【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか

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ランドルフside


「な……なんて格好をしているのですか!?デイジー!」

 いい気味だデイジー…自暴自棄になったのか…この学園に蔓延るルールを破って他の女性達に目をつけられるとはな…デイジーはいじめられる生活を送るだろう、俺はデイジーと過ごしてきて知っている、あいつは打たれ弱いし傷つきやすい……この様子なら俺が直接手を出して退学に追い込まずとも勝手に心を病むだろう。
 俺は校舎の二階の窓から登校していたデイジーを眺め、安堵の息を吐きながら目を離す、朝早く学園にやってきた目的を果たすために高等部一年の集まる教室の通路を歩く。

「あれってランドルフ王子?」
「なんて凛々しい方なの……」
「わ、私……話かけてこようかな」

 全く、騒がしい連中共だ…彼女がいなければこんな青臭い者達に顔を見せる事もないのだが…。
 まぁいい、前はデイジーに隠していたがこれからは素直に生きよう、ローザには俺のありのままを受け入れてもらう予定だ…これ以上、取り繕う必要もないだろう。

「あ、あのランドルフ王子!」
「一年生の棟になにか御用ですか?」

 話しかけてきた生徒達の身なりを見て、思わず噴き出してしまう。
 こいつら格好からして平民共か?緊張してこわばった笑顔を必死に見せているが…高貴な俺に話しかけるなど分不相応だ、立場を理解してほしいものだ。

「あ、あの…ランドルフ王子」

「貴様らは誰に話しかけている…王族の血を引くこの俺に気安く話しかけるな、邪魔だ……どけ」

「え!?………………きゃ!」


 前に立っていた女生徒達を突き飛ばすと彼女はよろけ、そのまま後ろに倒れていく……それを支えたのは俺が探していた女性だった。

「ランドルフ様……何をしておられるのですか?」

「ローザ!!探していたぞ!懇親会で言っていただろう?今度会った時に話でもと…時間はあるか?」

「……すみません、その前に彼女、今の転倒で足をくじいてしまったようで」

 ローザの言葉に、俺が突き放した女生徒を見るとローザに支えられながら足首を痛そうに抑えている。
 軟弱だな平民は…。

「放っておけローザ…たかが平民を助けて公爵家の君になんの得がある?利点などないだろ……」

「ランドルフ様……それは…」

「ローザ…答えてくれ、俺と話すか?それとも彼女を選ぶか?………聡明な君なら分かるだろう?」

「…………」

「答えろ、ローザ」

「はい…ランドルフ様……お話、喜んでお受けします」


 それでいい、ローザ……。
  
 彼女は支えていた女生徒を他の者に託しながら俺の元へとやって来る、周囲の視線は動揺、驚きの混じった視線を向けているが関係ない、彼女が俺を選んでくれた事に心の底から嬉しいと思う。

「では、ここでは人が多い……静かな所に行こうか」

「……はい…………っ!」

 控えめな返事をしたローザの手を取り、繋いだまま学園の中庭へと向かいベンチに腰掛け、隣に座ったローザにさらに近づくようにして身体を寄せる。

「今日から学園生活だろう?…………もし困った事があれば俺になんでも言ってくれ」

「ありがとうございます……その……王子……なぜ平民の方にあのように酷く?あそこまでしなくとも…」

 ローザは困惑しながらも確かめるように俺の顔を見る、その美しく絵画のような容姿に見惚れてしまいそうになるが、慌てて質問に答える。

「いいかローザ…王族とはこの国を背負う者……一分一秒も無駄な時間には割けない……平民達はいわばこの国の血液だ、重要であることは理解している…だが一滴の血液と話すことに時間を取る必要があるか?……そんな時間があれば王族であればもっと有意義に時間を使うべきだ」

「そう…………なの、ですね」

「今は理解しなくてもいい、だがきっと分かる日がくる……俺たち貴族の力は大きい、故に雑多に構い判断が迷うようでは上は務まらない…」

 俺はローザの頭を少しだけ緊張しながらも、ゆっくりと触れて撫でる。

「お前の幸せは俺が約束しよう、これからは俺の言う通りにすればいい」

「はい………ありがとうございますランドルフ様…私、嬉しいです」

 ニコリと笑って俺に笑顔をくれたローザに思わず抱きしめたいと劣情が湧いてしまう。

(耐えろ……ランドルフ……いまは落ち着いてローザと距離を縮めるべきだ!!)

 心に言い聞かせながら、平穏を装いその後もローザと他愛ない話をしていると予鈴の鐘が聞こえてくる、俺はローザと話しを続けたい一心で、ギリギリまで粘るが彼女は流石に焦りの声を出した。

「私…………そろそろ行かないと」

「そうだったな…じゃあ、また」

「は、はい…ありがとうございました!」


 足早に去っていくローザを見送りながら、俺は見えなくなるまで手を振り続けて…ローザが見えなくなり、周囲に人がいないのを確認し、自分の手のひらを凝視する。
 ローザの頭を撫でていた手、その手を欲望のまま鼻に近づけて勢い良く吸い込む……。

「あぁ……ローザ…」

 一目ぼれ、そんな言葉では表せないこの感情……彼女の美しさにここまで心惹かれているなんて…。
 呼吸を繰り返し、少しでも彼女の匂いを感じながら、俺は授業の始まる限界まで己の劣情を満たす事にした。





























   ◇◇◇




デイジーside

「気持ち悪……」

 私は校舎の二階から中庭の隅で奇怪な行動、手のひらを匂いでいるランドルフに顔をしかめながら思わず呟いてしまう、もうすでに愛など存在しないが…先の行動を見てしまえばいよいよ恋心が再燃する可能性も消失してしまった。

「でも都合がいいわ、このまま何も考えずに過ごしていてくれれば」

 私は少しだけ微笑みながら呟く、ランドルフが現を抜かしている間に私は準備をしていこう…私が不幸にならない基礎作りを…そしてランドルフ…貴方を貶める準備を。



 そのためには、先ずは人を集めなければね…私を信頼してくれる者達を…。
 

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