノ。誰にも渡しはしない。」
『おぉ、怖い。お前をフィリアが選ぶのもか!』
『穢れた分際で、何を馬鹿な事を言うか!』
『自分のモノとはおこがましいにもほどがある。』
「煩い。」
グリードは翼を大きく羽ばたかせて雲を吹き飛ばす。次の瞬間、灼熱の炎がグリードの体を包み、肌を焦がす。
グリードは吼え、大地は揺れる。
『なんという龍だ。我ら精霊王に勝てると思っているのか!』
『精霊の領域に足を踏み込んで、ただですむと思うな。』
「ここであれば、人間の世界への干渉はない。」
『バカか。干渉はない代わりに、お前の体は悲鳴をあげているだろうに。ここは生あるものが踏み込める場所ではない。』
「ならば、我の話を受け入れろ。」
『はは!なんという龍か!』
『面白いな。』
『フィリアがお前を選ぶわけはないが、そうだな。』
『よし、ならば、お前のその身が災いの魔力で満ちた時、それでもお前が意志を失わず、フィリアを求めるのであれば、、、。』
『フィリアもお前を求めるのであれば、、、。』
精霊王らは笑って声を合わせて言った。
『そなたらの仲を認め、世界に安寧を与えよう。』
「約束だぞ。あと、フィリアで遊ぶのもなしだ。」
『分かった分かった。だが、お前もおかしな子だね。』
『ここまで来るなんて。』
「そうでもしなきゃ、仲を認めるどころか、永遠にフィリアを使ってお前らは遊びそうだ。」
『失礼な。僕達は約束は守るよ。』
『そう。だが、これはあくまでフィリアがお前を愛せばの話。』
『まして、お前が災いの魔力に耐え切れるかも分からない。』
『体の中で、侵食は続いている事に気づかぬお主ではあるまいよ。』
『せいぜい、意志を失わないように抗って見せよ。』
精霊王らは笑い声をあげ、空気に溶けるように消えていった。
「っく、、、。」
グリードの体はキシキシと音を立てて、悲鳴を上げる。
精霊の領域が、グリードを拒絶する。
だが、ここへこなければ話もできなかった。人間の世界では、精霊王らは滞在が許されるのはわずかな時間のみ。
そんなわずかな時間で精霊王が話を聞くわけがない。
だからこそ、自然の摂理を壊さないためにも、この領域で決着を付けざるを得なかった。
この領域ならば、精霊王らは、どこにいようとも世界にその力を満たす事ができる。
始めのうちは、精霊王らも言葉を使ったが途中からは力と力のぶつかり合いであった。
数ヶ月もの間、飲まず食わずで戦い続け、そのうえこの領域のせいでグリードの体はボロボロである。
だが、グリードは笑った。
約束は出来た。これで、一番の邪魔者は約束さえ果たせば問題はない。
体がどんどんと地上へ向かって落ちていく。
そんな中でも、グリードの胸は安堵に包まれていた。
精霊は気まぐれだが、約束はやぶらない。だが、以前フィリアの元に来た時は、この勝負が終わったら手を引くと言っただけであった。手を引く、この意味がもう関わらない、という意味とは限らない。もしかしたら、来年別の誰かをあてがわれまた勝負となっては、たまったものではない。
そして何より、フィリアの恋愛相手に他の誰かが現れるのが許せなかった。
偽りだとしても、フィリアが誰かを見るのが辛くてたまらない。
自分の胸に手を当てると、燃えるように熱く、熱を持っている。
この意味に気付いた時、恐ろしくなった。
もし、フィリアが他の誰かを愛してしまったら?
もし、フィリアが自分の手から離れてしまったら?
もし、フィリアが自分の名を呼ばなくなったら?
