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11話
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私の生活は一変した。
セドア様や、エミリーたちはあれから干渉してこないままだ。
私の傍には常にクロヴィスが居てくれるため、遠巻きに睨んでくるだけだった。
そしてクロヴィスの命により、新たな使用人たちが雇われた。
豪勢な食事を作ってもらい、温かな湯に浸かり、ふわふわの寝具に包まれる。
こんなの、初めてだ。
「こんなに頂いて、いいのですか……」
「ラシェルのこれまでの働きぶりなら当然の扱いだ。遠慮するな」
そう言ってくれるクロヴィスに従い、頂いた幸せを感謝と共に享受する。
この羽のように柔らかい寝台に横になるだけで、一気に眠くなるのだから、寝具とは凄い……
「先に寝てろ。ラシェル」
「クロヴィスは……眠らないのですか?」
「俺の事は……気にするな」
彼の呟きの後、急激に眠さが襲ってくる。
でも、私はクロヴィスにも休憩して欲しくて、寝台を譲ろうとする。
しかし、襲い掛かる睡魔に何故か抗えず……気絶するように意識が落ちていってしまうのだ。
「ラシェル……絶対に、お前だけでも幸せにす––」
クロヴィス、何を言って……?
◇◇◇
翌日。
クロヴィスは私よりも早く起きていた。
いったい、いつ寝ているのだろうか。
気にはなるが、今日は彼と別の件で話し合う。
「ラシェル。今後についてだが……」
「はい!」
「くっ……子供だった頃と変わらず、元気な返事だな」
「わ、笑わないでください! 私はもう大人です!」
「まだ十五だろ」
「私がクロヴィス様と出会った時と同じ歳です!」
まるで五年前に戻ったかのような、やり取りを交わしてしまう。
それがなんだか嬉しくて、この時間がずっと続いてほしい。
「……話を戻すぞ」
「はい!」
「とりあえず、俺はラシェルの待遇を改善するため……皇帝に望まれる道を歩む予定だ」
「私も! クロヴィスの婚約者として、皆から皇后に望まれる女性になります!」
「セドアを説き伏せるために頼ったが、無理はしなくていい……お前はゆっくりしてろ」
「違いますよ、クロヴィス様。私は貴方のために、皇后になりたいのです」
「っ……」
「子供の頃と今回。二度も虐げられていた私を救ってくれた貴方に……少しでも報いたいのです」
「……ありがと。ラシェル」
お礼をしたいのは、私の方だ。
六歳の時には父から救ってくれて、今回はセドア様から救ってくれた。
だから、いくら感謝しても足りない。
「ひとまず私は、ポーションが必要な方々へ供給します。そうして多くの人を救えば、きっとたくさんの人が私を支持してくれるはずです!」
「……本当に、大人になったな」
褒める言葉に、得意げに胸を張る。
ポーションの重要性が分かった今、有効活用しない手はない。
無関心だった事を恥に思う程、他国から評価してもらっているのだから。
「俺の方はまずは、他国にラシェルが虐げられた事実を公表する予定だ」
「ありがとうございます。確かにセドア様が下手に情報を隠す前に、私の受けた扱いを公表した方が良さそうですね」
「だからとりあえず、お前はしばらくゆっくりしてろ。無理せず俺に任せていればいい」
クロヴィス様はきっと私を気遣って言ってくれているのだろう。
しかし、私達が平穏に過ごすにはまだ早い。
まだ問題が残っているのだから。
「クロヴィス様。まだゆっくりではできませんよ……」
「は? ポーションを作るのはもっと先でいいだろ?」
「いえ、明日には父の元へ向かう必要があるのです」
私自ら、過去に虐げてきていた父の元へ向かうという提案に、クロヴィス様は驚いた。
当然だろう。
私だって、本来なら会いたくはない。
しかし行かねばならない理由があった。
「私とクロヴィス様は婚約者ですが、この婚約を破談する権利はクロヴィス様と、私の父にあります。それが帝国で結んだ契約です」
「なるほど……セドアの奴がラシェルの父親に頼んで婚約を破談させるのを防ぐ訳か」
「はい。それらは明日にでも済ませてしまいたいです! こういった事は、早く動く方がきっといいはずですから!」
私達の平穏のためにも、さっさと父へと釘を刺しにいこう。
もう遠慮する必要はないのだから。
「分かった。明日、ラシェルの父……イベルトス伯爵の元に向かう」
「はい! 実は……父を追い詰めるための算段もあるのです」
私が計画を話すと、クロヴィス様は私の隣に座って手を握ってくる。
そして、褒めるように頭を撫でた。
「えらいな、お前は……俺を庇おうとしてなければ、一人で生きていけたのかもな」
