魔法使いアルル

かのん

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9話

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「両親は、私を捨てて逃げました。あれが人間の本性ですよ。信じてはいけない」

 その言葉を聞いて、私は首を横に振ると言った。

「でも、私は信じたい。それに……オロチが闇の王に求めるのも、信じられる存在が欲しいからなんじゃないの?」

 真っすぐにオロチの瞳を見つめると、一瞬目が見開かれる。

「私が?」

「うん。だってそうじゃなきゃ、ただ一人で生きればいいだけじゃない。暗闇の中で。でもそれは嫌で人を闇へと落として仲間にして……仲間を増やしてって……それって、寂しいってことなんじゃないの?」

 しどろもどろになりながらも、自分の考えを伝えると、オロチは後ろへと後ずさった。

「……だ、だけど……私は」

「本当は信じたいんでしょう。だから……王様が欲しいんだ」

「ち、違う!」

「お父さんやお母さんに裏切られたのは、本当に辛いよね。だからこそ、本当に信じられる人が欲しくて、オロチは、探しているんじゃないの?」

 その言葉にオロチは声を荒げた。

「ただの人はすぐに嘘をつくし、裏切る! だから信じちゃいけない。アルル様も分かるはずだ。だって、孤独の寂しさを、絶望を、知っているんだから! そしてアルル様は普通の人ではない! だからこそ我らの王にふさわしいのです! 私は、私は信じる相手が欲しいんじゃない! 王様が欲しいんだ!」

 泣きそうな声だった。

 王様とは一体なんなのだろうか。

 それになったとして、黒い魔法使いたちが救われるだなんて、私には思えない。

「オロチ……私は、黒い魔法使いたちの王様にはなれないよ。何度も言うけれど、私はね、お父さんやレオやほかの皆のことを信じているから」

 オロチは一歩後ろへと後ずさる。

 すると、姿がまた太った男の人へと変わり、それから仄暗い瞳でこちらを睨みつけて来た。

「……残念です。理解し合えないようですね。でも大丈夫。だって、私たちにはもう一人、王様の候補がいるのですから」

 その言葉に私は魔法の杖をかまえると言った。

「レオのこと? だめだよ。レオは大事な友達なんだから」

「ふふふ。さぁ、どうでしょうね」

 そう言うと、オロチが杖を振るった。その瞬間、私の足元に大量の蛇がうごめき始める。

 私は杖をふった。

「ほうきよいでよ!」

 私はほうきにまたがると、空へと逃げる。それからもう一度杖を振る。

「光よ! 闇をはらい幻影を打ち砕け!」

―――パリンッ!

 放った魔法によって記憶の空間にひびが入り、私はそこを打ち砕いた。

 次の瞬間、光で包まれる。

☆☆☆

 目を開けるとそこいはレオの姿があった。

「アルル! よかった!」

「レオ! ここは? どうなったの?」

 私は体を起き上がらせると、お父さんが守護魔法と防御壁をはり、私とレオを守っていた。

 そして、オロチとツルによってとめどなく攻撃が仕掛けられているのが見えた。

「アルル大丈夫かの!?」

「お父さん大丈夫! 幻影の魔法でオロチの過去を見せられていたみたい! オロチの正体は私よりも小さな子どもで、あれは幻の姿なの!」

 その言葉に、お父さんはうなずくと言った。

「わかった。さて、こちらもそろそろ攻撃を仕掛けていくぞ。アルル! レオ! いいか!」

「「はい!」」

 私たちは返事を返した瞬間杖を構え、攻撃を仕掛ける。

 三人で攻撃と防御とを繰り返しながら、ツルとオロチに立ち向かう。

「ははは! さすがに三人はきついですね。ふふふ。じゃあ、そろそろ、どかんといきましょうか!」

 オロチがそういうと、地面へと魔法を打ち付ける。

 次の瞬間、土の中から巨大な蛇が現れると、それにオロチは乗り、言った。

「私が欲しかったのは、この謎の植物の花。これが手に入ればもう用はありません」

 オロチは笑い声をあげた。

「ふふふふ! くふふふふ! では皆様、ごきげんよう。……いつでも、待っておりますからね」

 オロチは私とレオの方へと笑みを向けた後、黒い煙に包まれて姿を消した。

 私は声をあげた。

「逃げられた! お父さん、レオとにかく、蛇とツルを食い止めなきゃ!」

 蛇はうねりながらこちらに向かって何度も攻撃を仕掛けてくる。

「うむ! とにかく、一度凍らせて動きを止めるぞ!」

「「はい!」」

 私たちは魔力を集中させると、三人同時に魔法を仕掛けた。

「「「氷よ動きを封じ込めよ!」」」

 ツルと一瞬にして氷に包まれ、そして動きを止めた。

 私たちはすぐに今度は蛇に向かって攻撃を仕掛ける。

「「「吹き飛べ!」」」

 蛇たちは幻影の魔法だったのだろう。黒い霧になるように消えた。

 私は、どっと疲れてその場に座りこむ。

「ふわぁぁぁ。疲れた。よかった……止まって」

 お父さんとレオも杖を終うと、ゆっくりと息をつく。

「うむ……とにかく、一時的だが止まったの」

「でも、先生。これは封じているだけで、このまま放っておけばまた動き出しますよね」

「あぁ。それに……このツルが、ここだけとは限らん」

「え? お父さん、どういうこと?」

 お父さんは、凍っているツルの間を抜け、浮かんでいる氷を見上げた。

「……溶けている箇所を修復していかねばな。アルル、レオ、とにかく修復をしていくぞ。これは氷の王国にとってはおそらく重要なものだろう。強力な魔力を感じる。氷の王国の地下にこのようなものがあったとはなぁ……」

 お父さんの言葉に、私とレオはうなずきながら尋ねた。

「お父さん、ツルがここだけとは限らないってどういうこと?」

「ここ以外にもツルがあるっていうことですか?」

 お父さんは氷に修復の魔法をかけながら言った。

「あぁ。氷の王国の地下にはおそらくだが、このような場所がいくつもあるのだろう。そしてこのツルはおそらく、この巨大な氷を狙っているのだろう。このツルについて調べなければな……」

 お父さんの言葉に私はたしかにと思いながら氷を見上げた。

 この氷から、何かをツルは吸い取って花を咲かせたような感じがした。そうだとするならば、吸い取ったのは魔力なのだろうか。

「さぁ、修復が先じゃ。手分けするぞ」

「「はーい!」」

 一度考えるのはやめて、私たちは溶けてしまっている部分の修復を行っていく。

 ただ、この修復もかなり大変だった。

「……力の加減がむずかしい」

「なんだか、編み物している気分になるわ。きっとサリーなら上手そう」

 私の言葉にレオがたしかにというように大きく首を縦に振る。

「ほっほっほ。細かく細かく魔力を調整して、修復していくのじゃ。ただ外側だけを修復するのでは意味がないのだ。目に見えないところまで丁寧に根気強くやっていくことが大事じゃ」

 お父さんの言葉に、私とレオは顔を見合わせるとその通りだなと思った。

 蓋をするように直すなら簡単だ。

 だけれど、全体に流れている魔力を元に戻すようにつなぎ合わせるようにするためにはかなりの集中力が必要だった。
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