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16話
翌朝。
思った以上に寝れたのは、疲れと安心感のおかげか。
レヴと野営所を出れば、昨日の騒ぎなど初めから無かったように落ち着いている。
「おぅ、起きたか。朝ごはんを食べんさい」
「おいもさんだ! レヴ、おなかぺこぺこ」
「はは、ならいっぱい食べんとな」
グラスランさんが芋を焼いており、あまりに呑気な様子に思わず尋ねる。
「あ、あの……昨日の事は」
「近くの街道に縛って置いておいた。直にどこかの騎士に捕らえられるだろうさ」
「ありがとうございました。皆さんが居なければ、ここで旅が終わってました」
「気にするな。助けになれたなら良かったよ」
助けにしかななってない、本当に彼らに会えてよかった。
運命に感謝しつつ、レヴと芋を食した。
◇◇◇
あれから野盗の襲撃などは数度あったが、度々グラスラン達が撃退してくれて事なきを終え。
いよいよ、公爵領へとやってきた。
「着いたぞ、ナディア嬢。ここが戦地近くでも最も大きな街。そしてドルメン公爵家が居を構える場所だ」
「すごい……」
「おっきーい!」
レヴの感嘆の声と共に、私も思わず息がこぼれる。
戦地近くの大都市であるこの場所は、話には聞いていたが想像以上に臨戦態勢であった。
高い石造りの壁が街を覆い、更には街道には幾多の兵士が駐在する。
王都では着飾っていた人ばかりだが、ここでは鉄音響かせる鎧を身に着けた人が多い。
戦場都市だなんて王都では揶揄されていたが、確かにその通りだと納得してしまう。
「驚いたか? この街に住む兵士の割合は約八割。他の産業は全て輸入に頼っているんだ」
「それは……成り立つのですか?」
「もちろん。ここが落ちれば国が落ちるも同義。ゆえにテルム王国の多くの貴族家が支援を送っている」
「ぐーう。ここがまちなの?」
レヴは感動冷めやらぬ様子で、グラスランさんの袖を引く。
「そうだ。ここが儂がよく言っていた街の一つだぞ、レヴ」
「おそとって、こんなにおっきないえがあるんだね」
「レヴ、あれは外壁と言って。怖い人が入ってこないようにするものだ」
「がいへき?」
レヴにとっては、目に映るものが全て新鮮なのだろう。
街に入ってからも、好奇心旺盛に質問する。
それを皆で微笑みながら答えていると、街道から数人の兵士が歩いてきた。
「こんな所に子供か、珍しいな」
「ここがどこだかわかってるのか?」
護衛の人々もそれなりに強面であったが、近づいてきた兵士達はとびきり強面だった。
険しい顔つきで見つめてきて、私は思わずレヴを抱きしめる。
「あ、あの……なにか?」
「そんなガキを連れてくるってことは、分かってるんだろうな」
「え……」
「俺達がどういう仕事しているのか、しっかり教えてやらないとな!」
兵士はそう言って、いきなり手を動かす。
何をする気か分からないが、レヴを守らないと……そんな警戒をしたけど杞憂だった。
なぜなら兵士は懐から、お菓子の包みを取り出したのだ。
「ほら、スコーンだ。くえ」
「おじさん、レヴにくれるの?」
「あぁ。配給品だが甘いぞ」
「やた! ありがと! いただきます」
レヴが手を伸ばしてスコーンを受け取り、それを半分に割る。
半分を私に渡してくれるのだ。
「ナディと、はんぶんこ」
「あ、ありがとう。レヴ」
「いやぁ、倅と同じ歳の子供にここで会えるなんてな」
「あぁ、俺も気が和らいだよ。ちっせえ子供で可愛い奴だな」
彼らの言動は少し荒いけれど、どうやらレヴを可愛がってくれていただけのようだ。