「私は……クロヴィスと一緒に過ごしたかったから。いいんです」
「そうか。あんなに小さかった手が、こんなに大きくなるほど、待たせたんだな」
「……はい。ラシェルは大人まであと少しですよ?」
「あーーくそ。ずっと隣に居たかったのにな……」
照れながらも、私の手を力強く握るクロヴィス。
その手を、ギュッと握り返す。
「これからは、ずっと一緒です。クロヴィス」
「…………そうだな。お前が泣かなかったら、一緒に居れるかもな」
クロヴィスは冗談交じりに笑いながら、私の手を握る。
かつて私と出会った時の言葉だ。
「はい、私はもう泣きませんよ。大人ですから」
「はっ。ならいいけどな」
そんなやり取りを交わしながら、私達は時間を過ごす。
明日は、父の元へ向かうと決まったが……
いざ向かうとなれば、少ないながらも父と過ごしていた記憶が蘇ってくる。
『邪魔だ。私の視界に入るな』
『ごめんなさい……』
『つくづく目障りだ。お前の母親は多くの魔力を持つ者だから政略結婚して子供を産ませたが、まさか何の魔力もない存在が産まれるなんてな』
思い出に残る父は、いつだって私を罵倒してきていた。
母が亡くなってから、幼い私を捨てたも当然で見放した。
残された私は、やせ細っていく一方だった。
しかし。
『お前には光の魔力があり、皇族が娶ってくれると決まった』
『……』
『婚約が決まって支給される支度金は私が貰う。お前はようやく私の役に立てる事を喜べ』
父は私が光の魔力を持つと分かった途端、嬉々として皇族に明け渡した。
その目的が金銭だった事は、十五歳になった今なら分かる。
つくづく強欲な人だった……
それしか、私には父に対する思い出なんて残っていなかった。
◇◇◇
次の日。
馬車を乗り継ぎ、予定通り私の父––イベルトス伯爵の元へ辿り着いた。
「先に片付けてくる」
「クロヴィス……頼みますね……」
「任せとけ」
クロヴィスには父を追い込む計画のため、とある事を頼んでいる。
そのため私は単身、父の住む屋敷の扉を叩いた。
使用人に客間に通された後、父が荒い足音を響かせてやって来る。
「ラシェルっ」
「……お父様」
顔を合わせた瞬間、父は私を睨んだ。
「なんの用だ? お前を呼んだ覚えはないが」
「今日は、お父様にお話があってきました」
「その前に、お前……セドア様の縁談を断っているそうだな? あの方は次期皇帝だ。縁談を受け入れろ」
「嫌です」
私が断った途端。
父の顔が怒りで紅潮した。
「従え。口答えするな」
「なぜ、私がお父様に従わなければならないのですか?」
「私が皇族に頼み、裕福な暮らしができたのだぞ? 感謝して言う通りにしろ。そんな事も分からないのか?」
「貴方の目的は皇族から貰えるお金のためでしょう? まぁそれも、今日で返してもらいます」
「……なに?」
「今日は、私が受け取るべきだった婚約の支度金を返済して頂きに参りました」
「なっ……」
「お父様が私的に使っているのは分かっております」
「まて。私に返済義務は……」
「お父様……貴方が返済しなくてはならぬ理由を準備しているからこそ、私が来ているのですよ?」
「っ!!」
「そんな事も、言わないと分かりませんか?」
父が先ほど、私に向けた嘲笑の言葉をお返しすれば、彼は分かりやすく目を見開いて怒っていた。
帝国の制度上、クロヴィスと婚約状態の私には毎月多額の支度金が振り込まれている。
それらを私的に使っていた父が貯めているはずもなく、一気に回収となれば伯爵家の財源は吹き飛ぶだろう。
それを理解したのか。
父は見るからに動揺して、視線をさ迷わせていた。
セドア様や、エミリーたちはあれから干渉してこないままだ。
私の傍には常にクロヴィスが居てくれるため、遠巻きに睨んでくるだけだった。
そしてクロヴィスの命により、新たな使用人たちが雇われた。
豪勢な食事を作ってもらい、温かな湯に浸かり、ふわふわの寝具に包まれる。
こんなの、初めてだ。
「こんなに頂いて、いいのですか……」
「ラシェルのこれまでの働きぶりなら当然の扱いだ。遠慮するな」
そう言ってくれるクロヴィスに従い、頂いた幸せを感謝と共に享受する。
この羽のように柔らかい寝台に横になるだけで、一気に眠くなるのだから、寝具とは凄い……
「先に寝てろ。ラシェル」
「クロヴィスは……眠らないのですか?」
「俺の事は……気にするな」
彼の呟きの後、急激に眠さが襲ってくる。
でも、私はクロヴィスにも休憩して欲しくて、寝台を譲ろうとする。
しかし、襲い掛かる睡魔に何故か抗えず……気絶するように意識が落ちていってしまうのだ。
「ラシェル……絶対に、お前だけでも幸せにす––」
クロヴィス、何を言って……?