熱の正体に気付いた時、考え、考え、考え抜いてここへ来る決心をした。
その日の明け方、フィリアの部屋を内緒で訪れ、しばしの別れをし、覚悟してここへ来た。
フィリアと離れる事は不安だったが、このままでは駄目な事は理解していた。
だからこそ、精霊王へ約束を取り付けた。
グリードは笑った。
後は約束を果たせばいい。
早く、フィリアの元へ帰ろう。
体が、心が、早くフィリアの元へと叫ぶ。
ボロボロの体を叱咤し、グリードは翼を億劫そうにゆっくりと羽ばたかせると、体勢を空中で整え、そして一気に滑空すると、地上ギリギリで羽を広げ黒い炎を吐き、地上を燃やした。そこに出来た亀裂に体をすり込ませると、そこは地上ではなく星が瞬く。
そして、星が消えた瞬間海が現れ、グリードはそこへ体を沈めていく。どんどんと潜っていった先に空が見えた。
そこはフィリアのいる世界。
精霊の領域から出たからか、体はとても軽く感じた。
「フィリア、、今帰る。」
グリードの呟きは風に消えた。
轟音と共に、雷鳴が轟き、雲が渦を巻くようにしてうねりを上げる。
禍々しい闇の中で、暗黒龍は黒い炎を放つ。
雲は炎にかき消され、一瞬晴れ間がさすが、すぐに雨雲が空を覆い、冷たい雨を容赦なく降らせる。
いったい、どのくらいの間、この不毛な戦いを続けているのだろうか。
『恐ろしいねぇ。だが、そなたにフィリアは渡さないよ。』
『フィリアは世界に愛されし子。そなたは穢れている。』
「黙れ。フィリアは我のモノ。誰にも渡しはしない。」
『おぉ、怖い。お前をフィリアが選ぶのもか!』
『穢れた分際で、何を馬鹿な事を言うか!』
『自分のモノとはおこがましいにもほどがある。』
「煩い。」
グリードは翼を大きく羽ばたかせて雲を吹き飛ばす。次の瞬間、灼熱の炎がグリードの体を包み、肌を焦がす。
グリードは吼え、大地は揺れる。
『なんという龍だ。我ら精霊王に勝てると思っているのか!』
『精霊の領域に足を踏み込んで、ただですむと思うな。』
「ここであれば、人間の世界への干渉はない。」
『バカか。干渉はない代わりに、お前の体は悲鳴をあげているだろうに。ここは生あるものが踏み込める場所ではない。』
「ならば、我の話を受け入れろ。」
『はは!なんという龍か!』
『面白いな。』
『フィリアがお前を選ぶわけはないが、そうだな。』
『よし、ならば、お前のその身が災いの魔力で満ちた時、それでもお前が意志を失わず、フィリアを求めるのであれば、、、。』
『フィリアもお前を求めるのであれば、、、。』
精霊王らは笑って声を合わせて言った。
『そなたらの仲を認め、世界に安寧を与えよう。』
「約束だぞ。あと、フィリアで遊ぶのもなしだ。」
『分かった分かった。だが、お前もおかしな子だね。』
『ここまで来るなんて。』
「そうでもしなきゃ、仲を認めるどころか、永遠にフィリアを使ってお前らは遊びそうだ。」
『失礼な。僕達は約束は守るよ。』
『そう。だが、これはあくまでフィリアがお前を愛せばの話。』
『まして、お前が災いの魔力に耐え切れるかも分からない。』
『体の中で、侵食は続いている事に気づかぬお主ではあるまいよ。』
『せいぜい、意志を失わないように抗って見せよ。』
精霊王らは笑い声をあげ、空気に溶けるように消えていった。
「っく、、、。」
グリードの体はキシキシと音を立てて、悲鳴を上げる。
精霊の領域が、グリードを拒絶する。
だが、ここへこなければ話もできなかった。人間の世界では、精霊王らは滞在が許されるのはわずかな時間のみ。
そんなわずかな時間で精霊王が話を聞くわけがない。
だからこそ、自然の摂理を壊さないためにも、この領域で決着を付けざるを得なかった。
この領域ならば、精霊王らは、どこにいようとも世界にその力を満たす事ができる。
始めのうちは、精霊王らも言葉を使ったが途中からは力と力のぶつかり合いであった。
数ヶ月もの間、飲まず食わずで戦い続け、そのうえこの領域のせいでグリードの体はボロボロである。
だが、グリードは笑った。
約束は出来た。これで、一番の邪魔者は約束さえ果たせば問題はない。
体がどんどんと地上へ向かって落ちていく。
そんな中でも、グリードの胸は安堵に包まれていた。
精霊は気まぐれだが、約束はやぶらない。だが、以前フィリアの元に来た時は、この勝負が終わったら手を引くと言っただけであった。手を引く、この意味がもう関わらない、という意味とは限らない。もしかしたら、来年別の誰かをあてがわれまた勝負となっては、たまったものではない。
そして何より、フィリアの恋愛相手に他の誰かが現れるのが許せなかった。
偽りだとしても、フィリアが誰かを見るのが辛くてたまらない。
自分の胸に手を当てると、燃えるように熱く、熱を持っている。
この意味に気付いた時、恐ろしくなった。
もし、フィリアが他の誰かを愛してしまったら?
もし、フィリアが自分の手から離れてしまったら?
もし、フィリアが自分の名を呼ばなくなったら?
熱の正体に気付いた時、考え、考え、考え抜いてここへ来る決心をした。
その日の明け方、フィリアの部屋を内緒で訪れ、しばしの別れをし、覚悟してここへ来た。
フィリアと離れる事は不安だったが、このままでは駄目な事は理解していた。
だからこそ、精霊王へ約束を取り付けた。
グリードは笑った。
後は約束を果たせばいい。
早く、フィリアの元へ帰ろう。
体が、心が、早くフィリアの元へと叫ぶ。
ボロボロの体を叱咤し、グリードは翼を億劫そうにゆっくりと羽ばたかせると、体勢を空中で整え、そして一気に滑空すると、地上ギリギリで羽を広げ黒い炎を吐き、地上を燃やした。そこに出来た亀裂に体をすり込ませると、そこは地上ではなく星が瞬く。
そして、星が消えた瞬間海が現れ、グリードはそこへ体を沈めていく。どんどんと潜っていった先に空が見えた。
そこはフィリアのいる世界。
精霊の領域から出たからか、体はとても軽く感じた。
「フィリア、、今帰る。」
グリードの呟きは風に消えた。
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