故郷に残してきた子供の事を思い出すのだろう。
スコーンを食べるレヴを見つめる瞳は優しげだ。
ルーベルとは違って、彼らは家族に会いたいとその瞳が語っていた。
警戒していた事が申し訳ないぐらいだ。
そしてレヴが人気なのか、周囲にいた兵士達が次々とお菓子を渡してくれた。
「おそと、やさしいひといっぱいだね。ナディ」
「ふふ、レヴがいい子だからだよ」
「ほんと? えへへ、やた」
たくさんのお菓子にご満悦なレヴに、兵士が集まってくる。
グラスランさんが「ちょうどいいな」と、集まった兵士に声をかけた。
「我らはドルメン公爵の元へ会いに来た。誰か屋敷まで案内してくれないだろうか」
「ドルメン公爵は我が領地にて最も重要な方です。居場所を安易に案内するわけにはいかない」
「ならばせめて、グラスランが来たと告げてくれないか」
その名を聞いて、幾人かの老齢の兵士達が顔を上げてグラスランさんを見つめる。
次に驚きの声が上がり、彼らが敬礼する。
「グラスラン殿! まさか生きておられたとは……またお会いできるなんて」
「……すまんな、事情があって戦地から逃れていた」
「謝罪など必要ありません。貴方に我らは幾度も救ってもらえた。軍部も納得してくださるはずです」
以前に話を聞いていたけれど、グラスランさんは本当に凄い過去があったのだろう。
兵士達の隊長と思わしき人達まで来て、すんなりとドルメン公爵の元まで案内してもらう手はずとなった。
「ここがドルメン公爵の居住する屋敷です。直ぐに皆さまの事をお伝えしてきます」
流石というべきか、ドルメン公爵はこの戦地でも最重要人物だけあって屋敷の警備は多い。
加えて私が知るような貴族の屋敷と違い、装飾や庭園といった無駄は省かれていた。
そんな堅牢で砦のような屋敷から、一人の男性が出てきた。
「あれが、ドルメン公爵……」
齢は五十を超えている老齢な見た目ながら、覇気に満ち鋭い瞳に気圧される。
兵装ながら豪奢な外套を身に着ける姿は、まさに武家の名門と呼ばれるドルメン公爵その人だ。
「グラスラン、久しいな。まさかまたお前に会えるとは」
「ドルメン公爵、お会いできて光栄です。恥を忍び、隠れ住んでいた場所を捨てて貴方に頼みがあって参りました」
「まずは生きていてよかった。お前に剣術指南をしてもらったおかげで、私も生きていられるのだから」
「滅相もありません」
「しかし、長年身を隠していたお前が、何用だ」
ドルメン公爵は豪快に笑いながらも、その瞳は護衛の男性達とレヴを見つめる。
警戒するような鋭い瞳、鷹に見つめられるような緊張感だ。
「男どもと、幼い子供を引き連れて……頼み事とは訳が分からぬな」
「直ぐに事情をお話させ……」
「いや待て、そこの女性を見て分かった」
ふと、ドルメン公爵の瞳が後方に居た私を捉える。
即座に瞳孔が小さくなり、まるで獲物を捕らえたかのような微笑みを見せた。
「君はナディアか……そうだろう」
「っ!?」
私を知っている?
どうして!?
困惑する思考の中で、ドルメン公爵が私の傍へと寄ってくる。
鋭い瞳に見つめられて、逃げられる気がしない。
蛇に睨まれたように体が動かない。
「デムガル大臣とは旧知の中でな、書状にて全て教えてもらっている。君は書かれていた特徴にピッタリだ」
「なっ!?」
大臣から?
想定外だ、だったらドルメン公爵は私の口封じを頼まれたのでは?
しかし続く彼の言葉は違った。
「大臣からは君が私の元へ訪れた際には、身の安全と、衣食住の保護をして欲しいと頼まれている」
「え……」
私を口封じしようとしていた大臣が、ドルメン公爵に保護を頼んだ?
