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三章
116話 進む二人⑥
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暫しシルウィオ達に苦労をかけていた犯罪集団との一件も終わりを迎え、胴元であった人物は先の通りに捕縛された。
そうなれば、あとは芋づる式に関係者が連行されていくだけだ。
「あとは、グレイン達がどうなったか……帰ってくるのが楽しみですね」
「別に興味はない」
「そう言いながらも、待っているじゃないですか」
私とシルウィオは子供達と庭園で過ごしながら、グレイン達の帰りを待つ。
リーシアはこの城に住んでいるため、戻って来るはずだ。
ただあまり野次馬のように問い詰めても邪魔だろうし、あくまで見守るだけにしておくつもりだ。
「はは、グレインの事ですから……案外、なにも出来ずに帰ってくるのではないですか」
傍で聞いていたジェラルド様が、頬笑みながら私に紅茶を淹れてくれる。
彼も同様に気になるのだろう、少しソワソワと帰還を待っていた。
時刻は夜中、子供達が寝静まった頃に……シルウィオが薄く瞳を開いた。
「来たぞ」
やはり気にしていないと言ったくせに、城内の微かな気配さえ感じ取れる程に待っていたようだ。
シルウィオの言葉通りに、暫くしてグレイン達が歩いているのが庭園から見えた。
「こっちに気付いておりませんね」
「いつも通りのようですな」
グレインはこちらに気付いた感じではなく、どこか緊張した面持ちでリーシアと話している。
それを私とジェラルド様が、興味深く見つめた。
「あまり、仲が変わったようには見えないわね」
「かもしれませんな。あいつは女性に興味なく過ごしていたので、アプローチなどは分からんのでしょう」
「まぁ、初めてのお出かけですから。繰り返せば二人の仲も進展するはずです」
ジェラルド様と、思わずおば様達のような話をしてしまう。
あまり見つめ過ぎるのも悪いので、罪悪感を紛らわすように紅茶を飲む。
「まぁ、無事に帰ってきて安心しました。二人の進展については、また話してくれるのを待ちましょうか」
「そうです––––なっ!?」
ふと、ジェラルド様が驚く声を出す。
私はその声に釣られ、思わずグレインの方を見つめた。
「あら……」
グレインはリーシアさんの手を掴みながら、少し周囲を見つめる。
いつもの騎士としての警戒ではなく、どこか焦ったような、緊張した面持ちだ。
そして……なんと。
「っ!!」
「……」
グレインはリーシアさんとハグをしていた。
まだ優しいハグだったが、互いに手を回している姿には確かな愛情を感じる。
変わらないと思っていた二人だったが、意外にも進展した様子に驚いてしまう。
「あ、あまり見てはいけない所を見てしまったかもですね」
「普段のあいつなら、直ぐにこちらに気付いただろう。こっちは茶会していただけだ」
シルウィオはそう言うが、どこか申し訳なさもある。
そんな私の気持ちを察してくれたのか、シルウィオは小さく呟いた。
「まぁ、詫びとしてまた休みを与えてもいいかもな。グレインにも……あの女性にも」
「ふふ、そうですね」
そんなやり取りを交わしていると、隣で鼻をすする音が聞こえる。
何事かと目線を向けると、なんとジェラルド様が涙ぐんでいるのだ。
グレイン達のハグが吹き飛ぶ驚きに、反射的に問いかけてしまう。
「ど、どうかされましたか。ジェラルド様」
「申し訳ありません。シルウィオ陛下や、カーティア様の御前で涙を流すなど」
「い、いえ。それはいいのです。どこか体調が悪いのですか?」
「いえ、嬉しいのです。グレインが……ああも、素直になっている様子が見れて」
ジェラルド様は少し落ち着いたのか、気品ある佇まいに戻る。
ハンカチを出して、目元を拭って話を続けた。
「幼い頃から騎士として面倒を見ておりましたが、グレインは過去の経緯もあって女性との関わりを自ら断ってきておりました」
「……」
「まともに会話をしていたのは、私の妻とカーティア様だけでした。でも……カーティア様がシルウィオ陛下を変えてくれたように、グレインも変わったのでしょう」
私のおかげでグレインが変わった訳ではないはずだ。
あくまで、彼の過去に起こった歪なトラウマ、その元凶でもあったリーシアの姉とのケジメをつけただけだ。
その事を伝えると、ジェラルド様は笑って頷いた。
「そんな事でも、グレインにとってはキッカケだったのでしょう。シルウィオ陛下が変わった姿に、あいつ自身も思う所はあったはずです」
かつては女性に対して、トラウマを抱いていたグレイン。
そんな彼がいまや、リーシアさんとは距離を縮めている。
長く一緒にいて、心配していたジェラルド様からみれば……確かに嬉しい事だろうな。
「今日は、私の妻にも良い報告ができそうです」
ジェラルド様の奥様である、レティシア様もきっと喜ぶはずだろう。
こんなにもジェラルド様が嬉しそうなのだから。
「おい」
ジェラルド様とやり取りを交わしていると、ふとシルウィオが呟く。
何事かと二人で目線を向ければ、なんとグレインはこちらを今になって見つけたのだ。
リーシアさんを見送った後なのだろう、一人になってこちらを見つめてワナワナと震えている。
徐々に耳元まで赤くなっているのが分かった。
「み、見てたんですか?」
照れて呟くグレインに、シルウィオが立ち上がって近づいていく。
その頬が、いたずらっぽく笑っているのに気付いた。
「ノックでもしてやった方が良かったか?」
「っ!! し、シルウィオ陛下。なにを言って……」
今までのやり返しのような言葉に、グレインは照れながら頭を抱えた。
それを見て、シルウィオは微笑む。
