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第十二話 迷える子羊(七宮勇太)
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比高は、ゆっくりとした口調で、重い口を開いていく。
その瞳に生気はなく、どこか虚ろであり、学は大丈夫だろうかと心配になった。
比高は二十代の頃、とても好きだった女性がいた。その人と結婚すると思っていたが、家族の反対があり、中々結婚までたどり着けないまま時間だけが過ぎていった。
そして、ようやく周囲を説得して結婚の了解が出た時、女性に別れを切り出された。
理由は、これだけ反対されて今後やっていけるかが心配になったと事。
比高はどうにか女性の心を取り戻そうとしたようだが、不安には敵わず、別れた方が女性にとって幸せならと身を引いた。
だが、学生の頃から一緒にいたので、共通の友人は多く、彼女の近況は誰に聞くでもなく耳に入った。
数年後、女性が結婚したとの話しを知人から聞いた比高は幸せになって欲しいと願っていた。
だが、周囲から話を聞くと所々におかしな点を見つけ疑問に思う。
彼女が男の子を結婚のだいぶ前に出産していた事。
結婚してから、人付き合いが無くなった事。
男の子の姿をほとんど誰も見た事が無い事。
人から聞くたびに、自分の考え過ぎだと思うようにしていた。
自分がまだ未練が残っているからそんな事を思うんだと考えた。
自分はストーカーではないし、これ以上踏み込んではいけないと思った。
だが、もしも、の悪い予感が頭をよぎる。
自分の考え過ぎな方が良い。
だから一度確かめようと彼女の住むアパートへと話をしに行った。
「突然、すまない。」
「どうしたの?」
彼女は酷く顔を青ざめさせていた。
「どうしても気になったんだ。、、、君には男の子がいたよね?」
「え?、、、、えぇ。」
「僕の考え過ぎなら、怒ってくれて構わない。男の子は、元気かい?」
その瞬間に彼女の顔がひどく歪み、そして、中から粗暴な男が出てきた。
「なんだてめぇは?」
「彼女の友人だよ。挨拶が遅れて申し訳ない。僕は比高といいます。息子さん元気かと思って会いに来たんだ。」
男はこちらを嘲るような顔を浮かべると、言った。
「死んだよ。じゃ~な。もう来んなよ。」
バタンと扉を閉められて、僕はひどく動揺したんだ。
冗談のような雰囲気ではなくて、やけに生々しく感じた。
僕は、怖くなった。
こんな事ならば早く来るべきだったのだと、何度も扉を叩いたが、扉が開くことはなかった。
もし、あの男の言ったことが本当ならば、男の子は部屋でまだ苦しんでいるかもしれない。そう思うと胸が苦しくて。
そしたら、桜子さんが僕に声をかけてくれたんだ。
男の子を呼んであげましょうか。って。
もし、男の子が現れれば、男の子はもうこの世にはいないという事。
僕は、、、、、、、。
そこで、比高は目からボタボタと涙を流し、ハンカチで顔を抑えた。
学はそれを見て、思わず口を開いた。
「男の子が貴方の子どもとは限りませんよ?」
きっと、比高はその可能性が高いことでこんなに気持ちが高まっているのではないかと学は思いそう口にした。だが、比高はカッと目を見開くと声を荒げた。
「誰の子でも構わない!友人の子が、いや、誰の子でも、小さな子どもが苦しんでいるかもしれないんだ。そうかもしれないと、、、思ったのに、、僕は何も、、、、出来なかったんだ、、!」
比高は苦しげに最後はそう言うと、お茶を一気に飲み干した。
学はそれを聞いて、この男は純粋に正義感で動いているのだと感じてほっとした。
ここでもし母親への愛ゆえにの執着では、その男の子はうかばれない。
桜子はお茶を一口飲み、比高に尋ねた。
「それで?どうなさりたいの?」
「もし、男の子が本当に亡くなっているなら、、、、、、、亡くなって、、、なんて、、いて、、、欲しくないが、、もしそうなら、、、安全な場所で、、、、休ませて、、あげ、、、たい。」
涙がとめどなく溢れ、比高は苦しげにどうにかそう言い切った。
桜子は目線を空席に向ける。
「もし、生きていたら?」
比高はガバッと勢いよく立ち上がるとはっきりした口調で言った。
「何が何でも僕が引き取る。もう、後悔はしたくない。」
「母親と、あと妹はどうするの?」
「あの男と話をする。彼女が男を選ぶなら、友人として別れるよう説得する。それか駄目なら近くで見守って、一度でも暴力があれば、友人として、また説得する。」
「本当にそれができますの?」
「絶対に。」
決意に満ちた表情に、桜子は笑みを漏らすと空席をまた見つめる。
そして、しばらくしてからふっと息を吐いた。
「男の子。名前を勇太くんと言うらしいですわ。まだ、ぎりぎり、生きてます。」