あり得ぬ言葉に耳を疑う。
「いったい、どうして……」
「大臣は保護の対価として、王家への背反行為を止めるよう交渉したいようだ」
「っ!!」
「屋敷で私と話をしようか。その上で決めるといい……君は王都以外の地で平穏に暮らすか。リスクある背反行為を続けるのか。その覚悟を私は聞きたい」
ドルメン公爵は試すような視線を投げかけながら、私を屋敷へと招いた。
思った以上に寝れたのは、疲れと安心感のおかげか。
レヴと野営所を出れば、昨日の騒ぎなど初めから無かったように落ち着いている。
「おぅ、起きたか。朝ごはんを食べんさい」
「おいもさんだ! レヴ、おなかぺこぺこ」
「はは、ならいっぱい食べんとな」
グラスランさんが芋を焼いており、あまりに呑気な様子に思わず尋ねる。
「あ、あの……昨日の事は」
「近くの街道に縛って置いておいた。直にどこかの騎士に捕らえられるだろうさ」
「ありがとうございました。皆さんが居なければ、ここで旅が終わってました」
「気にするな。助けになれたなら良かったよ」
助けにしかななってない、本当に彼らに会えてよかった。
運命に感謝しつつ、レヴと芋を食した。
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あれから野盗の襲撃などは数度あったが、度々グラスラン達が撃退してくれて事なきを終え。
いよいよ、公爵領へとやってきた。
「着いたぞ、ナディア嬢。ここが戦地近くでも最も大きな街。そしてドルメン公爵家が居を構える場所だ」
「すごい……」
「おっきーい!」
レヴの感嘆の声と共に、私も思わず息がこぼれる。
戦地近くの大都市であるこの場所は、話には聞いていたが想像以上に臨戦態勢であった。
高い石造りの壁が街を覆い、更には街道には幾多の兵士が駐在する。
王都では着飾っていた人ばかりだが、ここでは鉄音響かせる鎧を身に着けた人が多い。
戦場都市だなんて王都では揶揄されていたが、確かにその通りだと納得してしまう。
「驚いたか? この街に住む兵士の割合は約八割。他の産業は全て輸入に頼っているんだ」
「それは……成り立つのですか?」
「もちろん。ここが落ちれば国が落ちるも同義。ゆえにテルム王国の多くの貴族家が支援を送っている」
「ぐーう。ここがまちなの?」
レヴは感動冷めやらぬ様子で、グラスランさんの袖を引く。
「そうだ。ここが儂がよく言っていた街の一つだぞ、レヴ」
「おそとって、こんなにおっきないえがあるんだね」
「レヴ、あれは外壁と言って。怖い人が入ってこないようにするものだ」
「がいへき?」
レヴにとっては、目に映るものが全て新鮮なのだろう。
街に入ってからも、好奇心旺盛に質問する。
それを皆で微笑みながら答えていると、街道から数人の兵士が歩いてきた。
「こんな所に子供か、珍しいな」
「ここがどこだかわかってるのか?」
護衛の人々もそれなりに強面であったが、近づいてきた兵士達はとびきり強面だった。
険しい顔つきで見つめてきて、私は思わずレヴを抱きしめる。
「あ、あの……なにか?」
「そんなガキを連れてくるってことは、分かってるんだろうな」
「え……」
「俺達がどういう仕事しているのか、しっかり教えてやらないとな!」
兵士はそう言って、いきなり手を動かす。
何をする気か分からないが、レヴを守らないと……そんな警戒をしたけど杞憂だった。
なぜなら兵士は懐から、お菓子の包みを取り出したのだ。
「ほら、スコーンだ。くえ」
「おじさん、レヴにくれるの?」
「あぁ。配給品だが甘いぞ」
「やた! ありがと! いただきます」
レヴが手を伸ばしてスコーンを受け取り、それを半分に割る。
半分を私に渡してくれるのだ。
「ナディと、はんぶんこ」
「あ、ありがとう。レヴ」
「いやぁ、倅と同じ歳の子供にここで会えるなんてな」
「あぁ、俺も気が和らいだよ。ちっせえ子供で可愛い奴だな」
彼らの言動は少し荒いけれど、どうやらレヴを可愛がってくれていただけのようだ。
故郷に残してきた子供の事を思い出すのだろう。
スコーンを食べるレヴを見つめる瞳は優しげだ。
ルーベルとは違って、彼らは家族に会いたいとその瞳が語っていた。
警戒していた事が申し訳ないぐらいだ。
そしてレヴが人気なのか、周囲にいた兵士達が次々とお菓子を渡してくれた。
「おそと、やさしいひといっぱいだね。ナディ」
「ふふ、レヴがいい子だからだよ」
「ほんと? えへへ、やた」
たくさんのお菓子にご満悦なレヴに、兵士が集まってくる。
グラスランさんが「ちょうどいいな」と、集まった兵士に声をかけた。
「我らはドルメン公爵の元へ会いに来た。誰か屋敷まで案内してくれないだろうか」
「ドルメン公爵は我が領地にて最も重要な方です。居場所を安易に案内するわけにはいかない」
「ならばせめて、グラスランが来たと告げてくれないか」
その名を聞いて、幾人かの老齢の兵士達が顔を上げてグラスランさんを見つめる。
次に驚きの声が上がり、彼らが敬礼する。
「グラスラン殿! まさか生きておられたとは……またお会いできるなんて」
「……すまんな、事情があって戦地から逃れていた」
「謝罪など必要ありません。貴方に我らは幾度も救ってもらえた。軍部も納得してくださるはずです」
以前に話を聞いていたけれど、グラスランさんは本当に凄い過去があったのだろう。
兵士達の隊長と思わしき人達まで来て、すんなりとドルメン公爵の元まで案内してもらう手はずとなった。
「ここがドルメン公爵の居住する屋敷です。直ぐに皆さまの事をお伝えしてきます」
流石というべきか、ドルメン公爵はこの戦地でも最重要人物だけあって屋敷の警備は多い。
加えて私が知るような貴族の屋敷と違い、装飾や庭園といった無駄は省かれていた。
そんな堅牢で砦のような屋敷から、一人の男性が出てきた。
「あれが、ドルメン公爵……」
齢は五十を超えている老齢な見た目ながら、覇気に満ち鋭い瞳に気圧される。
兵装ながら豪奢な外套を身に着ける姿は、まさに武家の名門と呼ばれるドルメン公爵その人だ。
「グラスラン、久しいな。まさかまたお前に会えるとは」
「ドルメン公爵、お会いできて光栄です。恥を忍び、隠れ住んでいた場所を捨てて貴方に頼みがあって参りました」
「まずは生きていてよかった。お前に剣術指南をしてもらったおかげで、私も生きていられるのだから」
「滅相もありません」
「しかし、長年身を隠していたお前が、何用だ」
ドルメン公爵は豪快に笑いながらも、その瞳は護衛の男性達とレヴを見つめる。
警戒するような鋭い瞳、鷹に見つめられるような緊張感だ。
「男どもと、幼い子供を引き連れて……頼み事とは訳が分からぬな」
「直ぐに事情をお話させ……」
「いや待て、そこの女性を見て分かった」
ふと、ドルメン公爵の瞳が後方に居た私を捉える。
即座に瞳孔が小さくなり、まるで獲物を捕らえたかのような微笑みを見せた。
「君はナディアか……そうだろう」
「っ!?」
私を知っている?
どうして!?
困惑する思考の中で、ドルメン公爵が私の傍へと寄ってくる。
鋭い瞳に見つめられて、逃げられる気がしない。
蛇に睨まれたように体が動かない。
「デムガル大臣とは旧知の中でな、書状にて全て教えてもらっている。君は書かれていた特徴にピッタリだ」
「なっ!?」
大臣から?
想定外だ、だったらドルメン公爵は私の口封じを頼まれたのでは?
しかし続く彼の言葉は違った。
「大臣からは君が私の元へ訪れた際には、身の安全と、衣食住の保護をして欲しいと頼まれている」
「え……」
私を口封じしようとしていた大臣が、ドルメン公爵に保護を頼んだ?
あり得ぬ言葉に耳を疑う。
「いったい、どうして……」
「大臣は保護の対価として、王家への背反行為を止めるよう交渉したいようだ」
「っ!!」
「屋敷で私と話をしようか。その上で決めるといい……君は王都以外の地で平穏に暮らすか。リスクある背反行為を続けるのか。その覚悟を私は聞きたい」
ドルメン公爵は試すような視線を投げかけながら、私を屋敷へと招いた。
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※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
※本文はAI(Claude)が生成した文章を、作者が加筆・修正したものです。