1 / 5
親切なあなたへ①
しおりを挟む私は幼い頃
とある人が怖かった
「そこ!!遊ばないであるきなさい!!」
朝から大声で怒るおばさんは私達の通学路にいつも立っていた
怖い人で、目つきが怖くて……
ふざけて歩いていた他の子供も怒られてシュンとして落ち込んでいた
私達の通学路にずっと立っているおばさん
怖くていつもその人の前では恐る恐ると歩くのだ
いつも厳しい睨みを利かせてふざけている子供を怒る
怖くて、私は苦手だった
ある日、とある男の子が言った
「あのおばさんをこらしめようと」
他の男の子達も頷き、いたずら感覚で始めたんだと思う
「こらぁ!!!ふざけてないで前を向いてあるきなさい!!」
そう叫ぶおばさんに、男の子達はふざけて笑いながら
「うるさい!おばさん!」とからかうのだ
それが何日か続いた
おばさんはどれだけ男の子達からからかわれても怒るのをやめなかった
そして、一人の男の子が一線を踏み外してしまった
いつもの通学路
歩いていると
「こら!!ふざけないの!!」
おばさんの怒った声が聞こえる
すると、一人の男の子が前に出て手に持っていた石を投げた
「うるせぇ!」と
恐らく当てる気はなかったと思う
けど、おばさんが避けた先に石が飛んで鈍い音が鳴った
赤い血が
おばさんのおでこから流れていた
「あ………………」
焦った男の子だったけど、おばさんは何も言わずにその場を去っていった
きっと、私達が嫌いになったんだと思った
翌日、男の子とその家族がおばさんに謝りに行ったと聞いた
きっと…あのおばさんは怖いからいっぱい怒られただろうなぁ
と私は話を聞きながら思っていた
数日後
学校からの帰り道、私は一人で帰っていると
いつもの場所におばさんが立っていた
額に包帯?を巻いていていつもの怖い顔で
(きっと…子供が嫌いになったから…怒られるかも)
私はそう思って
俯いておばさんの前を通る
すると肩を叩かれた
振り返ると、おばさんは見せたこともない笑顔を私に向けて
「いつも怖がらせてごめんね、これ上げるね」
そう言って、ミルク味のアメを手渡してくれた
「あ、ありがとう」
私は震える声でアメを受け取った
次の日からおばさんはいつも通り通学路に立って
ふざけている子を怒るのだ
今になって思えば、私はおばさんは優しい人だったのだとわかる
おばさんが立ってくれていた場所は見通しが悪いのに車は多くて
事故になりそうな通りだった
なにより、からかわれながらも子供が危ないと注意してくれていた
今の私に…それができるだろうか?
難しいかもしれない
あの人は子供が嫌いなんかじゃない
あの行動は、ああして怒ってくれるのは
誰よりも私達子供のためを思っての行動なんだ
私は、久々に通学路を通って思い出す
あのおばさんはもうそこには立っていないけど、道路は改善されて
安全になっている
なにより、おばさんが立っていてくれたあの通り
子供を巻き込んでの事故は一回も起こったことがない
「ありがとう」そう思いながら
私は、あの日もらったミルク味のアメが忘れられなくて
今でも思い出しては
買ってしまう
82
あなたにおすすめの小説
少年イシュタと夜空の少女 ~死なずの村 エリュシラーナ~
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
イシュタは病の妹のため、誰も死なない村・エリュシラーナへと旅立つ。そして、夜空のような美しい少女・フェルルと出会い……
「昔話をしてあげるわ――」
フェルルの口から語られる、村に隠された秘密とは……?
☆…☆…☆
※ 大人でも楽しめる児童文学として書きました。明確な記述は避けておりますので、大人になって読み返してみると、また違った風に感じられる……そんな物語かもしれません……♪
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
おしごとおおごとゴロのこと の えほん
皐月 翠珠
絵本
ゴロは決めました
憧れのぬいぐるみのところで
一生懸命働こう と
田舎から上京したゴロは
慣れない都会に右往左往
でも ゴロは頑張ります
全力で“おしごと” をします
ぶん:皐月翠珠
え:てぃる
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。
桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。
それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。
でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。
そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる