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21話

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揺れる馬車の中で私と彼は言葉を交わさずにただ揺れていた
口付けをした瞬間から
彼も私も顔を赤くしてしまった
私も、勢いで口付けしてしまって…後の事など考えていなかった


「………………」

「………………」


お互いの沈黙、彼はただ俯いていた
御者として馬を走らせるオルターさんはただ何も言わずにちらりと
こちらを伺う

「あの………………」

「待ってくれシャーロット」

私が話しかけようと声を出すと
彼はそれを止める
大きく息を吐いて、深呼吸している

「少しだけ、待ってくれるか?情けないな…勇気がまだなくてね」

「いえ、待ちますよ…ウィリアム様」

彼は、再度息を大きく吸込み
吐き出すと
私の顔を見つめて言葉をかける

「ずっと…僕は下を向いて生きてきた、でもそんな僕の本当の心を見てくれていたのは…君だけだった」

「はい…」

「君の隣に立てる資格が僕にはないと思っていた」

「そんなこと…」

「だけど、今日思ったんだ、君の隣にいるのは僕でないと嫌なんだ、誰かが君の隣に立っているなんて…考えたくない…」

「ウィリアム…様…」

涙がこぼれる、ずっと待っていた言葉
今まで待っていた
待つなんて慣れたと思っていた

けど、今は少しでも早く彼の言葉の続きを聞きたい

「君の隣にいさせてほしい…ずっと…ずっと…結婚しようシャーロット、偽装なんかじゃない、本当の夫婦になってくれないか?」

こぼれる涙と共に
彼の胸に抱きつき
強く抱きしめる

「ずっと、その言葉を待っていました…ウィリアム…」

「すまない…」

「私、もう我慢しなくていいのですね」

「あぁ…シャーロット…」

溢れる想いが
蓋をしていた言葉が、次々と溢れ出す

「私も、あなたを愛しております…好きです、あなたの優しさに惹かれて、気持ちが溢れて止まらないのです…ずっと…ずっとあなたに言いたかった…私からも結婚をお願いします、ウィリアム」

私と彼は馬車の中で口付けを交わす
彼は私を抱きしめてくれて
私も彼に力強く手を回す


馬車の外はすっかり陽が落ちていたが
月夜が馬車の窓から差し込む

思えば、初めて彼の屋敷に向かう日もこんな夜だったかもしれない

あの時とは違う
私達は心から気持ちを伝え合って


やっと
夫婦になれたのだ

私は彼を愛している
彼も私を愛してくれている


それはとても幸せな事





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