【完結】誰かの親切をあなたは覚えていますか?

なか

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親切なあなたへ②

私には、年の離れた兄がいる
幼い頃は一緒に遊んでくれたのを覚えている

小学生、一年生の頃だっただろうか
私は買ってもらったピカピカの自転車に早く乗りたくて
兄にお願いして兄が遊ぶ友達の家についていく事にした

兄は凄くはやくて
ついて行くのが難しくて
いつしか、私は一人で見知らぬ場所に立っていた

見渡しても、知らない場所で
人通りも少なくて、どうしていいかわからずに泣いてしまう
綺麗な自転車を立てかけて、疲れた足を休めたくて
座りこんで泣いていた

誰も通らない道
もう誰にも見つからずに一人ぼっちになるんだと
幼い私は不安で泣くのを止められなかった


「どうしたの?大丈夫?」

泣いている私に声がかけられた
顔をあげると、杖をついたおじいちゃんがスーパーの袋を持ちながら立っていた

「迷子かい?」

「うん」

知らない人と話すのは少し怖くて、口数が少なくなってしまう
おじいちゃんは話しかけてくれて、どこから来たとか
家はわかるかい?と聞いて

「うーーん、おじいちゃんにはその場所わからないね」

と明るく笑うのだ
なんだか明るくて、私も思わず笑ってしまったのを覚えている

「お兄ちゃんと別れたのなら、きっと道を戻って来てくれるかもなぁ」

そう呟いたおじいちゃんは持っていた袋から
イチゴのパックを取り出すと、私にくれた

「待っている間、これでも食べておき」

そう言って、飲み物代の100円玉も持たせてくれた
私は嬉しくてもらったイチゴを食べながら
さっきまでの不安なんて忘れてニコニコしていた

暫くすると、兄が迎えに来てくれて無事に家に帰る事ができた

お礼をしたくて、何回かその場所で待っていた事もあったけど
そのおじいちゃんと出会う事はなかった


名前も知らない人

でもとっても優しくて
私の不安だった心は確かにおじいちゃんのおかげで救われた





あの通りはスーパーも遠くて
杖をついたおじいちゃんが
何とか歩いて、楽しみに買って帰ったであろう
イチゴ………


いつか、お礼を言いたいと思って
その道を通る


私は今でもあなたを忘れていない

伝わってほしいこの「ありがとう」を
言えないままで、私は過ごしている



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