その言葉に、比高の目は希望に輝いた。
「ですが。」
次の言葉に、比高は言葉を失った。
その瞳に生気はなく、どこか虚ろであり、学は大丈夫だろうかと心配になった。
比高は二十代の頃、とても好きだった女性がいた。その人と結婚すると思っていたが、家族の反対があり、中々結婚までたどり着けないまま時間だけが過ぎていった。
そして、ようやく周囲を説得して結婚の了解が出た時、女性に別れを切り出された。
理由は、これだけ反対されて今後やっていけるかが心配になったと事。
比高はどうにか女性の心を取り戻そうとしたようだが、不安には敵わず、別れた方が女性にとって幸せならと身を引いた。
だが、学生の頃から一緒にいたので、共通の友人は多く、彼女の近況は誰に聞くでもなく耳に入った。
数年後、女性が結婚したとの話しを知人から聞いた比高は幸せになって欲しいと願っていた。
だが、周囲から話を聞くと所々におかしな点を見つけ疑問に思う。
彼女が男の子を結婚のだいぶ前に出産していた事。
結婚してから、人付き合いが無くなった事。
男の子の姿をほとんど誰も見た事が無い事。
人から聞くたびに、自分の考え過ぎだと思うようにしていた。
自分がまだ未練が残っているからそんな事を思うんだと考えた。
自分はストーカーではないし、これ以上踏み込んではいけないと思った。
だが、もしも、の悪い予感が頭をよぎる。
自分の考え過ぎな方が良い。
だから一度確かめようと彼女の住むアパートへと話をしに行った。
「突然、すまない。」
「どうしたの?」
彼女は酷く顔を青ざめさせていた。
「どうしても気になったんだ。、、、君には男の子がいたよね?」
「え?、、、、えぇ。」
「僕の考え過ぎなら、怒ってくれて構わない。男の子は、元気かい?」
その瞬間に彼女の顔がひどく歪み、そして、中から粗暴な男が出てきた。
「なんだてめぇは?」
「彼女の友人だよ。挨拶が遅れて申し訳ない。僕は比高といいます。息子さん元気かと思って会いに来たんだ。」
男はこちらを嘲るような顔を浮かべると、言った。
「死んだよ。じゃ~な。もう来んなよ。」
バタンと扉を閉められて、僕はひどく動揺したんだ。
冗談のような雰囲気ではなくて、やけに生々しく感じた。
僕は、怖くなった。
こんな事ならば早く来るべきだったのだと、何度も扉を叩いたが、扉が開くことはなかった。
もし、あの男の言ったことが本当ならば、男の子は部屋でまだ苦しんでいるかもしれない。そう思うと胸が苦しくて。
そしたら、桜子さんが僕に声をかけてくれたんだ。
男の子を呼んであげましょうか。って。
もし、男の子が現れれば、男の子はもうこの世にはいないという事。
僕は、、、、、、、。
そこで、比高は目からボタボタと涙を流し、ハンカチで顔を抑えた。
学はそれを見て、思わず口を開いた。
「男の子が貴方の子どもとは限りませんよ?」
きっと、比高はその可能性が高いことでこんなに気持ちが高まっているのではないかと学は思いそう口にした。だが、比高はカッと目を見開くと声を荒げた。
「誰の子でも構わない!友人の子が、いや、誰の子でも、小さな子どもが苦しんでいるかもしれないんだ。そうかもしれないと、、、思ったのに、、僕は何も、、、、出来なかったんだ、、!」
比高は苦しげに最後はそう言うと、お茶を一気に飲み干した。
学はそれを聞いて、この男は純粋に正義感で動いているのだと感じてほっとした。
ここでもし母親への愛ゆえにの執着では、その男の子はうかばれない。
桜子はお茶を一口飲み、比高に尋ねた。
「それで?どうなさりたいの?」
「もし、男の子が本当に亡くなっているなら、、、、、、、亡くなって、、、なんて、、いて、、、欲しくないが、、もしそうなら、、、安全な場所で、、、、休ませて、、あげ、、、たい。」
涙がとめどなく溢れ、比高は苦しげにどうにかそう言い切った。
桜子は目線を空席に向ける。
「もし、生きていたら?」
比高はガバッと勢いよく立ち上がるとはっきりした口調で言った。
「何が何でも僕が引き取る。もう、後悔はしたくない。」
「母親と、あと妹はどうするの?」
「あの男と話をする。彼女が男を選ぶなら、友人として別れるよう説得する。それか駄目なら近くで見守って、一度でも暴力があれば、友人として、また説得する。」
「本当にそれができますの?」
「絶対に。」
決意に満ちた表情に、桜子は笑みを漏らすと空席をまた見つめる。
そして、しばらくしてからふっと息を吐いた。
「男の子。名前を勇太くんと言うらしいですわ。まだ、ぎりぎり、生きてます。」
その言葉に、比高の目は希望に輝いた。
「ですが。」
次の言葉に、比高は言葉を失った。
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