◇◇◇
翌日。
クロヴィスは私よりも早く起きていた。
いったい、いつ寝ているのだろうか。
気にはなるが、今日は彼と別の件で話し合う。
「ラシェル。今後についてだが……」
「はい!」
「くっ……子供だった頃と変わらず、元気な返事だな」
「わ、笑わないでください! 私はもう大人です!」
「まだ十五だろ」
「私がクロヴィス様と出会った時と同じ歳です!」
まるで五年前に戻ったかのような、やり取りを交わしてしまう。
それがなんだか嬉しくて、この時間がずっと続いてほしい。
「……話を戻すぞ」
「はい!」
「とりあえず、俺はラシェルの待遇を改善するため……皇帝に望まれる道を歩む予定だ」
「私も! クロヴィスの婚約者として、皆から皇后に望まれる女性になります!」
「セドアを説き伏せるために頼ったが、無理はしなくていい……お前はゆっくりしてろ」
「違いますよ、クロヴィス様。私は貴方のために、皇后になりたいのです」
「っ……」
「子供の頃と今回。二度も虐げられていた私を救ってくれた貴方に……少しでも報いたいのです」
「……ありがと。ラシェル」
お礼をしたいのは、私の方だ。
六歳の時には父から救ってくれて、今回はセドア様から救ってくれた。
だから、いくら感謝しても足りない。
「ひとまず私は、ポーションが必要な方々へ供給します。そうして多くの人を救えば、きっとたくさんの人が私を支持してくれるはずです!」
「……本当に、大人になったな」
褒める言葉に、得意げに胸を張る。
ポーションの重要性が分かった今、有効活用しない手はない。
無関心だった事を恥に思う程、他国から評価してもらっているのだから。
「俺の方はまずは、他国にラシェルが虐げられた事実を公表する予定だ」
「ありがとうございます。確かにセドア様が下手に情報を隠す前に、私の受けた扱いを公表した方が良さそうですね」
「だからとりあえず、お前はしばらくゆっくりしてろ。無理せず俺に任せていればいい」
クロヴィス様はきっと私を気遣って言ってくれているのだろう。
しかし、私達が平穏に過ごすにはまだ早い。
まだ問題が残っているのだから。
「クロヴィス様。まだゆっくりではできませんよ……」
「は? ポーションを作るのはもっと先でいいだろ?」
「いえ、明日には父の元へ向かう必要があるのです」
私自ら、過去に虐げてきていた父の元へ向かうという提案に、クロヴィス様は驚いた。
当然だろう。
私だって、本来なら会いたくはない。
しかし行かねばならない理由があった。
「私とクロヴィス様は婚約者ですが、この婚約を破談する権利はクロヴィス様と、私の父にあります。それが帝国で結んだ契約です」
「なるほど……セドアの奴がラシェルの父親に頼んで婚約を破談させるのを防ぐ訳か」
「はい。それらは明日にでも済ませてしまいたいです! こういった事は、早く動く方がきっといいはずですから!」
私達の平穏のためにも、さっさと父へと釘を刺しにいこう。
もう遠慮する必要はないのだから。
「分かった。明日、ラシェルの父……イベルトス伯爵の元に向かう」
「はい! 実は……父を追い詰めるための算段もあるのです」
私が計画を話すと、クロヴィス様は私の隣に座って手を握ってくる。
そして、褒めるように頭を撫でた。
「えらいな、お前は……俺を庇おうとしてなければ、一人で生きていけたのかもな」
「私は……クロヴィスと一緒に過ごしたかったから。いいんです」
「そうか。あんなに小さかった手が、こんなに大きくなるほど、待たせたんだな」
「……はい。ラシェルは大人まであと少しですよ?」
