悪役令嬢なんて呼ばせない!

もげこ

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気付いたら転生してました。

6.こねこねこ(仔猫寝子)

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書庫へ入るのは3度目だ。

学校の教室くらいの広さに、3面の壁が一面書架になっており、他にも部屋の半分に1m程の少し低めの書架が並ぶ。
南側に窓あるお陰で、部屋全体は明るく、過ごしやすい。

そんな書庫に、シャロンさん、大変ご機嫌な様子です。
端から気になった本を引っ張り出し、パラパラページをめくっています。


***



私も初めて書庫に来たとき、壁一面を埋める本を見てちょっとテンションがあがった。
西洋の本の様に、革張りの背表紙など、とにかくオシャレ!

ワクワク手近な本を開いた時…。
そこには日本語はもちろん、アルファベットでもない文字がならんでいた。
私は、静かに本を閉じ、棚に戻しました。
そこはチートでないんですね。

でも大丈夫!メリーちゃんは大病から生還した代わりに、記憶を無くしてしまった…ことになっているので!

「私、文字の読み書きも、忘れてしまったみたい…。」

なんてその日の晩に、レミに伝えてみたところ、

「ご安心ください、お嬢様。ご病気に伏せられる前も、文字の読み書きはされていませんでしたよ。旦那様が身に付けてもらおうと奮闘されていましたが、お嬢様は何かとご理由を作り、逃げ回っていらっしゃいました。」

「…あら、そう、安心したわ…。」

「旦那様へ、お嬢様が文字の読み書きにご興味をお持ちのこと、お伝えしておきますね!」

「へっ!?あー、興味があるわけでも、ないのよ??」

「旦那様、きっと、大変喜ばれますよ!!」

レミの笑顔。完全なる薮蛇だった。

この世界では、貴族など、国の主要機関に関わる家系の子どもが7歳になると、家庭教師を付け、文字の読み書きや計算などを学び始めるそうだ。
そして、15歳になると国の学園に入学する。

国唯一の学園。
エメラルドちゃんが活躍する学花の舞台だ。



***



「さすが公爵家だね。政治や経済、地理の本が多いや。」

分厚い赤色の本を棚に戻す、シャロン。

「シャロンは文字読めるの?」

「読めるよ。でも難しい言葉が多くて、ここにある本の内容は大まかにしか、わからないけど。」

「すごい!まだ6歳なのに!?」

「うちの家系なら、文字の読み書きなんて出来て当たり前だ。」

そう言うなり、また別の本を手に取る。あら?お顔が紅く染まってますよ?シャロンさん。素直じゃないんだから。

ここなら、シャロンを相手せずに放って置いても大丈夫そうだ。

私は、前回来た時に見つけた植物図鑑を引っ張り出して、窓際のテーブルに着く。
文字は読めないが、図鑑ならば、精密に描かれた絵を見ているだけでも楽しめる。

前回見たところまで、ページをめくった時、隣の席にシャロンが座った。

焦げ茶の立派な表装の本は、今の小さいシャロンには不釣合いに感じる。

でも、目が文字を追っているので、私とは違い、ちゃんと読んでいるのだろう。


***


何ページめくっただろう。図鑑には、百合の様な植物が描かれている。

ふと、隣からさっきまで聞こえていたページをめくる音が聞こえない事に気付いた。そっと、横を見ると…、

シャロンが眠っているではないか!!

本を前に居眠りするなんて、ちょっと意外。

静かな寝息と共に上下する小さい身体。
窓からの光を受け、より深みを増す、漆黒の髪。
私はその髪に触れたい衝動に駆られる。

…よく寝てるみたいだから、大丈夫かな?

思わず、手を伸ばしていた。

私の指が、柔らかく、サラサラとした髪をすく。なかなかの触り心地。

「ン…」

少し身体が動いたので、急いで手を引っ込める。
…大丈夫。起きた様子はない。

幸せそうな寝顔しちゃって!

ほっべた抓ってやろうかと思ったが、さすがに可哀想なので、ちょっと突いてみた。

(眉間に皺が寄った!)

面白くてもう一度突くと。薄っすらと目が開き、私を見た。

(あ、起きちゃった!?)

すぐ手を引っ込めようとした時には、手を取られていた。

「フワフワの妖精…僕の、妖精。」

そう言うと、私の手の甲に軽く口づけをした。

(ッ!?)

固まっている私をよそに、また静かな寝息を立てるシャロン。

??
フワフワ??妖精??
手の甲にキス??
んん?ど~いうこと!?
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