【完結】誰かの親切をあなたは覚えていますか?

なか

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親切なあなたへ①


私は幼い頃
とある人が怖かった

「そこ!!遊ばないであるきなさい!!」

朝から大声で怒るおばさんは私達の通学路にいつも立っていた
怖い人で、目つきが怖くて……
ふざけて歩いていた他の子供も怒られてシュンとして落ち込んでいた

私達の通学路にずっと立っているおばさん
怖くていつもその人の前では恐る恐ると歩くのだ
いつも厳しい睨みを利かせてふざけている子供を怒る


怖くて、私は苦手だった



ある日、とある男の子が言った

「あのおばさんをこらしめようと」

他の男の子達も頷き、いたずら感覚で始めたんだと思う

「こらぁ!!!ふざけてないで前を向いてあるきなさい!!」

そう叫ぶおばさんに、男の子達はふざけて笑いながら
「うるさい!おばさん!」とからかうのだ

それが何日か続いた
おばさんはどれだけ男の子達からからかわれても怒るのをやめなかった
そして、一人の男の子が一線を踏み外してしまった


いつもの通学路
歩いていると


「こら!!ふざけないの!!」

おばさんの怒った声が聞こえる
すると、一人の男の子が前に出て手に持っていた石を投げた

「うるせぇ!」と
恐らく当てる気はなかったと思う
けど、おばさんが避けた先に石が飛んで鈍い音が鳴った

赤い血が
おばさんのおでこから流れていた


「あ………………」

焦った男の子だったけど、おばさんは何も言わずにその場を去っていった
きっと、私達が嫌いになったんだと思った

翌日、男の子とその家族がおばさんに謝りに行ったと聞いた
きっと…あのおばさんは怖いからいっぱい怒られただろうなぁ
と私は話を聞きながら思っていた




数日後
学校からの帰り道、私は一人で帰っていると
いつもの場所におばさんが立っていた
額に包帯?を巻いていていつもの怖い顔で

(きっと…子供が嫌いになったから…怒られるかも)

私はそう思って
俯いておばさんの前を通る
すると肩を叩かれた


振り返ると、おばさんは見せたこともない笑顔を私に向けて

「いつも怖がらせてごめんね、これ上げるね」

そう言って、ミルク味のアメを手渡してくれた

「あ、ありがとう」

私は震える声でアメを受け取った

次の日からおばさんはいつも通り通学路に立って
ふざけている子を怒るのだ









今になって思えば、私はおばさんは優しい人だったのだとわかる
おばさんが立ってくれていた場所は見通しが悪いのに車は多くて
事故になりそうな通りだった

なにより、からかわれながらも子供が危ないと注意してくれていた
今の私に…それができるだろうか?
難しいかもしれない


あの人は子供が嫌いなんかじゃない
あの行動は、ああして怒ってくれるのは
誰よりも私達子供のためを思っての行動なんだ



私は、久々に通学路を通って思い出す
あのおばさんはもうそこには立っていないけど、道路は改善されて
安全になっている

なにより、おばさんが立っていてくれたあの通り
子供を巻き込んでの事故は一回も起こったことがない


「ありがとう」そう思いながら
私は、あの日もらったミルク味のアメが忘れられなくて
今でも思い出しては
買ってしまう




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