「あーーくそ。ずっと隣に居たかったのにな……」
照れながらも、私の手を力強く握るクロヴィス。
その手を、ギュッと握り返す。
「これからは、ずっと一緒です。クロヴィス」
「…………そうだな。お前が泣かなかったら、一緒に居れるかもな」
クロヴィスは冗談交じりに笑いながら、私の手を握る。
かつて私と出会った時の言葉だ。
「はい、私はもう泣きませんよ。大人ですから」
「はっ。ならいいけどな」
そんなやり取りを交わしながら、私達は時間を過ごす。
明日は、父の元へ向かうと決まったが……
いざ向かうとなれば、少ないながらも父と過ごしていた記憶が蘇ってくる。
『邪魔だ。私の視界に入るな』
『ごめんなさい……』
『つくづく目障りだ。お前の母親は多くの魔力を持つ者だから政略結婚して子供を産ませたが、まさか何の魔力もない存在が産まれるなんてな』
思い出に残る父は、いつだって私を罵倒してきていた。
母が亡くなってから、幼い私を捨てたも当然で見放した。
残された私は、やせ細っていく一方だった。
しかし。
『お前には光の魔力があり、皇族が娶ってくれると決まった』
『……』
『婚約が決まって支給される支度金は私が貰う。お前はようやく私の役に立てる事を喜べ』
父は私が光の魔力を持つと分かった途端、嬉々として皇族に明け渡した。
その目的が金銭だった事は、十五歳になった今なら分かる。
つくづく強欲な人だった……
それしか、私には父に対する思い出なんて残っていなかった。
◇◇◇
次の日。
馬車を乗り継ぎ、予定通り私の父––イベルトス伯爵の元へ辿り着いた。
「先に片付けてくる」
「クロヴィス……頼みますね……」
「任せとけ」
クロヴィスには父を追い込む計画のため、とある事を頼んでいる。
そのため私は単身、父の住む屋敷の扉を叩いた。
使用人に客間に通された後、父が荒い足音を響かせてやって来る。
「ラシェルっ」
「……お父様」
顔を合わせた瞬間、父は私を睨んだ。
「なんの用だ? お前を呼んだ覚えはないが」
「今日は、お父様にお話があってきました」
「その前に、お前……セドア様の縁談を断っているそうだな? あの方は次期皇帝だ。縁談を受け入れろ」
「嫌です」
私が断った途端。
父の顔が怒りで紅潮した。
「従え。口答えするな」
「なぜ、私がお父様に従わなければならないのですか?」
「私が皇族に頼み、裕福な暮らしができたのだぞ? 感謝して言う通りにしろ。そんな事も分からないのか?」
「貴方の目的は皇族から貰えるお金のためでしょう? まぁそれも、今日で返してもらいます」
「……なに?」
「今日は、私が受け取るべきだった婚約の支度金を返済して頂きに参りました」
「なっ……」
「お父様が私的に使っているのは分かっております」
「まて。私に返済義務は……」
「お父様……貴方が返済しなくてはならぬ理由を準備しているからこそ、私が来ているのですよ?」
「っ!!」
「そんな事も、言わないと分かりませんか?」
父が先ほど、私に向けた嘲笑の言葉をお返しすれば、彼は分かりやすく目を見開いて怒っていた。
帝国の制度上、クロヴィスと婚約状態の私には毎月多額の支度金が振り込まれている。
それらを私的に使っていた父が貯めているはずもなく、一気に回収となれば伯爵家の財源は吹き飛ぶだろう。
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父は見るからに動揺して、視線をさ迷わせていた。
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