主従はありながらも、友人関係のような二人に……私とジェラルド様は再び笑い。
グレインを励ますために歩き出した。
そうなれば、あとは芋づる式に関係者が連行されていくだけだ。
「あとは、グレイン達がどうなったか……帰ってくるのが楽しみですね」
「別に興味はない」
「そう言いながらも、待っているじゃないですか」
私とシルウィオは子供達と庭園で過ごしながら、グレイン達の帰りを待つ。
リーシアはこの城に住んでいるため、戻って来るはずだ。
ただあまり野次馬のように問い詰めても邪魔だろうし、あくまで見守るだけにしておくつもりだ。
「はは、グレインの事ですから……案外、なにも出来ずに帰ってくるのではないですか」
傍で聞いていたジェラルド様が、頬笑みながら私に紅茶を淹れてくれる。
彼も同様に気になるのだろう、少しソワソワと帰還を待っていた。
時刻は夜中、子供達が寝静まった頃に……シルウィオが薄く瞳を開いた。
「来たぞ」
やはり気にしていないと言ったくせに、城内の微かな気配さえ感じ取れる程に待っていたようだ。
シルウィオの言葉通りに、暫くしてグレイン達が歩いているのが庭園から見えた。
「こっちに気付いておりませんね」
「いつも通りのようですな」
グレインはこちらに気付いた感じではなく、どこか緊張した面持ちでリーシアと話している。
それを私とジェラルド様が、興味深く見つめた。
「あまり、仲が変わったようには見えないわね」
「かもしれませんな。あいつは女性に興味なく過ごしていたので、アプローチなどは分からんのでしょう」
「まぁ、初めてのお出かけですから。繰り返せば二人の仲も進展するはずです」
ジェラルド様と、思わずおば様達のような話をしてしまう。
あまり見つめ過ぎるのも悪いので、罪悪感を紛らわすように紅茶を飲む。
「まぁ、無事に帰ってきて安心しました。二人の進展については、また話してくれるのを待ちましょうか」
「そうです––––なっ!?」
ふと、ジェラルド様が驚く声を出す。
私はその声に釣られ、思わずグレインの方を見つめた。
「あら……」
グレインはリーシアさんの手を掴みながら、少し周囲を見つめる。
いつもの騎士としての警戒ではなく、どこか焦ったような、緊張した面持ちだ。
そして……なんと。
「っ!!」
「……」
グレインはリーシアさんとハグをしていた。
まだ優しいハグだったが、互いに手を回している姿には確かな愛情を感じる。
変わらないと思っていた二人だったが、意外にも進展した様子に驚いてしまう。
「あ、あまり見てはいけない所を見てしまったかもですね」
「普段のあいつなら、直ぐにこちらに気付いただろう。こっちは茶会していただけだ」
シルウィオはそう言うが、どこか申し訳なさもある。
そんな私の気持ちを察してくれたのか、シルウィオは小さく呟いた。
「まぁ、詫びとしてまた休みを与えてもいいかもな。グレインにも……あの女性にも」
「ふふ、そうですね」
そんなやり取りを交わしていると、隣で鼻をすする音が聞こえる。
何事かと目線を向けると、なんとジェラルド様が涙ぐんでいるのだ。
グレイン達のハグが吹き飛ぶ驚きに、反射的に問いかけてしまう。
「ど、どうかされましたか。ジェラルド様」
「申し訳ありません。シルウィオ陛下や、カーティア様の御前で涙を流すなど」
「い、いえ。それはいいのです。どこか体調が悪いのですか?」
「いえ、嬉しいのです。グレインが……ああも、素直になっている様子が見れて」
ジェラルド様は少し落ち着いたのか、気品ある佇まいに戻る。
ハンカチを出して、目元を拭って話を続けた。
「幼い頃から騎士として面倒を見ておりましたが、グレインは過去の経緯もあって女性との関わりを自ら断ってきておりました」
「……」
「まともに会話をしていたのは、私の妻とカーティア様だけでした。でも……カーティア様がシルウィオ陛下を変えてくれたように、グレインも変わったのでしょう」
私のおかげでグレインが変わった訳ではないはずだ。
あくまで、彼の過去に起こった歪なトラウマ、その元凶でもあったリーシアの姉とのケジメをつけただけだ。
その事を伝えると、ジェラルド様は笑って頷いた。
「そんな事でも、グレインにとってはキッカケだったのでしょう。シルウィオ陛下が変わった姿に、あいつ自身も思う所はあったはずです」
かつては女性に対して、トラウマを抱いていたグレイン。
そんな彼がいまや、リーシアさんとは距離を縮めている。
長く一緒にいて、心配していたジェラルド様からみれば……確かに嬉しい事だろうな。
「今日は、私の妻にも良い報告ができそうです」
ジェラルド様の奥様である、レティシア様もきっと喜ぶはずだろう。
こんなにもジェラルド様が嬉しそうなのだから。
「おい」
ジェラルド様とやり取りを交わしていると、ふとシルウィオが呟く。
何事かと二人で目線を向ければ、なんとグレインはこちらを今になって見つけたのだ。
リーシアさんを見送った後なのだろう、一人になってこちらを見つめてワナワナと震えている。
徐々に耳元まで赤くなっているのが分かった。
「み、見てたんですか?」
照れて呟くグレインに、シルウィオが立ち上がって近づいていく。
その頬が、いたずらっぽく笑っているのに気付いた。
「ノックでもしてやった方が良かったか?」
「っ!! し、シルウィオ陛下。なにを言って……」
今までのやり返しのような言葉に、グレインは照れながら頭を抱えた。
それを見て、シルウィオは微笑む。
主従はありながらも、友人関係のような二人に……私とジェラルド様は再び笑い。
グレインを励ますために歩き出した。
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